第1期ドラフト長決定戦
【翻訳記事】『カルロフ邸殺人事件』よりドラフトおよびセット・ブースターが統合され、新たに「プレイ・ブースター」が登場します。2つのブースターの特徴を受け継いだ本製品形態について、首席デザイナーであるマーク・ローズウォーターよりご説明いたします。 https://t.co/Z1ePr2lJA5 #mtgjp pic.twitter.com/SZ4krVTeRb
— マジック:ザ・ギャザリング (@mtgjp) October 16, 2023
1パックにレア4枚!?
ドラフト・ブースターに代わる新たな製品プレイ・ブースターの登場に世間は動揺した。リミテッドが壊れてしまうのではないか?そう危惧したプレイヤーは少なくなかったのだ。
2月某日、株式会社晴れる屋内のドラフト最強プレイヤー……すなわち”ドラフト長”を決するトーナメントが開催された。
参加資格は晴れる屋に在籍している社員もしくはアルバイトであること。参加費無料でピックしたカードは持ち帰ることができる「取りきり」である。
晴れる屋には「最後のロチェスター・ドラフトチャンプ」にして、日本人2人目のプロツアー覇者である小室修をはじめ、プロツアー経験者が多数在籍している。現社長の岩田太もプロツアー経験者であり、晴れる屋上層部のほとんどは「グランプリ入賞経験アリ」か「グランプリ運営経験アリ」という人物だ。
そんな晴れる屋のスタッフのなかで最強、「ドラフト担当者」となるのは一体誰なのか!
セット・ブースター廃止とともに生まれたプレイ・ブースターでの初のドラフト、その模様をお届けします。
ピックの模様
トレード 酒井
会場には酒井達也。21期~24期スタンダード神である。スタンダード以外の構築フォーマットでも活躍する彼だが、リミテッドはプレイするのだろうか。
「いや、ぜんぜんやらないです。誘われたらやるかなーってくらい。このイベントに誘われて慌てて勉強してきました。なかしゅーさんの記事を読んで」
……晴れる屋メディアとしてはマルシオの記事で勉強していただきたかった。
- 2024/02/17
- マルシオによる『カルロフ邸殺人事件』リミテッドレビュー
- Marcio Carvalho
内心「負けちまえ!」と思いながら、今度は小室修にも目を向ける。トレードチーム責任者として参加は当然だ。
トレード 小室
小室さんはこの環境のドラフト、けっこうやりこんでるんですか?
「ん……えぇ?」
「マジックは1年ぶりくらいかなあ……」
この人たちぜんぜんリミテッドやってない。
「目標は2-1です。マジックは難しいからね。」
謙虚に聞こえる発言だが、さすがにチャンプ、「マジックは難しい」の言葉は重い。ここまで上り詰めるには眠れない夜もあっただろう。
商品管理 富川
一方こちらはリミテッドやる気勢。毎週メンツを集めてドラフトをプレイしています。
「アリーナでもたくさん練習しています。任せてください」
じゃあレア順位取りじゃなくて残念ですね。
「そうなの?じゃあマネーピックでいいかぁ♨」
こいつら……
トレード 北山
そんななかもくもくとピックしているのは北山雅也。「日本選手権07」優勝や、歴代日本選手権優勝経験者を招待して行われた12パックシールド「バトル・オブ・チャンピオン」優勝など、こちらも輝かしい功績を持つプレイヤーだ。
北山さんはこの環境をどうとらえていますか?
「わかんない。この環境をプレイするのは今回が初めてだからね」
「――でも、なんとなくわかったよ」
小室 VS 藤原
広報 藤原(左)
互いにもうひとりの青黒の存在を感じ取っていた二人の対戦。より強いカードをピックできたのはどちらだろうか。
ジムでエアロバイクに乗りながらドラフトをプレイするという藤原。一方小室は「紙のマジックは一年ぶり」。
ゲームの一撃目は藤原の変装クリーチャー。小室、こえーと言いつつテイク。藤原は序盤からテンポよく動き、《泥棒隼の事件》まで着地させる。
小室もやられっぱなしではいない。飛行クロックを《ぬめる双頭ヒル》で強化してアタック!徐々に減っていくお互いのライフ。やや小室が優勢に見えたが、ここで藤原から《死人に口無し》!
