はじめに
みなさん、こんにちは。晴れる屋メディアの紳さんです。
先日、マジック公式から禁止制限告知の記事が発表され、モダンで《暴力的な突発》が禁止に、ヴィンテージで《思案》が制限解除となりました。
その記事内でマジック公式が収集したデータをもとに各フォーマットの健全さについて個別に掘り下げる内容の文章があり、一部抜粋させていただくと、
この1年間、テーブルトップのスタンダードのプレイヤー数は増加傾向にあり、先週はコロナ禍以降で最も高い数字を記録しました。その週のスタンダードにおける「総参加者数」(イベントへの参加人数)は、昨年同時期の3倍を超えていたのです。
スタンダードは今、テーブルトップの60枚デッキ・フォーマットで最も多くプレイされているものに返り咲いています!(もちろんデジタルで最もプレイされているフォーマットの座も守っています!)この場をお借りして、プレイヤーの皆さんと店舗の皆さんに感謝の気持ちを申し上げます。スタンダードを探検していただき、そしてその面白さに気づいていただきありがとうございます!
とのことで、なんと正式にスタンダードがマジックにおける人気No.1フォーマットであることが判明いたしました!ありがとうございます!
いつも記事を読んでくれているみなさまにも、感謝の気持ちでいっぱいです。それでは、最新のスタンダード大会結果をチェックしていきましょう!
3/9(土)『Standard Challenge 32』
まずは60名が参加した『Standard Challenge 32』の結果です。
『Standard Challenge 32』大会結果
優勝 ゴルガリミッドレンジ
準優勝 アゾリウスコントロール
3位 エスパーミッドレンジ
4位 版図ランプ
5位 エスパーミッドレンジ
6位 エスパーミッドレンジ
7位 アラーラへの侵攻コンボ
8位 赤単
【入賞デッキリスト】
最近、アゾリウスコントロールの台頭によって版図ランプが厳しい立ち位置となっておりましたが、今大会で入賞したリストのように《イモデーンの徴募兵》をピン挿しする秘策によって相性が改善されております。
《一時的封鎖》や《太陽降下》を手札に抱えたアゾリウスコントロール側はついつい《群れの渡り》を通してしまいがちです。しかし、これを通してしまうと《魂の洞窟》から打ち消されない《イモデーンの徴募兵》が唱えられ、途端に大ピンチを迎えます。
このリストが出回ったことにより、《群れの渡り》はいまやマストカウンターの呪文となりました。メタゲームがまた少し版図ランプ有利に傾きかけています。
しかし、コントロール&ランプというトップメタを真っ向から打ち破って優勝したのがゴルガリミッドレンジでした。
優勝 「ゴルガリミッドレンジ」
優勝したリストがこちらです。
追放されない限り、永続的にリソースを稼ぎつづける《苔森の戦慄騎士》はゴルガリミッドレンジの代名詞です。ほかにも4枚採用されたミシュラランドや《ギックスの命令》によるクリーチャー回収など、このデッキの強みはリソースがなかなか尽きないことにあります。
- 2024/1/26
- ゴルガリミッドレンジ -3マナ域のクリーチャーが最強クラス!-
- 晴れる屋メディアチーム
グッドスタッフが自慢のゴルガリミッドレンジですが、最近のリストではサイドの定番カードであった《温厚な襞背》のメイン採用が主流になりつつあります。
《温厚な襞背》は置き物破壊+墓地追放+ライフ回復のすべてをこなせる、とても器用なクリーチャーです。能力をフル活用するためには多くの緑マナが必要ですが、2色であるゴルガリミッドレンジは緑が濃いマナベースにしてもそこまで不具合がなく、《温厚な襞背》を強く使うことができます。
メインから「できないことがほぼない」状態でありながら、サイドボード後はコントロール対策、アグロ対策、ランプ対策とチューニングの幅が広く、どんなデッキに対しても対等以上に戦うことができます。
