ついかターンじょうずかな
晴れる屋メディアのいってつです。
みなさん、『サンダー・ジャンクションの無法者』の背景ストーリーはご覧になりましたか?僕は今回のストーリーが今までのマジックの物語で一番好きかもしれません……「親子の確執」「親子の絆」の物語に弱いんですよね……
今回はそんな背景ストーリーでしっかりと泣かされたあるカードで統率者デッキの構築に挑戦します。一部背景ストーリーのネタバレを含みますのでご注意ください。
デッキのコンセプト
ファイレクシアとの戦いのあと、ジェイスとヴラスカはしばしヴリンで療養の日々を送っていましたが、次元間を移動できるポータル「領界路」の存在を知ると激しく動揺します。これまで脅威に対処できていたのはその脅威がひとつの次元に限られていたからであって、次元を移動して侵略できる手段を得たニコル・ボーラスやファイレクシアンが起こした戦争はその他の脅威とはまったく性質が異なっていたのです。
次元間を移動できる領界路があれば、面白半分で虐殺や侵略が起きてしまうと二人は予見します。「私らが何とかしないと」と危機感を募らせるヴラスカに対してジェイスは「どうして俺たちが?」と問いかけます。
そして――
「俺たちはかろうじて助かったんです、ヴラスカさん。俺にはそれで充分です。むしろ次に何をするのかを考えたいんです」
ふたりの目が合った。
次に何を。ジェイスは母の問いかけを思い出した。あなたのお嫁さん? 未来像が見えた――ヴリンの正装をまとうヴラスカ。ベレレン家の青が緑色の肌を引き立てる。自分たちの子供。そしてヴラスカの眼差しは、ジェイス自身と同じような未来を思い描いていると伝えてくれていた。
「お前はすごくいい親になれるよ」
「ヴラスカさんも」
「だから……」
「養子を」ジェイスは素早く言い、顔を赤らめて微笑んだ。「俺たちの間にはできない、ですよね」
「養子」ヴラスカも素早く頷いた。その事実を認め、ひるみながらも。「そうだよな。できるなら、とっくにできてる」
彼女は鼻を鳴らして笑い、ジェイスは思わず笑みを返した。ヴラスカが笑う姿をまた見ることができるのは嬉しいことだった。とりわけ、自分たちの種族間に子供はできないという事実を笑い飛ばす姿を。多元宇宙のエントロピーは無情で、それでもこうして握り締めた手には意味がある。
ジェイスの心を読んだかのように、ヴラスカは唇を尖らせた。「けど意味あるのかな、この多元宇宙で子供を育てることに」悩むように彼女は言った。「直すことすらできるのか」
「直すのはもううんざりです」ジェイスは溜息をついた。「どうせすべてが壊れてしまうのに、修復する意味なんてあるんでしょうか」
彼の最愛の人、妻となるであろう女性は、苛まれるような表情で領界路を見つめていた。「多元宇宙はすっかり壊れてしまってる。修復なんてできないよ」
ジェイスは炎を思った。ヴラスカを取り戻してくれた、あのフェニックスの羽根。「でしたら、修復以外のことをしませんか」
強すぎるんじゃあ!!!!
(なにが?)(なにかが)
世界のために自らを投げうってきたプレインズウォーカーたち。ジェイスとヴラスカも死の淵を彷徨い、生還できたのも幸運に恵まれたからに過ぎません。そんな二人がある意味で世界を見捨てて、自分たちの人生を歩むことを夢見る……
禁止カードだろそんなの……(0-1)
僕も世界を捨てて愛に生きたいよ……(※べつにいってつは世界のために戦ってはいません)
いよいよサンダー・ジャンクション。ヴラスカはそれが楽しみだった――ようやく、幻影の仮面をまとう相棒と共に悪いことができる。
そんな二人が”悪いこと”、つまり自分たちのために新たな地平に臨んだ先で待っていたのは……
「俺の名前はジェイス。君の名前は何ていうのかな?」
《全ての鍵、おたから》でした。彼はジェイスとヴラスカのファミリーに加わると同時に領界路の地図として、次元渡りができなくなったヴラスカの助けにもなるはずです。
明日になったら、存在すべきではないポータルを通り、自分たちが来るとは知らない次元へ旅立とう。旅の荷物をまとめ、この次元の塵を振り払い、おたからを担ぎ上げて。袖を下ろしてファイレクシア化の跡を隠し、癒えた両腕の傷に口付けをする。傷跡は自分たちふたりの約束。それは、悪いことはただ起こるだけではなく、理由もなく起こることもあるという共通の認識。この多元宇宙は終わりのない大禍であり、残虐と不正義を滅する希望はない。けれどその傷の中に、約束の中に、この奇妙で小さな家族は自分たちが選んだ希望を運ぶ。
望みと決意をもって領界路をくぐるのだろう。愛する人と養子の手を握りしめ、無情な多元宇宙の久遠の闇へと踏み入り、毅然と、不死鳥の羽根とともに自らへと言い聞かせるのだろう。
俺たちの未来は、きっといいものになる。
は?投了です。(0-2)
というわけで、おたからファミリーデッキを組みます。
統率者の特徴
護法
あなたのアップキープ開始時に、あなたのライブラリーの一番上にあるカード枚を追放する。はあなたがコントロールしていてこれでも土地でもないパーマネントの中のカード・タイプの種類数に等しい。このターン、それらのカードをプレイしてもよい。
スタッツは1/2と貧弱ですが、護法のおかげで《オークの弓使い》や除去があたりにくいのはうれしいですね。
毎ターンアップキープに衝動ドローをしますが、その枚数はコントロールしているパーマネントの種類。戦場にアーティファクトかつクリーチャーの《極楽の羽ばたき飛行機械》とプレインズウォーカーである《ジェイス・ベレレン》がいれば3枚のカードをめくることができます。
【土地単エリニス】や【茶単】など、妙に偏ったデッキを組むことが多い僕ですが、今回ばかりはいろんなカードタイプ、しかも3色使ってのデッキ構築になりそうです。かわいい子にはいろんな経験をさせたいですからね!
