スタンダード神によるディミーアネズミ解説!-プレインズウォーカーのためのラットフォーク案内-

晴れる屋メディアチーム

『ブル~ムバロウ』からごあいさつ

みなさま初めまして。『第28期スタンダード神』の吉田 悠太郎と申します。

発売から約2ヶ月弱が経過し『ダスクモーン:戦慄の館』のプレビューも完了、あとは発売を待つのみという状況ですが、可愛い動物まみれのセット『ブル~ムバロウ』が参入したMTG、まだまだ楽しんでおられますでしょうか。

『ブル~ムバロウ』の初報以来、この次元への来訪を心待ちにしていた私は、ここ数年なかったほどの高いモチベーションでMTGに熱中しています。

先日は『第28期スタンダード神挑戦者決定戦』にて自らが調整した「ディミーアネズミ」を持ち込み幸運にも優勝、そのままスタンダード神になることができました。その日から1週間近く経過した今も、そのときの喜びと興奮はまったく収まっていません。

情け知らずのヴレン

ドヤ顔がたまらん

最初は、レイズド・フォイル仕様の《情け知らずのヴレン》のイラストの可愛さに惹かれて構築を始めた「ディミーアネズミ」ですが、私のMTG人生で間違いなく最高の結果を残すことができました。そして、今回はありがたいことに晴れる屋様からお申し出をいただき、デッキ解説の記事の筆を執らせていただきます。

ネズミを飼いならしたい方はもちろん、駆除を試みたい方にもぜひ一度読んでいただければ幸いです。

「ディミーアネズミ」ってどんなデッキ?

まずはデッキリストからどうぞ。

デッキリストページ

『ブル~ムバロウ』で複数の強力なネズミが追加されたことによって大幅に強化された、青黒カラーの同族・ミッドレンジデッキです。

しつこい湿地忍びネズミの王、カルモニクス下水王、駆け抜け侯情け知らずのヴレン

このあとにも紹介させていただきますが、ネズミを増やしたり墓地から出てきたりとリソースを稼ぐことができる能力を持つクリーチャーが多く、同じ『ブル~ムバロウ』出身の同族デッキでもハツカネズミ(赤白)やトカゲ(黒赤)のような速攻ではなく、ある程度長いゲームレンジを見据えて戦います。

また、青黒というカラーは当然、除去や打ち消しといった優秀な妨害呪文に恵まれたカラーであり、それらを活用することで柔軟な戦い方をすることが可能です。

ネズミ・クリーチャーたちが形成するさまざまなシナジーを自在に操って楽しみつつ、対戦相手との呪文の応酬にも興じることができたりと「マジックの醍醐味を存分に味わえる、非常に回していて面白いデッキ」だと思っています。

さて、自画自賛はこのくらいにしまして、さっそくデッキリストの紹介に移らせていただきたいと思います。まずはデッキの主役、ネズミたちの紹介からです。

可愛らしい住民たちのご紹介

さて、ネズミデッキといえばまずはこのクリーチャーを紹介しないことには始まりませんね。

《ネズミの王、カルモニクス》

ネズミの王、カルモニクス

オトモダチヨブヨ

いきなりイラストが怖い!!!!

『ファイレクシア:完全なる統一』で登場したこのネズミの王様は、場に出たときにデッキトップ5枚からネズミをすべて手札に呼ぶことができます。通称「オトモダチヨブヨ」。

これまでは「プレイアブルなネズミが増えれば……」と嘆かれていた彼ですが、『ブル~ムバロウ』でネズミが大量追加されたことで息を吹き返しました。当然運に依存する部分は大きいものの、上振れて4枚回収などした日には、カードを1枚ずつ交換していく黒系ミッドレンジ対決を一瞬で粉砕する力を持っています。

ちなみにこのデッキのネズミは23枚のため、期待値は2枚をわずかに下回ります。1枚回収も平常運転なので気にしないようにしましょう。

苦痛ある選定

自軍のネズミ全員に「毒性」を与える効果も、「堕落」持ちの《苦痛ある選定》とのシナジーや、《人参ケーキ》《稲妻のらせん》などでライフを回復してくる相手への毒殺プランをとれたりと、まったくバカになりません。

