Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2024/10/09)
はじめに
やぁ、みんな!
『ダスクモーン:戦慄の館』は最近発売されたばかりだが、スタンダードとパイオニアではすでに大きな影響が出ていて注目を集めている。
今回は、新カードの登場により大幅に強化されたパイオニアのデッキを見ていこうと思う。なかには事前に予測できていたものもあれば、予想外なものもあった。
デッキ紹介
ラクドス果敢
《残響の力線》はセット全体で見ても特に目を引くカードであり、実際にここまで大きく話題になっているカードでもある。多少の運と《騒音の悪獣》のようなカードがあれば、2ターンキルも可能で、パイオニアでは間違いなく強い。ただ、予想外だったのは、この力線と相性の良い強力なコンバットトリックが同時収録されたことだろう。
《裏の裏まで》はこの力線と完璧な相性であり、高速キルを狙いながらも、パイオニアの果敢デッキで無理なく機能する。
『ダスクモーン:戦慄の館』の発売前から、ラクドス果敢はもともと環境に存在するデッキだった。ただ今回強化されて、2/2のクリーチャーを残すコンバットトリックがさらに風向きを良くしている。これだけではラクドス果敢が最強デッキ、もしくはトップデッキの仲間入りすると断言はできないけど、高速キルを警戒していない戦略を咎めることはできるだろう。
奇怪な具現
この2枚をひとくくりにして紹介したのは、パイオニアの《奇怪な具現》デッキで一緒に使われるからだ。《ホーントウッドの大主》はこのデッキに完璧にフィットしていて、《奇怪な具現》とシナジーが強いのはもちろん、これ1枚で《力線の束縛》が1マナで唱えられるようになる。ただ、これもまた事前に予測できたことではある。
《ボイラービルジの大主》は6マナ域であり、現在は《偉大なる統一者、アトラクサ》への架け橋として《奇怪な具現》デッキで採用されている。これは《ホーントウッドの大主》ほど予想できていなかったことだ。
実は《ボイラービルジの大主》にはほかにも《奇怪な具現》デッキにとってメリットがある。それは、《鏡割りの寓話》をより強く使えることだ。
たしかに、いろいろなフォーマットで大活躍のこのカードは《奇怪な具現》の生け贄にもできれば、有用な宝物・トークンも出せるから、すでに強いカードではある。ただ、このデッキにおいて《鏡割りの寓話》を使っていると、《キキジキの鏡像》がやや地味に感じることがあったのだ。しかし、《キキジキの鏡像》の能力を起動できるときに「大主」が戦場にいれば、たちまち脅威となりゲームを終わらせることができるだろう。
マルドゥリアニメイト
まだまだこんなものじゃない。『ダスクモーン:戦慄の館』は歴史的に見てもトップクラスのリアニメイト向けのクリーチャーを輩出した。《偉大なる統一者、アトラクサ》にも匹敵するそのクリーチャーとは、《恐怖を喰うもの、ヴァルガヴォス》だ。
これが現在のパイオニアのリアニメイトの形だ。おなじみの《鏡割りの寓話》《税血の収穫者》に加え、《逸失への恐怖》を迎えたこのデッキは、リアニメイトプランに噛み合いながらも、バリューを生み出すカードを12枚も採用できるようになった。コンボデッキにおけるこういった追加のデッキパーツの影響力は、ついつい侮られがちだ。
このリストでは《偉大なる統一者、アトラクサ》ではなく《恐怖を喰うもの、ヴァルガヴォス》が4枚採用になっている。どちらにも良さがあるため、どう採用するかはマッチアップ次第だろう。イゼットフェニックスやジャンドサクリファイスが相手ならば、追放する能力を持ち、相手の戦略を1枚で崩壊させる《ヴァルガヴォス》に軍配が上がる。また《アトラクサ》ではオーバーキルなこともあった。
《恐怖を喰うもの、ヴァルガヴォス》の最大の弱点は、アゾリウスコントロールなどを相手にしたときにインパクトに欠けることだ。単純に全体除去でさばかれてしまう。メタゲームがアゾリウスコントロールのようなデッキに傾いているようであれば、《ヴァルガヴォス》を踏み倒す戦術を肯定できない。ただ、イゼットフェニックスが最大勢力ならば、《ヴァルガヴォス》は《不屈の独創力》デッキにおいても《アトラクサ》を上回るだろう。
アブザンパルへリオン
さて、これは予想外だった。《その名を言え》はアブザンパルヘリオンにおいて実に強力だ。このデッキは《忌まわしい回収》の強化版《蓄え放題》を前セットで獲得し、大きく強化されている。
