USA Modern Express vol.121 -エネルギー vs. コンボ vs. コントロール-

Kenta Hiroki

はじめに

みなさん、こんにちは。

禁止改定からしばらく経ち、予選シーズンということでテーブルトップのイベントも充実していますが、みなさん新環境のモダンを楽しんでいますか?

さて、今回の連載では『Modern Challenge』の結果を見ていきたいと思います。

『Modern Challenge 32』 –《一つの指輪》入りのボロスエネルギーが新環境のトップメタ-

禁止改定後のモダンは、Boros Energyとそれに対して相性がいいコンボデッキが中心となっていました。

デッキ紹介

Amulet Titan

Golgari YawgmothやDomain Zooなどと同様に、《有翼の叡智、ナドゥ》のカードパワーによって環境から締め出されていたAmulet Titanでしたが、禁止改定によって環境が変化したことで復権してきています。

Shifting WoodlandAftermath AnalystLumra, Bellow of the Woods

また、ここ最近のセットで《変容する森林》《事件現場の分析者》《森の轟き、ルムラ》といった新戦力も獲得したことで強化されました。《変容する森林》《事件現場の分析者》のループ《森の轟き、ルムラ》で墓地の土地カードを戻して一気にゲームを決めるという選択肢も増えています。

☆注目ポイント

イリーシア木立のドライアド溶鉄の尖峰、ヴァラクート

最近のリストでは《イリーシア木立のドライアド》《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》の採用が見送られる傾向にあります。《電気放出》《致命的な一押し》といった除去が主流の環境では、《イリーシア木立のドライアド》が対策されやすいのが理由のひとつです。

Shifting WoodlandAftermath AnalystAmulet of VigorLotus Field

新たに搭載されたコンボとして、《変容する森林》《事件現場の分析者》《精力の護符》or《洞窟探検》《睡蓮の原野》によるループがあります。

トレイリア西部鏡の池天上都市、大田原耐え抜くもの、母聖樹

土地を墓地から復活させ続けることでマナを大量に出すことができ、《トレイリア西部》で好きな土地や0マナスペルをサーチしたり、《鏡の池》を使いまわして無限トークンを作ったり、《天上都市、大田原》《耐え抜くもの、母聖樹》で相手の場を一掃することもできます。

カウンターで対処できない土地を使いまわすコンボなので青いデッキに対しては強いですが、墓地対策には弱いです。また、「昂揚」の条件が満たされないとループが止まってしまうのには注意が必要です。エンチャントであり土地カードでもある《ウルザの物語》《睡蓮の原野》で墓地に送っておくなどの準備も重要になってきます。

一つの指輪

さまざまなデッキに採用されている《一つの指輪》ですが、このデッキにも採用されています。必要なマナ加速やフィニッシャーを引き当てやすくなり、リソースの枯渇の防止にもなるためデッキの安定性が向上しています。

《血染めの月》を置かれたとしても、《一つの指輪》で時間を稼ぎつつ解答を探したり、《緻密》にも引っ掛からないので、対策が増量されるサイド後のゲームにも対応しやすくなります。《天上都市、大田原》でバウンスすることで重荷カウンターをリセットできるのも覚えておきたいところです。

『Modern Challenge 64』 -圧倒的な強さを見せるエネルギー-

開催日:2024年9月21日

優勝 Boros Energy

準優勝 Jeskai Control

3位 Eldrazi Tron

4位 Boros Energy

5位 Izzet Murktide

6位 Dimir Murktide

7位 8 Cast

8位 Boros Energy

トップ8デッキリスト

今大会でも、Boros Energyが優勝も含めてプレイオフに3名と安定した成績を残していました。ほかにも、Jeskai Control、Izzet Murktide、Dimir Murktideなど青いデッキもポピュラーでした。

デッキ紹介

Jeskai Control

《一つの指輪》を使ったモダン環境を代表するコントロールデッキです。

もともとBant Naduをメタったデッキだったため、禁止改定後の環境ではあまりいい立ち位置ではないとされていましたが、《空の怒り》はクリーチャーだけでなく《精力の護符》《ウルザの物語》といったさまざまな脅威に対しても有効なので、環境が変化してもコンスタントに結果を残しています。

また《血染めの月》には弱いので基本土地の《平地》を2枚入れることで、《空の怒り》をプレイできるよう調整されています。

☆注目ポイント

火の怒りのタイタン、フレージ

再利用可能なフィニッシャーである《火の怒りのタイタン、フレージ》を使えるため、長期戦に強い構成になっています。Jeskai Controlはフェッチランドや軽いスペルが多く採用されているので墓地が肥えやすく、《火の怒りのタイタン、フレージ》を何度も「脱出」させることができます。

電気放出

《稲妻》に代わるモダンの主要な1マナ除去として定着している《電気放出》。フレキシブルな強さがあり、新環境でもBoros Energyの序盤の脅威を捌く手段として機能し、プレインズウォーカーや高タフネスのクリーチャーも、エネルギーを貯めることで対処することができます。