《ネズミの王、カルモニクス》《カルモニクス》を手札に加える動きも強力、まさにネズミデッキを組む動機となる1枚で、迷わず4枚投入です。

《下水王、駆け抜け侯》

下水王、駆け抜け侯

言葉を慎みたまえ。君は駆け抜け候の前にいるのだ。

お次は『エルドレインの森』から《下水王、駆け抜け侯》の紹介。ローテーション前は《策謀の予見者、ラフィーン》と組んでブイブイ、いや、チューチュー言わせていた彼ですが、齧歯類の帝国を築くというもとの目標を思い出してくれたようで、今回は配下のネズミたちを引き連れて参戦してくれました。

彼が呼び出す配下のネズミは、サイズ1/1でブロックにも回れないと最低保証といった趣であるものの、《情け知らずのヴレン》が呼びだすトークンやあとで紹介する《しつこい湿地忍び》は盤面上のネズミに応じてパワーを上げるため、ネズミをばらまいてくれるこの下水道の王は非常にありがたい存在です。

もがく出現星界を呼ぶ者、ゾラリーネセラの模範傲慢なジン

《ヴェールのリリアナ》にやたら強いのは言わずもがなですね。そしてネズミが場に出るたびに墓地のカードをかじる能力もなかなかに馬鹿になりません。《もがく出現》などのリアニメイトに強いのはもちろん、《星界を呼ぶ者、ゾラリーネ》《セラの模範》《傲慢なジン》《死人に口無し》になどの墓地利用カードを特別な対策カードを使うことなく咎めることができます。

ちなみに、自身が呼び出したネズミトークン以外でも自分のネズミが場に出れば誘発します。特に攻撃時に場に出た《しつこい湿地忍び》や終了フェイズに出てくる《情け知らずのヴレン》のトークンでの誘発は忘れがちなので気をつけましょう。

《しつこい湿地忍び》

しつこい湿地忍び

いくぞ~~~~!!

『ブル~ムバロウ』から参戦したこのラットフォークは、正にデッキの打点の稼ぎ頭、攻めの要といえる存在です。2マナでもとの打点が3点ありながら、場のネズミの数だけ打点を上昇させる効果により、かなりの速度で打点が上がっていきます。

特に《下水王、駆け抜け侯》とのシナジーは驚異的で、《しつこい湿地忍び》《下水王、駆け抜け侯》と動いた場合、それだけで3ターン目にして5点、4ターン目には10点の打点をたたき出します。この動きを《強迫》《否認》でバックアップするのがランプデッキ相手のサイド後の主な勝ち筋となります。

対してタフネスは1から動かないため、たとえば魚・トークンや兎・トークン(1/1)とですら相討ちになってしまいますが、そこは彼の出番でしょう。

情け知らずのヴレン

トークンでも追放できます

《情け知らずのヴレン》が立っていれば相討ちでも終了フェイズに新しいネズミが供給されるため、相手のブロックに大きな圧力をかけながら高打点で殴っていくことができます。そして相討ちになったあとも、「スレッショルド」を達成することで墓地から何度でも攻撃した状態で帰ってくることが可能。ブン回りの速攻から泥沼の消耗戦までこなす、頼れるネズミの狂戦士です。

《群青の獣縛り》

群青の獣縛り

クリーチャー戦の要

1つ前で紹介した《しつこい湿地忍び》は打点を稼ぐ仕事をしますが、こちらのラットフォークは盤面を支えるお仕事に取り組みます。

グリッサ・サンスレイヤー分派の説教者ウラブラスクの溶鉱炉黙示録、シェオルドレッド

パワーが1しかなく、攻撃しても直接的なアドを稼げないと一見地味に見えるカードですが、能力の対象が思ったよりも広く、このデッキにとって厄介な《グリッサ・サンスレイヤー》《分派の説教者》《星界を呼ぶ者、ゾラリーネ》《ウラブラスクの溶鉱炉》《身代わり合成機》《黙示録、シェオルドレッド》《大天使エルズペス》などのオブジェクトを彼1人で(命ある限り)止め続けることができます。

