USA Modern Express vol.113 -《精鋭射手団の目立ちたがり》が目立ちまくり-

Kenta Hiroki

はじめに

みなさん、こんにちは。

新セットの『サンダー・ジャンクションの無法者』がリリースされましたね。《精鋭射手団の目立ちたがり》など新カードもさっそく活躍しているようです。

さて、今回の連載では『SCG CON Atlanta 2024』で行われた『Modern $5K』と『Modern $10K』、先週末に開催された『Modern Challenge』の入賞デッキを見ていきたいと思います。

『SCG CON Atlanta 2024』 – Modern $5K
優勝は黒単

今月の初めに『SCG CON Atlanta 2024』が開催されました。そのなかのイベントのひとつである『Modern $5K』は、勝者に賞金のほかに地域チャンピオンシップへの参加権が与えられる大会でした。

定番のDomain ZooやGolgari Yawgmoth、Amulet Titanなどが順当に結果を残す中で、Mono Black Scamが優勝しています。

デッキ紹介

Mono Black Scam

悲嘆まだ死んでいない

モダンの黒単というと《陰謀団の貴重品室》を採用したMono Black Cofferが有名ですが、今回優勝したバージョンは《悲嘆》《まだ死んでいない》を搭載した黒単版のScamデッキで、Rakdos Scamのように《オークの弓使い》《ダウスィーの虚空歩き》といった脅威をハンデスや効率的な除去でバックアップしていきます。

☆注目ポイント

解体爆破場廃墟の地

主な勝ち手段はRakdos Scamとそこまで変わりませんが、単色になり《解体爆破場》《廃墟の地》を採用する余裕ができたため、Amulet Titanなど土地コンボとのマッチアップに強くなりました。またフェッチランドを採用していないので、これらの土地の能力を起動することで《致命的な一押し》の「紛争」を達成させます。

一つの指輪黙示録、シェオルドレッド

《一つの指輪》がフル搭載されているため中盤以降も息切れがしにくく、《黙示録、シェオルドレッド》で失ったライフを回復させることができます。

シェオルドレッドの勅令滅び

《ドラコの末裔》を使うDomain Zooや《濁浪の執政》を対策するために《シェオルドレッドの勅令》、サイドにはスイーパーの《滅び》と多めに除去が採用されています。

『SCG CON Atlanta 2024』 – Modern $10K
《不屈の独創力》が復権

今大会で優勝したのは5C Creativityでした。ほかには、Domain ZooやGolgari YawgmothなどMOでも活躍しているデッキが中心に活躍しています。

デッキ紹介

5C Creativity

ドワーフの鉱山不屈の独創力残虐の執政官

《不屈の独創力》《ドワーフの鉱山》《鏡割りの寓話》から生成されたトークンにプレイして《残虐の執政官》を踏み倒すコンボコントロールデッキ。

一時期は数を減らしていましたが、禁止改定によって苦手なマッチアップだったTemur RhinosとLiving Endが退場したことでMOでも好成績を収めるなど、復権の兆しを見せていました。今大会では現環境トップメタの一角であるDomain Zooを下し、見事に優勝を果たしました。

《時を解す者、テフェリー》《力線の束縛》を採用した5Cバージョンや、《苦々しい再会》《頑強》を採用したJundバージョンなどいくつかバリエーションが存在します。

☆注目ポイント

力線の束縛時を解す者、テフェリー

5色バージョンの魅力は《時を解す者、テフェリー》《力線の束縛》《一時の猶予》などにアクセスできるところです。《力線の束縛》環境の多くの脅威に1マナで対応することができるため、コントロールコンボとして振る舞いやすくなります。

《時を解す者、テフェリー》の常在型能力によって安全にコンボを仕掛けることができるようになります。また[+1]能力により、インスタントタイミングで《不屈の独創力》を仕掛けることも可能です。コンボ以外にも[-3]能力で《力線の束縛》をバウンスして再利用するという使い方もできます。

Reprieve

《一時の猶予》はこのデッキにとって大きな収穫のひとつです。《差し戻し》と効果が似ていますが、カウンターされないスペルを対策することも可能なのでAmulet TitanやGolgari Yawgmothなどにも有効です。《一時の猶予》を得たことで《呪文貫き》などのカウンターのために青マナを用意する必要がなくなったため安定性も向上しています。

毒を選べ

さまざまなデッキに採用されている《毒を選べ》は、《濁浪の執政》《ドラコの末裔》、Amulet Titanなど現環境の多くの脅威を対策できる優秀なサイドカードです。

『Modern Challenge 32』 4/17
『サンダー・ジャンクションの無法者』のあのカードがモダンでも大活躍

MOでも新セットの『サンダー・ジャンクションの無法者』が実装されました。

『Modern Challenge』が平日にも開催されたため、週末を待たずに新セットが実装されてすぐに新カードを大きなイベントで試すことができるようになりました。

今大会では新カードの《精鋭射手団の目立ちたがり》を採用した果敢デッキが早速入賞しています。Izzet、Gruul、Temurと複数のバージョンが試されていました。

デッキ紹介

Temur Prowess

《僧院の速槍》《損魂魔道士》といった果敢持ちのクリーチャーを、《ミシュラのガラクタ》《溶岩の投げ矢》など軽いスペルで強化してライフを攻めるシナジーベースのアグロデッキ。

表現の反復死の国からの脱出定業

『モダンホライゾン』から《溶岩の投げ矢》が再録されて以来モダンで活躍しているアーキタイプでしたが、ここ数年《表現の反復》《死の国からの脱出》《定業》といったカードが加わったことで中盤以降も息切れがしにくくなり、爆発力・速度・安定性とそろったデッキへと強化されました。

