USA Legacy Express vol.238 -エルドラージ、襲来-

Kenta Hiroki

はじめに

みなさん、こんにちは。

来月も『BMO Vol.13』などテーブルトップのイベントが充実していますね。

さて、今回の連載では『Legacy Challenge』『Legacy Showcase Qualifier』の入賞デッキを見ていきたいと思います。

『Legacy Challenge 32』
エルドラージの時代が到来

開催日:2024年7月19日

優勝 Grixis Delver

準優勝 Eldrazi

3位 Eldrazi Post

4位 Dimir Reanimator

5位 Death and Taxes

6位 Eldrazi

7位 Eldrazi

8位 Eldrazi

トップ8デッキリスト

『Legacy Showcase Qualifier』直前に開催された『Legacy Challenge 32』は最近評価を上げているEldraziがトップ8に半数の入賞者を出す強さを見せました。

Eldraziは『モダンホライゾン3』から新戦力を得て大幅に強化されたアーキタイプの一つで、現レガシー環境で特に注目すべきデッキです。

なお、優勝したのはGrixis Delverでした。

デッキ紹介

Eldrazi

エルドラージは『モダンホライゾン3』のテーマの1つであったこともあり、多くの新型エルドラージが登場し、このデッキを強化しました。

耐え抜くもの、母聖樹四肢切断

このデッキのスペルの多くはCを必要とするため、《血染めの月》《海の先駆け》といったカードは天敵です。対策のために《耐え抜くもの、母聖樹》《四肢切断》が採用されています。

☆注目ポイント

まばゆい肉掻き終わりを告げるものまき散らす菌糸生物

デッキの大半が無色スペルで占められているため、《まばゆい肉掻き》は安定して対戦相手にダメージを与えることができ、戦闘以外の勝ち手段として重宝します。《終わりを告げるもの》《古えの墳墓》《エルドラージの寺院》から1ターン目にプレイすることができ、全体強化しつつ《運命を貪るもの》《絶え間ない飢餓、ウラモグ》など高コストのエルドラージをプレイしやすくする有用なロードです。

《まき散らす菌糸生物》はこのデッキで最強の土地である《ウギンの目》をサーチしながら、キッカーを支払えば相手のマナ基盤や厄介な《ウルザの物語》を破壊するなど、反撃の芽を摘む強力なクリーチャーです。

運命を貪るもの荒景学院の戦闘魔道士

《運命を貪るもの》は平凡にプレイして打ち消されたとしても、唱えたときの誘発能力が万能除去になるので悪くありません。初手にあれば《むかしむかし》のような効果を得ることができ、序盤の安定性の向上に貢献します。《荒景学院の戦闘魔道士》はカウンターされない置物対策として機能し、青マナも捻出できるなら追加でクリーチャー対策としても機能するなど、フレキシブルさが魅力です。

コジレックの命令

《コジレックの命令》はマナ加速・ドロー・除去・墓地追放といろんな用途に使える優秀なスペルで、現環境トップメタであるReanimatorとのマッチアップでもメインから活躍する墓地対策として重宝します。エルドラージ呪文であるため、《ウギンの目》《エルドラージの寺院》の恩恵を受けて序盤からプレイできる点も見逃せません。

Grixis Delver

アドバンテージ源の《超能力蛙》が登場したことで、『モダンホライゾン3』リリース後はGrixis Delverがテンポデッキの人気を牽引しています。

オークの弓使い秘密を掘り下げる者ドラゴンの怒りの媒介者不毛の大地

前環境と比べると《オークの弓使い》をメインから採用したデッキの使用率が減り、《秘密を掘り下げる者》《ドラゴンの怒りの媒介者》の立ち位置が良くなりました。トップティアのEldraziに対しては《不毛の大地》が刺さるため、このデッキが現在、有力な選択肢として注目されているようです。

☆注目ポイント

超能力蛙

《超能力蛙》は手札からカードを捨てることで即座にスタッツを強化することができるため、《稲妻》で対処されにくいクリーチャーです。手札は減るものの能動的に《ドラゴンの怒りの媒介者》の昂揚を達成したり、《濁浪の執政》を素早くプレイするために墓地を肥やせる点も優秀です。《超能力蛙》の攻撃が通れば手札も補充でき、隙がありません。

四肢切断

《四肢切断》はファイレクシア・マナを支払うのが痛い場面もありますが、《虚空の杯》をX=1で置かれても問題なくプレイできる点が現環境では使いやすい除去といえるでしょう。

意志の力目くらまし記憶への放逐

呪文を唱えたときに能力が誘発するエルドラージは打ち消し甲斐がありません。エルドラージが全体的に《意志の力》《目くらまし》に耐性があるようなもので、青いデッキは苦戦しがちです。呪文そのものと誘発型能力をまとめてカウンターできる《記憶への放逐》は優秀なサイドカードになります。

海の先駆け発展の代価

特殊地形対策として最近は新カードの《海の先駆け》が採用されているリストをよく見かけます。一方で、2マナと軽く、よりアグレッシブに勝利を目指せる《発展の代価》はアグロデッキであるDelverの戦略に合っており、こちらも有力な選択肢となりそうです。

無のロッド一つの指輪丸砥石

アーティファクトの起動を封じる《無のロッド》は『モダンホライゾン3』リリース後に数を増やしたEldrazi Postや、常に一定数見られるPainterおよびWelderなど複数のマッチアップで活躍します。

