はじめに
みなさん、こんにちは。
いよいよ『BMO Vol.13』が開催されます。今年の『Eternal Weekend 2024』のスケジュールも決まり、レガシーの大規模なテーブルトップのイベントが充実していますね。
さて、今回は『SCG Con Baltimore Legacy 5K』『Secret Lair Showdown Championship』『Legacy Challenge』の入賞デッキを見ていきたいと思います。
SCG Con Baltimore Legacy 5K
『モダンホライゾン3』のクリーチャーが大暴れ
『SCG Con Baltimore』で大規模なテーブルトップのレガシーイベントが開催されました。
今大会でもDimir Reanimatorは最もポピュラーなデッキで、高い勝率を維持しています。また、最近MOでも活躍しているEldraziやGrixis Delverなども健闘しました。
そんななか、《ネザーゴイフ》と《超能力蛙》を4枚採用するなど、『モダンホライゾン3』の強力なクリーチャーを軸としたGrixis Tempoが優勝を果たしています。
デッキ紹介
Grixis Tempo
今でもGrixis Delverというデッキは活躍していますが、《秘密を掘り下げる者》は《オークの弓使い》に弱く、カードパワーの面でも最近のクリーチャーと比べると劣るため、やや採用率は下がる傾向にあります。
Grixis Tempoはそんな《秘密を掘り下げる者》を不採用とした、新型のテンポデッキです。
《ドラゴンの怒りの媒介者》、《濁浪の執政》、《ネザーゴイフ》など墓地を参照にしたクリーチャーが中心なため、《虚空の力線》のような墓地対策には少し弱いかもしれません。
☆注目ポイント
このデッキは軽いスペルを多用し、墓地を肥やす手段も豊富です。《ネザーゴイフ》は《秘密を掘り下げる者》よりもクロックが早く、《稲妻》で除去されにくい優秀なクリーチャーとなります。
現環境ではDimir Reanimator、Dimir Tempo、Grixis Tempoなど《超能力蛙》を主力とするデッキも増えており、確実に除去できる《致命的な一押し》が《稲妻》よりも優先して採用されています。
サイドボードの《闇の裏切り》は《超能力蛙》《カザド=ドゥームのトロール》《悲嘆》といった厄介なクリーチャーをわずか1マナで処理できるカードで、Dimir系デッキとのマッチアップで重宝します。
《バロウゴイフ》は《タルモゴイフ》よりも1マナ重い代わりに接死と絆魂があり、さらに攻撃が通ることで発動する切削が強く、このデッキの戦略とも噛み合ったクリーチャーです。
Secret Lair Showdown Championship
圧巻のDimir
先週末にアメリカ・インディアナ州で開催された『Gen Con』の目玉イベントの一つである『Secret Lair Showdown Championship』では、現環境のトップメタであるDimir Reanimatorが一番人気となり、トップ8に4名を送り込むなど高い勝率を誇りました。
そんななか、優勝したのはDimir ReanimatorではなくDimir Tempoでした。
デッキ紹介
Dimir Tempo
DimirといってもScamやReanimatorと異なり《悲嘆》《再活性》のパッケージは採用していません。《ネザーゴイフ》 や《知りたがりの学徒、タミヨウ》といった軽いクリーチャーを複数採用し、テンポの良い構成を目指しています。
似た役割のカードが多いため、《悲嘆》などのハンデスによる被害がそこまで大きくなりません。また、軽いクロックと妨害が揃っており、大技狙いのDimir Reanimatorとのマッチアップでは有利にゲームを進めることができるでしょう。
Grixis Tempoと比べると、《ドラゴンの怒りの媒介者》やサイドからの《溶融》や《紅蓮破》を使えない点が少しパワーダウンしていますが、2色になったことでマナ基盤が安定しています。
☆注目ポイント
共鳴者能力で自身を強化する《超能力蛙》は、異なるタイプのカードを狙って墓地に落とすことで《ネザーゴイフ》のサイズを上げられるため、相性がとても良いです。
トップティアのDimir Reanimator対策として、メインから《虚無の呪文爆弾》が2枚採用されています。キャントリップもあり、いざとなったら自分の墓地を対象にすることで《濁浪の執政》を強化できるため、腐りにくい墓地対策カードです。
《致命的な一押し》は《稲妻》と違い、《超能力蛙》を確実に除去できるため、『モダンホライゾン3』登場後の環境で株を上げました。《カザド=ドゥームのトロール》や《濁浪の執政》を除去できる《喉首狙い》も1-2枚ほしいところです。
