松浦 拓海のプロツアー『カルロフ邸殺人事件』レポート

松浦 拓海

はじめに

こんにちは、Hareruya Prosの松浦(@ura_frst)です。

今回は、アメリカ・シカゴで開催されたプロツアー『カルロフ邸殺人事件』に参加をしてきましたのでその大会レポートとなります。どのように練習をして臨んだのか、使用デッキの感想やシカゴでどのように過ごしたかを振り返っていきます。

前回の『チャンピオンズカップファイナル』でシアトルの権利は獲得しているので、今回の目標はアムステルダムの権利が確定する9勝以上でした。とは言いつつもも9勝を目指す練習というのも難しいのですし、狙って9勝することは不可能だと思っているので、いつも通り優勝を目指して練習をしました。

練習編

パイオニア

まずはパイオニアのデッキ選択について。今回のデッキは「ボロスヒロイック」を選択しましたが、そこに至った経緯を話していきます。

最初に目を付けたのが、モダンの『チャンピオンズカップファイナル』と同日に行われた『Pioneer Showcase Challenge』で10位の赤単でした。

逃走する暗号破り点と点を繋ぐ

『カルロフ邸殺人事件』から新カードが2種類加わっています。特に《点と点を繋ぐ》は大きなアドバンテージを稼ぐ活躍をしてくれました。

一時的封鎖

感触は悪くなかったのですが、デッキを見たら一発で分かるように《一時的封鎖》ですべてが吹き飛ぶ形。赤単色ではエンチャントを破壊する方法がなく、本番でもアゾリウスコントロール、ロータスコンボなど使用者が多そうなデッキから頻繁にプレイされることを想定して断念しました。

次は去年の11月末に行われた『チャンピオンズカップファイナル』でも使用して相棒となりつつあるラクドスミッドレンジ。直近で好成績は残していないものの、アゾリウスコントロールやロータスコンボが増えるのであれば悪くない選択になるのではと思い試してみるものの……

喝破Archdruid's Charm

Pioneer Challenge』でまさかの1-6。新勢力の5色ニヴや前環境から活躍していたイゼットフェニックスなど、相性の悪いマッチが増加していました。アゾリウスコントロールが《喝破》、ロータスコンボが《大ドルイドの魔除け》などアップデートがあるのに対し、ラクドスミッドレンジの新カードは0枚。1勝5敗で迎えた最終戦の相手のデッキはラクドスミッドレンジでした。

この大会を通して、ラクドスミッドレンジが旧時代に取り残されたデッキであることを痛感して解散。

ラクドスミッドレンジを諦めたのは2月17日でした。出発日が2月21日なので、出発前にカードを用意したりする準備のために2月20日までにはデッキを決めておかなければいけないので、タイムリミットまで3日を切っていることになります。

■プロツアーまでの日程

2/11-12:チャンピオンズカップファイナル(モダン)
2/13:パイオニア練習開始
2/18:ドラフト練習会
2/21:出国、デッキ提出締切
2/23:プロツアー初日

実は今回の日程はモダンで行われた『チャンピオンズカップファイナル』の影響で、パイオニアの練習を本格的に開始したのが出発8日前の2月13日からとなりました。

非常にタイトなスケジュールで普段のプロツアー練習とは1週間ほど短い練習スケジュールでした。この8日間でドラフトもパイオニアも極めなければなりません。とはいえ、パイオニアは継続してプレイしているフォーマットではあるので短期間でも仕上げられると思っていました。

しかし、想定よりも新カードの影響が大きかったのこともあり、パイオニアをこの短期間で仕上げるのは困難であることが判明。モダンを走りこんだ影響で体力にも限界が見えてきていました。2月18日は森山ジャパンメンバーでのドラフト練習会の予定だったのでもう構築の練習時間は2日もありません。

「パイオニアやばい!大ピンチ!」……と思ってドラフト練習会から帰ったところ、なんとあのデッキが『Pioneer Challenge』で大活躍しているのを目撃します。

それが「ボロスヒロイック」!このデッキはパイオニアに存在するデッキの中で一番を争うほど好きなデッキです。今までは相性の悪いラクドスミッドが多く存在していて活躍することは少なかったですが、ついにラクドスミッドが減少。そして、相性のいいロータスコンボやイゼットフェニックスが増加していることを考えると納得の浮上です。