『Legacy Showcase Qualifier』
安定した強さのDimir Reanimator

開催日:2024年7月20日

優勝 Dimir Reanimator

準優勝 Death and Taxes

3位 Dimir Reanimator

4位 Elves

5位 Eldrazi

6位 Grixis Delver

7位 Dimir Reanimator

8位 Beans Control

トップ8デッキリスト

『Legacy Showcase Qualifier』は『Legacy Showcase Challenge』でトップ8に入賞したプレイヤーか、『Last Chance Events』を全勝したプレイヤーのみが参戦できるイベントです。優勝者には『Magic Online Champions Showcase』本戦への参加権が与えられます。

この大会ではトップメタであるDimir Reanimatorが全体の半数近くを占めました。トップ8に3名を送り込み、見事に優勝を果たしています。

デッキ紹介

Dimir Reanimator

Dimir Reanimatorは今大会で最も人気があり、高い勝率を出したデッキです。

オークの弓使いダウスィーの虚空歩き超能力蛙

以前の環境では2マナ域のクリーチャー枠に《オークの弓使い》《ダウスィーの虚空歩き》が採用されていましたが、『モダンホライゾン3』リリース以降は《超能力蛙》が主力カードとして定着しています。

☆注目ポイント

超能力蛙致命的な一押し闇の裏切り

このデッキにおける《超能力蛙》墓地対策をされたり、《虚空の杯》をX=1で置かれたときにサブプランの主力として活躍します。《オークの弓使い》《ダウスィーの虚空歩き》と違い、《意志の力》用のブルーカウントとして計算できる点も強みです。

ミラーマッチやGrixis Delverとの戦いでは、逆に《超能力蛙》を使われることが想定されます。メインから《致命的な一押し》、サイドから《闇の裏切り》が採用されるなど、いまやレガシー環境では《超能力蛙》対策は必須です。

海の先駆け暗黒の深部演劇の舞台

このデッキにとって苦手なマッチアップの一つであるLandsを対策するため、《海の先駆け》がサイドに採用されています。青黒でも《血染めの月》と同様の効果を持つカードが使えるようになったことは大きな収穫です。

記憶への放逐浅すぎる墓穴外科的摘出

サイドに2枚採用された《記憶への放逐》はEldraziとのマッチアップを意識しています。

《浅すぎる墓穴》はインスタントタイミングで墓地のクリーチャーを対象に取らずにリアニメイトできる面白いカードで、《外科的摘出》などピンポイントの墓地対策には耐性があります。《超能力蛙》の能力でリアニメイトするクリーチャーを調整することも可能で、《偉大なる統一者、アトラクサ》《グリセルブランド》《残虐の執政官》などリアニメイトする対象を散らして採用することで《外科的摘出》を使用されたときの被害を最小限に抑えることができます。

Beans Control

今大会のように参加権を持ったプレイヤーのみが参加できるイベントでは、あらかじめ持ち込まれるデッキを予想することができます。

今回はDimir ReanimatorやGrixis Delverといったデッキがメタゲームの中心になると判断し、コントロールデッキもいい選択肢となったようです。

聖カトリーヌの凱旋孤独濁浪の執政自然の怒りのタイタン、ウーロ

これまでのコントロールデッキでは《聖カトリーヌの凱旋》《孤独》などクリーチャーが多く採用されていましたが、今大会で入賞した多色コントロールは《濁浪の執政》が1枚と《自然の怒りのタイタン、ウーロ》が3枚採用されただけで、デッキの大半が除去やカウンターという構成でした。

終末力線の束縛豆の木をのぼれ

《渦まく知識》《思案》で必要な土地を探しつつ、打ち消しは《否定の力》《意志の力》、除去は《剣を鍬に》《力線の束縛》《終末》といった優秀な妨害スペルが揃っています。また、ピッチや1マナで唱えながらもマナ総量が5マナ以上のカードも多く、《豆の木をのぼれ》でどんどんアドバンテージを稼げるのがデッキの強みです。

☆注目ポイント

地の封印記憶への放逐

メインから《地の封印》を採用するなど、支配的勢力であるDimir Reanimatorへの対策を怠りません。キャントリップ付きなので、完全に無駄になることがない墓地対策カードです。《記憶への放逐》も3枚と多めに採用されており、青系デッキが苦手とするEldraziを対策しています。

精神壊しの罠夏の帳

コンボ対策に《精神壊しの罠》、青黒が強い環境では特に有用となる《夏の帳》も採用されています。エンドカードとなる《進め、エオルの家の子よ!》を押し通したり、《思考囲い》《悲嘆》を弾くこともできるため、とても優秀なサイドボードです。

禁止改定後のレガシー環境予想

悲嘆ウギンの目エルドラージの寺院

8月下旬に予定されている禁止改定では、多くのレガシープレイヤーが《悲嘆》は禁止になると予想しています。もしも《悲嘆》が禁止され、ほかに変更がないのだとしたらEldraziおよびEldrazi Postは新たなトップメタの一角として台頭することになるでしょう。

そのほか、《超能力蛙》を擁するテンポデッキとしてGrixis Delverが無難な立ち位置となりますし、Nadu Combo・Doomsday・Stormといったコンボデッキも数を増やすことになりそうです。

とりあえず、今月末から8月の中旬までは現在の環境が続くため、おもに墓地対策や《超能力蛙》対策をしっかりしていきたいところです。USA Legacy Express Vol.238は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!

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Kenta Hiroki アメリカ在住のプレイヤー。 フォーマットを問わず精力的に活動しており、SCGやグランプリの結果などからグローバルな最新情報を隔週で発信する「USA Modern Express」「USA Legacy Express」を連載中。 Kenta Hirokiの記事はこちら