はじめに
こんにちは、晴れる屋メディアの紳さんです。
今週末15日(日)はいよいよ、『第15期パイオニア神挑戦者決定戦』の開幕ですね!
- 2024/05/03
- 第14期パイオニア神決定戦カバレージ
- 晴れる屋メディアチーム
前回の神決定戦では《敵意ある調査員》という新戦力を加えた「無駄省き」が快進撃を続け、細川 航汰さんが神の座に就きました。神決定戦に限らず、ノーマークだった新カードが大会で活躍する事例はよくあります。
厳しい予選を勝ち抜くためには、環境の有力デッキ・新デッキについての予習が必須であることは言うまでもありません。
というわけで今回は、現パイオニア環境について軽くおさらいしながら、直近の大会で活躍したデッキを紹介してまいります。
まず、環境を変化させる大きな出来事がありました。8月末の禁止制限告知により、《傲慢な血王、ソリン》と《アマリア・べナヴィデス・アギーレ》がパイオニアで禁止カードに指定され、トップメタであったラクドス吸血鬼とアマリアコンボがメタゲーム上から姿を消すことになったのです。
これにより、一躍トップメタとなったのがジャンドサクリファイスです。3ターン目に《血管切り裂き魔》が登場する環境では《大釜の使い魔》を出し入れする動きが完全に封じられていましたが、その憂いはなくなりました。
『ブルームバロウ』で登場した《全てを喰らうもの、イグラ》とのお手軽無限コンボも加わり、現パイオニア環境でもっとも有力なアーキタイプとされています。
また、ラクドス果敢を筆頭に赤系アグロデッキも暴れまわっています。これまでは「ライフを削って勝つ」というコンセプトのあらゆるデッキがアマリアコンボのライフゲイン戦略の前に屈してきましたが、もう天敵はいません。
果敢系のデッキが勢力を拡大していますが、奇襲隊レッドやボロス召集など横並び戦略のデッキも根強い人気を見せています。
それでは、先週末の大会ではどんなデッキが活躍したのでしょうか。チェックしていきましょう!
9/6(金)『Pioneer Challenge 64』
まずは100名が参加した金曜日の『Pioneer Challenge 64』の結果から。
9/6(金)『Pioneer Challenge 64』
優勝 ロータスコンボ
準優勝 上陸オムナス
3位 エンジェルカンパニー
4位 《吹き荒れる潜在能力》
5位 ラクドス果敢
6位 イゼットフェニックス
7位 イゼットフェニックス
8位 アゾリウスコントロール
この大会ではアグロからコントロールまで多種多様なデッキが入賞し、ロータスコンボが優勝という結果になりました。
4位に入賞した《吹き荒れる潜在能力》があまり見ないタイプのデッキでしたので、紹介させていただきます。
こちらが4位に入賞したデッキです。一見すると普通のボロスコントロールのように思えますが、恐ろしい罠が隠されています。
《真昼の決闘》がある状態で《吹き荒れる潜在能力》が着地すると、なんとお互いに手札から呪文を唱えることができないロック状態へと突入します。
エンチャント
プレイヤー1人が自分の手札から呪文を1つ唱えるたび、そのプレイヤーはそれを追放し、その後、自分のライブラリーの一番上から、それと共通のカード・タイプを持つカードを追放するまでカードを追放し続ける。そのプレイヤーはそのカードをそのマナ・コストを支払うことなく唱えてもよい。その後、そのプレイヤーは吹き荒れる潜在能力により追放されたすべてのカードを自分のライブラリーの一番下に無作為の順番で置く。
手札から唱えた呪文は《吹き荒れる潜在能力》の能力により、解決することなく追放されてしまいます。本来ならば、共通のカード・タイプを持つ別のカードを代わりに唱えることができるのですが、《真昼の決闘》がある状態ではそれも叶いません。
相手の盤面を除去と《放浪皇》などで対処してからロックをすれば、戦場に《放浪皇》が残り、勝ちが濃厚となります。また、お互いに何もない盤面でロックした場合でも、《アーデンベイル城》や《噴水港》でクリーチャーを生成できるため、相手のデッキに同様の土地が採用されていなければ勝ちが濃厚です。
エンチャントを2枚並べただけで勝ちとなるシチュエーションが多く、なんともお手軽なコンボですね。
ちなみに「手札から呪文を唱える」以外の方法であれば、このロックを逃れることができます。《耐え抜くもの、母聖樹》で《吹き荒れる潜在能力》を破壊したり、「計画」してからクリーチャーを唱えることは可能です。