もちろん、それらのオブジェクトはクリーチャー除去や打ち消しといった呪文でも対処可能ですが、《ネズミの王、カルモニクス》の効果で手札に加えられるネズミ・クリーチャーであることが、彼を唯一無二の存在へと昇華しています。

ネズミの王、カルモニクス苦痛ある選定

パワー2以上のクリーチャーにブロックされない効果は、自らの生存に寄与することはもちろん、《ネズミの王、カルモニクス》に与えられた「毒性」を相手に付与するにも役立ちます。ただ10点での毒殺は流石に遠い……のはその通りなのですが、《苦痛ある選定》の「堕落」達成である毒カウンター3個は現実的かつ有用なライン。特に2ターン目に《群青の獣縛り》を出し、3ターン目に殴る前に《ネズミの王、カルモニクス》を出すのはついうっかり忘れがちなので気をつけましょう。

《川岸の物あさり》

ラットフォークの子たち、本当にイラスト可愛すぎですよね。そんな可愛すぎる彼は、相手クリーチャーにブロックされない危機感知能力と、攻撃を通す度にカードを引く知的好奇心を持ち合わせた、ラットフォーク+相棒の昆虫の能力が美しくデザインされたカードとなっております。

もちろん、スタッツが1/1のためクリーチャー戦にはほぼ関与できないのが辛いところではあるものの、デッキトップの土地や除去呪文を探しにいける能力は、純粋なドローに欠けるこのデッキでは貴重なものです。

「スレッショルド」を達成すれば、引いたあとに捨てる必要もなくなり夢の領域へ。知識(墓地)が貯まるまで、優しい目で彼の冒険を見守ってあげましょう。特にアグロデッキ相手など、序盤に引くと弱い場面が散見されるため、今回は2枚の採用としました。

《鼠の密通者》

鼠の密通者

彼こそがハンデスネズミの系譜を受け継ぐもの

古来より受け継がれる由緒正しきハンデスネズミの系譜、その最新作が彼です。

『ラヴニカのギルド』にいた《泥棒ネズミ》に比べて2足歩行するようになり、ネズミ感が若干薄れたものの、代わりに「ならず者」の同族タイプを得たことで「無法者」サポートを受けられるようになりました。

保安官を撃て

余談ですが、彼以外にも『ブル~ムバロウ』のラットフォークには「ならず者」が多いです。誤って《保安官を撃て》を撃ったり撃たれたりすることがないように気をつけましょう。

「場に出たときに相手に手札を1枚選んで捨てさせる」という効果は序盤はやはり強くなく、相手の手札が少ないほど強くなります。理想としては《ネズミの王、カルモニクス》から回収して手札に抱えておき、相手の手札が1枚になったタイミングでかじりついてやりましょう。ここぞという場面で欲しいカードなので、こちらも2枚の採用です。

住みよい住居のご案内

土地は全部で25枚採用しています。

・現在のスタンダードがランドストップに厳しい環境であること
・少なくとも4枚までは毎ターン土地を置き続けたいこと
・以下で紹介する強力なユーティリティランドを採用していること

などの理由から、26枚目の土地を採用するのもやぶさかではないと感じるほどです。

《蓮葉村》

蓮葉村

みなさま、《ヴァントレス城》はご存知ですよね。パイオニアはもちろんモダンでも採用実績のある、4マナと自身をタップで占術2を行うことができる有能なユーティリティランドです。

そして、この《蓮葉村》は条件付きではあるものの、その《ヴァントレス城》を大幅に上回るマナ効率で起動が可能です。しかも、占術ではなく「諜報」ときています!

