はじめに
みなさん、こんにちは。
『サンダー・ジャンクションの無法者』がMOでも実装されました。そのなかでも話題になっていた《身代わり合成機》を採用したアーティファクトデッキが複数のイベントで結果を残しています。
さて、今回の連載では『Legacy Showcase Challenge』と『Legacy Challenge』の入賞デッキを見ていきたいと思います。
『Legacy Showcase Challenge』 4/20
『サンダー・ジャンクションの無法者』のあのカードが大活躍
MOで開催された『Legacy Showcase Challenge』。MOのプレミアイベントで参加するには40QPが必要となり、トップ8にはシーズン終了後に開催される『Showcase Qualifier』への参戦権が与えられます。
現環境トップメタのDimir Reanimatorは今大会でも人気があり、高い勝率を維持していました。また、『サンダー・ジャンクションの無法者』から登場した《身代わり合成機》を採用したAffinityもプレイオフに入賞しています。
デッキ紹介
Bant Control
今大会で優勝したのは、《空を放浪するもの、ヨーリオン》を「相棒」として採用したBant Controlでした。ReanimatorやScam系によって苦手なコンボが抑えられており、Delver系も人気なためコントロールにとって勝ちやすい環境となっていました。
《剣を鍬に》《力線の束縛》《意志の力》といった優秀なカードにアクセスができ、《豆の木をのぼれ》や《自然の怒りのタイタン、ウーロ》のもたらすアドバンテージによって、このデッキはゲーム中盤から終盤にかけて圧倒的な強さを見せます。
☆注目ポイント
特徴的なのはメインから4枚採用された《地の封印》で、Dimir ScamやReanimatorなど墓地を使うデッキを意識した構成になっています。キャントリップ付きなので腐りにくく、墓地対策の中ではメインから採用しやすいカードになります。
同様にメインからフル搭載された《激しい叱責》も、AffinityやPainterなど多くのデッキに採用されている《ウルザの物語》のトークン対策として有用です。キャントリップ付きで《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を踏み倒す手段としても使えるので腐りにくく使いやすいスペルになります。
アーティファクトデッキが増加傾向にあるため、《無垢への回帰》は必須になりつつあるようです。ライフゲインもコントロールにとっては問題にならず、《溶融》と異なり《金属ガエル》や《滞留者の相棒》といった「親和」持ちの重いアーティファクトも流しやすい優秀な対策手段になります。
場に出たときの能力を封じる《門衛のスラル》は、《上流階級のゴブリン、マクサス》対策になるなどゴブリンデッキにも有効なサイドカードです。
Esper Reanimator
Dimir Reanimatorに白をタッチしたバージョンです。『サンダー・ジャンクションの無法者』の《害獣駆除》と『統率者デッキ:Warhammer 40000』の《聖カトリーヌの凱旋》がサイドに採用されています。
《偉大なる統一者、アトラクサ》などをリアニメイトする戦略を取りつつ、サイド後はテンポ寄りにシフトする選択をとったりと多角的に攻めることができるため、このデッキ相手のサイドプランは難しく、高い勝率を維持している理由になります。
☆注目ポイント
《害獣駆除》は「サイクリング」があるため無駄になりにくく、《虚空の杯》や《墓掘りの檻》といった墓地対策や《ウルザの物語》のトークン、Delver系の1マナクロックなどを流せるため、青黒の2色バージョンのときに苦戦していた多くのマッチアップとの相性を緩和してくれます。
《聖カトリーヌの凱旋》は墓地を使わない追加の勝ち手段として機能します。主にDelver系やDimir Scamとのマッチアップでサイドインされます。
白をタッチするメリットとして、《濁浪の執政》などに対する明確なアンサーである《剣を鍬に》が使えることが挙げられます。このバージョンは除去が優秀なため、Delver系やDimir Scamとのマッチアップで有利にゲームを進めることができます。
Affinity
親和は『サンダー・ジャンクションの無法者』から登場した《身代わり合成機》によって強化されました。
各種アーティファクト土地や0マナのアーティファクトで「親和」のコストをできるだけ軽減し、《金属ガエル》や《滞留者の相棒》といったクリーチャーを序盤から複数展開していきます。
☆注目ポイント
《身代わり合成機》は《金属ガエル》や《滞留者の相棒》といった「親和」クリーチャーによって、《身代わり合成機》を置いたターンに複数の構築物・トークンを生み出すことも可能です。一瞬で場にアーティファクトが多く並ぶため、トークンのサイズも馬鹿になりません。また占術2によってドローの質を上げることもでき、息切れしづらくなっています。
新戦力は《身代わり合成機》だけではありませんでした。新たな《ウルザの物語》のサーチ先として、装備品の《溶岩拍車のブーツ》が採用されています。構築物・トークンに装備させて速攻をつけるだけで脅威となり、パワー強化と除去耐性も地味ながら強力な効果です。
『統率者デッキ:Warhammer 40000』のカードの《シカリアン・インフィルトレイター》も面白いチョイスです。自身は3マナのキャントリップ付きのアーティファクトクリーチャーですが、追加コストを払うことで場に出たときに自身のコピーを生成することができます。余ったマナを活用する手段として使えますし、戦場に出るコピーも3マナなので《身代わり合成機》が誘発します。
『Legacy Challenge 32』 4/27
『サンダー・ジャンクションの無法者』統率者が大活躍
土曜日に開催された『Legacy Challenge 32』は、『サンダー・ジャンクションの無法者』統率者デッキの《嵐の咆哮、エリス》を採用したTemur Midrangeが入賞していました。