呪文嵌めロリアンの発見

エネルギーカウンターによるシナジーよりも単体でのカードパワーの高さを優先したようで、《語りの調律》の採用は見送られており、その枠には追加の《呪文嵌め》《ロリアンの発見》が採用されています。Boros Energyの脅威の多くは2マナ域で、Ruby Stormなどにも有効なので《呪文嵌め》は現在のモダンで最高のカウンターのひとつです。

Eldrazi Tron

Eldraziは《裂け目の突破》型だけではなく、昔ながらのビッグマナタイプであるEldrazi Tronも健在です。

『モダンホライゾン3』から複数のエルドラージ・カードや、2マナランドの《ウギンの迷宮》などを得て大幅に強化されたEldrazi Tronは、Bant Naduが退場したことによって以前よりもいい立ち位置にあります。

Ruby Stormなど高速コンボとの相性は悪いですが、《一つの指輪》のおかげで解答を探せるため《血染めの月》を使ったデッキとの相性が緩和されています。

☆注目ポイント

Ugin's Labyrinth

《ウギンの迷宮》を得たことで、レガシーのように2ターン目から《難題の予見者》といった脅威を安定してプレイできるようになりました。《全ては塵》《運命を貪るもの》《世界を壊すもの》など「刻印」できる無色のカードも豊富です。

反発のタリスマン一つの指輪大いなる創造者、カーン

1ターン目に《ウギンの迷宮》から《反発のタリスマン》、2ターン目から《一つの指輪》《大いなる創造者、カーン》という動きも可能です。《大いなる創造者、カーン》からは《石の脳》《三なる宝球》《罠の橋》などをサーチして相手の行動を制限していきます。

コジレックの命令

《コジレックの命令》はEldrazi Tronにとって大きな収穫となりました。エルドラージスペルなので《エルドラージの寺院》と相性が良く、落とし子・トークンは序盤のブロッカーとしてもマナ加速としても使えます。ほかにも、このデッキにとって役に立つ能力がそろっています。

『Modern Challenge 64』 -モダンでもカエルが大活躍-

開催日:2024年9月21日

優勝 Boros Energy

準優勝 Naya Energy

3位 Domain Zoo

4位 Dimir Murktide

5位 Eldrazi

6位 Azorius Urza

7位 Golgari Yawgmoth

8位 Boros Energy

トップ8デッキリスト

Boros Energyが安定した成績を残すなか、Domain ZooやGolgari Yawgmothといった旧環境で活躍していたアーキタイプも入賞していました。

《超能力蛙》を得たDimir Murktideは、現在Boros/Mardu Energyの次に人気があるデッキで、現環境の代表的なミッドレンジデッキとして定着しています。

デッキ紹介

Dimir Murktide

《一つの指輪》よりも軽いアドバンテージ源である《超能力蛙》が使えるため、現在のモダンでは珍しく《一つの指輪》を採用していないミッドレンジになります。

各種妨害スペルでゲームをコントロールしていきますが、《濁浪の執政》《超能力蛙》といったクリーチャーによって即座に攻めに転じることもできます。手札と墓地の状況によっては、《濁浪の執政》《超能力蛙》の2体が場にある状態でターンが帰ってくれば、そのまま勝負を決めることも可能です。

☆注目ポイント

オークの弓使い

インスタントスピードでプレイできる《オークの弓使い》は、Boros Energyの序盤の脅威を除去しつつブロッカーを用意することができ、《一つの指輪》を使うデッキに対してプレッシャーをかけることができます。

塵へのしがみつき

《塵へのしがみつき》はメインから無理なく運用できる墓地対策で、《火の怒りのタイタン、フレージ》を対策することができます。ライフゲインも、序盤からライフを詰めてくるBoros Energyとのマッチアップで有用です。

ファイレクシアの十字軍毒の濁流

「プロテクション(白)(赤)」で除去耐性が高く毒殺も狙える《ファイレクシアの十字軍》は、最近サイドでよく見られるようになったBoros Energy対策で、《毒の濁流》よりも優先される傾向にあります。

Boros Energy側もサイド後は《オークの弓使い》やスイーパーに弱いクリーチャーを減らし、《血染めの月》《一つの指輪》といったカードを増量してミッドレンジ寄りにシフトすることが多いため、《毒の濁流》はそれほど大きな効果が望めないので妥当な変更といえます。

総括

オセロットの群れ血染めの月一つの指輪

Bant Nadu亡き後の環境はBoros/Mardu Energyが最も安定した勝率を維持しています。

また、ハンデスなど対コンボ用のカードにアクセスできるMarduバージョンよりも、マナベースが安定しており《血染めの月》《一つの指輪》といったカードを使いやすいBorosバージョンのほうがポピュラーな形になっているようです。

Boros Energyがトップメタである現環境ではコンボデッキも人気があり、それらと相性がいいDimir Murktideもいい立ち位置にあります。トップメタのBoros Energyに対してキツイのは間違いないですが、最近好成績を残しているリストはサイドに《ファイレクシアの十字軍》を入れるなど工夫が見られました。

USA Modern Express vol.121は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!

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Kenta Hiroki アメリカ在住のプレイヤー。 フォーマットを問わず精力的に活動しており、SCGやグランプリの結果などからグローバルな最新情報を隔週で発信する「USA Modern Express」「USA Legacy Express」を連載中。 Kenta Hirokiの記事はこちら