このリストを見てみれば、《その名を言え》が魅力的である理由がわかるだろう。《蓄え放題》のようなカードと大きく違うのは、1枚の《大牙勢団の総長、脂牙》を何度も使いまわすことができる点だ。切削したカードのなかから回収するカードを選ぶ必要がない。その反面、切削するカードが5枚から3枚へと大きく減ってしまっている。また、このリストでは驚いたことに《三度呼ばれ、アルタナク》も採用されている。
この手のカードは構築レベルに達しないことが多いものの、今回は少しワケが違うかもしれない。なぜなら、このデッキはすでに高速で自分のライブラリーを切削するように組まれており、《その名を言え》が複数枚墓地に落ちるのはそう珍しくないからだ。そして《三度呼ばれ、アルタナク》は簡単には処理されない。具体例をあげると、イゼットフェニックスは対処するのに《稲妻の斧》を少なくとも2枚唱えなければならず、さらにこちらは2枚ドローできる。
《ベイルマークの大主》は「切削」戦略に噛み合っているが、《その名を言え》とは違う観点から相性が良いと思っている。
テキストを見ただけだと、《忌まわしい回収》と違って土地を回収できなくなり、その代わり「兆候」ができるようになったように思える。パイオニアは比較的速いフォーマットであるし、この神話レアは見かけ倒しに感じるかもしれない。ただ、アブザンパルヘリオンのようなコンボデッキをプレイしていると、一見したところではわからない相手との駆け引きがある。
例を挙げよう。相手がコントロールデッキを使っていて、こちらにはすでに墓地に《パルヘリオンⅡ》が、手札には《大牙勢団の総長、脂牙》があるとする。コンボを決めにいくこともできるが、その場合は相手が打ち消しや除去で妨害してくるだろう。そうなれば、ゲームに決着をつけられない。
ここでコンボ側であるこちらは、コンボを決めにいかない選択も取ることができ、そうすると相手は次のターンもマナを構えておかなければならない、という駆け引きが生まれるのだ。このような状況で、これまでアブザンパルへリオン側にトップデッキして嬉しいカードが《思考囲い》しかなく、この駆け引きが良い方向に働く可能性は低かった。
ではもし、カウンターが取り除かれ、目覚めればゲームを支配してしまえる《ベイルマークの大主》がその状況にいたとしたら?「大主」にも負けないように警戒しなくていけない相手は、難しい状況に追いやられるだろう。
「大主」4枚はたしかに多いかもしれないが、複数枚分の枠を割く価値はあると思っている。5マナで唱えるのは現実的であるし、《エシカの戦車》の後続として出しても良いだろう。これだけ相性の良いカードを『ダスクモーン:戦慄の館』から手に入れたアブザンパルヘリオンは、最も強化されたアーキタイプと言っても過言じゃない。
黒単
最後になってしまったが、《不浄な別室/祭儀室》を軸に据えたデッキがMagic Onlineで結果を出し始めている。個人的に大きなポテンシャルを感じているよ。
《止められぬ斬鬼》にフィーチャーしたこのデッキは、《不浄な別室/祭儀室》も意識した構成になっており、理にかなった構成になっていると思う。
《ドロスの魔神》は従来からパイオニアで使われていたカードであり、ラクドスミッドレンジにおいてもラクドス吸血鬼においてもその姿はあった。《不浄な別室/祭儀室》《アクロゾズの放血者》との相性の良さを考えれば当然の採用だろう。
《不浄な別室/祭儀室》について見落としてはいけないのは、毎ターン2点ダメージを喰らうとしても悪いカードとは言い切れない点だろう。一種の《ファイレクシアの闘技場》でありながら、5マナの6/6デーモンでもある。手札破壊呪文を8枚採用していれば、アゾリウスコントロールや、大半のコンボデッキのようにライフを狙ってこない相手に対して強く使える。ライフを狙ってくる相手だとすれば、今度はデーモンたちや除去が強く使えるはずだ。
このように、あらゆる相手に対していろいろなゲームプランを組み立てられるデッキであり、異なる角度から攻めてくるデッキが点在するパイオニアにおいては魅力的に映る。
従来の《無駄省き》デッキのポジションを奪いうるデッキではないかと睨んでいるよ。
まとめ
第一印象では、『ダスクモーン:戦慄の館』には《残響の力線》を除いて飛びぬけて強いカードがないと思っていたけど、さまざまなアーキタイプに多くの新しいカードをもたらし、新鮮さを与えている。
たしかに新カードの一部は最終的に抜けてしまうものもあるだろうけど、反対に採用され続けるものもあるだろう。それにまだ可能性を見出されていないカードもあるに違いない。地域チャンピオンシップに向けてプレイヤーたちが調整していくうちに、新たな可能性が発見されていくはずだ。
ここまで読んでくれてありがとう!
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