また、このデッキと対戦する場合、微差でも良いので盤面の優位を保つことが一番の対策となります。逆に考えると、《太陽降下》された場合は、返しに培養器・トークン以上のバリューがあるカードを戦場に出さなければ負けうるということを覚えておきましょう。
9/7(土)『Pioneer Challenge 64』
つづいて、90名が参加した土曜日の『Pioneer Challenge 64』の結果です。
9/7(土)『Pioneer Challenge 64』
優勝 ジャンドサクリファイス
準優勝 アゾリウスコントロール
3位 エンジェルカンパニー
4位 エンジェルカンパニー
5位 発見コンボ
6位 ボロス召集
7位 ボロス召集
8位 イゼットフェニックス
ボロス召集やエンジェルカンパニーといった昔ながらのデッキの活躍が見られましたが、優勝は新生ジャンドサクリファイスでした。
ジャンドサクリファイス
こちらが優勝したデッキのリストです。おなじみのデッキですので、新戦力として加わった部分を軽く紹介させていただきます。
ジャンドサクリファイスは『ブルームバロウ』で《全てを喰らうもの、イグラ》が登場したことにより、フィニッシュ性能が格段に上がりました。
ひとたび《全てを喰らうもの、イグラ》が戦場に出ると、すべてのクリーチャーが食物となるため、《大釜の使い魔》自身も食物となります。
戦場にある《大釜の使い魔》Aを生け贄に捧げ、墓地にある《大釜の使い魔》Bを戦場に出す、といったループにより即勝利が狙えるというわけです。
ちなみにこちらのコンボ、《未認可霊柩車》や《塵へのしがみつき》のようなインスタントタイミングの墓地追放に対しても強く、《大釜の使い魔》を墓地から戦場に出す能力がインスタントタイミングで起動できる上に、コストが食物1つと軽く、いわば食物の数だけスタックに対抗できるという強みがあります。《安らかなる眠り》や《虚空の力線》でないと止められません。
これは《力線の束縛》などで《全てを喰らうもの、イグラ》や《大釜の使い魔》を追放しようとしても同じことで、やはり食物がある限りはスタックしてループに入ることができるため、かなり強いコンボです。
このコンボを止めるためには《全てを喰らうもの、イグラ》が着地する前に《大釜の使い魔》を対処する必要があります。
また、《清掃人の才能》も強力な新戦力です。このデッキにおいてはあまりにも簡単に食物を生成します。《命取りの論争》の追加コストに困ることもありません。
また、《清掃人の才能》をレベル2にすればパーマネントを生け贄にするたびに切削が誘発し、自分を対象にすればコンボパーツである《大釜の使い魔》や《全てを喰らうもの、イグラ》を墓地に送ることも狙えます。
レベル3まで上げれば、今度はあまった食物などを生け贄にしてリアニメイトすることができ、終了ステップに《全てを喰らうもの、イグラ》を釣り上げてそのままフィニッシュ!なんてこともできそうですね。
9/7(土)『Pioneer Challenge 32』#1
つづいて、土曜日に2回開催された『Pioneer Challenge 32』の結果を見ていきましょう。まずは72名が参加した1回目の結果から。
9/7(土)『Pioneer Challenge 32』#1
優勝 ラクドス果敢
準優勝 ラクドス果敢
3位 ラクドス果敢
4位 イゼットフェニックス
5位 不屈の独創力
6位 ジャンドサクリファイス
7位 イゼットフェニックス
8位 ロータスコンボ
ここではラクドス果敢が大フィーバーし、上位を独占しました。
ラクドス果敢
こちらが優勝したラクドス果敢のリストです。最近、勢いがある人気のアーキタイプですね。
いわゆる果敢・雄姿系のデッキでおなじみのクリーチャーを《巨怪の怒り》などで強化し、攻撃をします。ここまでは普通のよくあるアグロデッキです。
ラクドス果敢の真骨頂は、最後の詰めの強さです。《無感情の売剣》の出来事面は「あなたがコントロールしているクリーチャー1体を対象とし、それでない1つを対象とする。その前者はその後者に、自身のパワーに等しい点数のダメージを与える。その後、その前者を生け贄に捧げる。」というものであり、《ドスン》や《投げ飛ばし》相当のダメージを飛ばすことができます。
しかも《ドスン》や《投げ飛ばし》と違い、コストとして生け贄に捧げているわけではないため、果敢や雄姿を誘発させたのちに最終的なパワー分のダメージを飛ばすことができるんですね!