このデッキにおける諜報の有能さは語る必要もないほどです。デッキトップの土地や呪文を探しに行ったり、「スレッショルド」の達成を近づけたりと、ラットフォークの繁栄に欠かせない村だといえます。特にマナを払わずにネズミを供給する《下水王、駆け抜け侯》との相性は素晴らしく、毎ターン2マナで諜報を行い、ドローの質を高めていくことができます。

下水王、駆け抜け侯蓮葉村しつこい湿地忍び

《下水王、駆け抜け侯》で戦闘開始時にネズミ生成→《蓮葉村》で諜報し「スレッショルド」達成→《下水王、駆け抜け侯》でアタックし墓地から《しつこい湿地忍び》がダイナミックエントリー、という流れは頻出なので覚えておきましょう。ゲーム中に1枚は引きたい強力なランドなので、3枚採用しています。

なお、終了フェイズに《情け知らずのヴレン》でトークンを生成した場合でも起動が可能ですが、MTGアリーナだとフル操作モードにしないと勝手にターン終了になるので、気をつけてください。

《泥干潟村》

泥干潟村

「ネズミ村」と言いたいですが、ネズミの住居は地下らしいのでこれはたぶんリス村

さきほどの《蓮葉村》はタップで何度でも使うことできましたが、こちらは使い切り。効果も墓地からクリーチャーを1体サルベージと少々地味に思えますが、大きなリソース源となりうる《ネズミの王、カルモニクス》5連ガチャに挑戦できる回数が増えたり、相手に対処を強要する《情け知らずのヴレン》が再展開できるのはいいことに違いありません。ただ、引きすぎると黒い除去が撃ちづらくなってしまい困ることもあるので、枚数は少し抑えての2枚採用です。

《不穏な浅瀬》

不穏な浅瀬

名誉ネズミ村

青黒ミシュラランドをMAXの4枚採用し、諜報ランドは0枚としています。2マナ→3マナとクリーチャーを展開していきたいデッキなので、タップインの枚数は可能な限り減らしたいためです。起動するだけで「スレッショルド」の達成に近づく《寓話の小道》を採用していないのも同様の理由によります。

このミシュラランドの4枚採用だけでも、複数枚初手に来た場合のタップインによるもたつきが多少気になることもありますが、色マナの安定化はもちろんのこと、攻撃時の切削4は「スレッショルド」達成に大いに役立ちますし、土地が4点の打点を出すというのも最後の詰めとして優秀です。

相討ちがメリットとなる《情け知らずのヴレン》と相性の良い、殴っていきやすい接死能力を持っているのもとてもいいですね。ネズミたちとシナジーのある強力なミシュラランドです。

ネズミたちの素晴らしき魔法織りのご紹介

切り崩し喉首狙い苦痛ある選定

自分がこのデッキを組んだ動機が「《情け知らずのヴレン》を活躍させたい」であったため、クリーチャーアグロが強いメタゲームであることも鑑みて、メインボードは除去呪文ばかりの採択となっています。

否認踊る影、魁渡

もちろん、《太陽降下》が降り注ぐ白系の除去コントロールが跋扈するメタゲームであれば《否認》がメインボードから複数枚あってもいいですし、黒系ミッドレンジミラーをより一層制したいなら《踊る影、魁渡》などプレインズウォーカーを採用してもいいでしょう。

ギックスの命令

なお、《情け知らずのヴレン》を活躍させたいのであれば、やはり《ギックスの命令》がオススメ。5マナのソーサリーアクションと少々重いうえに盤面も選びますが、決まったときの気持ちよさはトップクラス。《情け知らずのヴレン》の活躍が見たい人や召集デッキが憎い人はぜひ採用しておきましょう。

こんな絶望的な盤面も

ご覧の通りです

全軍突撃

また、《情け知らずのヴレン》を出したターンにそのまま除去を撃つ機会を増やしたかったため、「召集」付きの除去である《全軍突撃》を採用しています。警戒である《群青の獣縛り》やアタックに行きづらいときのネズミ・トークンからマナを払うことができたり、おまけの諜報2が「スレッショルド」の助けとなるなど、地味ですがなかなかにかみ合っている1枚でオススメです。

