はじめに
みなさん、こんにちは。
『モダンホライゾン3』がリリースされて2週間以上が経ち、新環境のモダンのイベントもいくつか開催されましたね。予想通り『モダンホライゾン3』から登場した強力なカードを採用したデッキが結果を残しており、環境が激変しているようです。
さて、今回の連載では『Modern Challenge』と『東西モダン最強決定戦2024』の入賞デッキを見ていきたいと思います。
『Modern Challenge 64』 6/16
ストームの復権
開催日:2024年6月16日
優勝 Eldrazi Tron
準優勝 Jeskai Control
3位 Ruby Storm
4位 Ruby Storm
5位 Eldrazi
7位 Boros Energy
『モダンホライゾン3』がMOに実装された直後に開催された『Modern Challenge』は、新カードによって強化されたEldrazi TronのほかにもJeskai Control、Dimir Control、Boros Energy、Stormなどさまざまなデッキが入賞していました。
そのなかでも印象に残ったのは、《モンスーンの魔道士、ラル》と再録されモダンで初めて使用可能になった《ルビーの大メダル》によって大幅に強化されたRuby Stormでした。
デッキ紹介
Ruby Storm
『モダンホライゾン3』から《ルビーの大メダル》が再録され、強力な両面カードである《モンスーンの魔道士、ラル》を得たことでモダンでも成立した赤単色のStormデッキ。
《ルビーの大メダル》と《モンスーンの魔道士、ラル》という2種類のスペルを減少させるカードを利用し、《発熱の儀式》や《捨て身の儀式》といった儀式スペルを少ないマナでプレイしてマナを伸ばしていくことができます。
その後、《無謀なる衝動》《レンの決意》《不可能の一瞥》といったカードで手札を補充し、《炎の中の過去》でスペルを再利用して最終的に《ぶどう弾》までつなげてゲームに勝利します。
最速で2ターン目に勝利することもできる速度もあり、新環境の有力なコンボデッキとして注目を集めているデッキになります。
☆注目ポイント
変身能力のおかげで、クリーチャー除去にもある程度の耐性があるのも《モンスーンの魔道士、ラル》の強みになります。インスタント、ソーサリーを複数搭載したこのデッキでは《モンスーンの魔道士、ラル》プレインズウォーカーに変身させることは容易です。
最速で2ターン、高確率で3ターン以内にコンボを決めることができるため、今後は警戒されることが予想されます。特に《減衰球》は多くのデッキで採用されるので注意していきたいところです。
緑をタッチして《自然の要求》など置物対策を採用したリストも見られます。緑をタッチすることでハンデスやカウンター対策として《夏の帳》も使えます。
『Modern Challenge 64』 6/17
プレインズウォーカーによって強化されたコントロール
新カードである《知りたがりの学徒、タミヨウ》は前評判通り多くのデッキで活躍しています。
特に《知りたがりの学徒、タミヨウ》と《瞬唱の魔道士》の2種類のウィザードを搭載したコントロールは、《アノールの焔》を含めた優秀な青赤のスペルにアクセスすることができ、今大会で複数の入賞者を出していました。
デッキ紹介
Jeskai Control
モダンのコントロールデッキは《一つの指輪》をアドバンテージ源として採用したものが一般的ですが、今大会で入賞を果たしたJeskai Controlはエネルギーカウンターを得られるスペルや、《知りたがりの学徒、タミヨウ》や《瞬唱の魔道士》を搭載したIzzet Wizardsに近い構成になっています。
《一つの指輪》を採用したバージョンと異なり、このバージョンはインスタントタイミングで動くことができるため、StormやNadu Comboといったコンボデッキとのマッチアップでも大きな隙を作らず、《電気放出》と《語りの調律》という2種類の優秀な1マナスペルでRakdos Scam、Yawgmothなど環境の多くのクリーチャーを使ったデッキに強い構成になっています。
☆注目ポイント
ウィザードのクリーチャータイプを持つ《知りたがりの学徒、タミヨウ》と《瞬唱の魔道士》を採用しているため《アノールの焔》でアドバンテージを得やすく、Ruby Stormの《ルビーの大メダル》をメインから対策する手段にもなります。
