はじめに
みなさん、こんにちは。晴れる屋メディアの紳さんです。
芸術の世界に「ミューズ」という言葉があります。現代ではファッション業界などでおもに使われ、「デザイナーにインスピレーションを与える存在(モチーフ)」を表す言葉です。語源はギリシャ神話に登場する9人姉妹の芸術の女神、「Muse(ミューズ)]といわれています。
マジックの世界にもデッキ創作意欲を掻き立てる強烈なカードの存在があり、魅力にあふれています。それらはまさにデッキビルダーにとってのミューズと呼べるのではないでしょうか。
それでは、最新のスタンダード大会結果をチェックしていきましょう!
3/16(土)『Standard Challenge 32』
まずは88名が参加した『Standard Challenge 32』の結果です。
『Standard Challenge 32』大会結果
優勝 ボロス召集
準優勝 リアニメイト
3位 ティムールランプ
4位 ディミーアコントロール
5位 ディミーアコントロール
6位 アゾリウスコントロール
7位 ボロス召集
8位 白単
【入賞デッキリスト】
珍しくミッドレンジデッキが入賞せず、優勝したのはボロス召集です。
今回は入賞したデッキの内、特に気になった3つのデッキを紹介します。
準優勝 「リアニメイト」
準優勝したリアニメイトのリストがこちらです。
おなじみの《陰謀の解明者》と《多元宇宙の突破》パッケージをフル投入しつつ、《犯行現場の再現》は最速4ターン目に《偉大なる統一者、アトラクサ》のコピー・トークンを戦場に出す動きが狙えます。
ルーター能力をもちながら、将来的に2/3飛行クリーチャーになる《当世》は面白いアプローチで、《漆月魁渡》をただのルーター役からドローソースへ昇格させる狙いがあります。また、《蒐集家の保管庫》はルーターしながらマナ加速を実現するキーカードです。
軽量除去と打ち消しで序盤をなんとか凌ぎ、後半のビッグターンに望みをつなぎます。タップ状態のクリーチャー限定ですが、《押し出し/引き抜き》も2マナの除去です。
また、基本的にはディミーアカラーのデッキですが、諜報ランドとして《迷路庭園》と《行き届いた書庫》が採用されているため、終盤は《偉大なる統一者、アトラクサ》を手札から唱えることも可能です。特に墓地対策をされるサイド後に素キャストする展開が多くなることでしょう。
コンボデッキの天敵であるコントロールに対しては、サイドからハンデスと打ち消しを投入することで対抗します。
やや気になる点は、現スタンダード環境で必須と思われる軽量全体除去が不採用であることです。デッキリストを見まわしてもボロス召集に対抗しうるカードがなく、《偉大なる統一者、アトラクサ》のコピーを早期ターンに着地させることで勝機を見出す考えなのかもしれません。
これまで実績がなかった《犯行現場の再現》を4枚採用して準優勝という結果は素晴らしいですね!
注目デッキ 「ティムールランプ」
3位入賞という成績を残した新型のティムールランプのリストです。
オートフェッチランドと《事件現場の分析者》《復活した精霊信者、ニッサ》の組み合わせを見ると以前の記事で紹介したスゥルタイランプと似たデッキに思えますが、採用されているカードがまるで違います。
- 2024/03/14
- スゥルタイランプ -リソースと「可能性」どちらも無限な土地コンボ!-
- 晴れる屋メディアチーム
《世界魂の憤怒》はクリーチャー除去をしながらランプができるカードで、《見事な再生》と比べると安定感があります。さらに《強靭の徳目》が着地したあとはフィニッシュ手段にもなる優秀なX点火力です。
また、《強靭の徳目》の出来事面は墓地に落ちた《樹海の幻想家、しげ樹》を回収できるため、追放されない限りは半永久的にリソースを獲得することができるコンボ要素があります。
4枚フル投入された《間の悪い爆発》は全体除去兼ドローソースとして重宝します。《記憶の氾濫》はコントロールや版図ランプ相手に堂々とリソース勝負を挑めるパワーカードで、総合的にミッドレンジ・コントロール・ランプ相手に強く立ち回ることができるデッキ構成です。
残るはアグロ対策ということになります。
サイドボードの《戦の霧》はあまり見かけないカードですが、クリーチャーデッキに対して無敵の1ターンを与えてくれるようなカードであり、実質的に《時間のねじれ》と同等の効果が見込めます。このカードを見つけてくる着眼点が素晴らしいですね!
