USA Modern Express vol. 118 -ナドゥ vs. エネルギー vs. 蛙-

Kenta Hiroki

はじめに

みなさん、こんにちは。

今週末には『BIG MAGIC Open Vol.13』でチームモダンが開催予定など、日本国内でもモダンのイベントが充実しています。

今回の連載では『SCG CON Baltimore $10K RCQ』『Modern Super Qualifier』『No Nadu Modern $1k』の入賞デッキを見ていきたいと思います。

『SCG CON Baltimore $10K RCQ』 ─Nadu Summer─

開催日:2024年7月27日

優勝 Bant Nadu

準優勝 Bant Nadu

3位 Bant Nadu

4位 Bant Nadu

5位 Bant Nadu

6位 Ruby Storm

7位 Esper Conterol

8位 Mardu Sacrifice

トップ8デッキリスト

先月末に開催された大規模なテーブルトップイベント『SCG CON Baltimore $10K RCQ』は、プロツアーでも上位を支配していたBant Naduが高い勝率を出し、プレイオフにも5名の入賞者を出す結果になりました。

上位に複数入賞していたBant Naduは、プロツアー後のイベントで対策が厳しかった中でも全体の勝率が60%という強さを見せています。

ほかには、Mardu SacrificeやJeskai Controlなど『モダンホライゾン3』の新カードを搭載したデッキが中心となっていました。

デッキ紹介

Mardu Sacrifice

《魂の導き手》《オセロットの群れ》《ナカティルの最下層民、アジャニ》《色めき立つ猛竜》といった『モダンホライゾン3』の新カードを最大限に活かしているのがエネルギー系のデッキです。

ゴブリンの砲撃村の儀式ナカティルの最下層民、アジャニオセロットの群れ

今大会で入賞したバージョンは一般的なエネルギーデッキと異なり、《電気放出》《静牢》などエネルギー系の除去が不採用になっています。その代わり、《ゴブリンの砲撃》《村の儀式》といったサクリファイスエンジンが搭載されており、《ナカティルの最下層民、アジャニ》《オセロットの群れ》猫パッケージをより強く使える構成になっています。

黒を足すことによって除去やハンデス、《オークの弓使い》《敵対するもの、オブ・ニクシリス》にアクセスできるようになり、Naduやコントロールとの相性も改善されています。

☆注目ポイント

ゴブリンの砲撃Marionette Apprentice

サクり台の《ゴブリンの砲撃》《ナカティルの最下層民、アジャニ》を簡単に変身させる手段として機能し、《マリオネットの見習い》と組み合わせることで2点ダメージを飛ばせるので、戦闘することなくゲームを終わらせることもできるようになります。

ナカティルの最下層民、アジャニChthonian Nightmareオークの弓使い

《繰り返す悪夢》のリメイク版である《黄泉帰る悪夢》は、コストを支払うことで支払ったエネルギーと同じマナのクリーチャーをリアニメイトできます。このデッキのクリーチャーはすべてマナ総量3以下なので、なんでもリアニメイトすることができ、《オークの弓使い》などトークンを生成するカードも複数採用されているので、生け贄用のクリーチャーにもほとんど困りません。

致命的な一押し

《致命的な一押し》《電気放出》よりも優先して採用されています。複数のサクり台があるので「紛争」の条件を満たしやすく、《有翼の叡智、ナドゥ》をはじめとしたマナ総量が3-4のクリーチャーを処理できる軽い優秀な除去です。

Dimir Murktide

Dimir Murktideは、日本人プロの高橋 優太選手がプロツアーのモダン部門で7-3という好成績を収めたことで知れ渡ったデッキで、プロツアー後もModern Challengeなどで結果を残し続けているデッキです。

除去とカウンターで相手の行動を妨害しつつ《濁浪の執政》でゲームに勝つミッドレンジで、『モダンホライゾン3』リリース前はIzzet Murktideが主流でしたが、《超能力蛙》が登場したことによって青黒バージョンも見られるようになりました。

このデッキは《超能力蛙》をモダンで最も強く使えるデッキのひとつであり、青いフェアデッキが好きなプレイヤーにオススメのアーキタイプになります。

☆注目ポイント

超能力蛙濁浪の執政

《超能力蛙》はカードアドバンテージ源であり、低コストでプレイできる脅威で《濁浪の執政》とシナジーがあります。《稲妻》《電気放出》など火力系の除去でも落とされにくい規格外の強さを持つクリーチャーです。

オークの弓使い緻密

《オークの弓使い》の存在も、青赤ではなく青黒を選択する理由になります。タフネス1のクリーチャーに対する除去として機能し、カウンターを構えながら序盤からプレッシャーをかけることができるため、デッキにも合っています。0マナでプレイできる妨害は強力で、《緻密》《喜ぶハーフリング》を経由した《有翼の叡智、ナドゥ》などにも効くのでメインから採用されています。

呪文嵌めStern Scolding

アーキタイプを問わず強力な2マナのスペルが環境に多いので、《呪文嵌め》は有用な1マナカウンターとして機能します。《厳しい説教》は相性が悪いマッチアップであるBoros Energyの脅威の多くをわずか1マナでカウンターできるほか、《悲嘆》《孤独》といったインカーネーション・クリーチャーにも効くため受けの広いスペルになります。

毒の濁流海の先駆け

このデッキは単体除去とカウンターが主な妨害手段なため、《ナカティルの最下層民、アジャニ》《オセロットの群れ》などで横に並ぶデッキを苦手としています。そのため、サイドには全体除去の《毒の濁流》が必須で、NaduやGolgari Yawgmothといったマッチアップにもサイドインされます。

