Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2024/08/08)
はじめに
最新セット『ブルームバロウ』が発売され、スタンダードは大きな変革期を迎えている。環境に新しいカードが加わったのはもちろんのこと、なんと4つものセットがローテーションによりスタンダードを去るのだ!下記の4つのセットは、もうスタンダードで使用することはできない。
■スタンダード使用不可
『イニストラード:真夜中の狩り』
『イニストラード:真紅の契り』
『神河:輝ける世界』
『ニューカペナの街角』
『ブルームバロウ』から期待の新カードを得たデッキもあれば、ローテーションの被害がほとんどなかったものもあり、なかにはキーカードを失って形にならなくなってしまったものもある。
ローテーション落ちしたキーカード
まずは環境から去ることになった、スタンダードの主役たちを見ていこう。
《放浪皇》は突出した強さのプレインズウォーカーであり、幅広いデッキで採用されてきた。《記憶の氾濫》との相性が素晴らしかっただけに、この2枚を失うことはドロー・ゴー型のコントロールデッキにとって大打撃となるだろう。
《策謀の予見者、ラフィーン》がスタンダードに参入してから、エスパーミッドレンジはそのときどきに合わせた構成に変えることで、圧倒的な人気を誇り続けた。《婚礼の発表》や《敬虔な新米、デニック》も、このアーキタイプのおなじみのカードだ。この3枚を失った今、ミッドレンジでこの3色を使う理由はなくなったが、青黒や白黒に形を変えてこれからも生き残り続けると思っている。
赤系のアグロデッキは最高の1マナ域を失って大打撃を受けた。ただ、その代わり新セットからの戦力が加わっている。これについては後述しよう。
トライランドは多色デッキを支えてきたカードであり、特に「版図」デッキにとっては重要な存在だった。この土地が去ることで《力線の束縛》は弱体化し、「版図」の使い手にとってはやや風向きが悪くなっている。ただ、トライランドの穴を埋めうる「諜報」土地があるので、弱体化するとはいえ、「版図」デッキが絶滅することはないだろう。
土地に関するトピックはまだあり、オートフェッチランドがローテーション落ちすることになり、《事件現場の分析者》と《復活した精霊信者、ニッサ》を活用したティムールランプは壊滅的な被害を受けている。『ブルームバロウ』に再録された《寓話の小道》を使えば《復活した精霊信者、ニッサ》の能力を複数回誘発させられるが、これまでとは異なる構成にしなくてはならない。
スタンダードにおいて「魂力」土地はほぼすべてのデッキにおいて採用されてきたが、致命的な損失を受けるのはただひとつ、《大スライム、スローグルク》デッキだけだ。ただ《大スライム、スローグルク》も一緒にローテーション落ちするため、相棒を失って嘆くことはないだろう。
各種スローランドもローテーション落ちだ。これらをキーカードとするデッキはないが、環境のマナベースによってどんなデッキが組めるのか(あるいは組めないのか)を決定づけるため、言及すべき事項ではあるだろう。
スローランドが真価を発揮するのはミッドレンジやコントロールであり、アグロ向きのカードではない。ファストランド・ダメージランド・ミシュラランドが環境に残ることもあって、今後はより攻撃的な戦略へ向かいやすくなるかもしれない。
環境に残るキーカード
これまで見てきたように、なかには過去のデッキになってしまうものもあるが、大きな被害を受けていないデッキもある。既存のデッキでローテーションの影響がないデッキは、必然的に新環境で強い存在感を示すだろう。
召集デッキ
そのなかでも特に顕著なのは《上機嫌の解体》《イモデーンの徴募兵》《イーオスの遍歴の騎士》を軸にした「召集」デッキだ。Hareruya Wayfinderでは先だってその構成を紹介した。
新戦力で特筆すべきは《歴戦の巣穴守り》だろう。このデッキは強く、速く相手を叩き、そして驚くほど粘り強く戦える。
またローテーション落ちせず、なおかつデッキのコンセプトとなるカードのなかで最強なのは《イーオスの遍歴の騎士》だと考えている。その地力の高さから、このデッキは今後数か月の主役となるに違いない。
青をタッチするのは必須ではなく、《ヴォルダーレンの美食家》の穴を《ヨーティアの前線兵》で埋めれば、マナベースはより健全に構築できる。
