はじめに
こんにちは。Hareruya Prosの平山 怜(@sannbaix3)です。
今回はパイオニアから「5色ニヴ=ミゼット」を紹介します。
5色ニヴ=ミゼットとは
5色ニヴ=ミゼット(以下、5色ニヴ)とは、5色の除去ミッドレンジデッキです。《稲妻のらせん》《消失の詩句》などの優秀な除去で相手のカードに対処しつつ、《白日の下に》から繰り出される《ニヴ=ミゼット再誕》や《嘘の神、ヴァルキー》でアドバンテージを一方的に獲得します。また、《白日の下に》から相手にとってクリティカルなカードをメインから使用できるのも、このデッキの強みです。
それ以外にも、モダン以下で活躍しているカードを存分に採用しており、まさにカードパワーの化身、王道的なミッドレンジデッキと呼んでいいでしょう。
なぜいま5色ニヴ?
「なぜいまさら5色ニヴを?」と、思った人もいるでしょう。5色ニヴはもともとパイオニア黎明期に流行したデッキでした。
パイオニア制定直後のリスト。トライオームがまだ実装されていないので、タルキールのトライランドが採用されている。
全盛期のときのリスト。《自然の怒りのタイタン、ウーロ》が強い。
当初はまだ《自然の怒りのタイタン、ウーロ》や《時を解す者、テフェリー》が使えたため、フェアデッキ同士の戦いではずば抜けた支配力を持ちつつ、カードパワーでアゾリウスコントロールのようなデッキとも渡り合えていました。
しかし《自然の怒りのタイタン、ウーロ》や《時を解す者、テフェリー》の禁止でデッキパワーが落ちた結果、徐々にシェアを減らしました。近年ではあまり大きな活躍は見せておらず、「終わったデッキ」になったといってもいいでしょう。
しかし、ここ数か月で5色ニヴは大幅にシェアを増やしました。マジックオンラインのチャレンジなどで、今ではTier1といっても遜色ないくらい結果を出しています。最近になってこのデッキが”再誕”した理由は、主に以下の2点にあると思っています。
強いカードが増えた
5色ニヴは5色のミッドレンジというデッキの性質上、多色カードが出ると採用候補になります。つまり、新セットが出るたびに確実に強化チャンスがくるということです。実際『サンダー・ジャンクションの無法者』からは《泥沼の略奪》、そのひとつ前の『カルロフ邸殺人事件』からは《稲妻のらせん》が採用されています。
それに加え、すべての色のパワーカードを使うことができます。《自然の怒りのタイタン、ウーロ》には及ばずとも、《鏡割りの寓話》《力線の束縛》《豆の木をのぼれ》の登場はデッキのパワー向上に貢献しています。
メタゲーム上の立ち位置がよくなった
5色ニヴは除去ミッドレンジであるため、除去が有効でないアゾリウスコントロールや、ロータスコンボのようなクリーチャーに依存しないコンボ、アゾリウスロータスのようなさらに上のスケールで戦うデッキを苦手とします。
現在のパイオニアの環境を見ると、ロータスコンボこそそれなりにいますが、ほかのデッキは人気を落としています。なぜなら、これらのデッキは環境のツートップであるラクドス吸血鬼とイゼットフェニックスに勝ちづらいからです。
そして、ラクドス吸血鬼やイゼットフェニックスに有利なデッキとして黒単《無駄省き》もシェアを伸ばしています。これらのデッキは、クリーチャーを主体にしたデッキやリソース勝負を挑むデッキです。これは5色ニヴのテリトリーです。現状の5色ニヴは、環境上位の多くのデッキに有利なのです。
採用カードについて
5色ニヴの採用カードは、主に下記に分類されます。
マナ基盤
土地と《森の女人像》や《花粉の分析》のようなカードが該当します。5色ニヴは5色デッキの重いカードを多く採用したデッキであり、アドバンテージ獲得手段が豊富です。ほかのデッキに比べて、かなり多めにマナソースを採用することが一般的です。マナベースについては後述します。
多色のカード
《消失の詩句》などの除去や、《泥沼の略奪》などの《ニヴ=ミゼット再誕》で拾えるリソースカードが該当します。採用する除去は自分が想定するメタゲームに合わせて適時調整するようにしましょう。
《白日の下に》周りのカード
