はじめに
みなさん、こんにちは。
6月の禁止改定では、多くのプレイヤーがここ数か月の間環境を支配しているDimir Scam(Reanimator)にテコ入れが入ると予想していましたが、結果のほうはみなさんがご存じのように変更なしでした。
変更がなかった主な理由は、『モダンホライゾン3』がリリースされて間もなかったことや同セットが環境に与える影響を考慮したことでしたが、Dimir Scam系の主力である《悲嘆》の禁止を望む声が多かったため難しいところです。
さて、今回の連載では『Legacy Challenge』『Legacy Showcase Challenge』の入賞デッキを見ていきたいと思います。
『Legacy Challenge 32』 6/28
『モダンホライゾン3』のカードが複数活躍
モダン環境を支配している《有翼の叡智、ナドゥ》はレガシーでも通用する強さのようです。
ほかにも《ネザーゴイフ》《超能力蛙》《知りたがりの学徒、タミヨウ》など、『モダンホライゾン3』の新カードが複数活躍しています。
一方で、今大会でもDimir Reanimatorはプレイオフに半数と高い勝率を維持していました。
デッキ紹介
Grixis Delver
この大会には筆者も参加し、準優勝という好成績を残すことができました。『モダンホライゾン3』の新カードである《超能力蛙》が使いたかったのもあり、使い慣れているGrixis Delverを使いました。
デッキリストは『Eternal Weekend Europe 2023』を制したJUJUBEAN__2004(Julian Jakobovits)が、この大会の前週に使っていたリストを拝借しました。
軽いスペルやカウンターでバックアップしつつ、早い段階から強化した《超能力蛙》や《濁浪の執政》でゲームを決めることができるためコンボに強く、Dimir Reanimatorの次に高い勝率を出しています。
☆注目ポイント
《超能力蛙》でカードを捨ててサイズを上げつつ、《濁浪の執政》を探査で軽く唱えられるため、この2枚は非常に相性が良いです。《超能力蛙》に飛行を付与する際にインスタントやソーサリーを追放すれば、《濁浪の執政》のサイズを上げることもできます。
《超能力蛙》は貴重なアドバンテージ源であり、軽い除去を複数採用しているので攻撃を通すことも容易です。《虚空の杯》をX=1で置かれても、1マナ域のスペルを捨てて強化できるので逆転しやすくなりました。
2マナ域が《超能力蛙》と被ることと、タフネス1のクリーチャーが環境に少ないのもあり《オークの弓使い》は不採用になっていますが、相手の《オークの弓使い》対策としてサイドボードに数枚入れてもいいかも知れません。
《超能力蛙》《有翼の叡智、ナドゥ》《知りたがりの学徒、タミヨウ》など現在レガシーで活躍しているカードに青いカードが多く、特に《超能力蛙》に対して確定除去として機能する《紅蓮破》はメインから採用したいスペルです。
また《稲妻》では《超能力蛙》を除去するのが難しいので、現在のレガシーでは高タフネスのクリーチャーを処理できる《邪悪な熱気》のほうが強い場面が多くなっています。
《海の先駆け》はLandsやEldrazi Postとのマッチアップでサイドインされます。特殊地形がすべて島になるので相手の行動を制限しつつ、こちらは各種キャントリップやカウンター、《濁浪の執政》をプレイできるため《血染めの月》よりも使いやすいサイドカードです。
Dimir Tamiyo
現環境を支配しているDimir Scam系ではなく、《ネザーゴイフ》《超能力蛙》《知りたがりの学徒、タミヨウ》といった『モダンホライゾン3』の強力なカードが搭載された新しい形のデッキ。
強力なカードが多いのでデッキパワーこそ高いですが、メインから相手のカードに触る手段が《オークの弓使い》と《厚かましい借り手》のみと除去が少ないのが弱点です。
☆注目ポイント
《超能力蛙》はこのデッキでも強力なアドバンテージ源として機能し、《ネザーゴイフ》や《知りたがりの学徒、タミヨウ》ともシナジーがあります。軽い除去に貧しいため、Grixis Delverと比べると攻撃は通しづらくなっています。
1マナとはいえ《知りたがりの学徒、タミヨウ》はタフネスが3あるので《オークの弓使い》にも耐性があり、《渦まく知識》が使えるレガシーでは容易に2ターン目から変身させることができます。墓地のスペルを再利用できる[-3]能力もこのデッキに合っていますが、忠誠値を7まで上げて奥義を発動することが主な使い方になりそうです。
《ネザーゴイフ》はフェッチランドや《ミシュラのガラクタ》、軽いキャントリップスペルが使えるレガシーでは、1マナ3/4以上のクリーチャーとして扱うことができます。多くの場合《稲妻》の射程圏外であり、《紅蓮破》にも引っ掛かりません。ただ自分の墓地のみを参照にするため、墓地対策には弱くなります。
『Legacy Showcase Challenge』 7/6
