(※この記事は『モダンホライゾン3』発売日前に執筆されたものです)
Translated by Takumi Yamasaki
(掲載日 2024/06/18)
はじめに
『モダンホライゾン3』が本格的に始動しました。新セットの初期探索は構築フォーマットにおいて常に最も楽しい時期ですが、我々はすでに《有翼の叡智、ナドゥ》というフォーマットを支配し得るカードに出会っています。
《有翼の叡智、ナドゥ》のテキストを初見で読み違えるのはよくあることのようです。実際、私も最初は特に気にせず読んでいたので「この能力は1ターンに2回しか誘発しない」と思っていました。しかし、カッコで括られているため、能力は「あなたがコントロールするクリーチャー1体につき2回誘発する」ことが分かりました。
これにより《ナドゥ》は、自分のクリーチャーを除去から守るやっかいなクリーチャーから、1ターンでデッキをすべて引けるコンボを可能にするクリーチャーへと変わったのです。そうなれば、勝つのはもっと簡単でしょう。いつも私は新しいコンボデッキを探していますが、《ナドゥ》は新たなアーキタイプを生み出す準備が整っているようです。
それでは、どんな構築があるのか見ていきましょう!
ナドゥコンボとは?
レガシーのセファリッド・ブレックファーストから技術をお借りすると、《手甲》が“自分のクリーチャーをいくらでも対象にとれる方法”としてすぐに思い浮かびます。《手甲》が戦場にあれば、《有翼の叡智、ナドゥ》をプレイした直後に装備することで少なくとも1回は能力が誘発します。対戦相手が除去しようとしても、それが2度目の誘発になる可能性は高いでしょう。
《コーの遊牧民》はモダンでリーガルではありませんが、《コーの先導》であれば使用できます。《コーの先導》の能力は普通のマジックのゲームではあまり重要ではないですが、《手甲》とは違って《有翼の叡智、ナドゥ》の能力をインスタントタイミングで誘発させられる手段なので、除去に対してより有用に働きます。
万が一ターンを渡すことになっても、《コーの先導》がいれば対戦相手のターンにもう一度《有翼の叡智、ナドゥ》の能力を誘発させることができます。マナの軽い《手甲》よりも重くクリーチャーなので除去されやすいですが、インスタントタイミングで誘発させられるのは魅力的ですし、モダンでクリーチャーをサーチするのは本当に簡単なことです。
《手甲》か《コーの先導》のどちらかと《有翼の叡智、ナドゥ》をそろえれば、自分のクリーチャーを好きなだけ対象にでき、《ナドゥ》の能力を2回誘発させられます。クリーチャーを出し続けることができる限り、より多くのカードを引くことができるのです。
ただ単に引いたマナクリーチャーを唱えていくだけでもかなりデッキを掘れますが、新たに登場した《春心のナントゥーコ》はこのデッキにおける真の主役です。一度《春心のナントゥーコ》を唱えれば、土地がめくれるたびに《ナドゥ》の誘発が2回増え、フェッチランドがめくれれば4回も誘発させることができます。そうなるとあっという間に、デッキを引ききれないことが数学的に不可能な地点に到達するのです。
特筆すべきは、このコンボはかなり妨害が難しいということです。実際にカードを引いていないので《オークの弓使い》に引っかからず、《真髄の針》系のカードでは《手甲》か《コーの先導》のどちらかしか止められません。《苛立たしいガラクタ》や《減衰球》といったカードでも、《有翼の叡智、ナドゥ》はタダで何かを唱える必要はなく、コンボが完成した後は何も唱えないので止めることができないのです。
コンセプト的に、ナドゥコンボがモダンの中心になった場合、プレイヤーがどのような対策を取るべきか私には分かりません。というのもナドゥコンボの実態は、大量のリソースを生み出すための超効率的な方法に過ぎないからです。
デッキのバリエーションとアップデート
オールインコンボカンパニー型
これは、コンボを目指すことに全力を注いだバージョンの初期アイデアです。《集合した中隊》から《有翼の叡智、ナドゥ》と《コーの先導》をそろえるのは一見強力ですが、デッキの柔軟性はかなり失われています。
シナジーを上手く生み出せるかは難しいですが、《集合した中隊》があれば盤面をクリーチャーでいっぱいにしておくことが容易になります。クリーチャーが場にいればいるほど、《有翼の叡智、ナドゥ》の誘発回数が増えることになりますからね。
《根の壁》は《集合した中隊》までのマナ加速にもなりますし、《召喚の調べ》とも相性が良いです。もし《召喚の調べ》を採用しないのであれば、《根の壁》を採用する価値はないでしょう。
《喜ぶハーフリング》もデッキの速度を上げるのに貢献してくれますが、特に気に入っているのは《有翼の叡智、ナドゥ》を打ち消されなくする能力です。《スランの医師、ヨーグモス》と同様に、《有翼の叡智、ナドゥ》は解決さえすればアドバンテージを生み出すはずなので、それが確実になるのは非常に有益でしょう。