《知りたがりの学徒、タミヨウ》はタフネスが3あるので《敏捷なこそ泥、ラガバン》を止めることができ、《定業》や《語りの調律》により容易にプレインズウォーカーに変身できます。
プレインズウォーカーに変身後も相手の攻撃クリーチャーを弱体化させる[+2]能力があるので、戦闘で処理することは困難になります。ライブラリーの半分をドローして、手札の上限がなくなる奥義までいけばほぼ勝ちです。このように1マナ域とは思えないほどのスペックで相手にとってはマスト除去になるため、サイド後もコントロールとのマッチアップでは腐りやすい除去も残さざる得なくなります。
《火の怒りのタイタン、フレージ》は場に出るか攻撃するたびに《稲妻のらせん》と同様の効果が誘発し、「脱出」もできるため長期戦でさらに活躍します。序盤をしのぎつつ中盤以降もフィニッシャーとして機能するカードはコントロールデッキにとって貴重であり、軽いスペルが多く墓地を肥やしやすいためゲームが進めば自然と「脱出」する機会が生まれます。
エネルギーカウンターを貯蔵することで《電気放出》は高タフネスのクリーチャーやプレインズウォーカーも処理できます。プレイヤーを対象にはできないものの、《稲妻》よりも優秀な火力除去になります。
《空の怒り》はエネルギーカウンターを消費することで支払うマナを節約することができ、効率性が重視されるモダンでは少ないマナ(エネルギーカウンター)でも複数のパーマネントを一掃することができます。エンチャントやアーティファクトも流せるフレキシブルさがこのスペルの特徴です。
『東西モダン最強決定戦2024』(東エリア)
Boros Energyの隆盛
先週末に日本東西で同時開催された大規模なモダンのテーブルトップイベント。
『モダンホライゾン3』がリリースされた直後ということで注目を集めていたイベントで、東エリアのイベントは289名、西エリアも146名の参加者を出していました。
東エリアは新カードを多数採用したBoros Energyがプレイオフに3名と大活躍でした。優勝したのは『モダンホライゾン3』参入後のモダンのベストデッキと噂のNadu Comboとなっています。ほかにも、Dimir MurktideやMerfolk、Jeskai Controlなど新たに強化されたデッキが中心でした。
デッキ紹介
Boros Energy
今大会で複数の入賞者を輩出したBoros Energyは、エネルギーカウンターを使うカードが複数収録された『モダンホライゾン3』によって成立したアーキタイプになります。マナ基盤や《鏡割りの寓話》など一部を除いたメインデッキの大半が、『モダンホライゾン3』のカードで占められています。
《魂の導き手》や《色めき立つ猛竜》《不安定な護符》といったエネルギーパッケージで高速クロックを確立しつつ、フレキシブルで優秀な除去である《電気放出》や《静牢》を使いながらビートダウンしていきます。
☆注目ポイント
《魂の導き手》はエネルギー源となりつつ余ったエネルギーカウンターを使って強化できるため、このデッキの主力のクリーチャーになります。《魂の導き手》が生き残ればデッキ内のすべてのクリーチャーが脅威となり、エネルギーカウンターを軸としたこのデッキでは毎ターン能力を誘発させることは容易です。
《色めき立つ猛竜》は手札からプレイし、エネルギーカウンターを支払うことで「続唱」のようなことができる能力を持っています。エネルギーカウンターを使うカードの中でも強力なカードの1枚です。1ターン目に《魂の導き手》、2ターン目に《色めき立つ猛竜》をプレイして《鏡割りの寓話》をただでプレイするという動きも可能です。
《電気放出》はエネルギーカウンターを得やすいこのデッキでは最も効率的な除去として機能します。《不安定な護符》はこのデッキにおいて繰り返し使えるカードアドバンテージ源で、《溌剌の牧羊犬、フィリア》でブリンクする主な対象になります。
《ナカティルの最下層民、アジャニ》は最近大きく評価を上げたカードで、重ねて引いてきてしまっても伝説ルールによって「猫が死亡する」という変身条件が満たされるため、トークンを生成しつつプレインズウォーカーに変身することができます。トークンによってプレインズウォーカーも守りやすくなり、維持できれば強力な能力で盤面をコントロールできます。
Merfolk
Merfolkはモダンの黎明期から存在するアーキタイプですが、カードパワーが高く優秀な除去が多いモダンでは苦戦を強いられていました。ただ『モダンホライゾン3』からの新戦力にも恵まれており、今大会でも人気があるデッキのひとつでした。