《ニヴ=ミゼット再誕》《嘘の神、ヴァルキー》《至高の者、ニヴ=ミゼット》のようなリソース獲得手段から、《太陽降下》《漂流自我》《クレンコの轟音砕き》のような限定的な状況で有効なカードが該当します。《白日の下に》を採用することで、これらカードにメインボードからアクセスできるのが5色ニヴの強みです。ただし、この枠を入れすぎるとデッキが重くなり、どれかを引く確率が高くなるので本末転倒です。なるべくこの枠は最小に収めるよう、環境に合わせたチューニングが必要です。
その他
《豆の木をのぼれ》《鏡割りの寓話》《力線の束縛》など。《ニヴ=ミゼット再誕》では拾えませんが、それでもこれらの強いカードは使ったほうが強いです(適当)。
参考デッキリスト
私が使用しているリストを紹介します。
《白日の下に》の選択肢の広さは幅広いデッキと対戦する上では有用ですが、現在のパイオニアは上位デッキが固定化されています。そのため、多くのオプションをとることで素引きした際に腐りやすいカードを減らし、低マナ域を増やすことでデッキを安定させることを重視しています。
《森の女人像》の不採用理由
定番となっている《森の女人像》を抜いた構築が特徴のリストです。《森の女人像》は常に確定枠として採用されてきました。しかし、改めて考えてみると、
呪禁の安定性が落ちている
《ヴェールのリリアナ》の登場以降は黒いミッドレンジ相手でも《森の女人像》が触られてしまいます。
ブロッカーとしての信用性が低い
かつて《森の女人像》は黒単アグロの1マナ2/1集団を止める優秀な壁でした。
しかし現在の主流デッキを見てみると、ラクドス吸血鬼は素でパワー3ある《税血の収穫者》がおり、《変わり谷》も《傲慢な血王、ソリン》で1個カウンターが乗ったらパワー3です。イゼットフェニックスの鳥はみんな飛行持ちですし、赤いデッキも果敢能力や《巨怪の怒り》が怖く、ブロックに回りづらいです。
このように、現環境においての《森の女人像》はブロッカーとしての信頼性が落ちており、マナクリーチャーとしてのみの役割しか持てていないように思えます。
初手以外弱い
そもそも2ターン目にだせればいいですが、3ターン目以降はほかの重いスペルを唱えたいため出すタイミングがなく、手札で腐りやすいです。そのため、いつ引いても機能する土地を多めに入れています。
とカードそのものが弱く感じたため、いっそのこと抜いてみました。代わりに新セットから《古のヤギ角》を採用。《森の女人像》と違い、こちらはクリーチャー除去にはあたらず、ゲーム中盤以降もライフゲイン手段として機能するので腐りにくいです。
メインボード
《空を放浪するもの、ヨーリオン》
「相棒」に採用しています。単体除去を多用するデッキにとってリソースが必ず1枚あることは大きいです。そのため、相棒はできれば採用したいです。
ほかの候補である《湧き出る源、ジェガンサ》に比べ、
1. 《太陽降下》などの優秀なカードを採用できる。
2. 《豆の木をのぼれ》や《鏡割りの寓話》など、ブリンクが有効なカードも多数採用されているため《空を放浪するもの、ヨーリオン》のほうがカードが単純に強い。
といった利点があるため、《空を放浪するもの、ヨーリオン》を使用することをおすすめします。デッキ制約の80枚も、《白日の下に》で持ってくるために入れた1枚挿しのカードを引きづらくなるメリットもあります。
《ニヴ=ミゼット再誕》
デッキの名前を冠するカードです。かつては3-5枚手札に加えることもよくありましたが、最近の構築では単色の強力なカードを増量した結果、手札に加えられる枚数の期待値は減っています。だいたい戦場に出たとき2枚手札に加える5マナ6/6飛行だと思いましょう。それで十分です。
《至高の者、ニヴ=ミゼット》
墓地の呪文の再利用を可能にするほうのニヴ=ミゼットです。《ニヴ=ミゼット再誕》と違い直接アドバンテージを稼げませんが、公開領域の墓地を再利用するため得られる成果がわかりやすいです。また「単色からの呪禁」をもつため、イゼットフェニックスなどのデッキでは干渉する方法が《天上都市、大田原》くらいしかないのも強みです。
《白日の下に》で出す→次のターンもう一度墓地の《白日の下に》を唱えるのがよくある使い方です。
《嘘の神、ヴァルキー》
