MID~OTJ期のスタンダード環境を振り返る!
みなさん、こんにちは。晴れる屋メディアの紳さんです。
いよいよ7月26日(金)、スタンダード最新セット『ブルームバロウ』のプレリリースが始まり、同時にスタンダード環境でローテーションが行われます。
『ブルームバロウ』と入れ替わりになるセットは
『イニストラード:真夜中の狩り』
『イニストラード:真紅の契り』
『神河:輝ける世界』
『ニューカペナの街角』
です。これらは7月25日(木)を最後にスタンダードで使用不可となります。今までありがとう。
また、先日行われた『第27期スタンダード神決定戦』はこれまでにない広いカードプールでの決戦となり、ローテーション前の集大成といえる素晴らしい大会となりました。
今回はMID~OTJ期のスタンダード環境をまとめる記事として、スタンダード神の結果をチェックしながら、激動となった1年3ヵ月の出来事を振り返ります!
大発表!ローテーション期間が2年→3年に変更
- 2023/5/8
- スタンダードのローテーション期間が変更!これからどうなる!?
- 晴れる屋メディアチーム
2023年5月、プロツアー『機械兵団の進軍』と同時期にスタンダードのローテーション期間の変更が告知されました。
これによりローテーション期間が2年→3年へと変更となり、これ以降はスタンダードで使用可能なカードプールが約1年分、広くなります。
【お知らせ】スタンダード・フォーマットに対する取り組みのひとつとして、以降セット・ローテーションの期間を「2年」から「3年」へと変更いたします。これに伴い、今年に限り『エルドレインの森』発売時のローテーションはありません。詳細は記事をご確認ください。 https://t.co/rzDLSrFNut #mtgjp
— マジック:ザ・ギャザリング (@mtgjp) May 7, 2023
最強すぎたラクドス。パワーカード3枚が同時に禁止
2023年5月5日~7日にかけてプロツアー『機械兵団の進軍』が開催され、《絶望招来》《鏡割りの寓話》《勢団の銀行破り》を各3枚~4枚(ほとんど4枚)採用したラクドスカラーのデッキが優勝含めトップ8に5つ入賞という結果となりました。
こちらは優勝したネイサン・ストイア選手のデッキです。今見ると、強すぎてスタンダードのデッキに見えません。
《希望の標、チャンドラ》からの《絶望招来》は本当に絶望的なカードパワーだったように思います。ちなみに当時の有力な対抗デッキはアゾリウス兵士やエスパーミッドレンジでした。
この圧倒的な支配率、パフォーマンスを受けてマジック公式は5月29日に禁止制限告知を発表し、この3枚のパワーカードが同時に禁止となりました。
『エルドレインの森』発売!《豆の木をのぼれ》が登場
2023年9月8日、『エルドレインの森』が発売。『エルドレインの王権』で大活躍した出来事を持つ呪文が再び登場し、より戦略の幅が拡がりました。
また、アンコモンながら《豆の木をのぼれ》のカードパワーの高さには、多くのプレイヤーが驚いたのではないでしょうか。
特にスタンダードでは《力線の束縛》が1マナで唱えられるのにも関わらず1ドローできることから、ドメインランプを大幅に強化しました。
そのほか、《アガサの魂の大釜》を使ったコンボデッキの登場や《忠義の徳目》を採用した白系ミッドレンジの台頭などが印象的です。
ちなみに従来の2年ローテーション制では、この『エルドレインの森』の登場でローテーションが起きていましたので、これまでにない広いカードプールのスタンダード環境がここから始まることになります。
『第29回マジック世界選手権』決勝はエスパー対決!