ゴルガリミッドレンジ
続いての新環境デッキの候補は、友人であるハビエルからお借りしよう。
ゴルガリミッドレンジが失ったのは《死天狗茸の林間地》ぐらいなもので、ほぼ無傷で済んだデッキのひとつだ。デッキのコンセプトとして最強のカードが《イーオスの遍歴の騎士》だとすれば、《黙示録、シェオルドレッド》は単体で最強のカードであり、その採用先にはゴルガリが筆頭に挙がるだろう。
黒系のミッドレンジに緑を組み合わせたくなるのは《苔森の戦慄騎士》がいるからだが、青黒や白黒といった選択肢もありえる。
版図ランプ
ミッドレンジが多い環境だと思うのであれば、実績と信頼の《偉大なる統一者、アトラクサ》へ回帰し、スケール勝ちしてもいいだろう。実際にMagic Onlineではこういったリストが登場している。
トライランドを失い、動きはやや鈍くなったが、その地力の高さは健在だ。白の全体除去に《豆の木をのぼれ》によるアドバンテージ、《怒りの大天使》と《稲妻のらせん》のライフゲインと、クリーチャーベースのデッキに対して強い構成になっている。
果敢アグロ
続いて、環境に残るキーカードは《僧院の速槍》と《精鋭射手団の目立ちたがり》だ。
『ブルームバロウ』には「果敢」テーマをサポートするものが収録されている。たとえば、《熾火心の挑戦者》《嵐追いの才能》《カワウソボールの精鋭、キッツァ》《嵐捕りの導師》などだ。このデッキのベースは青赤になると思うが、《神出鬼没のカワウソ》《探索するドルイド》をタッチするために緑を足しても良いだろう。「英雄的」デッキのようなシナジーを組み込んだ、赤緑でまとめることもできる。
「果敢」「雄姿」デッキのベストな構築はいずれ判明していくと思うが、少なくとも環境初期に人気を博すことだろう。ただ「召集」デッキに対して難を抱えていて、それが課題になると考えている。このマッチアップでキーカードのひとつになるのは、相手のブロッカーを飛び越せる《精鋭射手団の目立ちたがり》だ。
毒性アグロ
これと同じ問題を抱えているのは「毒性」デッキだ。このデッキは『ファイレクシア:完全なる統一』のカードが中心で、ローテーション落ちしない。《消えゆく希望》や《渦巻く霧の行進》こそ失うが、ほかのカードで代用することができる。今こそ青のカードを完全に抜いて、白緑の構成に戻すべきなのかもしれない。
車輪の再発明
本質的なカードを失ってもなお、形を変えて生き残るデッキもある。「召集」デッキやそのほかのクリーチャーデッキが多いと考えるのであれば、全体除去+ドローという組み合わせに考えが至るのが自然だ。
《記憶の氾濫》と《放浪皇》こそ失ったが、アゾリウスコントロールはまだモノになるかもしれない。《跳ねる春、ベーザ》はアグロ系に有効なカードであり、このデッキに可能性を感じさせる。
私が手始めに使っているデッキをご紹介しよう。
アゾリウスコントロール
《放浪皇》と《記憶の氾濫》が抜けたのであれば、インスタントタイミングで動くことにこだわる必要は以前ほどなく、《探偵社社長、エズリム》のようなソーサリータイミングでゲームを決定づける重いカードを選択できる。
5色レジェンズ
少し姿を変えて生き残るデッキとして、5色レジェンズもある。《大スライム、スローグルク》と「魂力」土地による異常な動きはできずとも、デッキの核となるシナジーの多くは残されているのだ。
強力なドローエンジンである《侵攻の伝令、ローナ》と《太陽の執事長、インティ》、理不尽なマナ数を生み出す《伝説の秘宝》、そしてあらゆる色の伝説呪文を唱えられるようにする《英雄の公有地》と《魂の洞窟》が今後もスタンダードに残る。
まとめ
スタンダードはローテーションによって大きく変化しており、発明と創造の余地が多分に生まれている。ボロス召集やゴルガリミッドレンジのように、旧環境からほぼ無傷のまま生き残ったデッキもあり、最初の数週間で勝ちたいのであれば、そこから始めるのが手堅いだろう。とはいえ、天敵が環境からいなくなって可能性が出てくるデッキもあるし、新セットの参入によって斬新なデッキが出てくるのも間違いない。
みなさんも楽しいデッキ構築を!
マッティ・クイスマ (X)
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