「すべてのデッキにチャンスがある」とされている今のスタンダードで、もっとも「丸い」デッキなのかもしれませんね。ゴルガリミッドレンジが板、と呼ばれる日は近そうです。
注目デッキ 「アラーラへの侵攻コンボ」
7位に入賞したアラーラへの侵攻コンボはとても斬新なリストでした。
《養育する鋸背》を4枚採用し、2ターン目に意地でも3枚目の土地をもってくる構えを見せています。これまで《大狸》が採用されていた枠ですが、《墓所の冒涜者》で《アラーラへの侵攻》を確実に裏返すためには墓地から追放するカードが7マナ以上であることが大切で、《養育する鋸背》はその点をクリアしています。
《大狸》による3→5マナへのジャンプアップを諦めることになりますが、2ターン目にできるアクションが増えること、3ターン目に《嘶くカルノサウルス》を除去として使いたい場面も多いことから、従来のリストよりもデッキとしての安定性は増した印象です。
また、これまでは《アラーラへの侵攻》から確実に《木苺の使い魔》(《初めてのお使い》)が繋がる構築でしたが、今回入賞したリストはそれも諦めて《間の悪い爆発》が引っかかるようになっています。
《群れの希望、アーリン》はピン挿しなので、《初めてのお使い》か《間の悪い爆発》のどちらかは確実に唱えられるのですが、《間の悪い爆発》では《アラーラへの侵攻》を裏返すことができません。
一方で、4ターン目に《間の悪い爆発》による全体除去が可能になったのは大きな変化です。コントロール相手にはドローとしても使えますし、より多くのデッキに対応しようとした結果、コンボ要素を薄くする判断にいたったのでしょう。
また、サイドボードの《緊急の検死》は注目の一枚です。最大で1対4交換ができるパワーカードで、性能を活かすためには「証拠収集」用に墓地を肥やす必要がありますが、このデッキであれば造作もないことでしょう。
実はこのデッキ、強力なコンボを内蔵しつつ、ロングゲームになれば順番にカードを叩きつけるだけでも強いデッキです。
デッキ全体のカードパワーは屈指で、アグロデッキとの相性さえ改善できればメタゲーム上位に喰いこむ可能性は大いにあります。スタンダードでは数少ないコンボデッキであり、今後も台風の目となるでしょうか。
3/10(日)『Standard Challenge 64』
つづいて86名が参加した『Standard Challenge 64』の結果です。
『Standard Challenge 64』大会結果
優勝 ディミーアミッドレンジ
準優勝 版図ランプ
3位 エスパーミッドレンジ
4位 アゾリウスコントロール
5位 ボロス召集
6位 ディミーアミッドレンジ
7位 ゴルガリミッドレンジ
8位 エスパーミッドレンジ
【入賞デッキリスト】
優勝はディミーアミッドレンジ、準優勝は例の《イモデーンの徴募兵》を採用した版図ランプでした。
優勝 「ディミーアミッドレンジ」
『カルロフ邸殺人事件』発売後すぐに《謎めいた外套》が採用されたディミーアミッドレンジが入賞していましたが、最新のリストは《謎めいた外套》が抜けて、より洗練されたリストとなっています。
除去で対処されにくく、ブロックされない3点クロックである《謎めいた外套》は強力なカードに思えますが、《かき消し》を構えるためには3マナが少し重かったのでしょうか。そもそも飛行クリーチャーが多いため、ブロックされないという付加価値がそれほど高くないのかもしれません。
- 2024/3/7
- ディミーアミッドレンジ -ブロックできない恐怖を叩きつける!-
- 晴れる屋メディアチーム
以前の《謎めいた外套》が採用されたリストについては、過去記事をご確認いただけますと幸いです。
さて、最新のリストですが、打ち消しと除去の枚数を増やすことで、より盤面が維持しやすい鉄壁の構築となっております。
より冷たく、クロックパーミッションを完遂できそうですね。