少しの時間ですがこのデッキを回してみると、ロータスコンボやイゼットフェニックスには面白いぐらいに勝つことができたので自分好みに微調整を加え、無事パイオニアのデッキはこのボロスヒロイックに決定しました。

使用デッキ:ボロスヒロイック

神々の思し召しロランの脱出希望の光

メインデッキの《神々の思し召し》は、《天上都市、大田原》《至高の評決》から守れる《ロランの脱出》のほうが良いのでは?と思ったのですが、イゼットフェニックスに対してプロテクション(赤)で押す場面もあるかなと思い1枚だけ《ロランの脱出》に変更しました。

また《廃墟の地》で割られたときのことを考えて基本土地を1枚ずつ採用。サイドデッキは《一時的封鎖》を割れるように《希望の光》を投入しました。

そのほか細かい部分を変更してデッキをサブミットしました。

ドラフト

MTGアリーナとMOの8人シングルエリミドラフト、森山ジャパンメンバーでのドラフトで練習しました。自分の中では、赤白・青白・赤緑の3つぐらいしかいい感触がつかめず本番を迎えてしまいました。特に赤白と青白は人気のアーキタイプで競合が多く、参入できなさそうな予感はしていたのですが、チームメンバーのピックなどを見て一応それ以外の色の組み合わせでも対応できるつもりでいました。

本当は自分でもいろんな色の組み合わせを会得して臨むべきだったのですが、やはりここでも練習時間が短かったのとパイオニアのデッキが直前まで決まらなかったのが響いて、いつも以上に自信をもってドラフトラウンドに臨むことができませんでした。

プロツアー本番

ドラフト:0-3

煌く機械ドレイクショック通電

1-1《脱出の名人》から自信のある白青に突入するかと思いきや、まったく白いカードが流れてこず。《煌く機械ドレイク》《ショック》《通電》などのカードを取っていくと、いつのまにか青赤になっていました。

大虐殺の審美家、ジュディス密偵ワニエルフ裂け目破りのヘリオン

《探偵鞄》など長期戦に強いカードも少なく、あまり勝ち筋が見えないものの、各種火力除去で盤面を裁いて《大虐殺の審美家、ジュディス》や重めの「変装」クリーチャーたちに頑張ってもらってなんとか1勝、あわよくば2勝なんて考えていました。

実際の対戦では大量に取れた《ショック》が逆に仇となり、相手のタフネス3以上の大型クリーチャー連打に耐えきれず敗北を量産。練習でもこういう受けデッキはあんまり勝てていなかったので、組まないと決めていたのに本番でなぜ……

パイオニア:3-2

ラウンド 対戦デッキ 対戦結果
R4 ロータスコンボ 〇×〇
R5 イゼットエンソウル 〇×〇
R6 白単 ×〇×
R7 ロータスコンボ 〇〇
R8 イゼットエンソウル ××

有利と判断していたロータスコンボに2回当たれたことは、このデッキを持ち込んだ理由でもあるので作戦通りといったところでしょうか。ただ、最大勢力のイゼットフェニックスと当たらなかったのは、ドラフトで0-3したのが原因かもしれません。ドラフトを勝ち進んだプロツアーの中でも、上位のプレイヤーたちが選んだデッキがイゼットフェニックスであったのでしょう。

粗暴な聖戦士失せろスレイベンの守護者、サリアポータブル・ホール

白単人間のことは知り尽くしているつもりなので、目の前に現れたときは絶望しました。メインデッキに《粗暴な聖戦士》《失せろ》などの除去と《スレイベンの守護者、サリア》。サイドデッキには《ポータブル・ホール》《耳の痛い静寂》。プレイされても大丈夫なカードが1枚もありません。

アーティファクトの魂込め遠眼鏡のセイレーンゴブリンの奇襲隊

イゼットエンソウルとの相性は悪くはないと思っているのですが、最終戦ではターンが帰ってくればと勝てるか?と思ったところで探検で2/2になった《遠眼鏡のセイレーン》3体が《ゴブリンの奇襲隊》で走ってきてピッタリ11点削られてしまいました。

そんなこんなでパイオニアラウンド3-2、トータル3-5で初日落ちとなってしまいました。

反省、次回に向けて

ドラフトについての反省

これでプロツアー3連続で1日目のドラフトを0-3しています。前回、前々回は構築戦が好調だったので2日目に進出することができていて、その2日目のドラフトでは3-0、2-1となぜか好調です。

