はじめに
Hareruya Prosの平山(@sannbaix3)です。
パイオニアは、先日の禁止改定で《アマリア・べナヴィデス・アギーレ》と《傲慢な血王、ソリン》が禁止になり、環境が大きく変わりました。
今月には『チャンピオンズカップファイナル静岡』が控えているということで、今回は激変したパイオニア環境について確認していきたいと思います。
また記事後半では、『ダスクモーン:戦慄の館』の注目カードと大会で入賞した新環境のデッキについて紹介します。
最強デッキランキング
いきなりですが、企業系攻略サイトらしく(?)、まずは禁止後のパイオニア環境の最強デッキランキングでも記そうと思います。
■最強デッキランキング
S:ラクドス果敢
A:
イゼットフェニックス
ジャンドサクリファイス
アゾリウスコントロール
B:
ラクドスミッドレンジ
天使
ボロスコントロール
各デッキの解説
ラクドス果敢
禁止改定後に大きく勢力を伸ばしたデッキです。禁止改定の影響というより「『ブルームバロウ』で《心火の英雄》と《熾火心の挑戦者》が登場したことで頭角を現したデッキが、禁止改定後のタイミングで形になった」というほうが正しいかもしれません。
- 2024/09/16
- 第15期パイオニア神決定戦カバレージ
- 晴れる屋メディアチーム
禁止後のMagic Onlineで行われた『Pioneer Challenge』では最も入賞率が高いデッキであり、先日齋藤 慎也さんがパイオニア神になったデッキでもあります。
妨害がなければ《無感情の売剣》の出来事を絡めることで3ターンキルも頻繁に狙うことができ、除去を撃ってくるデッキに対しても大量のクリーチャーと《立身/出世》で乗り越えることができます。特に無妨害時のキルターンの早さは、アマリアコンボのように干渉手段に乏しいデッキを数多く環境から追いやっています。
まだ登場して日の浅いデッキなので、このデッキ自体の伸び代も、対策側の対応も未知数です。強力なデッキであることは間違いないですが、今後はポジションを落としてしまう可能性もあります。後述しますが、最近はメインから《真昼の決闘》を採用したコントロールが登場するなど、明らかにガードが上がっています。
イゼットフェニックス
なぜか《宝船の巡航》が禁止にされないので、ずっと環境上位に居続けています。最近は《プロフトの映像記憶》を多めに採用して、《弧光のフェニックス》への依存度を下げた構成が主流です。
しかし、禁止改定直後の予想に反して、それほど好成績は残せていません。本来有利だったジャンドサクリファイスが、このデッキでは干渉しづらい《全てを喰らうもの、イグラ》コンボを採用したことや、ラクドス果敢にも非常に効く《真昼の決闘》を使ったデッキが増えたことなどが理由でしょうか。
強力なデッキであることには間違いないので、ガードが下がったり、このデッキ自体が環境に対応できたらいつでもトップになるポテンシャルはあります。
ジャンドサクリファイス
従来のラクドスサクリファイスに、《全てを喰らうもの、イグラ》コンボを採用したデッキです。
《全てを喰らうもの、イグラ》と《大釜の使い魔》2枚で、食物になった《大釜の使い魔》を《大釜の使い魔》で生贄に捧げることで無限ライフドレインになります。《全てを喰らうもの、イグラ》コンボはアマリアコンボにも後出しで勝てる無限コンボとして発売当初から注目されていたものの、《大釜の使い魔》ギミックが《血管切り裂き魔》に弱いという致命的な欠陥があったため、あまり勝てませんでした。
《清掃人の才能》はコンボパーツを墓地に落とすことができ、レベル3の能力で《全てを喰らうもの、イグラ》を蘇生してそのまま勝てたりと、このデッキにとって最高の潤滑油になります。蘇生効果を使用したら6枚追加で切削できるなど、見切り発射でも意外とコンボが決まることも多く、同名カード2枚を含む3枚コンボですが見た目より簡単にそろいます。