《白日の下に》から《星界の騙し屋、ティボルト》を唱えることができます。5色出ていないときに《ニヴ=ミゼット再誕》の代わりに出したり、クリーチャー以外の脅威を出すことで全体除去に強い盤面を作れます。
《創造の座、オムナス》
4色なので《ニヴ=ミゼット再誕》では加えられませんが、単体性能が非常に高いので採用されています。ライフゲイン手段としての《白日の下に》の選択肢としても優秀ですし、5ターン目の《創造の座、オムナス》→《寓話の小道》から《白日の下に》はこのデッキ一のブン回りです。
《クレンコの轟音砕き》
《白日の下に》の選択肢として入っています。ロータスコンボに有効なメタカードです。《漂流自我》を採用しているリストもありますが、相手がすでに《睡蓮の原野》を置いたあとだと何を指定しても負けることがあるため、パフォーマンスが安定しているこちらを優先しています。またサイズがよく、各種ミシュラランドや《ガイアー岬の療養所》を破壊できるため、ミッドレンジ相手でもそれなりの活躍をするのでメインデッキ向きです。
《負け知らずの精鋭射手、リラー》
新セットのお試し枠です。単体で何もしないカードのため、少しもっさりしていますが、機能したときのアドバンテージ量は凄まじいです。特にデッキ全体で戦うことになるミラーマッチでは、《コラガンの命令》などのリソースカードが複数回使えることは大きなメリットになります。
《白日の下に》を「計画」しても、色マナを払えないためデッキからは何も唱えられませんが、《豆の木をのぼれ》は誘発することは覚えておきましょう。
《さまよう心》
このデッキのことをカードパワーの化身と呼びましたが、その名にふさわしくないかわいいやつです。見た目はデッキの中で群を抜いて弱そうですが、追加のリソース源として使ってみると意外と優秀です。また《キキジキの鏡像》でのコピーは非常に強力であるため、このカードを入れることで《キキジキの鏡像》に圧を持たせることができます。
《白日の下に》
《ニヴ=ミゼット再誕》に並ぶこのデッキの主役です。アドバンテージ獲得、全体除去からライフ回復まで1枚でこなすことができます。多色カードであるため《ニヴ=ミゼット再誕》で拾うことができるのが大きく、 《白日の下に》→《ニヴ=ミゼット再誕》→《白日の下に》+α回収とリソースを循環させることができます。
多色除去
多色除去枠です。幅広く触れる《消失の詩句》と、《精鋭射手団の目立ちたがり》の登場に伴う赤単系のデッキに有効な《稲妻のらせん》を多めにとっています。ミラーに強くしたいなら《溶鉄の崩壊》に変更するなど、好みに合わせて変更してください。
《コラガンの命令》
2点を飛ばしたり、手札破壊をしたり、クリーチャーをひろったり、アーティファクトを破壊できます(テキスト読み上げ)。《消失の詩句》で触れないアーティファクトを破壊でき、《嘘の神、ヴァルキー》や《ニヴ=ミゼット再誕》を拾うことでロングゲームで強力なリソース源になります。
《泥沼の略奪》
物凄い《可能性の揺らぎ》です。ゲーム中盤以降は実質チューターのような感覚で扱うことができます。サイドボード後はサイドカードを探すうえでも役に立ちます。
《土建組一家の魔除け》
布告除去のモードは《血管切り裂き魔》を対処でき、墓地追放のモードは《弧光のフェニックス》に有効です。メタゲームのツートップに有効なため採用しています。
《太陽降下》
《白日の下に》で唱えるための全体除去枠です。最もあたる範囲が広く、追放除去のため《弧光のフェニックス》などに非常に有効です。
《鏡割りの寓話》
このデッキにも当然のように入る強力なカードです。いまさら言うことはあまりないでしょう。
《豆の木をのぼれ》
《白日の下に》から5マナのカードを唱えたら2ドロー、《空を放浪するもの、ヨーリオン》を唱えてこれをブリンクすれば2ドローです。強力なドローエンジンであり、《白日の下に》を引けていないゲームでも、このカードと《空を放浪するもの、ヨーリオン》だけで勝ててしまうゲームも多いです。
《力線の束縛》
多色ではありませんが、最小1マナであるこのカードはそれを踏まえても採用するべきです。《豆の木をのぼれ》との相性の良さもすでにあらゆるフォーマットで証明されています。
《古のヤギ角》