《森を護る者》も再録されモダンにやってきました。このカードは《有翼の叡智、ナドゥ》を守るだけでなく、マナを使うことなくナドゥの能力を誘発させられます。またゲーム後半では、タップ状態の土地や余ったフェッチランドをナドゥの誘発に変換することが可能です。ただ「被覆」は「呪禁」とは違うので、自分のクリーチャーを再度対象に取ることができない点には注意しましょう!ときには、自身の能力になにか対応する必要があるかもしれません。
《有翼の叡智、ナドゥ》でめくれた土地は直接場に置かれます。《成長の揺り篭、ヤヴィマヤ》は余ったフェッチランドからマナが出せるよう役に立ちますし、《ドライアドの東屋》がデッキにあればフェッチランドをクリーチャーに変えてコンボを連鎖させることができます。
勝利手段は《タッサの神託者》です。青は単なるタッチなので、ゲーム序盤に《島》をフェッチしているとを用意するのが少々面倒になりますが、その場合は《森を護る者》が救ってくれます。《森を護る者》の能力で《島》を生け贄に捧げ、《忍耐》でシャッフルして引き直すことで再び青マナを得ることができるのです。またこれを何度か繰り返すことで、必要であれば《血染めの月》をすり抜けることもできます。
《森を護る者》のさらに分かりにくく曖昧な使い道は、プレイした《忍耐》に《春心のナントゥーコ》を「授与」したときです。完全に準備が整っている状態であれば、デッキを引いて土地が最低でも3枚になるまで減らしたあとに《忍耐》で墓地に送った土地を再シャッフルすることができます。
すべての土地がマナと昆虫・トークンを生み出すようになり、3枚目の土地ごとに《忍耐》をコピーしてこれを繰り返します。デッキにキャノピーランドがあれば、《耐え抜くもの、母聖樹》や《天上都市、大田原》でありとあらゆるカードを触ることが可能に。また、《セファリッドの円形競技場》を使って対戦相手にデッキを引かせるという複雑なループもありますが、《タッサの神託者》のような勝利手段のほうがシンプルで妨害にも耐性があります。
《手甲》は《石鍛冶の神秘家》または《ウルザの物語》でサーチすることができます。《ウルザの物語》は試す価値がありますが、《コーの先導》を使う以上どうしてもバントカラーになってしまいます。3色デッキは一般的に《ウルザの物語》を運用するのが難しいとされているので、《ウルザの物語》を使うことには乗り気になれませんし、可能であれば避けるべきです。
《石鍛冶の神秘家》は堅実ですが、あまりテンションの上がる選択肢ではありません。しかし彼女は、コンボプランが上手くいかなかったときに《同化の神盾》や《謎めいた外套》《カルドラの完成体》といったカードを使って“フェア”なゲームでのバックアッププランとして活躍します。
このリストでは、《召喚の調べ》で探す選択肢として1枚だけ《石鍛冶の神秘家》を採用することにしました。ただ《集合した中隊》と装備品を一緒にデッキに入れるのはあまり良いとは思いませんし、《カルドラの完成体》が現在のモダンでどれほどの相手に勝てるのかもよく分かりません。
《集合した中隊》を使う上での理論は妥当なものでしたが、実際にはあまり上手く機能しませんでした。《集合した中隊》はデッキ構築やサイドボーディングにおいてデッキの柔軟性を失わせ、このカードが《ナドゥ》を見つけられなかったたびに「この4マナを費やす価値が本当にあるのか?」と疑問に思ったほどです。コンボは強力でしたが、《集合した中隊》から《ナドゥ》と《コーの先導》を見つけられないときは割に合わないなと感じました。
シミックナドゥコンボ
Magic OnlineのユーザーであるZompatanfoが5-0したシミック型のナドゥを見たとき、私にある啓示がもたらされました。
このデッキには《手甲》が4枚も採用されています。しかし、通常ドローで引き込む《手甲》は……ただただ良かったのです。フェアなゲームでは少し物足りないカードですが、序盤に《手甲》をプレイしたときの手札は遥かにゲームスピードが速く、それゆえに脅威でした。
《樹上の草食獣》はかなり大胆な選択だと感じました。また《一つの指輪》がメインのゲームプランに貢献しないことと、《オークの弓使い》に対して弱点になるのは不満でした。
こんなときの《思考囲い》(ここでは「思考を奪う」という意味)は、追加のカードアドバンテージツールとして最も活躍してくれます。ということで、私はすぐに4枚の《手甲》というテクノロジーを拝借し、先週のMOチャレンジで優勝することができました。
#1 バントナドゥコンボ
《集合した中隊》を避けたことで、自由奔放なマナカーブでデッキを構築できるようになりました。不本意ではありますが、軽い白のカードを避けて最小限に白をタッチし、《ウルザの物語》を2枚ほど採用することに。《ウルザの物語》があったおかげで、サイド後に相手が《真髄の針》や《攪乱のフルート》を使ってくるゲームで、複数枚引くと事故ってしまう《手甲》を減らすことができました。