そのほかサイドの《殺し》はエルドラージ対策で採用されています。《もみ消し》はフェッチランドの起動や《不毛の大地》を妨害する以外にも、エルドラージの誘発型能力や《動く死体》まで対処できるなど、マルチに活躍するカードです。
Dimir Reanimator
Dimir Reanimatorは現環境のトップメタで、今大会に参加した32名のうち17名がこのデッキを選択し、プレイオフにも半数が進出しました。
8月下旬の禁止改定で「槍玉に挙げられる」と噂の《悲嘆》をもっとも強く使えるデッキでもあり、『BMO Vol.13』でも人気デッキの一つになることでしょう。
☆注目ポイント
トップメタであるDimir Reanimator同士のミラーマッチを想定し、《フェアリーの忌み者》や《棺の追放》といった墓地対策がメインから採られています。どちらも軽く、インスタントタイミングでリアニメイトを妨害することができ、特に《棺の追放》は緊急時に《納墓》でサーチしてフラッシュバックで唱えられる点が便利です。
《闇の裏切り》もサイドに3枚と多めに採用され、定番カードになりつつあります。《ネザーゴイフ》《超能力蛙》《カザド=ドゥームのトロール》《悲嘆》など、的には困らないですね。
《厚かましい借り手》は《濁浪の執政》を戻せるほか、《虚空の杯》《墓掘りの檻》《虚空の力線》など、天敵となるパーマネントを一時的に対処できるカードです。また、《仕組まれた爆薬》は《溶融》が使えないDimirにとって貴重な対策カードとなります。
Legacy Challenge 64
Painterがレガシーの最適解となるか
MOで開催された『Legacy Challenge 64』。ここでもDimir ReanimatorやEldraziがメタゲームの中心となりました。
そんななか、古来からのコンボデッキであるPainterが優勝しています。
デッキ紹介
Painter
レガシーにおけるPainterは常に一定数見かける定番デッキの一つです。《丸砥石》+《絵描きの召使い》による一撃必殺コンボがメインの勝ち手段になりますが、《ウルザの物語》や《鏡割りの寓話》といったコンボ以外の勝ち手段も採用されています。
このデッキは『エルドレインの森』で《アガサの魂の大釜》が登場したことによって大幅に強化されました。戦場のクリーチャーに《ゴブリンの溶接工》や《ゴブリンの技師》の能力を持たせることでデッキ全体のシナジーが高まり、安定してコンボを決めることができます。
また、《Phyrexian Devourer》を追放すれば簡単に半永久コンボが決まります。《ゴブリンの技師》が実質的に《納墓》となるため、《アガサの魂の大釜》とは2枚コンボのようなものです。
☆注目ポイント
PainterはEldraziに強いデッキです。なんといっても、《絵描きの召使い》の能力によってすべてのエルドラージが有色となるため、《エルドラージの寺院》と《ウギンの目》がかなり弱体化します。
また、『モダンホライゾン3』から《苛立たしいガラクタ》が登場したことで青いデッキはピッチカウンターが使えなくなり、Painter側はキーとなるスペルを通しやすくなりました。《苛立たしいガラクタ》は《ウルザの物語》からサーチできる上、いざとなればドローに変換することもできるので無駄になりません。
そのほか、Dimir Reanimatorに対しては《ウルザの物語》から《魂標ランタン》を持ってきて墓地対策することも可能です。
メインに《紅蓮破》《赤霊破》を採用しているので、《超能力蛙》や《知りたがりの学徒、タミヨウ》をメインから対応できることも強みです。
このように新型のPainterはメインからEldraziとDimirをメタった、環境的に強いデッキであることが伺えます。
総括
現レガシー環境は、Eldrazi・Grixis Tempo・Dimir Tempoなど『モダンホライゾン3』によって強化されたデッキがトップティアであることに異論はありません。そして今、それらのデッキに強いとされるPainterが大会で結果を残し続けています。
一方で、最近では《超能力蛙》がさらに勢力を拡大し、多色コントロールでも採用されるようになりました。先日のLegacy Challengeのなかにはトップ32中、合計76枚という驚異の採用率を叩き出した大会もあったようで、今後は《稲妻》よりも《致命的な一押し》が優先して採用されるなど、環境に大きな影響を与えることでしょう。
ひきつづき《超能力蛙》対策をしっかりしていきたいところです。USA Legacy Express Vol. 239は以上となります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!