《全てを喰らうもの、イグラ》を除去しようとしても、追加で食物があれば除去の上からコンボを決められるのでコンボ強度が高く、今まで苦手だったイゼットフェニックスのようなデッキとの相性が改善されています。
しかし、従来のミッドレンジ偏重の型に比べ、干渉手段が乏しくなっていることと、盤面に置物を多く用意しないといけない構成になっているため、《一時的封鎖》のようなカードに弱くなっている点もあります。
アゾリウスコントロール
古来より存在するデッキですが、対ラクドス果敢デッキとしてラクドス果敢の流行後に大きく勢力を伸ばしています。もとからイゼットフェニックスやサクリファイス系のデッキとは五分以上で戦えていたため、立ち位置は非常に良いです。
《一時的封鎖》はラクドス果敢だけでなく、ジャンドサクリファイスにも非常に有効で、現環境にマッチしたカードです。また最近のトレンドなのが、メインの《真昼の決闘》の採用です。イゼットフェニックス、ラクドス果敢にクリティカルに刺さります。《沈んだ城塞》や《噴水港》の宝物・トークンから赤マナを出して5点飛ばせることは覚えておきましょう。
ラクドスミッドレンジ
パイオニアといえばこのデッキ、パイオニアの王・ラクドスミッドレンジさんです。このデッキのカード(《鏡割りの寓話》)は禁止にされず、これより強いデッキは禁止されていくので、定期的にラクドスミッドレンジが環境に戻ってくることは必然といえます。
最近のトレンドは《墓地の侵入者》《ドロスの魔神》を多く採用することです。《墓地の侵入者》は墓地を追放する能力がイゼットフェニックスやアゾリウスコントロールの《記憶の氾濫》に有効で、「護法」はこれらのデッキに加えてラクドスサクリファイスに有効です。《ドロスの魔神》もタフネス6の飛行がイゼットフェニックスやラクドス果敢に有効であり、2点ルーズ能力も《大釜の使い魔》を牽制できます。
色の都合上置物は苦手ですが、よくプレイされる置物がジャンドサクリファイスの《清掃人の才能》であるため、《碑出告が全てを貪る》で対策できています。
直近で増えているアゾリウスコントロールに対しても有利なデッキであり、環境上位の多くのデッキに対して五分以上に戦えるため、現在平山一推しのデッキです。いまさらラクドスミッドレンジが強いのも退屈なので『ダスクモーン:戦慄の館』で変わってほしいですね。
天使
かつて対アグロデッキキラーとして活躍していたデッキです。本来であればクリーチャーデッキには有利ですが、前環境のクリーチャーデッキはアマリアコンボに吹き飛ばされていたため、環境からいなくなっていました。ただ、現在の環境トップがラクドス果敢ということで再度注目を集めています。構成は昔のままなので特にいうことはありません。
ラクドス果敢対策デッキとして全体除去を多く採用した白系のコントロールが増えてきたので、今後はその煽りを受けることになると思われます。
ボロスコントロール
対ラクドス果敢デッキとして注目されています。豊富なリソース獲得手段と多くの軽量除去や《放浪皇》に加えて《真昼の決闘》まで採用。ここまで寄せればラクドス果敢には有利がつくでしょう。
似た立ち位置のアゾリウスコントロールと比べると、ラクドスミッドレンジのようなデッキにはリソース勝負をしかけやすい反面、アゾリウスコントロールやコンボデッキにはカウンターのないもっさりコントロールらしくかなり相性が悪いです。
総じて相性差がかなり出やすいタイプのデッキで、自身の出現により果敢デッキが減るとこのデッキの存在意義がなくなってしまうという哀しいジレンマを抱えています。
『ダスクモーン:戦慄の館』の注目カード
ここでは『ダスクモーン:戦慄の館』の注目カードをパイオニア目線で紹介します。なかには、すでに採用されてオンラインの大会で結果を残したカードもあります。
「境界」土地サイクル