サイドボードには1枚挿しで劇的にささるようなカードが多く採用され、リスト公開制の大会では「過剰にケア」をさせることもできるため、より高い効果を発揮しそうです。
ディミーアミッドレンジは置き物破壊ができない代わりに、ハンデスと打ち消しである程度の対処が可能です。デッキの安定性(動きの再現度)はピカイチで、ゴルガリミッドレンジと並ぶ「丸い」デッキとして今後も活躍が期待されます。
2/24(土)『Chicago 75K Standard Open』
最後に、511名が参加した賞金制の大型大会『Chicago 75K Standard Open』の結果です。
『Chicago 75K Standard Open』大会結果
優勝 スゥルタイランプ
準優勝 アゾリウスコントロール
トップ4 スゥルタイリアニメイト
トップ4 アゾリウスコントロール
トップ8 版図ランプ
トップ8 ディミーアミッドレンジ
トップ8 エスパーミッドレンジ
トップ8 エスパーミッドレンジ
【大会結果はこちら】
優勝 『スゥルタイランプ』
優勝したスゥルタイランプのリストがこちらです。
序盤からオートフェッチランドをプレイし、《事件現場の分析者》や《見事な再生》で墓地から再び出すという動きを繰り返すと、マナ加速しながら墓地に土地をたくさん貯めるという不思議な動きを実現させます。
デッキが68枚という構築ですが、繰り返し戦場に出るオートフェッチランドによってライブラリー内の基本土地を安定して戦場に出すため、土地の枚数をギリギリまで調整した結果でしょうか。
実際はライブラリー内の基本土地の数がどんどん減っていくため、60枚デッキと使用感が大きく違うわけではなさそうです。
さて、このデッキではサイズがすぐに大きくなる《大スライム、スローグルク》はフィニッシャー足りえる性能です。ただし、ゲームプランとしては殴って勝つよりも土地コンボを狙うのが本線となります。
《見捨てられたぬかるみ、竹沼》の「魂力」によって《事件現場の分析者》を何度も使いまわしながら、《復活した精霊信者、ニッサ》の「上陸」コンボを成立させます。
「上陸」コンボをしながらも、オートフェッチランドが再び墓地に落ちることで《大スライム、スローグルク》に+1/+1カウンターが乗ります。これにより《大スライム、スローグルク》が戦場と手札を往復することができ、最終的には無限マナ&無限に《見捨てられたぬかるみ、竹沼》の能力が起動できる状態になるため、《完成化した精神、ジェイス》でライブラリーアウト勝ちを狙います。
クリーチャーコンボであるため、仮に除去でコンボを防がれても《見捨てられたぬかるみ、竹沼》で再びコンボパーツを回収できるところが戦略として優れていますね!
問題はゲームを決めるまでの速度です。いかに序盤の脅威をしのいでコンボ成立までの時間を稼ぐか、が課題となります。メインとサイドあわせて3枚採用された《恐怖の潮流》はこのデッキにおいてほぼ《滅び》のような性能を発揮できるのが強みでしょうか。
また、墓地対策は天敵ですが《未認可霊柩車》なら《耐え抜くもの、母聖樹》で対処ができます。《温厚な襞背》や《クチルの側衛》のような1度だけの墓地対策は、《見捨てられたぬかるみ、竹沼》などで再び墓地を肥やすことで準備のやり直しができそうです。
とてもユニークな構築でありながら、511名が参加した賞金制の大型大会で優勝という実績がただのイロモノデッキでないことを裏付けています。
《偉大なる統一者、アトラクサ》という第二の勝ち筋もあり、意外と堅実に勝てる構築だと感じました。スタンダードに無限の可能性を感じさせるデッキですね!
おわりに
公式の発表にもありましたが、スタンダードに再び活気が戻ってきました!
なによりも、新しい試み、新しいデッキが着々と生まれ、しっかり大会で活躍している現状が嬉しいですね。
そろそろ《不気味な船長の玉座》デッキをみんなで考えてみませんか?(提案)
次回の大会結果もお楽しみに! それではまた。