「ええー!この環境ラスあんの!?」との小室の悲鳴に対し、藤原は「2枚ありますよ!」
しかし小室は粘り強い。《有刺の給仕》で徐々にハンドを回復させていく。が、藤原、無慈悲の《ドッペルギャング》!《犯罪阻止のスプライト》と《有刺の給仕》のコピー・トークンを2体生成し、またも形勢逆転!
「いやあちょっと・・・ボムが多すぎないですか」
「そっちだって強いレア使ってるでしょ!」
そう、これがレア最大4枚封入のプレイ・ブースターでのリミテッド!
しかし、小室には切札があった。それはドラフトの際にも「このカードが強い環境なら……あるいは」とつぶやいていたカード……《殺害の強要》!
《殺害の強要》で《泡の密輸者》のコントロールをうばう!1/1に弱体化するはずが、カウンターが4つのっており5/5接死!
持ち前のセンスで《殺害の強要》を強く使った小室がゲーム1をとる。
小室 1-0 藤原
第2ゲーム
小室、《聖堂の追跡者》OUT、《唐突な後戻り》をサイドイン。ラスやドッペルギャングを意識したサイドボーディング。
藤原が最初に送り込んだ変装クリーチャーの正体は《神経質な庭師》。先手ながら着実に色マナを確保しつつ土地を伸ばす。
「やっぱりそいつか!この環境分かってきた!」第1ゲームをとった小室、だが、次のターンには絶叫する。
「でかー!なにそれ!」
頼みの綱の《有刺の給仕》も処理され、徐々に追い詰められていく小室。
除去が欲しい小室、《蒸気核の学者》を《脱出の名人》でバウンス。再度ドローをもくろむが、《蒸気核の学者》に《妥当な疑惑》!
「ああーうまぶり失敗!!」
《狩り立てられた暴骨》が止まらず、藤原が勝利!
小室 1-1 藤原
第3ゲーム
「さっきのうまぶりがなければ……普通にやっていれば……」
序盤からタッパーでクロックを進める小室だが、ふたたびあのクリーチャーに苦しめられることに。そう、藤原から《狩り立てられた暴骨》である。
「ああー!またそいつか!」
小室、これは即除去するも、その脇の《泥棒隼の事件》がONに。手掛かり・トークンは4/4飛行になった!
小室の手札には《殺害の強要》があるが……飛行・手掛かりを奪おうにも対応してサクられてしまう。切札が上手く機能しない場面に苦悶。
やむを得ず《殺害の強要》を差し向けるが、当然生け贄に捧げてドロー。この終盤に藤原は手札4、小室は2。4/4を失った藤原は盤面のクリーチャーに未練などない。《死人に口無し》、そしてクリーチャーを2体展開!
変装クリーチャーのアタックに小室悶絶!膝を強くたたきスルー!これは特に問題なかったのだが、藤原の後続は《蜘蛛網の頭、アイゾーニ》!!
しかしここに小室から抱えていた《殺害の強要》!
「えっ2枚目!?」と藤原からも悲鳴。虎の子の《蜘蛛網の頭、アイゾーニ》を失い、ゲームが見えなくなってきたかに見えたが、ここに藤原からも再び《狩り立てられた暴骨》!