マナソースとして採用しています。《ニヴ=ミゼット再誕》を唱えれば5点ゲインですし、多色除去を自分のターンと相手のターンに唱えれば4点ゲインと、大量ライフゲインを行えます。ライフゲインはターンに1回ですが任意ですので、《白日の下に》から《ニヴ=ミゼット再誕》を唱える場合は、《白日の下に》では回復せずに《ニヴ=ミゼット再誕》でライフゲインすることができます。
サイドボード
《概念泥棒》
効果を一度使うと二度とデッキから抜けなくなる快楽を持ったカードです。ロータスコンボのような相手に有効ですし、このデッキにとっては貴重なインスタントタイミングでの仕掛けになります。
《漂流自我》
特定のキーカードに依存したデッキ相手に、《白日の下に》のオプションとしてサイドに採用しています。メインデッキに入れているリストも多いですが、フェアデッキ相手は腐りがちなこのカードより、ロータスコンボにより有効な《クレンコの轟音砕き》をメインに採用し、サイドにこのカードを採用しています。
ロータスコンボだけを見るなら、サイドデッキのこの枠も《クレンコの轟音砕き》でもいいですが、現在はロータスコンボのシェアが落ちているので、より幅広いコンボデッキを対策できるこのカードを優先しました。
《致命的な一押し》
《力線の束縛》を除いた除去は多色であるため、基本的に2マナ以上です。テンポ負けしやすいので、サイドに1マナ除去をとっています。
打ち消しカード
《ドビンの拒否権》:多色のニヴで持ってこれるカウンターです。見たまんまです。
《神秘の論争》:大ぶりなアクションを通すのに有用です。
《思考消去》
多色の手札破壊です。メインデッキの除去を抜きたい相手にこういう汎用的なカードが採用されていると、サイドチェンジが合いやすいです。メインから採用されている《消失の詩句》と色が同じで唱えやすい《魂探り》を採用しているリストもありますが、このリストでは「諜報」付きのこのカードを優先しました。
《約束された終末、エムラクール》
ミラーマッチなどのロングゲーム用の必殺技です。唱えることができればおおむね勝ちです。主な採用理由は以下の通り。
■採用理由
1. 《白日の下に》で持ってこれるコストのカードで決定的な影響力を持つカードがない。
2. 《ドビンの拒否権》や除去に強い。
3. 《ニヴ=ミゼット再誕》でサーチできないとはいえ、ゲームが長引くため《豆の木をのぼれ》や《泥沼の略奪》で探すことができる。
《轟音のクラリオン》
追加の全体除去です。《白日の下に》で唱える用の全体除去はメインに入っている《太陽降下》でいいため、素引きして強い&軽いカードにしています。「絆魂」付与能力も《ニヴ=ミゼット再誕》などが盤面にいるときは非常に有用なので、忘れないようにしましょう。
《白日の下に》のオプションについて
このリストでは採用していませんが、《白日の下に》のオプションとして採用候補になるカードをいくつか紹介します。
《絶滅の契機》《無私の象形織り》
全体除去です。かつてはよく使われていましたが、《太陽降下》が優秀すぎるため採用率が落ちています。それぞれピンポイントでうまくかみ合えば自分のクリーチャーのみ一方的に残すことができます。
《絶滅の契機》は緑単信心のような採用カードのコストの偶奇が寄っていれば《砂塵破》のようなものですし、《命取りのうぬぼれ》はそもそもプレインズウォーカーも倒せる《砂塵破》です。ただし《絶滅の契機》は偶奇のどちらかしか対処できませんし(テキスト読み上げ)、《命取りのうぬぼれ》は自分の場にクリーチャーがいないと相手のカードを1枚残さないといけなくなります。
《殺戮遊戯》
《漂流自我》の亜種です。《漂流自我》は手札から追放するとドローされる代わりに土地を宣言することができ、《殺戮遊戯》は手札にあるカードを宣言すれば手札破壊として活用することができます。現在では《睡蓮の原野》を追放できる《漂流自我》の採用が主流となっています。
《狼の友、トルシミール》《永遠神の投入》
展開をしながら除去とライフ回復を行うことができます。アグロデッキ相手に非常に有効です。《精鋭射手団の目立ちたがり》の影響で赤単系のデッキが流行っている場合は、採用を検討してもよいでしょう。
《機械の母、エリシュ・ノーン》
《奇怪な具現》のようなデッキに有効です。
《揺れ招き》