デッキ紹介
Temur Midrange
新戦力の《嵐の咆哮、エリス》を軸にしたティムールカラーのミッドレンジ。
《嵐の咆哮、エリス》は《豆の木をのぼれ》との相性が良く、墓地の準備ができていれば2マナで唱えつつ1ドローできます。ただ、このデッキの勝ち手段が《嵐の咆哮、エリス》《濁浪の執政》《ドラゴンの怒りの媒介者》と墓地の状況に依存するため、Temur Delverよりも墓地対策に弱くなっています。
☆注目ポイント
ピッチスペルやサイクリングカードが使えるレガシーでは、《嵐の咆哮、エリス》のコストを最小にまで下げることは比較的容易です。《紅蓮操作》や《ロリアンの発見》など少ないマナでプレイできるマナ総量が重いカードを複数採用しているため、《豆の木をのぼれ》でアドバンテージを稼ぎやすくなっています。
また、軽いコストでプレイできるカードが多いため《嵐の咆哮、エリス》の能力を誘発させやすく、特に《紅蓮操作》は能動的に唱えられるピッチスペルなので、《嵐の咆哮、エリス》を出したターンにプレイしてクリーチャーを除去しつつドラゴン・トークンを場に残すことができます。
Temur Delverよりも重い構成になるので複数枚採用するのは要検討ですが、《探索するドルイド》はアドバンテージ源兼墓地対策の影響を受けない数少ない勝ち手段として機能します。
Sultai Midrange
Dimir Scamに緑を足したようなバージョンで、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《飢餓の潮流、グリスト》《ウィザーブルームの命令》など緑の強力なカードのおかげでデッキパワーが向上しています。
色を足すことによって安定性が損なわれてしまいますが、各種「基本土地サイクリング」カードや《花の絨毯》のおかげで《不毛の大地》+《目くらまし》デッキにも耐性があります。
また、《破滅的な行為》や《活性の力》といった置物対策にアクセスできるところも緑を足すメリットです。Dimirバージョンと比べると《虚空の杯》などを対策しやすくなっているため、Affinityなどアーティファクトデッキとの相性が緩和されています。
☆注目ポイント
《自然の怒りのタイタン、ウーロ》はDelver系とのマッチアップで最高のカードであり、墓地にカードがある限り繰り返しプレイできるので息切れしづらくなります。軽いスペルやフェッチランド、「諜報」ランドのおかげで墓地にカードが溜まりやすいのもポイントです。
《もみ消し》が3枚採用されています。最近のレガシーではフェッチランドの起動を妨害する以外にも、多色コントロールのメインの除去である《力線の束縛》や《上流階級のゴブリン、マクサス》など打ち消したい能力が多いため、有用な妨害手段になります。Reanimatorの《動く死体》の誘発を止めることができるのも覚えておきたいところです。
《ウィザーブルームの命令》もこのバージョンを使う明確なメリットです。墓地を肥やしつつ《不毛の大地》を回収する動きが強く、《虚空の杯》《豆の木をのぼれ》などレガシーで散見される2マナ以下の置物を対策する手段としても機能します。除去のモードも《オークの弓使い》を対処できるため有用です。
『Legacy Challenge 64』 5/4
安定のTemur Delver
先週末に開催された『Legacy Challenge 64』は、Temur Delver(Murktide含む)が優勝も含めてプレイオフに3名と安定した成績を残していました。
Dimir Reanimatorも高い勝率を維持しており、Dimir Reanimator(Scam)やDelver系が人気の現環境はコンボデッキには厳しくなります。
デッキ紹介
Temur Delver
安定した勝率を維持しているTemur Delver。といっても緑のカードは《探索するドルイド》のみと最低限のタッチになっています。《表現の反復》が使えたころに比べると弱体化していますが、現在でも特別に相性が悪いマッチアップは存在せず、環境の多くのデッキと互角以上に渡り合えます。
《秘密を掘り下げる者》や《ドラゴンの怒りの媒介者》といったタフネス1のクリーチャーは《オークの弓使い》に弱いため、そういったデッキとのマッチアップでは「昂揚」の条件が満たされるまで《ドラゴンの怒りの媒介者》をプレイしないなどケアしていく必要があります。
☆注目ポイント
一般的なリストには《島》が1枚だけ採用されていることが多いですが、最近は「諜報」ランドの《轟音の滝》を採用したリストも見られます。「昂揚」や「探査」と相性が良く、フェッチランドをライブラリー操作として使えるため必要な土地やカードも探しやすくなります。
《探索するドルイド》は「出来事」でプレイする分には緑マナは必要なく、コンボデッキなどカードアドバンテージよりもクロックが必要な際は普通にプレイする選択肢もあります。軽いスペルを多用するこのデッキでは強化しやすく、墓地に依存しないため墓地対策された際も信頼性のあるクロックとして活躍します。
追加の火力、キャントリップの枠には《稲妻の連鎖》と《定業》が選択されています。安定して「昂揚」の条件を満たすために、追加のソーサリースペルとして採用されているようです。
サイドの特殊地形対策の枠には、《血染めの月》の代わりに《発展の代価》が採用されています。GoblinsやMono Red Prisonの影響で《水流破》の採用率も上がっているため、軽くてインスタントである《発展の代価》が優先される傾向にあります。
総括
話題になっていた『サンダー・ジャンクションの無法者』の新カードである《身代わり合成機》は、Affinityの強化に貢献し、MOのイベントを中心に結果を残していました。同じく新カードの《溶岩拍車のブーツ》も、装備したクリーチャーに速攻を付与するため《溶融》などソーサリースピードのスイーパーにも耐性ができました。
USA Legacy Express vol.234は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!