マーフォーク・クリーチャーを各種ロードで強化していけるので打点が高く、《霊気の薬瓶》や《魂の洞窟》からカウンターを気にすることなくマーフォークをプレイできます。青い《月の大魔術師》である《海の先駆け》をメインから採用しているため、特殊地形に依存した多くのデッキに強いデッキになります。
☆注目ポイント
色はまったく異なるものの、《海の先駆け》は《月の大魔術師》と同様に特殊地形を多用する多くのデッキにとって脅威となります。相手のマナをロックする以外にも、「島渡り」を付与する《真珠三叉矛の達人》などとシナジーがあり、島を採用していないほかのクリーチャーデッキとのマッチアップでも攻撃が通りやすくなります。
ピッチでプレイできるカウンターは環境に大きな影響を与える傾向にあります。《拒絶の閃光》は青いクリーチャーを多数搭載したこのデッキと相性が良く、マナコストも3なので素でプレイしやすいスペルになります。
《朦朧への没入》は地味ながら《魂の洞窟》や《喜ぶハーフリング》からプレイされる打ち消されないスペル対策として機能する優秀なカードで、《否定の力》や《緻密》のブルーカウントとしても使えます。
『東西モダン最強決定戦2024』(西エリア)
令和のネクロ
東エリアのイベントではBoros Energyが多数上位入賞していましたが、西エリアではプレイオフに入賞したすべてのデッキが異なるデッキでした。
Boros Energyは西エリアでも結果を残しており、『モダンホライゾン3』リリース後の環境のベストデッキのひとつとなりそうです。
優勝したのは現代版の《ネクロポーテンス》として注目を集めていた《ネクロドミナンス》を搭載した黒単でした。
デッキ紹介
Mono Black Necro
《悲嘆》+《マラキールの再誕》のスキャムパッケージを搭載したMono Black Scamは旧環境でも見られましたが、《ネクロドミナンス》やそれによって一気に価値を上げた《魂の撃ち込み》によって大幅に強化されました。
《ダウスィーの虚空歩き》など効率的なクロックでプレッシャーを与えつつ、複数搭載されたピッチスペルで妨害していき、《ネクロドミナンス》や《一つの指輪》でアドバンテージを稼いでいきます。
メインから採用しやすい墓地対策である《ダウスィーの虚空歩き》や、《悲嘆》+《マラキールの再誕》のコンボ、《思考囲い》など妨害が豊富でピッチでプレイできる除去も多いためStormやNaduなどコンボデッキに強いデッキになります。
☆注目ポイント
《ネクロドミナンス》は手札上限が5枚と決して無視できないデメリットがあり、ペイライフも痛いですがピッチで4点ドレインできる《魂の撃ち込み》と相性が良く、複数枚引ければそのままゲームに勝つこともできます。
《魂の撃ち込み》と《不憫な悲哀の行進》の2種類のピッチスペルは、《ネクロドミナンス》や《一つの指輪》によって失ったライフを回復する手段になります。またこれらでカードを大量に引くことができるためピッチコストも払いやすく、ライフに変換することでさらにアドバンテージを稼ぐことができます。
《黙示録、シェオルドレッド》は《ネクロドミナンス》との組み合わせが強力です。カードを引くとライフゲインできる能力を利用して、ライフを1まで残して大量にカードをドローすることができます。《不敬者破り》は除去スペルとしても使えるスペルランドで、《悲嘆》などピッチスペルのコストにもなる便利なカードです。
総括
モダンのローテーションとも表現されることも多い『モダンホライゾン』シリーズですが、『東西モダン最強決定戦2024』で入賞していたアーキタイプも『モダンホライゾン3』の新カードを複数搭載したものが中心で環境が大きく変化していることが確認できました。
『モダンホライゾン3』によって強化、成立したデッキは数多くあり、現在のモダンはイベント毎に新たなアーキタイプが登場する開かれた環境となっています。また、この時期がデッキ構築やチューニングをするにあたって一番楽しい時期でもあります。
今週末に開催されるプロツアー『モダンホライゾン3』ではどのようなデッキが持ち込まれるのか楽しみですね。USA Modern Express vol.116は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!