はじめに
みなさん、こんにちは。
8月26日に禁止改定があり、ついに《悲嘆》が禁止になりました。《悲嘆》は相手のプランを妨害しつつ《再活性》や《動く死体》といったスペルと相性が良く、《意志の力》や《目くらまし》でバックアップできるレガシーでは特に強すぎたため、ここ半年以上禁止を望む声が多くありました。
禁止に至った経緯については公式でも挙げられているので、今回の連載では禁止改定によって環境がどのように変化をしたのかを、大会結果を見ながら解析していきたいと思います。
『Legacy Challenge 32』 -禁止改定後も強いDimir-
《悲嘆》が禁止になり弱体化を余儀なくされたと思われたReanimatorでしたが、もともと強いデッキだったこともあり、禁止改定後の環境でも複数上位入賞しています。ほかにはDoomsday、Painter、Eldraziといったデッキが中心でした。
デッキ紹介
Dimir Tempo
今大会には筆者も参戦し、惜しくも決勝戦でGolgari Reanimatorに負けてしまいましたが、準優勝という好成績を残すことができました。
今回使用したDimir Tempoは前環境でも大きな大会で結果を残しており、禁止改定によって失ったカードもありませんでした。《超能力蛙》を含めた『モダンホライゾン3』の強力なクリーチャーを、効率的なスペルによってバックアップできるので、新環境でも有力な選択肢になると考えていました。
またこのリストは、先月開催された『BIG Magic Open vol.13』でトップ8に入賞していたSuzuki Ryo氏のリストを参考にしています。
☆注目ポイント
青黒を使う理由のひとつは、なんといっても禁止を免れた《超能力蛙》が使えることにあります。このクリーチャーの影響で、レガシーの代表的な火力スペルである《稲妻》を採用したデッキが著しく減少したほどです。青いカードなので《意志の力》のコストにもなり、アドバンテージ源とフィニッシャーにもなるこのクリーチャーは、歴代でも最強クラスの強さなので使えるうちに使っておきたいカードです。
《渦まく知識》などレガシーには優秀なドロースペルが複数あるため、《オークの弓使い》もメインから採用したいクリーチャーです。《超能力蛙》と合わせると2マナ域が渋滞しますが、相手の《オークの弓使い》に対するベストな解答は《オークの弓使い》なので4枚採用するに至りました。強いマッチアップと弱いマッチアップがはっきりしたカードなので、サイドアウトすることも多いカードです。
《もみ消し》は相手のフェッチランドの起動を妨害するだけでなく、エルドラージの誘発型能力を打ち消したり、《ウルザの物語》や《鏡割りの寓話》のⅢ章の能力も打ち消すことができる優秀なスペルです。
サイドに3枚と多めにとられている《記憶への放逐》や、追加の除去の《殺し》は新環境でも人気があるEldrazi対策です。ソーサリーカウントが少なめなのと、メインにアーティファクトがなく《ネザーゴイフ》のサイズが足りていないことがあったので、《思考囲い》なども採用したいと思っています。また、新環境でも変わらず強いReanimator用に《虚無の呪文爆弾》をメインから採用することを推奨します。
Golgari Reanimator
今大会で優勝したのはReanimatorでした。もともとReanimatorは、大会上位で常に一定数見られたデッキだったので《悲嘆》が禁止にされてもそれほど大きな弱体化はしなかったようです。
それでも《思考囲い》や《暴露》といったハンデスは、《悲嘆》と異なり《再活性》で再利用されないので禁止改定前のような理不尽さは軽減されています。
またテンポ寄りのDimirバージョンとは違い、《水蓮の花びら》や《暗黒の儀式》といったマナ加速を搭載した高速コンボになっています。
☆注目ポイント
《世界喰らいのドラゴン》+《Dance of the Dead》(《動く死体》)のコンボが搭載されているのが特徴です。
《世界喰らいのドラゴン》を《Dance of the Dead》でリアニメイトすることで、《世界喰らいのドラゴン》の場に出た能力によって《Dance of the Dead》が追放され《世界喰らいのドラゴン》が墓地に落ちます。《世界喰らいのドラゴン》が場から離れたことによって《Dance of the Dead》が戻ってくるので、再び《世界喰らいのドラゴン》を対象にすることで無限ループが成立します。