除去を合わされてしまうとかなりのアド損となってしまいますが、死亡したときにパワー分のダメージを与える《心火の英雄》や、超絶強化された《精鋭射手団の目立ちたがり》を投げ飛ばした際の破壊力は凄そうですね!3ターンキルも十分、視野に入ります。
《立身/出世》も面白いカードで、これ1枚で墓地からクリーチャーを釣り上げて、そのまま強化しながらの速攻パンチを決めることが可能です。このデッキに採用されているクリーチャーなら、なにを釣り上げても強いです。
《顕在的防御》が使えるグルールに比べると除去に対する回答が少ないため、相手のタップアウトを狙ったり、除去を先に使わせるような誘いアタックをするなど、細かなプレイングが求められることでしょう。練習のしがいがあるデッキですね。
9/7(土)『Pioneer Challenge 32』#2
つづいて、2回目の『Pioneer Challenge 32』の結果です。こちらは48名が参加しました。
9/7(土)『Pioneer Challenge 32』#2
優勝 エンジェルカンパニー
準優勝 ラクドス果敢
3位 アゾリウスコントロール
4位 ラクドス果敢
5位 アゾリウスコントロール
6位 ラクドス果敢
7位 エンジェルカンパニー
8位 ラクドス果敢
ラクドス果敢が猛威を振るうなか、ライフゲイン戦略に秀でたエンジェルカンパニーが優勝しました。
エンジェルカンパニー
こちらが優勝したデッキのリストです。これといって新しいカードが採用されているわけでもなく、昔ながらの構成です。
《ラノワールのエルフ》や《エルフの神秘家》によるマナ加速からの《集合した中隊》は強力で、まともなフェアデッキを寄せつけないカードパワーの高さがあります。
特に《翼の司教》や《正義の戦乙女》が複数体並んだ上で天使が並び始めると、大量のライフゲインをしながら強固な盤面をつくることが可能です。除去が少ないアグロデッキにとって、かなり不利なマッチアップとなるでしょう。
エンジェルカンパニーは、アマリアコンボの衰退によって増加したアグロデッキを狩るのに持ってこいのデッキと言えます。赤系アグロデッキが多い現在のメタゲームにおいて、立ち位置は良さそうです。
アグロデッキは今後、エンジェルカンパニーに立ち向かうため、サイドボードの《暴れ回るフェロキドン》が欠かせない存在となるかもしれません。
9/8(日)『Pioneer Challenge 64』
それではつづいて、日曜日に開催された『Pioneer Challenge 64』の大会結果をチェックしていきましょう。参加人数は114名と、かなり盛り上がったようです。
9/8(日)『Pioneer Challenge 64』
準優勝 《異形化》
3位 上陸オムナス
4位 エンジェルカンパニー
5位 ボロス召集
6位 ボロスコントロール
7位 エンジェルカンパニー
8位 ラクドス果敢
ここでは、アグロとエンジェルカンパニー、両方を退けて《アガサの魂の大釜》コンボが優勝という結果になりました。
《アガサの魂の大釜》コンボ
こちらが優勝したデッキのリストです。《炎貯えのヤモリ》はパイオニアでなかなか見かけることのない、渋いチョイスですね。
墓地に置かれた《地獄の樹》を《アガサの魂の大釜》で追放することによって、+1/+1カウンターが置かれたクリーチャーはすべて《地獄の樹》の起動型能力を持ちます。
ひとたび《地獄の樹》の能力を起動すれば、ライフが何億点あろうが一瞬にして吹き飛びます。《ヴォルダーレンの興奮探し》と組み合わせれば即座に勝利することも可能に。
- 2024/08/30
- 《地獄の樹》と《アガサの魂の大釜》が新時代を築く!?コマンドフェスト開催など【晴れる屋ニュース】
- 晴れる屋メディアチーム
このコンボについては以前、晴れる屋メディアでも取り上げております。《アガサの魂の大釜》が《弧光のフェニックス》を追放できることもあって、今後、注目のアーキタイプになるであろうことを予想しておりました。
