Translated by Takumi Yamasaki
(掲載日 2024/3/12)
はじめに
《暴力的な突発》がモダンで禁止になりました。
この変更は多くのプレイヤーが長い間望んでいたものです。「続唱」デッキはリビングエンドやカスケードクラッシュなども含めて、モダンのメタゲームの30%以上を占めることが多く、プレイヤーのサイドボードにそれなりのストレスを与えていました。
ただ、このタイミングでの変更は少し変かもしれません。なにせ、フォーマットを再びひっくり返すであろう『モダンホライゾン3』の発売まであと数か月ですからね。とはいえ、こうなってしまったのは事実です。
さて、《暴力的な突発》が禁止になったことでなにが変わるのでしょうか?
続唱デッキの未来は?
今回の禁止制限告知では、昨年12月に《激情》を禁止にしたことを引き合いに出し、ラクドス想起を弱体化させながらも真っ当な選択肢としてメタゲームに残したことを挙げています。
私も含め一部のプレイヤーは、「想起」+「不死」系カードのコンボを1種類のインカーネーションだけで運用できるのか懐疑的でした。しかしその考えは、翌週末の『Grand Open Qualifier Barcelona 2023』で弱体化したはずのラクドス想起が優勝したことですぐに間違いだと証明されます。
とすると、ある疑問が頭に浮かんできます。「続唱デッキは単純にモダンから消えてしまうのか?」。それとも、「カードパワーの劣る《献身的な嘆願》(あるいは《悪魔の戦慄》)に適応した構築になるのか?」といった疑問です。
後者になる可能性はかなり高いでしょう。続唱デッキがこれで見納めになるとは思いません。実際、モダンの多くのマッチアップでは、《暴力的な突発》をインスタント・タイミングで唱えることにそれほど大きな意味を持ちません。ゴルガリヨーグモスやアミュレットタイタン、ラクドス想起などを思い浮かべてみてください。
もちろん、《献身的な嘆願》と入れ替えることは、デッキが弱体化していることに変わりありませんが、続唱デッキをメタゲームの頂点から奈落の底へ突き落とすほどの差にはならないでしょう。
状況が大きく変わるのは青いデッキとのマッチアップです。対戦相手が《対抗呪文》を構えている場合、それを回避するためにできることはもうありません。
《暴力的な突発》を構えてターンを返すことができず、相手のエンド時に《暴力的な突発》から《断片無き工作員》といった動きもできないのです。また、続唱から呪文を解決させるための《否定の力》もバックアップとして使えません。
一方、対戦相手の《否定の力》は、こちらの続唱呪文に対して常ににらみを利かせることになります。おそらく《否定の力》は、本来あるべき完全な受けのカードに変わることでしょう!《神秘の論争》は依然として便利なカードですが、単に自分の《死せる生》を解決しようとプランを立てるのは簡単ではなさそうです。
総合的に見て、カスケードクラッシュはミッドレンジデッキです。打ち消しを使うデッキに対して負けすぎてしまうことは許容できず、デッキ構築に犠牲を払う必要があるでしょう。しかし、《衝撃の足音》を《対抗呪文》とトレードしても、打ち消しを撃たざるを得ないような単体で強力なカード(通常キャストした《孤独》が思い浮かびました)があれば、ゲームオーバーにはなりません。
ドメインカスケードの場合は、マナベースをほとんど変更することなく《献身的な嘆願》を採用できますし、《献身的な嘆願》自体もピッチコストの白カウントを増やすのに役立ちます。
直感的に、リビングエンドは禁止改定によって深刻な被害を受けるでしょう。カスケードクラッシュと違って、リビングエンドはより浮き沈みが激しいデッキであり、《死せる生》を解決せずにゲームに勝つのは本当に難しいと思います。
《北方の大鷲》が《オリファント》ほどの脅威ではないとはいえ、マナベースをティムールからバントに切り替えるのは、そこまで問題ではないでしょう。《ガラス塵の大男》は、《孤独》を採用したければ使用可能なサイクリング・クリーチャーです。リビングエンドがクリーチャーデッキに苦戦するデッキではないことは周知ですが、より長いゲームを戦う必要があるなら、《孤独》を入れるのはそれなりのメリットがあります。