Dimir Reanimator祭り
『Legacy Showcase Challenge』はMOのプレミアイベントで、参加するには40QPが必要となり、トップ8入賞者にはシーズン終了後に開催される『Showcase Qualifier』への参戦権が与えられます。
今大会はDimir Reanimatorがプレイオフに6名と、Dimir系一強状態の環境を証明する結果になりました。
『Legacy Challenge』などではいろいろなデッキが見られますが、競技思考の高いプレイヤーが集まる『Legacy Showcase』では勝率が高いデッキが選択される傾向にあるため、今大会の結果は環境を解析するうえで参考になります。
デッキ紹介
Dimir Reanimator
現在のレガシーでダントツの勝率を誇るDimir Reanimator。禁止改定による影響を受けず、最近リリースされたセットからの新戦力にも恵まれていました。
もともとReanimator戦略はオールインコンボ的な側面もありましたが、《悲嘆》+《再活性》パッケージを搭載するようになってから戦略の幅が広がり、墓地対策にも耐性が付きました。
これだけでも十分に環境最強クラスの強さでしたが、今年に入ってからも『カルロフ邸殺人事件』から「諜報」ランド、そして『モダンホライゾン3』から《超能力蛙》を得たことでさらに強化されています。
☆注目ポイント
今やDimir系デッキの定番になりつつある《超能力蛙》。リアニメイトしたいクリーチャーを能動的に墓地に落とす手段として機能し、墓地対策されても手札に余ったリアニメイトスペルを捨てることで強化できるなど、このデッキの弱点をカバーしつつアドバンテージを稼げる優秀なクリーチャーになります。
《厚かましい借り手》は《濁浪の執政》や《超能力蛙》といった対処しにくいクリーチャーや、《墓掘りの檻》《未認可霊柩車》《虚空の杯》といった厄介な置物を対策する手段で、メインとサイド合わせて4枚採用しているリストも見られます。
サイドには《ダウスィーの虚空歩き》や《オークの弓使い》といったクリーチャーが複数採られているため、弱点である墓地対策にも耐性がつきました。特に墓地対策としても機能する《ダウスィーの虚空歩き》は、ミラーマッチでより強さを発揮します。
Eldrazi Post
《攪乱のフルート》《苛立たしいガラクタ》《まき散らす菌糸生物》など、Eldrazi Postも『モダンホライゾン3』の新カードによって強化されたデッキです。
《雲上の座》や《微光地》、『モダンホライゾン3』統率者デッキから登場した《次元の結節点》でトロンランドをそろえて大量のマナを捻出し、《絶え間ない飢餓、ウラモグ》や《引き裂かれし永劫、エムラクール》といった強力なエルドラージ・クリーチャーをプレイして圧倒していきます。
有色のスペルは必要最低限に絞られており、《雲上の座》やトロンランド、エルドラージスペルのコストを削減できる《ウギンの目》を活かすために無色スペルが中心の構成になっています。エルドラージスペルはプレイする際に能力が誘発するため、カウンターにも耐性があります。
☆注目ポイント
主に《不毛の大地》を対策するために、メインから《攪乱のフルート》がフルに採用されています。瞬速持ちなので相手の行動に対応して出すことができるだけでなく、あらかじめ設置して相手のキーカードの展開やカウンターを牽制できます。
《次元の結節点》は神座・土地の水増しになり、これ1枚でトロンランドの条件が満たせるため高コストのエルドラージスペルがプレイしやすくなります。
《苛立たしいガラクタ》は双方のプレイヤーに影響があるカードですが、《意志の力》《否定の力》など各種ピッチスペルや《目くらまし》《ミシュラのガラクタ》などをカウンターできるので、多くの場合相手のほうが影響が大きく、ドローに変換することもできるので無駄になりにくく使いやすいカードになります。
マナ加速としてもマナを縛る手段としても使える《まき散らす菌糸生物》は、優秀なエルドラージ・クリーチャーです。あらゆる土地をサーチできるため、《雲上の座》や《次元の結節点》をサーチすることでマナを伸ばしたり、各種特殊地形を状況に応じてサーチしてくることができます。
総括
6月24日の禁止改定以来、レガシーのコミュニティではDimir Reanimator系の主力である《悲嘆》の禁止について論争が繰り広げられています。
『Legacy Showcase Challenge』でもトップ8に6名入賞、ほかのデッキも墓地対策をメインから積んでいるなどDimir Reanimatorが支配的なのは明らかであり、環境を歪めていることが分かります。《悲嘆》を禁止にすることで環境の健全性が戻るかは未知数ですが、何かしらの修正を加えることが必要であることは間違いなさそうです。
USA Legacy Express vol.237は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!