せっかくなので家族を揃えたかったのですが、あいにくヴラスカ・カードはいずれも黒が入っていて固有色が合いません。ではしょうがない、“お父さんといっしょ”に冒険に出るとします。
相性のいいカード
さっそくで申し訳ないのですが、追加ターンを大量投入します。その数、実に10枚。追加ターンをサーチしたり墓地から回収できるカードもたっぷり。
「物語に感動させられたとか言っておきながら結局ターボしてワープするデッキかよ!」と思ったでしょう。違うんです。いや、違うことはないんですが……まあとにかく僕の話を聞いてください。
序盤はパーマネントをばらまいていきます。3ターン目に《全ての鍵、おたから》を出す必要はありません。まずは子どもの遊び場を用意してあげましょう。
ある程度マナが出るようになって、戦場にパーマネントが3~4種類並んだら《全ての鍵、おたから》君の出番です。
通常のドロー+追加衝動ドローで4~5枚をめくればさらにパーマネントの種類数を増やすことができ、そこから追加ターンを得ることができれば、次のターンの衝動ドローでまた追加ターンをゲットできて……最終的にはどうなるのでしょう?
ライブラリーがなくなるから《タッサの神託者》で勝つ?それとも《運命のきずな》で無限に追加ターンを得られる状態にして少しずつ殴って勝つ?
いいえ、
仕上げはお父さんです。
物語ではジェイスとヴラスカが長い旅の果てにおたからと出会いますが、その間おたからは《フォモーリの宝物庫》でどれだけの時を過ごしたのでしょう。そう、このデッキは宝物(トークンではなくたくさんのパーマネント)とともに長い時を過ごしてジェイスとヴラスカに出会うおたからのロールプレイングデッキなのです!
それはそれとして
《神秘を操る者、ジェイス》が打ち消されたらどうしましょう?追加ターンを連打できるように墓地からカードを回収できる《永遠の証人》系カードは何枚か入っていますが、《否定の力》や《精神壊しの罠》、《法務官の掌握》で失ったら……?おたからはもう天涯孤独なのでしょうか。
いいえ、それでもおたからは力強く生きていくのでしょう……将来の夢は《情熱的な考古学者》です。
《情熱的な考古学者》になったおたからは追放領域から呪文を唱えるだけで対戦相手のライフを脅かすのです。……やはり彼を1人きりにしておくのは危険な気がします。
もしジェイスたちが迎えに来てくれないなら、《戦慄の狼の伝令官、ファルドーン》と一緒に旅するのもいいかもしれません。追加ターンを連打しながら狼の群れを率いて対戦相手のライフを脅かすのです。
……やっぱりおたからはジェイスたちといっしょにいたほうがよさそうですね。
おたからのお宝
ゲームに勝つ手段はともかく、その下準備としてパーマネントをたくさん、それもカード・タイプをなるべく散らして並べなくてはいけません。1枚が複数のカードタイプを持っていたり、自身と違うカードタイプのトークンを生み出せると効率がいいですね。
《木化》は能力を失わせる系の除去です。一般的にはドローがついている《ケンリスの変身》が優先されますが、このデッキではカード・タイプ「同族(旧・部族)」を持つのが有利に働きます。これ1枚で2カウント!エンチャントしたクリーチャーが戦場を離れるとこれも墓地に置かれるので、時には自分のクリーチャーにエンチャントしてもいいかもしれません。
トークンを生成する能力を持つプレインズウォーカーはこのデッキにはぴったり!とくに《崇高な工匠、サヒーリ》が生み出すトークンはアーティファクト・クリーチャーなのでこれ1枚で3カウント!
最近登場したばかりのカードタイプ、バトルも忘れてはいけません!《カラデシュへの侵攻》はこれ1枚で3カウント!バトルは裏返すとカードタイプが変わってしまうので、このデッキでは基本的に無視することになりそうです。逆にこちらのカードタイプの種類を減らすために、対戦相手があえてこちらのバトルを攻撃してくる可能性があります。へんなの!
いってつのイチオシ!
手札から唱える呪文がライブラリーのランダムな呪文と入れ替わってしまう《吹き荒れる潜在能力》!今回の構築では抜いてしまいましたが、こちらは《全ての鍵、おたから》の能力で追放した呪文を特に問題なく唱えられるのに対し、対戦相手はろくに呪文が唱えられなくなってしまいます!
おわりに
背景ストーリーに感激して衝動的に組んだデッキでしたが、図らずも物語をなぞるようなデッキが完成しました。
『サンダー・ジャンクションの無法者』では非常に多くの伝説のクリーチャーが登場します。ほかにもたくさんの統率者デッキが楽しめそうですね!
SNSなどでネタバレをふんでしまったという方もぜひ背景ストーリーを最後まで読んでください!ホント、今回のストーリーはめちゃくちゃワクワクさせてくれますし、読み終わったときには自分も一緒に冒険して、その中で成長できたような読後感があります!
それではみなさん、《フォモーリの宝物庫》でお会いしましょう。
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