2023年9月24日、決勝戦のフォーマットがスタンダード構築となった『第29回マジック世界選手権』ではフランスのジャン=エマニュエル・ドゥプラ選手と日本の小坂 和音選手のエスパー対決が注目を集めました。
こちらは優勝したのはドゥプラ選手のエスパーレジェンズのデッキリストです。
《スレイベンの守護者、サリア》を筆頭としたクリーチャー偏重型のミッドレンジデッキで、伝説のクリーチャーを多く採用していることから《英雄の公有地》や《天上都市、大田原》のような「魂力」土地を強く使うことができるデッキでした。
当時のトップメタがドメインランプだったこともあり、《ゼンディカーへの侵攻》や《太陽降下》を1マナ重くさせる《スレイベンの守護者、サリア》が刺さります。
一方、惜しくも決勝で敗れて準優勝となった小坂選手のデッキには《婚礼の発表》《忠義の徳目》《放浪皇》といったパワーカードが多く採用されており、おなじエスパーでも構成はまったく違うものでした。
エスパーといえばこちらのデッキの方がメジャーで、ここから長きにわたってトップメタとして君臨し続けることになります。
2023年9月の時点ですが、デッキはほぼ完成形ですね。
『イクサラン:失われし洞窟』発売!《魂の洞窟》が再録
2023年11月17日、『イクサラン:失われし洞窟』が発売され、《魂の洞窟》の再録が話題となりました。
今後、スタンダードではドメインランプの《偉大なる統一者、アトラクサ》が打ち消せなくなるという衝撃的なニュースに多くのプレイヤーは戦々恐々としたのではないでしょうか。
しかも、《魂の洞窟》で天使を指定すれば《怒りの大天使》が、ファイレクシアを指定すれば《金属の徒党の種子鮫》が打ち消せなくなるというオマケつきです。
「これはもう、文句なくドメインランプの独壇場になる!」と思いましたが、実際はランプ戦略を咎める赤単アグロが台頭したり、《偉大なる統一者、アトラクサ》の手札補充を無効化できる《ティシャーナの潮縛り》が活躍したりと、混沌としたメタゲームが展開されていきます。
『カルロフ邸殺人事件』発売!ボロス召集がトップメタに
2024年2月9日、『カルロフ邸殺人事件』が発売。これまでマイナーデッキだったボロス召集がとんでもない強化を受けます。
1ターン目《ヴォルダーレンの美食家》《ひよっこ捜査員》からの2ターン目《上機嫌の解体》 → 《イーオスの遍歴の騎士》というパーフェクトムーブに対抗できるデッキはなく、ブン回ったら間違いなく最強のデッキで、推しも推されぬトップメタデッキへと急浮上します。
あまりにも速く、最終的に《戦導者の号令》ですら遅く感じるようになり、少しづつデッキから抜けていったのが印象的です。
このデッキが強すぎるあまり、《一時的封鎖》《危難の道》といった3マナ全体除去はサイドボードに必須のカードとなりました。
また、3年ローテーションに変更されたことで、このタイミングで《事件現場の分析者》と『ニューカペナの街角』のオートフェッチランドが同時に使えるようになり、世界魂ランプという新デッキが誕生したことも感慨深いです。
- 2024/4/3
- ティムールランプ
大量マナから一撃必殺を叩き込め!
まさしく偶然の産物。マジックとは奥が深いですね。
プロツアー『サンダー・ジャンクションの無法者』日本人選手が優勝&準優勝
2024年4月19日に『サンダー・ジャンクションの無法者』が発売。4月26日~28日にはプロツアー『サンダー・ジャンクションの無法者』が開催され、トッププロである井川 良彦選手、高橋 優太選手による日本人2人による夢の決勝戦となりました。
優勝した井川選手が使用したのはドメインランプ。《ゼンディカーへの侵攻》を採用せず、《洞窟探検》を採用してスピードアップした最新型です。
全体を通して、井川選手が《喝破》を読み切り、3マナをケアしながら《太陽降下》をプレイするシーンや準々決勝の世界魂ランプとの死闘が印象に残っています。
トップ4には我らがHareruya Prosの松浦 拓海選手も入賞し、日本人ファンが狂喜乱舞する最高の結果でしたね!思い出すたびに涙が。
ちなみに日本人1,2フィニッシュが嬉しすぎて忘れていましたが、このプロツアーではエスパーミッドレンジの使用率が31.4%というとんでもない支配率でした。『サンダー・ジャンクションの無法者』が発売したばかりで新しいアーキタイプを試す時間が足りず、使い慣れたデッキを選択した結果が顕著に表れたようです。
『チャンピオンズカップ ファイナル』決勝はアゾリウスコントロール VS. エスパーミッドレンジ
2024年5月25日~26日、『チャンピオンズカップファイナル シーズン2ラウンド3』が開催され、決勝はアゾリウスコントロール対エスパーミッドレンジとなりました。
- 2024/05/31
- 平山 怜のRC準優勝レポート!~マッチアップ特有のゲームプランを設定しよう~
- 平山 怜
我らがHareruya Prosの平山 怜選手が見事、アゾリウスコントロールで準優勝!