「2日目のドラフト成績や普段の練習では、1日目で0-9するほどドラフトが下手なイメージはないよ!」とほかの方に言ってもらえたりもしたので、何か普段とは違う特別な要因があるのではないかと考えてみました。

比較分析

自分なりに考察してみると、1日目は2日目に比べるとプレイヤーの平均レベルは落ちるので(もちろんプロツアーに出ている時点でレベルは高いですが)、コントロール寄りのカードよりも使用方法が単純で分かりやすいアグレッシブなカードが人気な傾向にあるのかもしれません。そうすると、自分が得意としているアグレッシブな戦略が競合しやすく、弱い攻めデッキになったり、攻めるはずのデッキに守りが優れたカードを採用しないとカードが足りないという状況になってしまっているのではないかと考えました。

2日目のプレイヤーは卓内のプレイヤーと協調して強いデッキを組んだり、どっしりとしたコントロールデッキなども巧みにプレイできる人が多く、そこに自分が飛び込んでアグレッシブなデッキを組んで好成績を出せていただけなのかもしれません。

結果として、型にハマったときだけドラフトで好成績を出せる運頼りのプレイヤーになってしまっていると気づいたのです。

今後はコントロールのようなどっしりと構えるデッキもうまく組めるように練習から意識していかなくてはいけません。次のプロツアーまでには『リミテッド神挑戦者決定戦』などもありますし、3月はリミテッド強化月間として今以上に頻繁にリミテッドをプレイしていこうと思います。

構築についての反省

恩寵の重装歩兵第10管区の軍団兵祖先の怒り

今回のボロスヒロイックを選んだことは構築はかなりの枚数が違うとはいえ、準優勝デッキだったことを考えても悪くはない選択は取れたと思います。

ただ、デッキ選択の過程は最悪でした。もしも『Pioneer Challenge』でこのデッキが目立つ活躍をしていなかったら、選択できなかったと思います。正直この大会に向けた練習を始める前は、ラクドスミッドレンジをおそらくこのプロツアーで使うのだろうと思っていました。途中でラクドスの立ち位置がまずいということがわかってからは、パニックとまでは言いませんが「使えるデッキがない!まずい!」と慌ててしまいました。

準備期間がもう少しあればイゼットフェニックスを回したりする時間もあったかもしれませんが、もっとプレイするデッキに幅があったり選択肢が多ければ良かったのかもしれません。

おまけ

シカゴのごはん、肉!

アメリカのごはんは美味しいですが、さすがに毎日こういうごはんを食べているとだんだん納豆ご飯とか卵かけご飯、お味噌汁とかそういうのが恋しくなってきます。日本にいるときもラーメンが好きだからといっても毎日ラーメンを食べるわけではありません。でも、今回はいっぱいピザを食べてきました。

アメリカではあまり売っていないお茶やインスタントのみそ汁、カップ麺などは預け荷物には入れていくことができるので、日本からプロツアーに参加される方でいつもと同じようなものを口にしたい方は、そういうものを持ち込むのも手かもしれません。

自分は2Lのお茶数本500mlのお茶を滞在日数分持っていくことが多いです。おすすめです。

次回プロツアーでは9勝できなければ、コロナ禍があけてからのプロツアー連続参戦が途切れてしまうので正念場です。気合を入れて頑張ります!

次回はスタンダード+ドラフトです。スタンダードは9月の『世界選手権』からプレイしていないので、近日中に配信でやっていこうと思います。3月末の『スタンダード神挑戦者決定戦』にも参加する予定です!

ほかにも3月は『モダン神挑戦者決定戦』『リミテッド神挑戦者決定戦』と競技的なイベントが目白押しなので楽しみです!ここまで読んでいただきありがとうございました。また次回の記事でお会いしましょう!それでは!

松浦 拓海 (X/Twitch)

この記事内で掲載されたカード

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松浦 拓海 プロツアー『霊気紛争』でプロシーンにデビュー。 アグロデッキを得意とし、そのスタイルに磨きがかかると、2022-2023シーズンでは破竹の勢いで勝利を重ねていく。 エリア予選を赤単アグロで、チャンピオンズカップファイナル サイクル1を白単人間で突破すると、プロツアー・ファイレクシアでも同じく白単人間で自身初となるトップ4に入賞。店舗予選から一気に世界選手権の権利まで獲得し、スター選手の仲間入りを果たす。 また、同シーズンの全プロツアーで2日目に進出しており、安定感のある実力者であることを証明した。 松浦 拓海の記事はこちら