縫い合わせの旗

それ以外は「マナの出るアンセム」こと《縫い合わせの旗》を26枚目のランドとして採用しています。もちろんクリーチャーのサイズが上がって悪いことなんてないに決まっているのですが、特に《下水王、駆け抜け侯》のネズミトークンが2/2になり戦力換算できるようになることと、《群青の獣縛り》が2/4になり《切り崩し》圏外に逃れることが強力です。

神決定戦の1ゲーム目、2ゲーム目では後手ながら1枚積みのこのカードを引くことができたことが勝利につながりました。2枚目が欲しくなるほど強力なカードなので、こちらもぜひ一度お試しあれ。

「仕留めるのは今にする?それとも後にする?」ネズミが聞いた。(サイドボードについて)

短剣牙の二人組

「どっちもよ。」

サイドボードについてなのですが、シナジー重視の同族デッキの宿命としてサイド後もある程度のクリーチャー枚数を確保する必要があります。

チフス鼠

下環境の「人間」や「エルドラージ」「マーフォーク」などのように、同族クリーチャー内での選択肢が多ければサイドボードでクリーチャー同士を入れ替えるといったことも可能だと思うのですが、ネズミ、しかもスタンダード内でのカードプールだとそれは難しいのが正直なところです(もしカードプールに『チフス鼠』が存在すればサイドに採用したかもしれません)。

そのため、サイドボードではクリーチャーのOutは最小限に留め、主にスペルの入れ替えを行うことになります。

強迫否認軽蔑的な一撃

サイドで特に重く見ているのは、メインで打ち消しを取っていない関係上《太陽降下》が重く1本目が不利対面となってしまう「ボロスコントロール」や「版図ランプ」などの重量級デッキです。これらの相手には《切り崩し》などの除去がほぼ不要で入れ替えを多く取れることもあり、サイドボードの半分以上がこれらのデッキを想定した打ち消し&ハンデスとなっています。

悪意ある覆い隠し踊る影、魁渡

ほかにはジェスカイ(ボロス)召集などの横並びアグロを意識した《悪意ある覆い隠し》や黒系ミッドレンジミラーを意識した《踊る影、魁渡》など、少ない入れ替え枠の中でできるだけゲームに大きな影響を与えるカードであることを意識し、サイドボードを選択しました。

お前の貝力を見せてみろ!(デッキ相性について)

下支え

今回使用した『ディミーアネズミ』のデッキ相性について対面毎に、軽く記載しておきます。このデッキを選択する際の判断材料の1つになれば幸いです。

黒系ミッドレンジ:有利

ゴルガリ・オルゾフ・ディミーアなどの黒いミッドレンジ対決です。お互いに黒い除去がしっかり入っており、盤面にクリーチャーが残りづらいですが、《ネズミの王、カルモニクス》でのネズミ回収能力や横並びする《下水王、駆け抜け侯》、そして墓地から出てくる《しつこい湿地忍び》など最終的なリソース確保能力はこちらのほうが高いと考えています。

腐食の荒馬グリッサ・サンスレイヤーヨーグモスの法務官、ギックス

逆に最も怖いのは《腐食の荒馬》《グリッサ・サンスレイヤー》《ヨーグモスの法務官、ギックス》などに触れずアドバンテージを稼がれ続け押し込まれてしまうこと。特に後手の場合は自分の展開よりも相手の攻め手を捌くことに集中し、相手の攻め手が途切れたタイミングで2マナクリーチャーを展開し反撃するという流れを目指してプレイします。マナが伸びてくれば枚数差で押し込むことができるはずです。

アグロ:五分

心火の英雄イーオスの遍歴の騎士鱗の焦熱、ゲヴ

いまのスタンダードは優秀なアグロカードがそろっており、一口にアグロといっても果敢・召集・トカゲなどさまざまなタイプが存在しますが、メインボードの相性は少し良くありません。理由は簡単で、端的に言えばクリーチャーがネズミばかりだからということになります。

名もなき都市の歩哨分派の説教者

ほかのクリーチャー系デッキが使っているアグロに強いとされているクリーチャー、たとえば《名もなき都市の歩哨》《分派の説教者》といったクリーチャーを採用していないため、主に相手の攻め手には除去で対処することとなります。その分だけ、ほかのミッドレンジに比べてアグロを相手にする際の引きのハードルが上がってしまっています。