強力なアンタップインの土地です。上で述べたデッキだと、ラクドスミッドレンジや天使には採用されそうです。
組み合わせごとに常に出る1色が決まっているため、使いやすいデッキと使いにくいデッキがあることには注意が必要です。
たとえば、《ソーンスパイアの境界》は常にでるのが赤です。《アタルカの命令》をタッチした赤単果敢のようなデッキにとってはかなり嬉しい土地ですが、《ラノワールのエルフ》をプレイするようなアグロデッキでは逆に使いづらいです。
また、この土地やファストランドのような優秀な土地を入れすぎると、基本土地タイプを持った土地が減ってしまうので、4枚採用するのではなく枚数を抑えるパターンもあるでしょう。
多色デッキでの使用だと、比較対象はチェックランドになると思います。例をとると、5色ニヴ=ミゼットでは、現在「ショックランド」+「《寓話の小道》パッケージ」+「チェックランド」のマナベースを採用しています。マナベースの考え方については過去の記事で解説したのでそちらを参照ください。
このデッキでチェックランドと境界ランドを比較すると、
■チェックランドと境界ランドの比較
・常にアンタップインするのでトライオームとの色の兼ね合いを気にする必要がない。
→チェックランドでは採用しづらかった色を採用でき、色を散らしやすくなる。
・片方しか色が出ないリスクがある。
→常に出る色がよく出したい色で、2色目がタッチカラーの土地が使いやすい。
と考えると記事の5色ニヴ=ミゼットのリストでは、常に白が出せて、後半になれば出ればいい青が2色目の《フラッドファームの境界》は《氷河の城砦》より使いやすいかもしれません。また、チェックランドの数を減らせれば、トライオームをより散らした構成もとりやすいはずです。
《止められぬ斬鬼》
いろいろ書いてあって強そうなカード。ライフを半分にする能力のおかげで、単体で殴っても20→9→3→0と減っていくので、3発で勝てます。つまり《朽ちゆくレギサウルス》です。
それに加えて「接死」と謎の除去耐性を持っているので、受けも結構強いです。ラクドスミッドレンジの3マナ枠に採用される可能性を十分感じるカードです。
《忌まわしき眼魔》
5/5・飛行に毎ターン「戦慄予示」と、見るからに強力な効果を持っていますが、追加の墓地コストが《宝船の巡航》と競合します。なので、既存のイゼットフェニックスのようなデッキに入れるのは難しいでしょう。
使うならスタンダードのアゾリウスメンターのようなデッキで、《救いの手》などを使ってリアニメイトする構成を目指すのが良さそうに見えます。
《紅蓮地獄》
再録カードですが、パイオニアでは初収録になる待望の2マナ全体火力です。ボロス召集のようなデッキには非常に有効ですが、ラクドス果敢は果敢や強化スペルで簡単にタフネス3以上の盤面をつくるのが簡単なので、意外と効かないかもしれません。とはいえ存在するだけでも脅威であり、アグロデッキはこのカードを意識せざるを得ないでしょう。
《幽霊による庇護》
除去+絆魂+護法と、多くの能力が詰め込まれた優秀なエンチャントです。除去+絆魂という組み合わせは、特に流行りのラクドス果敢に有効です。
ボロスヒロイックのようなデッキに採用される可能性もありますが、最注目はオーラ系のデッキでしょう。実はパイオニア環境には絆魂を付与したり、除去となるいいオーラが少なく、ニッチでカードパワーの低いカードを採用せざるを得ませんでした。その枠をすべてこのカードに変更できることは、大幅な安定感やデッキパワーの向上に繋がるはずです。
《ベイルマークの大主》
アブザンパルヘリオンのようなデッキで使用されるかもしれません。現在のアブザンパルヘリオンはクリーチャーの枠が非常に少なく、《忌まわしい回収》が使いづらいです。そこを置き換える形でもいいですし、このカードが《忌まわしい回収》で拾える点を活かして両方採用してもいいのかもしれません。
