USA Legacy Express vol.231 -来たる、ディミーアリアニメイト時代-

Kenta Hiroki

はじめに

みなさん、こんにちは。

気になる先日の禁止改定でしたが、結果はノーチェンジでした。多くのデッキで採用されている《悲嘆》《オークの弓使い》あたりが禁止になるのではと噂されていましたが、昨年のIzzet DelverとInitiativeの2強環境と異なり、複数のデッキが活躍している環境なので妥当な判断だと思います。

さて、今回の連載では『第25期レガシー神挑戦者決定戦』『Legacy Qualifier』『$5K Legacy – SCG CON Philadelphia』の入賞デッキを見ていきたいと思います。

第25期レガシー神挑戦者決定戦
珍しいコンボデッキ

開催日:2024年2月24日

優勝 Selesnya Depths

準優勝 Wizard Shift

3位 Sultai Beans

4位 ANT

5位 Temur Rhinos

6位 Death and Taxes

7位 Temur Delver

8位 Dimir Reanimator

トップ8デッキリスト

MOでついに実装された《聖カトリーヌの凱旋》や、今大会直前にMOのイベントで結果を残していたDimir Reanimatorが話題になっている中で開催された『第25期レガシー神挑戦者決定戦』は、参加者233名と大盛況でした。

プレイオフに入賞したすべてのデッキが異なるアーキタイプとなっており、神決定戦ではレガシー神の廣田 貴志選手がDimir Reanimatorを使用し、見事に神の座の防衛を果たしました。

デッキ紹介

Wizard Shift

今大会で最も印象に残ったデッキは、準優勝の千葉 達也氏が使用していたWizard Shiftでした。

パラダイム・シフトタッサの神託者

カウンターで相手の脅威を捌きつつ《パラダイム・シフト》でデッキ内のほとんどのカードを追放し、《タッサの神託者》で勝利するのがこのデッキの主な勝ち手段になります。

青単でデュアルランドを使用しないため比較的リーズナブルで、基本地形が多めなので《不毛の大地》《血染めの月》などアンチ特殊地形カードにも耐性があります。

☆注目ポイント

タッサの神託者Patron Wizard罠の橋

コンボパーツの《タッサの神託者》がウィザードなので、《守護ウィザード》による同族シナジーを得ることができます。《守護ウィザード》自身がトリプルシンボルであり、ほかにウィザードクリーチャーが複数ならんだ状態であれば、《パラダイム・シフト》を唱えずとも《タッサの神託者》の能力で勝利可能です。

デッキによってはサイドの《罠の橋》で攻撃を止めつつ、時間を稼いでコンボを決めることができます。

Spellstutter Spriteもみ消し

軽いスペルの多いレガシーでは、《呪文づまりのスプライト》単体でも優秀なカウンターとして十分機能します。ウィザードなので、場に出た後も《守護ウィザード》とともに相手を牽制し続けることができます。

最近Grixis Delverなどでも採用されている《もみ消し》が、このデッキでも採用されています。フェッチランドの起動を打ち消して相手のマナ基盤を攻める使い方以外に、「奇跡」や《力線の束縛》《悲嘆》《タッサの神託者》などさまざまな誘発能力を打ち消せるので、現環境では腐りにくいカードになります。

Legacy Qualifier 2/29
『統率者デッキ:Warhammer 40,000』のあのカードが入賞

開催日:2024年2月29日

優勝 Lands

準優勝 Dimir Reanimator

3位 Temur Delver

4位 Grixis Delver

5位 Goblins

6位 Mono Red Prison

7位 Dimir Reanimator

8位 Welder Combo

トップ8デッキリスト

MOで開催された『Legacy Qualifier』が参加者162名で行われました。

現環境のトップメタのDimir Reanimatorが今大会でも一番人気で、高い勝率を維持していました。ほかにはGrixis Delver、Temur Delver、Goblinsなども健闘しています。

デッキ紹介

Temur Delver

JPA93はSneak and Showを得意としているプレイヤーですが、今大会はTemur Delverを選択していました。Temur Delverとカテゴライズされていますが、緑はメインの2枚の《探索するドルイド》のみと軽いタッチになっています。

Grixis Delverと異なり《オークの弓使い》が使えないので、相手の《オークの弓使い》を処理しにくいのが弱点になります。しかし、今大会で結果を残していたLandsやMono Red Prison、Dark Depthsなどには《オークの弓使い》がそこまで強くないので、それらのデッキが多くなりそうな環境ではTemur Delverも選択肢に入ります。

☆注目ポイント

轟音の滝

『カルロフ邸殺人事件』から登場した「諜報」ランドはDelverでも使える土地のようです。テンポデッキにとってタップインは使いにくい印象がありますが、必要なカードを探しつつ《ドラゴンの怒りの媒介者》を早い段階から強化したり、《濁浪の執政》の「探査」の助けになります。

相殺

メインとサイドに1枚ずつ採用されている《相殺》は、同型やReanimator、Dimir Scam、Beans Controlとのマッチアップで有効で、特にReanimatorやDelverがポピュラーな現環境ではメインからの採用も頷けます。

Reanimator

配信者であるArk4nは、Dimir Reanimatorを使い続けているプレイヤーです。《悲嘆》《再活性》パッケージは現在のレガシーで幅を利かせており、Dimir Scamをよりリアニメイト戦略に寄せたバージョンが現在のDimir Reanimatorになります。