アマリアコンボに有効なクリーチャーです。マナコストが高いため《スカイクレイブの亡霊》されないことが強みです。
マナベースについて
以下の要素で構成するのが一般的です。
まず前提として、フェッチランドを使用できないパイオニア環境での5色のマナベースはどう頑張っても弱いです。マナベースの脆弱さは5色ニヴの明確な弱点です。
マナベースは採用しているスペルを唱えるために存在するものであり、採用しているスペル次第でいくらでも変わります。
たとえば、今のリストの《稲妻のらせん》(赤白)を《湖での水難》(青黒)に変更する場合、マナベースはそのままということには違和感があります。採用カードを変更する場合は、マナベースが現状のままでいいか検討しましょう。
現在のマナベースに至った思想を以下に記します。
前述の[4]の部分はひとまず固定で、[1][2][3]に何を採用するかを決めます。いくつかの考えは相反することがあるので、バランスよくやりましょう。
出したい色を考える
基本的に、重いスペルよりも軽いスペルのほうがマナベース決定の要因として大きいです。軽いスペルのほうが、序盤から色を要求されるからです。
今回の場合、《豆の木をのぼれ》《泥沼の略奪》などの「緑黒」、《稲妻のらせん》の「赤白」、《消失の詩句》の「白黒」を2ターン目に唱えやすいマナベースを考えます。《溶鉄の崩壊》も採用していますが、想定している除去の対象的に2ターン目に撃つ必要性は低いのでひとまず除外します。
また、実質ツーアクションとなるスペルは、その想定でマナベースを構築しなければなりません。《神秘の論争》は単体では青のシングルシンボルですが、《白日の下に》を通すために使用することを考えると中盤で青マナが2個だせるマナベースの構築が必要です。2マナ域では青マナは使いませんが、上述の通り《神秘の論争》周りで青マナをダブルシンボルで要求するため、青マナも数は確保しなければなりません。
弱い土地
次に、採用する土地で弱い土地を定義します。
[1] トライオーム
1マナでプレイできるカードが採用されていないため、1ターン目は基本的にトライオームをタップインして色基盤を確保するのが理想です。3色でるだけあって、どのトライオームも置ければ相応に色が安定します。ただし、唱えたいスペルにまったく絡んでいないトライオームは、置くと2ターン目に絶対に唱えられなくなるので採用は控えたほうがいいでしょう。
今回の場合、緑黒に使えない《ラウグリンのトライオーム》、赤白に使えない《ゼイゴスのトライオーム》、白黒に使えない《ケトリアのトライオーム》は除外します。
[2] 2色ランド
なるべく複数のスペルに使用できる土地を多く採用したいです。例えば、白黒や緑白の土地はすべてのスペルに使用できます。
逆に、緑青のような土地は緑黒をだすためにしか使えないので腐りがちです。青マナを要求する組み合わせがないため、青い2色土地の評価は低くなりがちです。できれば青マナはトライオームで確保したいです。
[3] チェックランド
チェックランドは、対応する基本土地タイプをコントロールしていないとアンタップインしません。
チェックランド+ショックランドの組み合わせであれば、チェックランドとショックランドがかみ合ってなくてもチェックランド→ショックランドをショックインの順番で置けば2ターン目に2マナ使えますが、トライオーム+チェックランドの組み合わせでは、チェックランドがトライオーム次第ではタップインするため、2ターン目に2マナ使えない場合があります。
そのため、採用するすべてのチェックランドが、採用しているすべてのトライオームでアンタップインする組み合わせで採用するのがおすすめです。こうすることで、実はチェックランドがアンタップインしなかったみたいな事故も減らせます。各トライオームにはアンタップインしないチェックランドが1つあります。採用できるチェックランドの種類を確保するため、トライオームは変に散らさないほうがいいと思ってます。
強い土地の組み合わせを厚くとる
すべてのスペルを使用できる組み合わせを引ければ、それが一番楽になります。