このデッキの不安要素としては、デッキ全体が《アガサの魂の大釜》に頼った構築ということです。《税血の収穫者》と《鏡割りの寓話》のパッケージなどコンボ以外にも戦える要素はあるのですが、《アガサの魂の大釜》なしで勝ちきることは難しいでしょう。
一方、血・トークンも含めた各種ルーティングによって《アガサの魂の大釜》になんとかたどり着こうという試みは成功している模様です。
今後、このアーキタイプが警戒され、墓地対策やアーティファクト対策による「《アガサの魂の大釜》包囲網」が敷かれたときに乗り越える術があるかどうか、注目したいですね。
一例ですが、『ダスクモーン:戦慄の館』で登場する《殺人人形、マーヴィン》なら、4ターン目に《地獄の樹》着地から能力即起動が可能です。《アガサの魂の大釜》なしで勝つルートが見つかりそうですね。
9/8(日)『Pioneer Challenge 32』
それでは最後に、日曜日の『Pioneer Challenge 32』の結果を見ていきましょう。こちらの大会は79名が参加しました。
9/8(日)『Pioneer Challenge 32』
優勝 ボロス召集
準優勝 ラクドス果敢
3位 ジャンドサクリファイス
4位 《奇怪な具現》
5位 スピリット
6位 《無駄省き》
7位 ラクドス果敢
8位 ジャンドサクリファイス
ここではボロス召集が優勝となりました。
根強い人気がある《奇怪な具現》が4位に入賞したので、ピックアップしてみましょう。
《奇怪な具現》
こちらが優勝したデッキのリストです。従来のリストとほとんど変わったところはありません。
わずかに変わった点は、地味ながらシルバーバレットの4マナ枠に《跳ねる春、ベーザ》が追加されました。これまで《包囲サイ》の枠であったことを考えると、かなり強いアップデートと考えられます。
《奇怪な具現》によって《力線の束縛》を生け贄に捧げ、《偉大なる統一者、アトラクサ》を踏み倒す動きは凶悪の一言です。
パイオニア環境はしばらくラクドスカラーのデッキが優位であり続け、ラクドス吸血鬼が衰退した現在もラクドス果敢という新たなアーキタイプがトップメタになりつつあります。
そんなラクドスカラーが一番、苦手とするところがエンチャント破壊であり、エンチャントコンボである《奇怪な具現》は注目のアーキタイプと言えるでしょう。
また、このデッキは『ダスクモーン:戦慄の館』で登場する「兆候」エンチャントと相性が良いこともあり、伸びしろがあります。これらは実際のマナ総量より少ないコストで戦場に出すことができるエンチャントです。
特に出たとき能力で除去しながら7マナのクリーチャーに変えられる《ボイラービルジの大主》には期待ができます。《力線の束縛》と比べれば使い勝手は悪いのですが、5枚目、6枚目の《力線の束縛》として採用を検討する価値はあるでしょう。
また、《奇怪な具現》が4マナであることを考えると、テンポ的には《フラッドピットの大主》や《ホーントウッドの大主》が使いやすそうです。
そうなると、6マナの強いクリーチャーを探したくなりますね。できれば出たとき能力で盤面に干渉できるクリーチャーが望ましいです。《血管切り裂き魔》も悪くありませんが。
《奇怪な具現》はオリジナリティの高い構築を目指せるので、研究しがいがあるデッキですね。
おわりに
ここ直近の大会を振り返ると、絶対王者であったはずのイゼットフェニックスがやや、おとなしく感じます。
ただし、MOでは定番すぎて、歴戦のフェニックス使いたちが一時的にほかのデッキへと流れている可能性はありますね。『第15期パイオニア神挑戦者決定戦』での使用率はどのようになるでしょうか。
現パイオニアはアグロからコントロール、コンボデッキまでいろんなデッキにチャンスがある混沌とした環境と言えるでしょう。今後のメタゲームの動向に要注目です。
さあ、いざ、パイオニア神の決戦の舞台へ!