はじめに
みなさん、こんにちは。
先週からModern Challengeも含めて、複数のMOのウィークリーチャレンジが追加されました。平日にも開催されるようになったため、週末に忙しくて参加できなかったプレイヤーも参加する機会ができました。
さて、今回の連載では『Grand Open Qualifier Prague 2024』と『Modern Showcase Qualifier』の入賞デッキを見ていきたいと思います。
Grand Open Qualifier Prague 2024
新環境のモダンを揺るがすタイタン
2024年3月24日
- 1位 Amulet Titan
- 2位 Izzet Murktide
- 3位 Rakdos Scam
- 4位 Azorius Control
- 5位 Esper Reanimator
- 6位 Scale Affinity
- 7位 Golgari Yawgmoth
- 8位 Domain Scam
禁止改定直後にヨーロッパで開催された大規模なモダンのテーブルトップのイベントは、人気の構築フォーマットらしく参加者550名超えと大盛況でした。
禁止改定直後ということで旧環境から強かったDomain Zooが人気で、Domain ZooとRakdos Scamをハイブリットしたバージョンが入賞していましたが、純正のDomain Zooはプレイオフでは見られませんでした。
今大会でも入賞していたEsper Reanimatorや優勝していたAmulet Titanも高い勝率を出しており、デッキパワーも高いため禁止改定後のモダン環境を牽引していくデッキになりそうです。
デッキ紹介
Esper Reanimator
《御霊の復讐》を使ったリアニメイトは長い間モダンで使われていたデッキでしたが、爆発力はあるものの安定性に難があり、比較的マイナーな立ち位置でした。しかし、『カルロフ邸殺人事件』から登場した「諜報」ランドによって強化され、現在ではモダンの環境を牽引するデッキとして定着しています。
《グリセルブランド》に代わって活躍している《偉大なる統一者、アトラクサ》は、ライフを支払うことなく圧倒的なアドバンテージ差をつけることができます。《悲嘆》や《孤独》といったピッチスペルも複数採用されているため、《偉大なる統一者、アトラクサ》で得たアドバンテージを活かしやすい構成になっているのもこのデッキの特徴です。
☆注目ポイント
Esper Reanimatorはモダンのデッキの中でも「諜報」ランドが最もフィットしたアーキタイプになります。《地底街の下水道》や《薄暗い裏通り》など複数の「諜報」ランドを採用することができ、フェッチランドで自由にサーチすることができるため《信仰の繕い》や《染みついた耽溺》といったルーティングスペルを経由することなく、最速で2ターン目から《御霊の復讐》で《偉大なる統一者、アトラクサ》をリアニメイトすることができるようになります。
過去と比べるとリアニメイトするクリーチャーを墓地に落とす選択肢も豊富になりました。《ファラジの考古学者》は《御霊の復讐》など必要なスペルを手札に加えつつ《偉大なる統一者、アトラクサ》を墓地に落とす手段になり、《儚い存在》を使うことでかなりデッキを掘り進むことができます。
《儚い存在》は《悲嘆》や《孤独》といったETB能力持ちのクリーチャーをブリンクすることでアドバンテージを得つつ、リアニメイトまでの時間を稼ぎます。また、《儚い存在》は《御霊の復讐》でリアニメイトした《偉大なる統一者、アトラクサ》をブリンクすることで、追放されるのを回避することができます。
Amulet Titan
今大会で優勝を飾ったAmulet Titanは、相性が悪かったTemur Rhinosがトップメタから退場したことで禁止改定後の有力な選択肢として挙げられていました。
『カルロフ邸殺人事件』から登場した新カードでさまざまな緑のデッキに採用されている《毒を選べ》や、アンチ特殊地形カードの定番である《血染めの月》など弱点もありますが、それらを乗り越えるデッキパワーがあるのが長い間モダンで活躍している理由です。
このデッキを使う上で一番の障壁となるのは、デッキの複雑さによる使用難易度の高さになります。カードをプレイする順番や複数の誘発型能力など、このデッキをトーナメントで使いこなすにはそれなりの練度が必要になります。このデッキのエキスパートで同デッキでプロツアーでもトップ8に入賞していたDom Harvey氏が、デッキガイドを自身のXにも投稿しています。
☆注目ポイント
メインは旧環境から完成されていたためそれほど変化が見られませんが、『指輪物語:中つ国の伝承』から《一つの指輪》が登場したことで息切れがしにくくなり、デッキが安定するようになりました。
サイドは新環境に合わせた調整がされています。3枚と多めに採用された《呪われたトーテム像》はGogari Yawgmoth対策で《大爆発の魔道士》も対策することができます。
禁止改定によってLiving Endは衰退したものの、Esper Reanimatorのように墓地を使うアンフェアなデッキは存続するため、《忍耐》などの墓地対策はまだまだ必須となりそうです。《気前のよいエント》は基本土地の森をサーチできるので《血染めの月》をプレイされても《耐え抜くもの、母聖樹》で対策しやすくなります。Izzet MurktideやRakdos Scamなど《耐え抜くもの、母聖樹》が効かない《月の大魔術師》を採用したデッキも一定数見られるため、それに触れる《四肢切断》も欠かせません。
Domain Scam