平山選手が「ここ10年で最高峰」と評価するほど、打ち消し・ドローソース・全体除去・フィニッシャーに優秀なカードが揃っています。
『サンダー・ジャンクションの無法者』で《三歩先》が登場したことにより、完成度が格段に上がりました。
まもなく訪れるローテーション後は、《記憶の氾濫》と《放浪皇》が抜けた穴を埋めるカードを探すことになります。『ブルームバロウ』の新カードに期待したいですね!
『スタンダード神決定戦』は白熱のディミーア対決!
7月13日~15日に行われた『第27期スタンダード神挑戦者決定戦』には102名が参加し、MID~OTJ期の集大成となる素晴らしい大会になりました。
デッキの種類や使用率などの詳細はぜひ、メタゲームブレイクダウンをご参考ください。
- 2024/7/15
- 第27期スタンダード神挑戦者決定戦:メタゲームブレイクダウン
- 晴れる屋メディアチーム
これまでになく広いカードプールで、新セットが発売されるたびにトップメタのデッキが入れ替わり続けた1年3ヵ月。
すべてを凝縮させた結果、メタゲームは最終的にアゾリウスコントロール・ボロス召集・黒系ミッドレンジの三つ巴となりました。
『第27期スタンダード神挑戦者決定戦』
優勝 ディミーアミッドレンジ
準優勝 ゴルガリミッドレンジ
トップ4 アゾリウスコントロール
トップ4 ボロス召集
トップ8 ディミーアミッドレンジ
トップ8 エスパーレジェンズ
トップ8 ボロス召集
トップ8 ボロス召集
トップ8もメタゲームの人気が反映された結果となり、ディミーアミッドレンジが優勝して神への挑戦権を手にしています。
王者、ディミーアミッドレンジ
優勝した磯ヶ谷 怜雄さんのディミーアミッドレンジのリストです。
ディミーアに限らず、現スタンダード環境において《腐食の荒馬》は黒系ミッドレンジの2マナ最強クリーチャーといって差し支えありません。2マナのクリーチャーが攻撃するだけで手札を増やせるのは驚異的なパフォーマンスです。
《フェアリーの黒幕》《大洞窟のコウモリ》といった優秀な飛行クリーチャーと《ヨーグモスの法務官、ギックス》の組み合わせもハンドアドバンテージを容易に稼ぎ、1枚のカードが2枚分、3枚分の活躍をすることも珍しくありません。
盤面のクリーチャーが攻撃するだけで手札が増えるということは、カードを1対1交換してるだけでゲームに勝ててしまいます。まさに理想的なクロックパーミッションデッキです。
磯ヶ谷さんのデッキで一番印象的なのは2枚採用された《冷静なスフィンクス》です。
瞬速で登場したのち、呪文さえ唱えなければ呪禁を持ち続ける飛行5/3クリーチャーはゲームを決定づけるほどのインパクトがあります。
おなじくディミーア対決となった矢島さんとの神決定戦では、決め手に思えた《不笑のソリン》を一撃で落としてみせ、神の座を奪い取ることに成功しました。
ちなみに矢島さんは前回の神決定戦でもディミーアを使用しており、そのときは防衛に成功しています。
MID~OTJ期は実にたくさんのアーキタイプが登場しましたが、対応力、安定性においてディミーアミッドレンジが頭一つ抜けていた、という印象です。
長きにわたりトップメタとして君臨していたエスパーミッドレンジもそうでしたが、カードプールが広いことで、さまざまな戦略に対して包括的に対処できるデッキが最終的に勝ち残ったのではないかと推測します。
おわりに
以上、駆け足でここ1年3ヵ月の主な出来事を紹介してまいりました。
カードプールが広いことで自由にさまざまな戦略のデッキを組むことができた反面、対応しなければならないカードが多すぎて構築に悩むことも多かったかもしれません。とても濃いスタンダード環境だったと思います。
個人的なMVPカードは《放浪皇》で、瞬速で登場するプレインズウォーカーというのは斬新であり、強力でした。除去・ライフ回復・クリーチャー強化・クリーチャー生成といろんなことができて、本当に楽しいカードでした。
相手に使われて嫌だったカードとしてもNo.1です。『ブルームバロウ』環境に突入したあともしばらくは、白含みの4マナが立っていたら《放浪皇》をうっかり警戒してしまうかもしれません。
それでは次回、『ブルームバロウ』環境でお会いしましょう。よいスタンダードライフを!