切り崩し喉首狙い苦痛ある選定悪意ある覆い隠し

とはいえ、サイド後は4枚の《切り崩し》、5枚の2マナ除去、3枚の《悪意ある覆い隠し》などでクリーチャーに対処することができるため、それなりに改善します。メインを落としてもサイド後2連勝で勝利することも十分に可能です(神挑戦者決定戦の日の私は幸運にも恵まれ、複数回アグロ対面を勝利することができました)。

版図ランプ&コントロール:不利

太陽降下死人に口無し

この2つのデッキが同じ扱いになるのは、どちらも《太陽降下》デッキであるという共通点があるためです。全除去の上に追放能力まで有している2種類のカード、《太陽降下》《死人に口無し》はいずれもネズミたちの天敵。特にメインボードは除去を優先し打ち消しを採用していないこともあり、相手が引かないことを祈りながらできるだけ早く駆け抜けることが最適解となってしまい、残念ながら明確に不利となってしまいます。

豆の木をのぼれ世話人の才能ウラブラスクの溶鉱炉

サイド後はもちろんハンデスと打ち消しで改善……と言いたいのですが、ディミーアネズミも青黒のデッキ、置物に対処しづらいという宿命にはなかなか逆らい難いものがあります。これらのデッキが採用してくる《豆の木をのぼれ》《世話人の才能》《ウラブラスクの溶鉱炉》といったリソース源に触りづらく、(メインボードよりはだいぶマシになりますが)引き続き微不利程度の厳しい戦いを強いられます。

結論から申し上げますと、《太陽降下》とリソース源となるエンチャント・アーティファクトを使用するデッキが厳しい相手となります。逆に言うとこれらを用いるデッキ相手以外には、五分~有利程度の相性があると見込んでいますので、メタゲームからそれらが減った隙を見計らって持ち込むのがオススメです。

そして新たなる次元へ

9月27日(金)に発売となる『ダスクモーン:戦慄の館』。そのストーリーですが、恐怖の館へと迷い込んだナシを放浪皇やタイヴァーら、MTG界のアベンジャーズが救出しに行くお話なのは、かなり早い段階から発表されていました。

ナシはもちろん伝説のネズミ・クリーチャーであり、当然ネズミの数が増えることはディミーアネズミの強化につながります。(どうか青黒のカードであってくれと祈りながら)私はプレビューを毎晩待ちわびていました。

そうして公開されたナシが、こちらになります。

《闇の中の研究者、ナシ》

闇の中の研究者、ナシ闇の中の研究者、ナシ

《闇の中の研究者、ナシ》 UB

伝説のクリーチャー ― ネズミ・忍者・ウィザード

威迫

闇の中の研究者、ナシがプレイヤー1人に戦闘ダメージを与えるたび、あなたはその点数に等しい枚数のカードを切削する。その中から、伝説やエンチャントである望む枚数のカードをあなたの手札に加えてもよい。これによりカードをあなたの手札に加えなかったなら、これの上に+1/+1カウンターを1個置く。

『ダスクモーン:戦慄の館』に収録される《闇の中の研究者、ナシ》は青黒2マナ2/2威迫のスタッツに加え、ダメージを通す度にその枚数分カードを切削し、伝説かエンチャントであるカードをすべて手札に戻す能力を持っています。

「切削したカードの中から1枚」ではなく「望む枚数」のカードを回収できるため、デッキに大量の対象となるカードが入っていれば、それだけ大量アドバンテージの獲得が見込めるので、このカードを中心とした構成が行えるほどのポテンシャルのあるカードだと思っています。ぜひみんなで1000枚買いましょう。

また、切削したカードの中に回収できるカードがなかった場合はどんどんサイズが上がっていくため、威迫と合わせて単純に殴っているだけでもかなりの脅威。たとえば1回サイズを上げるだけで後引きの《切り崩し》圏外へ逃れられるのもいいですね。

