USA Modern Express vol.111 -禁止改定が与えたモダンへの影響とは-

Kenta Hiroki

はじめに

みなさん、こんにちは。

3月11日に禁止改定があり、モダンで《暴力的な突発》が禁止カードになりました。

衝撃の足音暴力的な突発死せる生

『モダンホライゾン2』リリース以来、Temur RhinosとLiving Endは常に環境で活躍し続け、プロツアーやチャンピオンズカップファイナル、各地の予選イベントでも猛威を振るっていました。相手のターンに《否定の力》でバックアップしつつ仕掛けることができ、再現性も高く環境の最強デッキとして君臨し続けていたので妥当な変更だと言えます。

さて、今回の連載では先週末に開催された『Modern Challenge』の結果を見ていきたいと思います。

『Modern Challenge 64』 3/15 #1
新環境のアンフェアデッキ

2024年3月15日

  • 1位 Golgari Yawgmoth
  • 2位 Jeskai Breach
  • 3位 Golgri Yawgmoth
  • 4位 Jeskai Breach
  • 5位 Dimir Mill
  • 6位 Tron
  • 7位 Izzet Murktide
  • 8位 Amulet Titan

トップ8デッキリスト

先週末に開催された『Modern Challenge 64』は、予想通り禁止改定による影響を受けなかったGolgari YawgmothやAmulet Titan、Tronなどが入賞していました。

デッキ紹介

Golgari Yawgmoth

Golgari Yawgmothは禁止改定前の環境でも第一線で活躍するほどの強さだったため、今回の変更によって新環境のモダン最強デッキのひとつとして話題になっていました。苦手なマッチアップであった「続唱」デッキが大幅に弱体化したことで、大方の予想通りこのデッキが台頭してきています。

☆注目ポイント

アガサの魂の大釜大爆発の魔道士

『エルドレインの森』から登場した《アガサの魂の大釜》によって大幅に強化されました。メインから採用できる墓地対策としても機能するので、想起と《まだ死んでいない》によるコンボやIzzet Murktideの「昂揚」「探査」を妨害したり、最近台頭してきたEsper Reanimatorとのマッチアップでも活躍します。《アガサの魂の大釜》《大爆発の魔道士》の組み合わせは、TronやAmulet Titanといった土地コンボに有効です。

スランの医師、ヨーグモス歩行バリスタ飢餓の潮流、グリスト

「不死」クリーチャーなど+1/+1カウンター持ちのクリーチャーに困ることが少なく、《アガサの魂の大釜》《スランの医師、ヨーグモス》が除去されたとしてもコンボを決めることを可能にします。

《アガサの魂の大釜》+《歩行バリスタ》+「不死」クリーチャー+《血の芸術家》による無限ダメージ&ライフゲインや、《アガサの魂の大釜》《歩行バリスタ》《飢餓の潮流、グリスト》+「不死」クリーチャーによる無限トークンなど、《スランの医師、ヨーグモス》+「不死」クリーチャー以外のコンボの選択肢も広がりました。

召喚の調べ

召集を持つ《召喚の調べ》は、《根の壁》《オークの弓使い》《飢餓の潮流、グリスト》からのトークンのおかげで《スランの医師、ヨーグモス》をサーチするためのX=4も容易に捻出できます。ほかにも、除去や相手の追加のドローに対応して《オークの弓使い》を持ってきたり、特定のマッチアップではサイドボードのクリーチャーもサーチできるなど大変フレキシブルなスペルになります。

『Modern Challenge 64』 3/15 #2
環境の最強の墓地コンボデッキ

2024年3月15日

  • 1位 Esper Reanimator
  • 2位 Mono White Emeria
  • 3位 Esper Reanimator
  • 4位 Rakdos Scam
  • 5位 Amulet Titan
  • 6位 Mono Black Coffers
  • 7位 Amulet Titan
  • 8位 Domain Zoo

トップ8デッキリスト

デッキ紹介

Esper Reanimator

Esper Reanimatorは『カルロフ邸殺人事件』から登場した「諜報」ランドによって強化されたデッキで、『チャンピオンズカップファイナル シーズン2ラウンド2』でも市川 ユウキ氏がプレイオフに入賞したことで広く知れ渡りました。

禁止改定前の環境トップメタであった「続唱」デッキに強かったデッキで、今回の変更によって「続唱」デッキが減少する禁止改定後の環境で活躍できるかは未知数でしたが、優勝という結果になりました。

《暴力的な突発》を失ったことでLiving Endが衰退したため、墓地対策が減少傾向にあるのもこのデッキにとっては朗報です。

☆注目ポイント

Undercity SewersMeticulous ArchiveHedge Maze

諜報ランドはフェッチランドが使えるモダンやレガシーに大きな影響を与えました。このデッキにも《地底街の下水道》《行き届いた書庫》《迷路庭園》という3種類の諜報ランドが採用されており、フェッチランドから《偉大なる統一者、アトラクサ》などのフィニッシャーを能動的に墓地に落とせるため、より《御霊の復讐》を有効に使えるようになりました。

儚い存在悲嘆孤独

《儚い存在》はクリーチャーを除去から守ったり、《悲嘆》《孤独》といった「想起」クリーチャーを再利用することができます。前回の記事でも解説したように、《儚い存在》《御霊の復讐》でリアニメイトしたクリーチャーをブリンクすることで終了ステップに追放させることなく戦場にキープさせることができます。

『Modern Challenge 64』 3/16 #1
Izzet Murktideが複数入賞

2024年3月16日

  • 1位 Tron
  • 2位 Golgari Yawgmoth
  • 3位 Golgari Yawgmoth
  • 4位 Izzet Murktide
  • 5位 4C Reanimator
  • 6位 Rakdos Scam
  • 7位 Izzet Murktide
  • 8位 4C Omnath