また、デッキに赤いカードが採用できるため、ティムールランプでもスゥルタイランプよりはアグロ耐性が高いデッキといえそうです。
オートフェッチランドと《事件現場の分析者》の組み合わせは極めて強力で、ここ最近のランプ系デッキは目覚ましい活躍を見せています。リアニメイトの台頭も視野に入れると、今後はすべてのデッキに墓地対策が必須となるでしょうか。
注目デッキ 「ディミーアコントロール」
少しデッキ構成が違いますが、4位と5位に入賞したディミーアコントロールに注目をしました。
4位入賞のデッキ
5位入賞のデッキ
デッキコンセプトと勝利へのアプローチ方法に関して、この2つのデッキはほぼ同じデッキと考えることができます。
除去と打ち消しが得意なディミーアカラーですが、この色は相手のデッキを弱体化させることにも長けています。
特に全体除去を行いながらキーカードをデッキから根こそぎ追放してしまう《死人に口無し》は強力で、盤面とライブラリーから同時に脅威を取り除くことができる稀有なカードです。
コントロールデッキのミシュラランドが強いことはこれまでにたくさんのデッキが証明してきましたが、《不穏な浅瀬》も例外ではありません。特にこのデッキでは「切削」によってライブラリーを薄くすることが勝利手段にもなりえます。
また、《不穏な浅瀬》はクリーチャー除去でまだ対処可能ですが、《ミレックス》は土地破壊でしか止めることができず、《廃墟の地》や《解体爆破場》を採用していないデッキに対して対処困難な攻めとなります。
サイドから入ってくる《最深の裏切り、アクロゾズ》も強力で、1枚でゲームに勝てる性能ながら追放除去をされない限り止まりません。
かといって、ディミーアコントロール相手に《太陽降下》や《力線の束縛》をデッキから抜かないサイドボーディングも辛いですよね。
ほかにも軸をずらしたサイドボードには幅広いバリエーションがあり、駆け引きでかなり有利に立つことができます。《金属の徒党の種子鮫》のような序盤からプレイできるマスト除去のクリーチャーを採用したり、プレインズウォーカーを追加したり、切削(ミル)要素をさらに高めるのも面白そうです。
打ち消し・除去・手札補充とコントロールに必要な要素が高いレベルで揃っているデッキです。アゾリウスコントロールのように置き物破壊ができない代わりに、相手のデッキを破壊できるというディミーアならではの動きが楽しめます。
《眼識の収集》で相手のデッキから奪ったいろんなカードをプレイしてみたいですね!
3/17(日)『Standard Challenge 64』
つづいて78名が参加した『Standard Challenge 64』の結果です。
『Standard Challenge 64』大会結果
優勝 版図ランプ
準優勝 ボロス召集
3位 ディミーアミッドレンジ
4位 エスパーミッドレンジ
5位 《陰湿な根》コンボ
6位 版図ランプ
7位 エスパーミッドレンジ
8位 ボロス召集
【入賞デッキリスト】
優勝したのは《イモデーンの徴募兵》入りの版図ランプです。また、ボロス召集はここでも準優勝と好調が続きます。
この大会では5位に入賞した《陰湿な根》コンボに注目をしました。
注目デッキ 「《陰湿な根》コンボ」
入賞した《陰湿な根》コンボのリストがこちらです。
「クリーチャーが墓地から離れる」ことが誘発条件の《陰湿な根》は《歓喜する喧嘩屋、タイヴァー》と素晴らしいシナジーを形成します。
《歓喜する喧嘩屋、タイヴァー》の[-2]能力で墓地から戦場にクリーチャーを出すと《陰湿な根》の能力が誘発して植物・トークンが出ますが、《歓喜する喧嘩屋、タイヴァー》の常在型能力によってすぐにマナ能力を起動できるため、出てきたマナで墓地の《瓦礫帯の異端者》を追放してさらに植物・トークンが出す…といった動きでテンポよくアクションを重ねることが可能です。
どんなに植物・トークンが強く成長しても「速攻」がなければ勝てるのは次のターン、と思いきや《アガサの魂の大釜》が戦場にあると話が違います。
《アガサの魂の大釜》で《ヴォルダーレンの興奮探し》を追放すると、すべての植物・トークンが自身を《投げ飛ばし》できるようになるため、マナさえあれば一瞬でライフを削りきることが可能です。
同様の方法で《軽蔑剣の狂戦士》を追放すればドロー能力が、《機能不全ダニ》を追放すれば置き物追放能力が植物・トークンに備わり、対応力がかなり高くなります。
致命的な被害をうける《一時的封鎖》も、戦場に出たときの誘発に合わせて《機能不全ダニ》の能力を起動することで回避可能です。
ちなみに《アガサの魂の大釜》はクリーチャー以外のカードを追放することもできるので、ティムールランプ相手には墓地のオートフェッチランドを追放することでメインから墓地対策ができているという見方もできます。
4枚採用の《アーボーグの奪還》はかなりデッキにフィットしたカードです。クリーチャー回収能力そもそもが《陰湿な根》の能力を誘発させるほか、破壊されたり「切削」によって墓地に落ちた《陰湿な根》もキッカー能力で回収することができるなど、置き物破壊対策にもなります。
このカードのおかげで「切削」が間接的に《陰湿な根》を探す動きにもつながっています。
どうしても《陰湿な根》が見つからなかったり、完全に封じられてしまった場合には《迷いし者の魂》で勝ちにいきます。トランプルがないため攻撃だけで勝つのが難しい局面もありますが、《ヴォルダーレンの興奮探し》の能力で投げ飛ばすことで即死級のダメージを与えることが見込めます。
ちなみに、《歓喜する喧嘩屋、タイヴァー》の能力で戦場に出すとデメリットが帳消しになる点が地味に嬉しいです。
《告別》だけは本当にどうにもなりませんが、トップデッキされない限りは《強迫》で捨てさせるチャンスがあります。
《陰湿な根》を採用したコンボデッキはこれまでにいくつも試作されてきましたが、わりと《陰湿な根》にオールインした構成が多かったように思います。今回入賞したリストは《迷いし者の魂》という第二の勝ち筋が用意されている点が使いやすそうです。
おわりに
なんやかんやボロス召集が強い!さすがのカードパワーですね。
それでも新型のコンボデッキやコントロールなども入賞していて、とても多様性のある環境といえそうです。《陰湿な根》のようなカードにチャンスが増えるとさらに面白くなりそうですね!
次回はどんなデッキが入賞するでしょうか。大会結果をお楽しみに!