《世界喰らいのドラゴン》が場を離れたときに土地もアンタップ状態で戻ってくるので、マナを出してこれを繰り返すことで無限マナになるのです。
墓地対策されるサイド後のゲームに備えて、墓地に依存しない《煙霧の連鎖》コンボがサイドに搭載されています。サイド後に墓地対策が増量され、クリーチャー除去が減らされたところに刺さるのが《セッジムーアの魔女》や《ウィザーブルームの初学者》です。デッキリスト非公開の大会では、こういった変形サイドボードも戦略のひとつになります。
『European Legacy Masters 2024』 -DImir Reanimatorのワンツーフィニッシュ-
『European Legacy Masters 2024』はイタリア・ボローニャで開催された大規模なレガシーのテーブルトップイベント。予選を勝ち抜いてきた112名の強豪プレイヤーが集った招待制のイベントで、ヨーロッパのレガシーコミュニティによって運営されています。
今大会で印象的だったのは、《悲嘆》が禁止になっても上位入賞したDimir Reanimatorで、《超能力蛙》が使える限りこのデッキが衰退することはなさそうです。
デッキ紹介
Dimir Reanimator
《悲嘆》+《再活性》コンボがなくなったため、禁止改定前の環境と比べると妨害されやすくなったものの、《超能力蛙》や効率的なドロースペルやピッチでプレイできるカウンター、リアニメイトパッケージが使えるためDimir Reaniatorはまだまだ健在です。
今大会でも1位・2位・4位という圧倒的な強さを見せ、《悲嘆》を失ってもそれほど大きな影響がなかったことが証明されました。
今後も《超能力蛙》を使える青黒が、引き続きレガシーの脅威であり続けることが予想されます。
☆注目ポイント
《悲嘆》の枠には《思考囲い》と《知りたがりの学徒、タミヨウ》が採用されています。マナを使わずに妨害できる《悲嘆》と比べると効率面では劣りますが、リアニメイトコンボを通す手段としては十分な性能です。
このデッキにもメインから採用されるようになった《知りたがりの学徒、タミヨウ》は、レガシーでは《渦まく知識》で容易に変身させることができます。奥義によって大量にカードアドバンテージを稼ぐことができ、相手に異なる対策を迫ることができます。
墓地対策が弱点なので、最近は追加の勝ち手段としてクリーチャーを採用するのが一般的になっています。サイド後は《バロウゴイフ》がサイドインされ、青黒テンポ寄りにシフトする選択肢もあります。《バロウゴイフ》は《紅蓮破》に引っ掛からないところも強みで、絆魂によってダメージレースでも優位に立てます。
『4Season Summer Main Event』 -コントロールデッキが大活躍-
『4Season Summer Main Event』もイタリア・ボローニャで開催されたイベントです。ヨーロッパでもレガシーは人気があり、今大会は参加者380名以上と大盛況でした。
プレイオフにはDimir Reanimatorが勝ち残っていましたが、Jeskai Control、Sultai Uro、Cradle Controlといったコントロールデッキも複数見られました。
デッキ紹介
Sultai Uro
コントロールのアドバンテージエンジンであった《豆の木をのぼれ》が《超能力蛙》に差し替えらているところからも、このカードの規格外の強さがうかがえます。
従来の《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を採用していたコントロールと異なり、《喜ぶハーフリング》や《知りたがりの学徒、タミヨウ》などのクリーチャーが複数採用されているのが特徴です。
また《一つの指輪》や《自然の怒りのタイタン、ウーロ》のおかげで長期戦に強く、《不毛の大地》+《壌土からの生命》によって特殊地形に頼ったデッキをロックすることもできるます。これにより、Eldrazi PostやLandsに対してもほかのコントロールに比べて相性が改善されています。
☆注目ポイント