トップ8デッキリスト

ほかのチャレンジと同様にGolgari Yawgmothが入賞するなかで、Izzet Murktideも複数見られました。《ギルドパクトの力線》《ドラコの末裔》のパッケージを対策するために《毒を選べ》をタッチしたバージョンも結果を残しています。

デッキ紹介

Izzet Murktide

環境を問わず一定数見かけるIzzet Murktideが、禁止改定後のモダンでも活躍しています。環境に多いAmulet Titanには強いものの、Golgari Yawgmothには苦戦を強いられているようです。

今大会では緑をタッチしたバージョンが入賞していました。タッチ緑は《探索するドルイド》を採用したバージョンなどありましたが、今回入賞していたリストは『カルロフ邸殺人事件』から登場した《毒を選べ》のために緑をタッチしています。

☆注目ポイント

轟音の滝Stern Scolding

このデッキも諜報ランドと相性が良く、ドローの質を高めながら「昂揚」や《濁浪の執政》《死の国からの脱出》のための墓地を肥やす手段になります。

《厳しい説教》Golgari Yawgmothとのマッチアップで特に有効なカウンターになります。《オークの弓使い》《スランの医師、ヨーグモス》といった多くの脅威をカウンターすることが可能です。

Pick Your Poison

青赤だけでは《ギルドパクトの力線》+《ドラコの末裔》への対応がかなり厳しいため、緑をタッチしてまでサイドに《毒を選べ》を採用しています。《ドラコの末裔》を1マナで除去でき、軽いので《ドラゴンの怒りの媒介者》の「諜報」ともシナジーします。

死の国からの脱出

サイドの《死の国からの脱出》は、Esper Reanimatorや4C Omnathといった《孤独》を採用したデッキとのマッチアップで投入されます。多くの緑デッキはサイド後に《毒を選べ》《忍耐》など《濁浪の執政》に対する解答を投入してくるので、軸をずらす必要が出てきます。このデッキは《死の国からの脱出》をコンボではなくアドバンテージ源として活用し、ゲーム中盤から終盤にかけてカードアドバンテージを稼いで《濁浪の執政》に頼りすぎずに消耗戦を制します。

『Modern Challenge 64』 3/16 #2
環境最強のパッケージ

2024年3月16日

  • 1位 Izzet Murktide
  • 2位 Domain Omnath
  • 3位 Izzet Murktide
  • 4位 Domain Zoo
  • 5位 Day’s Undoing Combo
  • 6位 Hardened Scales
  • 7位 Golgari Yawgmoth
  • 8位 Jeskai Breach

トップ8デッキリスト

Izzet Murktideは禁止改定後の有力なフェアデッキとして複数のイベントで活躍しています。

禁止改定後の環境で《ギルドパクトの力線》《ドラコの末裔》のコンボを活用している主なデッキは、4C Omnath、Domain Zooになります。

デッキ紹介

Domain Zoo

Domain Zooは《縄張り持ちのカヴー》《野生のナカティル》といった軽いクリーチャーと、《部族の炎》《稲妻》といった火力スペルで相手のライフを攻めていくモダンのアグロデッキになります。

《ギルドパクトの力線》によって大幅に強化されたデッキで、もともと《ドラコの末裔》を採用していたので無理なくデッキに収まります。

《暴力的な突発》が禁止になったことでDomain Rhinosは大幅に弱体化したため、禁止改定後の環境ではDomain Zooが《ギルドパクトの力線》《ドラコの末裔》のコンボを使う代表的なデッキになりそうです。

☆注目ポイント

ギルドパクトの力線力線の束縛ドラコの末裔

初手に《ギルドパクトの力線》があれば1ターン目に相手の脅威を《力線の束縛》で除去し、2ターン目に《ドラコの末裔》という強力な動きが可能になります。《部族の炎》2マナ5点火力という効率的なスペルになり、《ギルドパクトの力線》が場にあれば《ドラコの末裔》は除去を無効化しつつ自軍のクリーチャーに多くの能力を付与できます。

Territorial Kavu

《縄張り持ちのカヴー》《ギルドパクトの力線》《ドラコの末裔》のコンボと相性が良く、2マナ5/5は平均的なサイズの《タルモゴイフ》を凌ぎます。ルーティング能力によってゲーム中に引いてきてしまった《ギルドパクトの力線》を有効牌に変換することができ、2つ目の能力はメインから使える墓地対策になります。

頑固な否認毒を選べ

《頑固な否認》は除去や《血染めの月》といった厄介なスペルに対する解答であり、このデッキでは多くの場合1マナの《否認》として機能します。《毒を選べ》《ギルドパクトの力線》《ドラコの末裔》《濁浪の執政》《血染めの月》といった脅威を1マナで対処できるため、このデッキを含めた環境の緑を使うデッキの必須カードになりました。

総括

スランの医師、ヨーグモス原始のタイタン御霊の復讐

《暴力的な突発》の退場により「続唱」デッキが大幅に弱体化した現在は、Golgari YawgmothAmulet TitanEsper Reanimatorが新環境の代表的なアンフェアデッキとして活躍しています。ほかにはIzzet Murktide、Domain Zoo、Tron、4C Omnath、Rakdos Scamなどが結果を残しています。

『モダンホライゾン3』がリリースされるまで数か月間この環境が続くことが予想されます。

USA Modern Express vol.111は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!

この記事内で掲載されたカード

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Kenta Hiroki アメリカ在住のプレイヤー。 フォーマットを問わず精力的に活動しており、SCGやグランプリの結果などからグローバルな最新情報を隔週で発信する「USA Modern Express」「USA Legacy Express」を連載中。 Kenta Hirokiの記事はこちら