リビングエンドが一線級のデッキであり続けるために最も重要なのは、打ち消しを使うデッキに勝つプランです。パッと考えた限りでは、どのように取り組んでいいのかも分かりませんし、それが可能かどうかも分かりません。
過去にリビングエンドを使っていたときは、《緻密》や《忍耐》《厚かましい借り手》、そしてときには《夜群れの伏兵》などを一緒にしたサイドボードプランを使うこともありました。しかし、このプランもまた対戦相手が《暴力的な突発》をケアして絶対にタップアウトしないことに大きく依存していたのです。
おそらく、サイドボードの《時を解す者、テフェリー》は、対戦相手の打ち消しを消耗させるのに役立つかもしれません。
すべてをまとめると、カスケードクラッシュは一線級のデッキ(前よりは強くない)であり続けると予想しています。リビングエンドも存在し続ける道を見つけるかもしれませんが、あまり楽観視しておらず、別の続唱デッキである《明日の瞥見》に追いやられるかもしれません。
メタゲームにおける一般的な位置づけとしては、「ゲームに勝利できる3マナ呪文」と「マナのかからない妨害呪文」の組み合わせは、青以外のデッキに対する勝利の方程式であることに変わりないでしょう。
続唱デッキを使ってきたプレイヤーは、これまで当たり前だった多くの前提を一から考え直す必要があります。たとえば、続唱呪文のバックアップとして機能しないのに、それでも《否定の力》を4枚メインデッキにいれるのは賢明なことでしょうか?
新たなモダンで私が選ぶデッキは……
この禁止改定についてひとつ面白いことがあります。続唱デッキは『モダンホライゾン2』以来、常にトップティアのデッキとして君臨してきた豊かな歴史がありますが、禁止改定の直前の週末には、代わりにエスパー御霊が主役となっていました。
エスパー御霊
このデッキは『カルロフ邸殺人事件』登場後から徐々に人気を集め、最近のマジック・オンラインでは、このアーキタイプを選択するプレイヤーで溢れかえっています。諜報ランドは、能動的な1マナの動きがあまりなく、墓地を有効活用するデッキに信じられないような追加効果をもたらしました。
強いデッキに見えますが、このデッキの寿命とメタゲームにおけるポジションの全容は、《暴力的な突発》が禁止される前からよく分かりませんでした。ただ、私はエスパー御霊を念頭に置き、たとえリビングエンドの数が減ると予想したとしても、墓地対策を減らすことはないでしょう。
アミュレットタイタン
さて、私が新たなモダンで選択するデッキは何でしょうか?私は己の信念を貫いています。去年の秋からアミュレットタイタンに熱心なプレイヤーであり、《暴力的な突発》がなくなったことで、このデッキのポジションは向上するはずです。続唱デッキとのマッチアップは、ときに険しいものでした。
《断片無き工作員》も《献身的な嘆願》も赤いカードではないので、今後のカスケードクラッシュが《血染めの月》や《月の大魔術師》を使う可能性は低いでしょう。
私のリストの出発点は、あまり前のものと変わりません。もしカスケードクラッシュがあまりプレイされなくなったら、《嵐の怒り》を抜いて、赤マナの負担が少ない《月の大魔術師》への解答を採用するでしょう。そうなった場合は、サイドボード全体を再構築する必要があります(その前に、私が直面している問題を正確に把握しなければなりませんが)。
確信しているのは、エスパー御霊の人気が続く限り《掘り返し》を使い続けるということです。《御霊の復讐》に対する完璧な解答であり、フラッシュバックによって手札破壊にも耐性があります。
いずれにしてもアミュレットタイタンは、次に参加予定であるテーブルトップの大型イベント『Legacy European Tour』で、間違いなく私の武器になることでしょう。
おわりに
プレイ・デザイン・チームのメンバーが、《暴力的な突発》の禁止について説明する「Weekly MTG」の配信が予定されています(※編注:配信はすでに終了しています)。禁止リストを作成する際にあたっての彼らの考えや目標について、私たちに見解をしめしてくれることに期待しています。
この記事を書いている時点では、残念ながら配信を観れていませんが、彼らがどんなことを話すのか非常に興味があります。
いつものことですが、私はモダンというフォーマットをに飛び込み、探求し続けることにワクワクしています。それでは、新たなモダンでお会いしましょう。