既存のネズミたちとの相性も良好で、「スレッショルド」の達成にも役立ち、運が良ければ《ネズミの王、カルモニクス》《情け知らずのヴレン》を拾ってそのままキャストすることができます(欲を言うならネズミ・クリーチャーも拾って欲しいところでしたが……)。

代わりに誰をデッキから抜くかは悩みどころですが、とりあえず4枚からでも試してみたいほどのポテンシャルを感じる、素晴らしいネズミですね。

そして、その際にぜひ一緒に試したいカードがこちら。

《逃げ場なし》

逃げ場なし

《ヴァルガヴォス》の「護法」が誘発しないのもおもしろい。

《逃げ場なし》 1B

エンチャント

瞬速

逃げ場なしが戦場に出たとき、対戦相手がコントロールしているクリーチャー1体を対象とする。ターン終了時まで、それは-3/-3の修正を受ける。

対戦相手がコントロールしている各クリーチャーは、それぞれ呪禁を持たないかのように呪文や能力の対象にできる。それらのクリーチャーの護法能力は誘発しない。

インスタントタイミングの-3/-3修正を行うエンチャント《逃げ場なし》《喉首狙い》のある環境で確定除去でない-3/-3修正は少々心もとない気もしますが、その真価は相手クリーチャーの「呪禁」と「護法」を失わせる能力にあります。

亭主の才能

このデッキは除去呪文はもちろん《群青の獣縛り》《踊る影、魁渡》で相手のクリーチャーを何度も対象に取ることが多く、その際に《亭主の才能》が与える「護法1」がこちらの展開に重くのしかかってきます。その護法を損せず永続的に無効化できる上に、《闇の中の研究者、ナシ》で拾えるエンチャントであるというのはなかなかに素晴らしく、ぜひデッキに欲しいいぶし銀なカードです。

また、ネズミではないですが、《永劫の好奇心》もデッキに良くあったカードだと思います。

《永劫の好奇心》

永劫の好奇心永劫の好奇心

ショーケース版の素晴らしいかわいさもたまりません

《永劫の好奇心》 2UU

クリーチャー・エンチャント ― 猫・光霊

瞬速

あなたがコントロールしているクリーチャー1体がプレイヤー1人に戦闘ダメージを与えるたび、あなたはカードを1枚引く。

永劫の好奇心が死亡したとき、これがクリーチャーであった場合、これをオーナーのコントロール下で戦場に戻す。これはエンチャントである。(これはクリーチャーではない。)

エンチャントであるために《闇の中の研究者、ナシ》で回収することができる上に、威迫を持っているナシ以外も2マナ域のネズミたちや《下水王、駆け抜け侯》のトークンなどでダメージを通しやすく、このカードでどんどんドローを進めていくことができます。

ヨーグモスの法務官、ギックス

瞬速を持っているため、特にサイドボード後は打ち消し呪文を構えながら出していくことができるのも素晴らしいですね。なお、似たような能力を持っているカードに《ヨーグモスの法務官、ギックス》が存在しますが、ディミーアネズミは《下水王、駆け抜け侯》《ネズミの王、カルモニクス》で3マナ域が渋滞しがちといった理由で採用していませんでした。

ネズミデッキのマナカーブに噛み合い、(疑似)除去耐性と瞬速という2つの強力な能力を追加で持つ《永劫の好奇心》、ぜひ試してみたいカードです。

おわりに

というわけで、ここまで好き放題にディミーアネズミのことを語らせていただきましたが、言いたいことはだいたい言った気がしますし、そろそろこのあたりでいい加減筆を置こうかと思います。

この記事を読んで、「スタンダード神になってたし、ちょっと1回ネズミ回してみるか」と思ってくださる方がいれば幸いです。……特にクリーチャーが比較的安いので、過去に青黒ミッドレンジとか組んでてマナベースがそろっているそこのあなたにおススメです。

私は『ダスクモーン:戦慄の館』の発売後もネズミをこね続けていると思いますので、トーナメントセンターなど大会で見かけたら気軽に声なんかかけていただけたら感激です。お読みいただきありがとうございました!

吉田 悠太郎

この記事内で掲載されたカード

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