「えっ2枚目!?」
威迫は止まらない!みごとに押し込んだ藤原の勝利!日々のプレイの差が出たか。
「ラスはアカンて!」
最後も小室の悲鳴で決着。
小室 1-2 藤原
決勝:北山VS酒井
2-0プレイヤーどうしのマッチ、事実上の決勝戦である第3ラウンドのカードは酒井VS北山。
レアばかりピックしてしまいましたという二人。とはいえ酒井は5色、北山は白緑にまとめ、デッキは対照的だ。
酒井はリミテッドの経験が乏しいというが、藤原・富川とリミテッドやる気勢を破ってきた。さすがにマジックがうまい。
北山は 《ひよっこ捜査員》からスタート。《スマーラの歩哨》は2/1/3到達。これまでのゲームでも2点クロックを受け続けてきた序盤のいぶし銀。
1,2,3と毎ターンクリーチャーを展開する北山に対して、酒井は《第10管区の英雄》。ここで一旦はゲームが停滞するか。ゲームが長引けば1枚のカードパワー差で勝つ酒井が有利だ。
北山は《近隣の守護者》で変装クリーチャーを3/3にしてアタック。酒井、これをスルー。停滞するかと思われた戦場だが、北山がクロックを刻んでいく。
酒井は変装した《復讐の忍び寄るもの》を2/3で受けると、正体を表した《復讐の忍び寄るもの》に対しコンバットトリックで相打ちに持ち込み、墓地に証拠を貯めていく。
北山は《広場の使い魔》で《ひよっこ捜査員》を再利用しつつ《近隣の守護者》を誘発させる。しかし手札の枚数は北山1枚に対し酒井が4枚と大きな差がついている。
続いて送り込まれた二体の変装クリーチャー。北山はこれにロープを装備させた探偵を差し向けるが、 が、隠れていたのは《放蕩の悪漢》!アタックをかわした酒井がカード1枚のパワー差で押し切った。
北山 0-1 酒井
第2ゲーム
《第10管区の英雄》を変装していた《博物館の夜警》で相打ちに持ち込んだ北山、続いて 《市場見廻りの幻影》と探偵・トークンでクロックを刻んでいく。
酒井は土地つまりに見舞われただけでなく、北山のクリーチャーの到達を見落したミスが響く。除去で懸命に攻撃を薙ぎ払おうとするが、《内通者》や《博物館の夜警》など1枚から2体のクリーチャーが次々現れ、手が間に合わない。
先手の利を活かしたアグロ戦略で1-1に持ち込んだ!
北山 1-1 酒井
第3ゲーム
互いに変装クリーチャーを送り込み停滞した戦場に酒井から《古き神々の咆哮、ヤラス》。そのあまりにも強すぎるテキストに、出した酒井自ら「裏向きで死んだクリーチャーが戻ってきます……ってことでいいんですよね?」と質問が出る。
一方的な状況に見えたが、北山、これを返しの《門道急行の事件》で除去。
《犯人はこの中にいる》のトークンたちでコンバット。 《広場の使い魔》で《内通者》をバウンスして唱えなおしてクロックを増やしつつ、《門道急行の事件》を解決!横に広く展開していた北山の戦力が一気に増大!
酒井はブロッカーを並べて北山の猛攻に備えるが、北山からはダメ押しの《空騒ぎ/大騒ぎ》!酒井のライフをみごとにぴったり削り切った!
北山 2-1 酒井
初代リミテッド長は北山雅也!おめでとう!
プレイ・ブースターのリミテッドは?
「最大4枚のレアが封入!」プレイ・ブースターが初お目見えとなったあの日、多くのプレイヤーはリミテッドの楽しさが損なわれるのではないかと危惧していました。しかしフタを開けてみればそこにあったのは派手で戦略性の増したリミテッド環境でした!
みなさんもぜひプレイ・ブースターでのリミテッドを楽しんでみてください!今週末の3月23日(土)は『第17期リミテッド神挑戦者決定戦』が晴れる屋TC東京で開催されます!
プロ選手も多く参加する大規模なイベントで力と運を試してみてはいかがでしょうか。
それではみなさん、晴れる屋トーナメントセンター東京でお会いしましょう!