今回の例だと、《インダサのトライオーム》《ジェトミアの庭》《スパーラの本部》→《血の墓所》は、すべての2マナ域を唱えられます。また、《インダサのトライオーム》《ジェトミアの庭》《スパーラの本部》→《ザンダーの居室》も《力線の束縛》を撃てる組み合わせとして優秀です。強い土地の組み合わせは厚くとります。
採用スペルと違う組み合わせの2色土地をいれる
例えば、《稲妻のらせん》を唱えるために赤マナを18、白マナを18を入れたいとします。このとき、
上記のマナベースだと、色カウントは同じですが前者のほうが2ターン目に《稲妻のらせん》を唱えられる確率は高いです。《稲妻のらせん》を撃つうえでは、赤白ランドはどちらか一方のカウントにしかならないからです。
このことから、基本的には採用している多色スペルでない色の組み合わせのほうが強い土地になりやすいです。(そういいながら、チェックランドの都合上《断崖の避難所》を2枚採用しています。白マナを多めに入れることでバランスをとっています。)
採用土地を散らす
強い土地の組み合わせを厚くとると矛盾する内容になりますが、同じ組み合わせが多いのも考えものです。強い組み合わせだからと同じ色を入れすぎるのもよくありません。例えば、白黒の組み合わせが強い土地だからとたくさん採用すると、2枚並べば《創造の座、オムナス》は唱えられませんし、3枚並ぶと《ニヴ=ミゼット再誕》が唱えられなくなります。
弱い2色土地も、1枚であれば許容できることはありますが、2枚並ぶと耐えられないです。これは、組み合わせを散らすことでリスクを分散できます。「緑白」はすべてのスペルで使える優秀な色です。しかし、《インダサのトライオーム》《ジェトミアの庭》《スパーラの本部》ですでに緑白を含む土地がたくさん含まれているため、《寺院の庭》の採用は見送りました。
チェックランドの比率を考える
ここらへんは実際にまわしたり、現在の環境でどれくらいショックインが許容されるか次第です。とりあえず今回はチェックランドを5枚(《断崖の避難所》が2枚)にしました。どの色をチェックランドにするかは前述の通りで、あとは基本地形タイプの数のバランスをとりましょう。
マッチアップ・サイドボードガイド
ラクドス吸血鬼
相手の攻め手をさばききれればリソース獲得手段の差でいずれ勝ちます。ミシュラランドや《傲慢な血王、ソリン》の能力で最後の数点を削る能力が高いため、ライフ水準を高く保つことを意識します。
vs. ラクドス吸血鬼
サイドボード後もゲーム展開は大して変わりません。《血管切り裂き魔》コンボが一番の負け筋なので、妨害するために手札破壊をサイドインします。
イゼットフェニックス
メイン戦は相手の妨害が《呪文貫き》くらいしかなく、《弧光のフェニックス》に対する追放除去がたくさん入っているため戦いやすい相手です。《感電の反復》+《時間への侵入》から複数体のフェニックスが返ってくることが一番の負け筋ですが、それまでに盤面をしっかり築くか、《土建組一家の魔除け》で墓地を一掃しましょう。
《至高の者、ニヴ=ミゼット》は基本的に《天上都市、大田原》以外では触れられません。ブロッカーとして優秀です。
vs. イゼットフェニックス
不要な《白日の下に》のオプションを抜きます。《弾けるドレイク》を倒せる除去が少ないので、除去の順番には気をつけましょう。対戦相手が《若き紅蓮術士》などの小型クリーチャーをサイドインするプランをとっている場合は、《稲妻のらせん》をもう少し残すのもありです。
5色ニヴ
お互いが事故らなければ互いのリソースが爆発するゲームになります。デッキ全体を使った勝負になることを意識しましょう。
採用している除去の都合上、《創造の座、オムナス》以上のサイズのカードは対処手段がかなり限られています。《溶鉄の崩壊》《星界の騙し屋、ティボルト》のようなこれらを対処できる除去は、《鏡割りの寓話》のような他カードでも対処できるカードには極力使わないようにしましょう。
《力線の束縛》はなんでも触れますが、相手の《力線の束縛》や《消失の詩句》で簡単に対処されるため、《ニヴ=ミゼット再誕》《空を放浪するもの、ヨーリオン》のような出たとき能力が強力なクリーチャーを対処するのに使うのは危険です。
vs. 5色ニヴ
サイドボード後は、手札破壊やカウンターにより両方のリソースが膨らむゲームは珍しくなります。除去はそれぞれいい点や悪い点が分かれているので、少しずつ残すのが良いと現段階では考えています。