Rakdos Scamに《ギルドパクトの力線》+《ドラコの末裔》と《縄張り持ちのカヴー》などを加えてDomain Zooとハイブリットしたような構成で、今大会で最も印象に残ったデッキのひとつになります。
手札の状況によっては《悲嘆》+《まだ死んでいない》で相手のプランを妨害しつつ、2ターン目から《ドラコの末裔》をプレイという動きができ、ハンデスされたあとに《悲嘆》と《ドラコの末裔》と渡り合うのは困難を極めます。
《打撃/力走》など見慣れないカードも見られ現環境の自由度の高さが確認できます。
☆注目ポイント
分割カードの《打撃/爆走》はこのデッキでは主に打撃を使うことになりそうです。うまく《ドラコの末裔》をサクリファイスさせることに成功させれば、12点ものライフを削ることができます。
途中で手札に来てしまった《ギルドパクトの力線》は、《鏡割りの寓話》のⅡ章の能力によって有効牌に変換することが可能です。
《ギルドパクトの力線》と《ドラコの末裔》のパッケージを搭載するメリットとしては、緑の便利なサイドカードである《毒を選べ》を使えることです。《ドラコの末裔》《一つの指輪》《ウルザの物語》など環境の様々な脅威を対処できるようになりました。
Modern Showcase Qualifier
モダンでリアニメイトが大活躍
2024年3月23日
- 1位 Esper Reanimator
- 2位 Indomitable Creativity
- 3位 Domain Zoo
- 4位 Tron
- 5位 Azorius Control
- 6位 Golgari Yawgmoth
- 7位 Rakdos Scam
- 8位 Golgari Yawgmoth
シーズン終盤に開催される『Modern Showcase Qualifier』は、予選を勝ち抜いたプレイヤーのみが参戦できるイベントで優勝者にはMOCS本戦と地域チャンピオンシップへの参加権利が与えられます。
今大会で優勝を収めたのは、諜報ランドで大幅に強化され一気にトップメタにまで上り詰めたEsper Reanimatorでした。
禁止改定後の環境のトップメタの一角であるDomain Zooも見られました。今大会で結果を残していたバージョンはカウンターが多めで、《表現の反復》も採用されたIzzet Murktideとハイブリットした形のものでした。
デッキ紹介
Domain Zoo
Domain ZooとIzzet Murktideのハイブリットで、《対抗呪文》などを含めるなど大変欲張りな構成ですが《ギルドパクトの力線》が実現を可能にしています。
軽いクリーチャーをカウンターや効率的な除去、《表現の反復》でバックアップするフェアなIzzet Murktideに、《ギルドパクトの力線》+《ドラコの末裔》というアンフェアなパッケージが加わったことでデッキパワーが向上しています。
また《縄張り持ちのカヴー》や《ドラコの末裔》といった効率的なクロックを、カウンターや《緻密》でバックアップしていくクロックパーミッションのように振る舞うことができます。
☆注目ポイント
《表現の反復》は、《ギルドパクトの力線》やピッチスペルによる手札の消耗が激しいこのデッキでは貴重なアドバンテージ源として重宝します。
《ギルドパクトの力線》+《ドラコの末裔》のパッケージなどに枠を採られていることもあり、純正のIzzet Murktideよりもスペルのカウントが少なくなっているため《濁浪の執政》の枚数は2枚と抑えられています。
《毒を選べ》は非常にフレキシブルなスペルで、《アガサの魂の大釜》を使うGolgari Yawgmothや同型の《濁浪の執政》、《ドラコの末裔》、Amulet Titanなど環境のほとんどのデッキに刺さるためメインから採用されています。
Azorius Control
《孤独》《虹色の終焉》《力線の束縛》といった白の優秀な除去のおかげで、Azorius Controlは現在のモダンでも活躍できるアーキタイプになります。
《覆いを割く者、ナーセット》+《一日のやり直し》のコンボが搭載されており、こちらが手札を補充したあとに相手はすべての手札を失うため決まればほぼ勝ちが確定します。
アドバンテージ源である《一つの指輪》によって強化されたデッキで、中盤以降安定してゲームをコントロールできるようになりました。
☆注目ポイント
《至高の評決》は《ドラコの末裔》も流せるので現在のモダンでは有用な全体除去になります。
《緻密》は、《魂の洞窟》など《対抗呪文》を掻い潜る手段が複数存在するモダンでは優秀な妨害手段になります。ピッチスペルで消耗した手札も《一つの指輪》《ロリアンの発見》で補充することができます。
《覆いを割く者、ナーセット》とのコンボをスムーズに実行するために、《時を解す者、テフェリー》はこのデッキでは重要なプレインズウォーカーになります。また《一つの指輪》をバウンスすることで重荷カウンターをリセットすることもできるので覚えておきたいところです。
(※編集注:ルールに誤りがあったため修正しました)
総括
《暴力的な突発》が退場したことによってLiving Endは衰退しましたが、最速で2ターン目から《偉大なる統一者、アトラクサ》をリアニメイトしてくるEsper Reanimatorが幅を利かせているため、引き続き墓地対策は必須になりそうです。
《ギルドパクトの力線》+《ドラコの末裔》は依然としてモダンの最高のコンボとしてDoman Zooだけでなく、Izzet MurktideやRakdos Scamなどさまざまなデッキに組み込まれています。
USA Modern Express vol.112は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!