Reanimatorは常にトップメタに近い立ち位置におり、禁止改定による影響も受けず最近セットからの新戦力に恵まれています。

墓地対策されると厳しくなるときもありますが、それを乗り越えられる強さのデッキであり、特に最近では《濁浪の執政》《オークの弓使い》を採用し、墓地対策されてもハンデスやカウンターでバックアップしつつクリーチャーで殴り切るという選択肢も持ち合わせているため対策が困難になっています。

☆注目ポイント

塵へのしがみつき基本に帰れ

現環境に多い同型戦のためにメインから《塵へのしがみつき》が採用されています。最悪キャントリップスペルとしても機能し、《悲嘆》をピッチでプレイするためのコストにも使えるので腐りにくいスペルになります。

LandsやBeans Controlとのマッチアップも意識していたようで、基本地形が多めに採用されており、サイドには《基本に帰れ》でロックするプランも用意されています。

ダウスィーの虚空歩き厚かましい借り手

黒赤型と異なり青黒は《ダウスィーの虚空歩き》《厚かましい借り手》が投入され、サイド後にリアニメイトプランからDimir Scamに変形できる強みがあります。

Welder Combo

Chaos Defiler

《聖カトリーヌの凱旋》と同様に、《ケイオス・ディファイラー》もMOでの実装が望まれていた『統率者デッキ:Warhammer 40,000』のカードでした。

アガサの魂の大釜Phyrexian Devourer歩行バリスタ

《アガサの魂の大釜》《Phyrexian Devourer》《歩行バリスタ》のコンボで、《歩行バリスタ》《Phyrexian Devourer》の起動型能力によって+1/+1カウンターを増やして相手を瞬殺するのが、このデッキの主な勝ち手段になります。また《オークの弓使い》《舷側砲の砲撃手》など、コンボ以外の勝ち手段も用意されています。

☆注目ポイント

Goblin Engineer

《Phyrexian Devourer》《歩行バリスタ》といったキーカードを墓地に置ける《ゴブリンの技師》は、このデッキにフィットしたサーチスペルとして機能します。《アガサの魂の大釜》が場にある状態で《Phyrexian Devourer》をサーチすれば、即座に《ゴブリンの技師》を強化することができます。

Chaos Defilerゴブリンの溶接工

《ケイオス・ディファイラー》《ゴブリンの溶接工》を採用したデッキにマッチしたクリーチャーで、黒赤にとって触りにくいパーマネントも処理できるので重宝します。《ゴブリンの溶接工》の能力で数回使いまわすことで、相手をロックすることが可能です。

$5K Legacy – SCG CON Philadelphia
《オークの弓使い》多数

開催日:2024年3月10日

優勝 Grixis Delver

準優勝 Dimir Reanimator

3位 Domain Beans

4位 Dimir Reanimator

5位 Dimir Reanimator

6位 Dimir Reanimator

7位 TES

8位 ANT

トップ8デッキリスト

先週末にアメリカ・フィラデルフィアで開催された『$5K Legacy – SCG CON Philadelphia』は、参加者217名と大盛況でした。

今大会でプレイオフに入賞した半数がDimir Reanimatorで、優勝したGrixis Delverも含めると8名中5名が《オークの弓使い》デッキでした。

デッキ紹介

Domain Beans

ようやくMOに《聖カトリーヌの凱旋》が実装されたことで、多色コントロールの研究がさらに進むと思われましたが、ほぼ同時期に台頭してきたDimir Reanimatorとの相性が悪かったこともあり、あまり結果を出すことができませんでした。

しかし、モダンのDomain Zooなどで使われている《ギルドパクトの力線》《ドラコの末裔》のコンボを搭載した多色コントロールが入賞しています。

☆注目ポイント

ギルドパクトの力線意志の力

《ギルドパクトの力線》はマナ基盤の安定性を向上させつつ、《ドラコの末裔》を2ターン目にプレイしたり、常に《力線の束縛》を1マナでプレイすることを可能にします。

あとから手札に来てしまった《ギルドパクトの力線》も、《意志の力》《否定の力》《孤独》などモダンよりもピッチスペルのラインナップが充実しているレガシーでは腐りにくく、マッチアップによっては《意志の力》のために初手に来ても場に出さずキープする選択肢もあります。

聖カトリーヌの凱旋濁浪の執政ドラコの末裔

《ドラコの末裔》《聖カトリーヌの凱旋》など本来のマナコストよりも少ないマナでプレイできるフィニッシャーに恵まれているため、ほかのコントロールと異なり速やかにゲームを決めやすく、引き分けが発生しにくい構成になっています。

総括

Dimir Reanimatorが現在のレガシーの環境を支配していますが、Mono Red PrisonやGrixis Delverなども健闘しています。

地底街の下水道ギルドパクトの力線Doorkeeper Thrull

諜報ランドや《ギルドパクトの力線》《門衛のスラル》など『カルロフ邸殺人事件』のカードも複数使われており、特に諜報ランドはさまざまなデッキに採用されています。

USA Legacy Express vol.231は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!

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Kenta Hiroki アメリカ在住のプレイヤー。 フォーマットを問わず精力的に活動しており、SCGやグランプリの結果などからグローバルな最新情報を隔週で発信する「USA Modern Express」「USA Legacy Express」を連載中。 Kenta Hirokiの記事はこちら