青黒2色なので、特殊地形に依存した多くのマッチアップで使える《海の先駆け》も運用できます。カウンターや除去で妨害しつつ相手の土地を妨害する動きは、あの《血染めの月》を彷彿とさせます。

『Modern Super Qualifier』 ─Energy祭り─

開催日:2024年8月3日

優勝 Mardu Energy

準優勝 Boros Energy

3位 Bant Nadu

4位 Boros Energy

5位 Boros Energy

6位 Mardu Energy

7位 Mono Black Necro

8位 Dimir Murktide

トップ8デッキリスト

現環境のモダンはNadu一強状態とされていましたが、本大会ではなんとトップ8中5名がエネルギーデッキという結果になりました。

デッキ紹介

Mardu Energy

今大会で優勝したエネルギーデッキは、《血染めの月》とマナ基盤の安定性を諦める代わりに《オークの弓使い》《思考囲い》《敵対するもの、オブ・ニクシリス》といったカードを採用し、妨害能力とデッキパワーを向上させたバージョンになっています。

Boros Energyとどちらを選択するかはメタにもよりますが、相性が悪かったBant NaduやJeskai Controlとの相性に改善が見られ、ミラーマッチでも有利なので現環境での全体的な勝率は高めです。

☆注目ポイント

敵対するもの、オブ・ニクシリスナカティルの最下層民、アジャニ

犠牲X」を持つ《敵対するもの、オブ・ニクシリス》は、《ナカティルの最下層民、アジャニ》を能動的に変身させる手段として機能します。「犠牲」で唱えた場合は、本体がカウンターされてもコピーは残るので青いデッキにも強いプレインズウォーカーです。プレインズウォーカーは《空の怒り》でも流れないので、《ナカティルの報復者、アジャニ》《敵対するもの、オブ・ニクシリス》が並べばJeskai Controlとのマッチアップでも優位に立つことができます。

オークの弓使い

クリーチャーを展開しつつ《オセロットの群れ》《色めき立つ猛竜》を除去できる《オークの弓使い》が使えることも、Marduバージョンがミラーマッチで有利な理由のひとつです。

『No Nadu Modern $1k』
─もしNaduが禁止されていたらの世界─

配信者のanzidmtgtheWillHallExpによって開催された《有翼の叡智、ナドゥ》が禁止のモダンイベント。

《有翼の叡智、ナドゥ》がいないモダンはどのような環境になるのかをシュミレーションしたイベントで、プレイオフには現環境でも活躍しているデッキのほかにも、Amulet TitanやGolgari Yawgmothなど『モダンホライゾン3』以前の環境で活躍していたデッキも見られました。

デッキ紹介

Esper Reanimator

《有翼の叡智、ナドゥ》は今月末に禁止になるのではと多くのプレイヤーが口にしていますが、このデッキのパーツはそのまま残る可能性があるため、Esper Reanimatorは新環境で活躍する可能性があります。墓地対策という弱点はあるもののデッキパワーが高く、プロツアーでも唯一全勝していたデッキです。

《偉大なる統一者、アトラクサ》《グリセルブランド》を墓地に落として《御霊の復讐》《不吉な儀式の僧侶》でリアニメイトする墓地を使ったコンボデッキですが、優秀な除去・カウンター・ハンデス・スイーパーとそろっているため、特に墓地対策されるサイド後はミッドレンジとして振る舞うこともできます。

Tainted Indulgenceファラジの考古学者思考囲い

《染みついた耽溺》《ファラジの考古学者》などクリーチャーを墓地に落とす手段が豊富で、《思考囲い》も自分を対象にすることで2ターン目に《偉大なる統一者、アトラクサ》《御霊の復讐》で釣ってアドバンテージを稼ぐことも可能です。

☆注目ポイント

偉大なる統一者、アトラクサ

《偉大なる統一者、アトラクサ》はこのデッキのメインの勝ち手段で、《否定の力》《孤独》《悲嘆》をピッチでプレイする際のコストにも使用できるため、余分に手札に来てしまっても腐りにくくなっています。

染みついた耽溺ファラジの考古学者儚い存在

《染みついた耽溺》《ファラジの考古学者》はクリーチャーを墓地に落とす主な手段になります。《ファラジの考古学者》は、《儚い存在》でブリンクさせることによって墓地を肥やしながらアドバンテージを稼ぐことができます。また、《御霊の復讐》でリアニメイトした伝説のクリーチャーは、《儚い存在》でブリンクすることで追放せずに戦場にキープすることができます。

超能力蛙

『モダンホライゾン3』から登場した《超能力蛙》もクリーチャーを墓地に落とす手段として機能しますが、このクリーチャーは単体でも脅威となるため、墓地対策された際の勝ち手段兼アドバンテージ源として活躍します。

総括

プロツアー『モダンホライゾン3』以降、Nadu Comboが環境を支配しており『SCG CON Baltimore』でもプレイオフに5名という結果になりました。

有翼の叡智、ナドゥ

Nadu Comboはプレイするのも相手にするのもお世辞にも楽しいものとはいえないという意見が多数派で、競技プレイヤーの間でも禁止改定までモダンのイベントの参加を見送るという選択をするプレイヤーが散見されているのが現状です。RCQのシーズンも始まっていますが、予選大会の開催を9月まで延期する店舗もあるほどのようです。

先週末に有名配信者によって開催された《有翼の叡智、ナドゥ》を禁止にしたイベントの結果は、9月以降のモダンの環境を考えるうえで参考になりそうです。

USA Modern Express vol. 118でした。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!

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Kenta Hiroki アメリカ在住のプレイヤー。 フォーマットを問わず精力的に活動しており、SCGやグランプリの結果などからグローバルな最新情報を隔週で発信する「USA Modern Express」「USA Legacy Express」を連載中。 Kenta Hirokiの記事はこちら