《悲嘆》亡き後もDimir Reanimatorは人気があり、今大会でも上位に複数見られたので、メインから《虚無の呪文爆弾》が採用されています。《悲嘆》+《再活性》コンボがなくなり、カウンターや墓地対策が落とされにくくなっているため、旧環境よりも若干戦いやすくなりました。
《喜ぶハーフリング》によって《一つの指輪》《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《知りたがりの学徒、タミヨウ》といったカードをカウンターされることなくプレイできるため、ほかの青いデッキとのマッチアップで有利にゲームを進められます。
《一つの指輪》によるライフロスは、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》である程度カバーすることができます。モダンのJeskai Controlでも見られる《水辺の学舎、水面院》も採用されており、《一つの指輪》をアンタップさせてカードを大量に引くことでアドバンテージを稼ぐことが可能です。
《突然の衰微》は《致命的な一押し》よりも重く色拘束も強い除去ですが、カウンターされないため《超能力蛙》や《知りたがりの学徒、タミヨウ》といった脅威を対処する手段としての信頼性があります。
『Legacy Challenge 64』 -カエルデッキに強いペインター-
開催日:2024年9月14日
優勝 Dimir Tempo
準優勝 Painter
3位 4C Beans
4位 Painter
6位 Dimir Tempo
7位 Eldrazi
8位 Izzet Delver
先週末に開催された『Legacy Challenge 64』でも青黒デッキが優勝も含めて複数入賞していました。
青黒が多数入賞するなか、高い勝率を出していたのはPainterです。《紅蓮破》と《赤霊破》をメインから使えるPainterは、現在のレガシーではいい立ち位置にあります。
デッキ紹介
Painter
《超能力蛙》が幅を利かせている現環境では、《紅蓮破》《赤霊破》は非常に強力なスペルとなります。
《丸砥石》+《絵描きの召使い》コンボによる瞬殺もあり、コンボパーツである《丸砥石》を《ウルザの物語》でサーチできるので安定しています。
《丸砥石》が場にない場合でも、《絵描きの召使い》で青を指定することで《紅蓮破》が1マナの除去&カウンターとして機能するので、相手の脅威を捌きつつコンボを決める準備を進めることができます。
☆注目ポイント
『モダンホライゾン3』から登場した《苛立たしいガラクタ》のおかげで青いデッキにさらに耐性が付きました。《ウルザの物語》からサーチ可能で、必要ならドローに変換できるので腐りにくい有用な青対策になります。
Painterには《オークの弓使い》や《ケイオス・ディファイラー》を搭載した黒赤型、《悟りの教示者》や《剣を鍬に》を使う赤白型、《アガサの魂の大釜》コンボ搭載型などいろいろありますが、マナ基盤が安定しており《血染めの月》系のカードを使えるところが赤単バージョンの強みです。
このリストで特徴的なのは、メインから4枚採用された《一つの指輪》です。一時期黒いデッキのメインからフル搭載されていることが多かった《オークの弓使い》も減少傾向にあるため、このデッキの中盤以降のアドバンテージ源として重宝します。《鏡割りの寓話》や《一つの指輪》といった単体でも強力なカードを搭載しているため、フェアにプレイしつつ《丸砥石》+《絵描きの召使い》コンボを狙いやすくなりました。
総括
《悲嘆》亡き後もDimir Reanimatorの強さはそれほど変わらず、今回紹介した大会で複数上位に入賞していました。やはり公式も議論していたように《超能力蛙》も禁止にすべきだったのではという意見も散見されます。
青黒系のデッキ以外では、「Eldrazi」「Painter」「Doomsday」「Bant Nadu」などが多く、現環境で活躍しているほとんどのデッキは『モダンホライゾン3』によって強化されたものが中心となっています。
USA Legacy Express vol.241は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!