《約束された終末、エムラクール》はキラーカードとして採用しています。ある程度《ニヴ=ミゼット再誕》でめくったカードを覚えておいて、大まかな場所を把握していれば《泥沼の略奪》で加えるゲームプランが立てやすくなります。
黒単無駄省き
《無駄省き》に触る手段が豊富にあり、リソースの権化のようなデッキなので、かなりやりやすい相手のはずです。土地さえ並べればトップ解決は容易なので、ゆるく土地の多いハンドをキープしましょう。
vs. 黒単無駄省き
相手のデッキにバリューランドが大量に入っているため、《クレンコの轟音砕き》は比較的有効なので残しても問題ないです。《稲妻のらせん》が少し残っていますが、別に強くはないので、相手が《絶望招来》のようなカードも入っているなら《ドビンの拒否権》などと変えてもよいでしょう。
赤単
こちらが削り切られる前に《創造の座、オムナス》で回復する場を作れるかが勝負の鍵です。もっさりした手札はすぐに敗北するので、積極的にマリガンしましょう。
vs. 赤単
サイドボード後はもっさりしたカードを抜きます。サイドボード後もゲームは変わりません。
ロータスコンボ
メインデッキは《クレンコの轟音砕き》で《睡蓮の原野》の破壊を狙います。変に除去を構えず《空を放浪するもの、ヨーリオン》を拾いましょう。《クレンコの轟音砕き》を《空を放浪するもの、ヨーリオン》で使いまわすのが勝利のカギで、それ以外はほとんどゲームに影響を与えません。
vs. ロータスコンボ
サイドボード後は対処手段が増えるのでメイン戦よりやりやすくなります。カウンターを持っていても、本当に構える必要があるかは考えましょう。引き続き《クレンコの轟音砕き》を《空を放浪するもの、ヨーリオン》で使いまわすのが最も簡単な勝ち筋です。
おまけ:大会参加レポート
紹介したリストとは少しちがいますが、5/3開催の『第14期パイオニア神挑戦者決定戦』に5色ニヴで参加しました。
■対戦結果
1R ラクドスミッドレンジ 〇×〇
2R 赤単 〇〇
3R 赤単 〇××
4R ディミーアミッドレンジ 〇×〇
5R 5色ニヴ ××
結果は3-2ドロップ。ミッドレンジ相手にリソースやトップ勝負で勝利できましたが、赤単相手に《稲妻のらせん》2枚と《轟音のクラリオン》を抱えたまま赤マナが出ずに負けたりと、このデッキらしいマナトラブルで敗北。ニヴとして生き、ニヴとして死んだといえるでしょう。
負けたままでは終われないので、その夜のマジックオンラインの『Pioneer Challenge』にも参加しました。
使用したリストがこちら。
■対戦結果
1R アブザンパルへリオン 〇〇
2R 緑単信心 〇〇
3R グルールバーン 〇〇
4R 赤単バーン ×〇〇
5R 陰湿な根 ××
6R ラクドス吸血鬼 ×〇×
7R 白単人間 ×〇〇
SE1 ラクドス吸血鬼 〇〇
SE2 黒単ミッドレンジ ×〇〇
SE3 スプリット
オポーネントが高かったので5-2でスイスラウンド突破。マジックオンラインの大会にはIDがないので、紙の大会に比べて2敗でもSEに残りやすいです。
結果は決勝スプリットで実質準優勝!
負けた《陰湿な根》デッキには、後手の《太陽降下》が間に合わず&マリガン後土地5枚と《さまよう心》でキープしたら《思考囲い》を撃たれ、ドロー全部土地で負け。
ラクドス吸血鬼への負けは両方3ターン目の《傲慢な血王、ソリン》→《血管切り裂き魔》を触れず負け。《森の女人像》を抜いた影響で《血管切り裂き魔》の「護法」が払いづらくなっているので、除去の採択をもっと《血管切り裂き魔》を倒せるものに寄せたほうがいいかもしれません。
(言い訳終了)
とはいえ、《森の女人像》を抜いた枠にマナファクトや土地を入れているため、そこまで事故率が上がった気はしませんでした。しばらくは《森の女人像》抜きの構築を試してみようと思います。
おわりに
5色ニヴのガイドは以上になります。
現在、5色ニヴはパイオニアで最もポジションのいいデッキだと考えています。デッキの拡張性も高く、調整のしがいのあるデッキです。
興味を持った方はぜひとも手に取ってみてください。
平山 怜(X)