アブザンパルヘリオンはデッキの性質上フェアなミッドレンジプランを取ることも多く、墓地肥やし枠がミッドレンジプランでも有用なクリーチャーになるのは良さそうです。
《逸失への恐怖》
戦場に出たときのルーター能力に加え、「昂揚」達成時は1体をアンタップさせ、追加の戦闘フェイズを行うことができます。マルドゥパルへリオンで墓地肥やしをしつつ、《大牙勢団の総長、脂牙》で釣った機体に追加コンバットを付与できたら気持ちよさそうです。
《残響の力線》
初手で置ければ2ターンキルも夢ではないカードです。安定性が売りの現在のラクドス果敢に入れるかは悩ましいことですが、2ターンキルには夢が詰まっています。主流派にはならずとも、使う人はある程度はいそうです。
《悪魔的助言》
パイオニアでデーモンといえば《魂剥ぎ》。《魂剥ぎ》をサーチできるのはもちろん、《魂剥ぎ》デッキなら「昂揚」達成も容易なので好きなカードを持ってくることもできます。ただ、墓地対策されているときに《魂剥ぎ》しか持ってこれないのは残念なポイントです。
ピックアップ!『ダスクモーン:戦慄の館』リリース後の注目デッキ
『ダスクモーン:戦慄の館』リリース後、Magic Onlineでの『Pioneer Challenge』など、大会がいくつか行われているので、そこでの注目デッキを紹介します。
ボロスヒロイック
話題の《残響の力線》を採用したボロスヒロイックです。ラクドス果敢とデッキの方向性は似ていますが、ラクドス果敢がデッキのパーツの種類数を減らすことで安定性を重視しているのに対して、このデッキは《残響の力線》を採用した爆発力重視のデッキとなっています。《残響の力線》を置いたら2ターンキルが現実的に発生する恐ろしいデッキです。
《奇怪な具現》
クリーチャー枠では《ホーントウッドの大主》などの「大主」サイクルが新たに採用されています。これらは《豆の木をのぼれ》《奇怪な具現》《空を放浪するもの、ヨーリオン》と相性が良くデッキにマッチしています。
かつての《奇怪な具現》デッキとの構成の違いは、《創案の火》を採用せずに大量の軽い単体除去を採用している点です。こうすることでラクドス果敢への干渉手段を担保しています。《咆哮する焼炉/蒸気サウナ》や、このリストには採用されていないですが《逃げ場なし》などの新たな軽いエンチャント除去はこの構成にするうえで優秀なカードです。
このデッキがさらに流行する場合は、《告別》や《自然に帰れ》などのクリティカルなカードをサイドに採用するのもアリかもしれません。
ロータスコンボ
9月26日の『Pioneer Challenge 32』をなんとロータスコンボが優勝しています。このデッキは、ラクドス果敢のような自分より速いデッキが苦手なため、数をかなり減らしていました。《九つの命》を採用して抵抗はしていますが、変わらず相性は悪いままでしょう。
代わりに、ロータスコンボはボロストークンや《奇怪な具現》のようなラクドス果敢に有利な遅い除去コントロールにめっぽう強く、これらのデッキが増えた結果、逆にロータスコンボの立ち位置がよくなりました。
アゾリウスコントロール
南米ではなんと発売週に『地域チャンピオンシップ』(日本でいう『チャンピオンズカップファイナル』)が開催されていました。そこで優勝したのがアゾリウスコントロールです。
ラクドス果敢への優位性がありつつ、ラクドス果敢に有利なデッキ同士のマッチアップで有利なのが勝因だと思います。もともとある程度使われていたデッキでカードパワーが担保されており、雑多なデッキに強いのも魅力です。
今回の記事はこれで以上となります。
いろいろとデッキを紹介しましたが、総じてラクドス果敢が最強→それをメタったコントロールが強い→その一歩先は……という構図は変わっていないでしょう。『ダスクモーン:戦慄の館』はまだ発売直後で、使われていない強力なカードも多いはずです。今後のメタゲームにも期待しましょう。
平山 怜(X)