☆注目ポイント

Slickshot Show-Off

『サンダー・ジャンクションの無法者』からの新カード《精鋭射手団の目立ちたがり》は、このデッキの新戦力として話題になっていたカードです。実質「果敢」が2回分誘発し、スペルを複数回プレイするだけでフィニッシャー級にまで強化されます。飛行なので攻撃も通りやすく、「計画」によってコストを先に払うことでハンデスなどを回避しながら、余ったマナでスペルを連打可能です。

Dragon's Rage Channeler死の国からの脱出

《ドラゴンの怒りの媒介者》は果敢クリーチャーではありませんが、軽いスペルを多用するこのデッキでは「諜報」を誘発させやすく、《死の国からの脱出》のために墓地を肥やすことも容易です。中盤以降は、《死の国からの脱出》によって墓地に落ちた《溶岩の投げ矢》《魔力変》《ミシュラのガラクタ》などを再利用してアドバンテージを得たり、果敢クリーチャーを強化して勝負を決めます。

毒を選べ

サイドの《毒を選べ》のために緑をタッチしています。Izzetというカラー上、対処の難しい《ギルドパクトの力線》《ドラコの末裔》《力線の束縛》《濁浪の執政》などを処理できるようになります。

『Modern Challenge 64』 4/20
禁止改定後の続唱デッキ

《暴力的な突発》が退場したことによって大幅な弱体化を強いられ、環境から姿を消したと思われていたLiving Endでしたが、《献身的な嘆願》を採用したバージョンが2名入賞していました。

デッキ紹介

Living End

Living Endは《暴力的な突発》が禁止になったことで大幅な弱体化を強いられ、しばらく環境から姿を消していました。しかし、調整次第ではまだまだ活躍できる可能性があるとされていました。

《献身的な嘆願》《悪魔の戦慄》という選択肢はあったものの、《暴力的な突発》と異なりソーサリースピードになので《否定の力》でコンボを無理やり通すことはできなくなったため、以前と比べると対応されやすくなっています。

☆注目ポイント

Ardent Plea

《献身的な嘆願》《断片無き工作員》と同様に3マナの使いやすい「続唱」スペルになります。青いカードなので《否定の力》《緻密》のコストに使うこともできます。

Faerie Macabre

Esper Reanimatorが現環境で人気のあるデッキなので墓地対策は欠かせません。それらの墓地を使ったデッキを意識し、《フェアリーの忌み者》がメインから採用されています。

緻密厚かましい借り手忍耐

Amulet TitanやGolgari Yawgmothといったデッキがメタの上位に位置している現在のモダンでは、《緻密》は有用な妨害手段として機能します。4マナ瞬速持ちなので普通にプレイしやすく、隙を作らずにクロックを展開することができます。《死せる生》プランが対策されるサイド後は、《緻密》《厚かましい借り手》《忍耐》といった瞬速クリーチャーや《神秘の論争》をサイドインしてクロックパーミッション寄りにシフトする選択肢もあります。

『Modern Challenge 32』 4/22
バリエーション豊富な果敢

開催日:2024年4月22日

優勝 Domain Zoo

準優勝 Gruul Prowess

3位 Golgari Yawgmoth

4位 Domain Zoo

5位 Izzet Prowess

6位 Amulet Titan

7位 Tron

8位 Golgari Yawgmoth

トップ8デッキリスト

デッキ紹介

Gruul Prowess

果敢デッキは赤をベースにさまざまな色を足すことができます。最もポピュラーな組み合わせはIzzetですが、《毒を選べ》というフレキシブルな除去にアクセスできるGruulも最近活躍しているバージョンになります。

強力なアドバンテージ源である《表現の反復》を使えるIzzetバージョンも捨てがたいですが、Gruulも《探索するドルイド》が使えるためIzzetと同様に中盤以降も息切れがしにくい構成になっています。

☆注目ポイント

探索するドルイド

《探索するドルイド》アドバンテージ源+追加のクロックとして重宝します。軽いスペルが多いので本体もすぐにフィニッシャー級のサイズになり、ターンが終了してもサイズが大きいままなのでロングゲームにも対応しやすくなります。

Abundant Harvest血染めの月月の大魔術師

《豊穣な収穫》によって必要な土地を確実に手に入れることができるため、デッキの回りが安定しています。また基本的に赤がベースのデッキなので、《血染めの月》《月の大魔術師》を無理なく運用することができます。現環境ではAmulet Titanがトップメタの一角で、Tronもよく見かけるデッキなので対策は必須です。このデッキはクロックが速いため、対策カードを引き当てられる前にゲームを決めることも比較的容易です。

総括

Slickshot Show-Off

『モダンホライゾン3』がリリースされるまでそれほど環境が変化することはないと思われていましたが、《精鋭射手団の目立ちたがり》など『サンダー・ジャンクションの無法者』はモダンの環境にも影響を与える強力なセットでした。

《精鋭射手団の目立ちたがり》という新戦力を得て大幅に強化された果敢デッキは、最もポピュラーなIzzetのほかにもGruul、Temurなどいくつかバージョンが見られるため、今後の活躍が楽しみなデッキです。

USA Modern Express vol.113は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!

この記事内で掲載されたカード

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Kenta Hiroki アメリカ在住のプレイヤー。 フォーマットを問わず精力的に活動しており、SCGやグランプリの結果などからグローバルな最新情報を隔週で発信する「USA Modern Express」「USA Legacy Express」を連載中。 Kenta Hirokiの記事はこちら