《召喚士の契約》は単に《有翼の叡智、ナドゥ》をサーチするためのカードです。ただ「契約」コストを支払う必要があるために序盤の展開に使うことができないので、あまり多くは採用したくありません。《エラダムリーの呼び声》と《破滅の終焉》は、より多くのチューターを使いたい場合の選択肢として使えます。
《時を解す者、テフェリー》は《有翼の叡智、ナドゥ》を除去やカウンターから守るのに優れながら、わずかにシナジーがあります。それでも少し重いことがあり、《ウルザの物語》を並べていると唱えるのが難しいときがあります。
《一つの指輪》の性能に不満があるので、おそらく《有翼の叡智、ナドゥ》を持ってこれるチューターを追加するか、2枚以上の《ウルザの物語》を採用することでしょう。結局のところ、デッキを丸ごと引くことが最高のバリューあるプレイなのです。
サイドボードに別の勝ち手段が必要なのは、《有翼の叡智、ナドゥ》が《石の脳》などで取り除かれたゲームだけです。今のところ、その枠は《アルゴスの庇護者、ティタニア》が務めています。《アルゴスの庇護者、ティタニア》と《森を護る者》の相性がとても可愛いのが主な理由です。
#2 バントナドゥコンボ
これが今後推奨するデッキリストです。
《タッサの神託者》とのコンボは1つの方法にすぎません。でも、もしデッキの中の良くないカードを量を減らし、もっとフェアなプレイを試みて《有翼の叡智、ナドゥ》で引くカードの数に頼るとしたらどうでしょうか?
バントナドゥミッドレンジ
こういった構築ではデッキをすべて引ききることはできませんが、より高いカードの質とデッキ内のシナジーが増えるため、妨害の多いゲームでは大いに役立ちます。《有翼の叡智、ナドゥ》で圧倒的なアドバンテージを生み出し、大量のカードを引いてピッチスペルで妨害することになるでしょう。
《有翼の叡智、ナドゥ》の色はおそらく最高のピッチスペルの組み合わせです。《否定の力》と《活性の力》にアクセスできるのは非常に優秀です。さらに、エレメンタル・インカーネーションは「想起」で墓地に行く前に《コーの先導》で対象に取ることができます。
デッキをより安定させるためには、《有翼の叡智、ナドゥ》を誘発させる別の手段をいくつか入れておくと良いでしょう。《溌剌の牧羊犬、フィリア》は、攻撃することで安定したアドバンテージを得られる立派な2マナ域です。ですが、《儚い存在》こそが真のオールスターです。
コンボの途中で《有翼の叡智、ナドゥ》をブリンクすれば、能力の制限が完全にリセットされます。つまり、再びクリーチャー1体につき2回の誘発をさせることができるのです。また《儚い存在》+《孤独》も、すでに実績のある強力な組み合わせです。
新しく登場したピッチスペル、「閃光」サイクルも選択肢のひとつです。《有翼の叡智、ナドゥ》がいる場でターンを返しても、《拒絶の閃光》を構えることができ、対戦相手のどんな呪文でもカバーしてくれるのはありがたいです。
その一方で、生け贄に捧げてもメリットのあるプレイアブルなクリーチャーを探すのには苦労しています。 《とぐろ巻きの巫女》や《氷牙のコアトル》のような2マナ域が精一杯でしょう。そう考えると、やはり《緻密》や《否定の力》にこだわる価値がありそうです。
「閃光」サイクルでいえば、このデッキで《耕作の閃光》を使った構築をしようとしましたが、見事に失敗しました。《拒絶の閃光》とときと同じように、生け贄に捧げるに値する軽いクリーチャーがモダンにはほとんど存在しないのです。《有翼の叡智、ナドゥ》の能力的にも、場にクリーチャーがいたほうが良いでしょう。さらに言うと、単にモダンのデッキでナドゥをサポートするために十分な基本土地をいれるのは、マナベースに大きな犠牲を強いることになるので単純に不可能でした。
《有翼の叡智、ナドゥ》デッキをこのようなミッドレンジに寄せて構築するのは魅力的ですが、歴史的にはコンボデッキはやや遅く妨害に耐性のあるバリエーションのほうが結果を残しています。しかしナドゥの場合、単純にコンボを決めるのが簡単すぎて悩む必要がありません。ナドゥの能力は、単に膨大な量のリソースを生み出す手段でしかないのです。
ナドゥデッキをミッドレンジに調整するときの目標は、《有翼の叡智、ナドゥ》が機能しないゲームにおいて、ほかのカードの質を上げることです。しかし、《とぐろ巻きの巫女》や《溌剌の牧羊犬、フィリア》《儚い存在》《石鍛冶の神秘家》のようなカードが、実際にフォーマット全体に対してどれだけ有効か疑問にのこります。
『モダンホライゾン3』発売後は、すぐにコンボに特化したアプローチを試すのが楽しみです。ここまで見てきたものは、このセットの可能性の一端に過ぎませんが期待は膨らむばかりです!
それではまた次回!