はじめに
みなさん、こんにちは。
『Asia Eternal Weekend 2024』が終了し、来月にはヨーロッパとアメリカで『Eternal Weekend』が開催されるなどレガシーのイベントが充実しています。
今回の連載では『Asia Legacy Championship 2024』の入賞デッキを見ていきたいと思います。
『Asia Legacy Championship 2024』 -ReanimatorとEldraziの2強に対する対抗勢力-
日本国内で開催されたレガシーの大規模イベント『Asia Legacy Championship 2024』は参加者614名と大盛況でした。
筆者も参戦し、成績は振るわなかったものの、日本のレガシープレイヤーの方々や普段この記事を愛読してくださっている読者の方々と交流を持つことができ、たいへん有意義な時間を過ごすことができました。声をかけていただいたみなさん、いつも記事を読んでいただきありがとうございます。今後もレガシーの情報をお届けしていきたいと思うのでよろしくお願いいたします。
さて、今大会でもトップメタのDimir Reanimatorは人気&勝率ともに高く、トータルで54%以上という強さを見せています。プレイオフに入賞していたNadu Comboも、トップメタのデッキと比べるとシェアは少なめだったものの、勝率57%という高い数値を出していました。
優勝を果たしたMono Red Prisonは、Dimir Reanimatorに対して約60%と高い勝率を出しており、Eldraziにも有利なデッキです。苦手なSneak and Showも現在では減少傾向にあるため、今後も要注目のデッキになります。
Mono Red Prison
Mono Red Prisonは今大会の直前に開催されたMOの予選イベント『Legacy Super Qualifier』でも優勝しており、また『第27期レガシー神挑戦者決定戦』でも入賞と最近著しい活躍を見せています。
このデッキの強みは、トップメタのReanimatorやEldraziを含めたさまざまなデッキに対して非常に強力な《血染めの月》や《苛立たしいガラクタ》を強く使えることです。現在のレガシーは《ウルザの物語》や《意志の力》を使うデッキが多いため、現環境では良チョイスのデッキになります。
《苛立たしいガラクタ》によって相手の妨害を制限しつつ、マナ加速から《一つの指輪》や《パイロゴイフ》などの強力な4マナのカードを展開していく動きがかなり強く、今後もよく見かけるデッキになりそうです。
☆注目ポイント
《パイロゴイフ》は登場した当時はそれほど評価されていなかったカードでしたが、レガシーではすぐに4/5ぐらいまでのサイズになり、戦場に出たときに与えるダメージも大きいので、このデッキの新たなフィニッシャーとしてフル搭載されています。
《パイロゴイフ》が複数並ぶとダメージもさらに飛ぶので《鏡割りのキキジキ》のコピー先としても強力で、《舷側砲の砲撃手》で生け贄にして6点与える動きも脅威となります。
レガシーにおいて《苛立たしいガラクタ》は強力な妨害カードとして機能します。マナ加速を利用して早い段階から《苛立たしいガラクタ》を置いた後に、《一つの指輪》をプレイしてカードアドバンテージを稼ぐ動きが強力です。
『ダスクモーン:戦慄の館』から登場した墓地対策の《除霊用掃除機》は、継続的に墓地を掃除することができ、1マナという軽さもあって現在はいろいろなデッキで採用されています。Dimir Reanimatorがトップメタということで、サイドにフル採用と徹底していました。
優勝した高野 成樹氏のインタビューも公開されているので、ぜひそちらもご覧ください。
- 2024/10/23
- タカノ シゲキ優勝インタビュー!リアニメイトとエルドラージに勝つ「赤単プリズン」デッキテクニック
- 晴れる屋メディアチーム
Dimir Reanimator
Dimir Reanimatorは最もポピュラーなデッキであり、トータルの勝率も54%と安定していました。統率者セットからの新カードである《変化の狂信者》が与えた影響は大きく、今大会でもその強さが確認できました。
メインは《納墓》から《偉大なる統一者、アトラクサ》などファッティを墓地に落としてリアニメイトし、圧倒的なアドバンテージ差をつけて勝利を狙います。墓地対策が複数投入されるサイド後は、《オークの弓使い》や《バロウゴイフ》といったクリーチャーをサイドインしてテンポ、ミッドレンジ寄りにシフトすることが可能です。
《超能力蛙》はメインのリアニメイトプランとミッドレンジプランの両方に対応できるクリーチャーで、このクリーチャーが使える限りはTier1に残り続けると思います。
☆注目ポイント
《変化の狂信者》はこのデッキと非常に相性の良いクリーチャーであり、「奇跡」も《渦まく知識》によって容易に仕込むことができます。基本的に初手に来てほしいカードではなく、《渦まく知識》やクリーチャーを墓地に落とす手段がない場合は弱いカードになりやすいため、現在では3枚がベストとされているようです。
《バロウゴイフ》は絆魂持ちなので《再活性》や《思考囲い》で失ったライフを回復でき、攻撃が通った際は墓地を肥やすことができるので《変化の狂信者》とも相性の良い優秀なクリーチャーです。
サイドの《記憶への放逐》は非常に柔軟なスペルで、現在のレガシーで高い使用率を誇るカードになります。このスペルを採用する主な理由はEldrazi対策になりますが、誘発型能力を打ち消せる《もみ消し》と似た効果もあるため、さまざまなマッチアップで活躍します。今話題の《変化の狂信者》の「奇跡」なども対策できるので、メインから採用しているリストも多く見られます。
Eldrazi
エルドラージは『モダンホライゾン3』で大幅に強化され、現環境ではDimir Reanimatorとともに現環境のTier1デッキになります。今大会の《記憶への放逐》の使用率の高さから、Dimir Reanimatorと同様に意識されていたことが分かります。
土地破壊+マナ加速できる《まき散らす菌糸生物》や、強力なスペルである《コジレックの命令》、序盤の安定性を高め除去にもなる《運命を貪るもの》など優秀なエルドラージスペルが登場したため、過去の《難題の予見者》や《現実を砕くもの》を主力とした形から大きな変化を遂げています。
☆注目ポイント
《魂の洞窟》に加えて《苛立たしいガラクタ》がメインから採用されているため、Dimir Reanimatorやテンポなど青いデッキに対して強い構成になっています。流行りのReanimator対策も徹底されており、メインから墓地対策の《除霊用掃除機》、サイドにも《フェアリーの忌み者》と《未認可霊柩車》が採用されています。
《コジレックの命令》でライブラリー操作もできるようになったので以前よりは改善されているものの、必要以上にマナ加速や土地を引きすぎてしまうのがこのデッキの弱点のひとつでしたが、《一つの指輪》がその問題を解決してくれました。
《古えの墳墓》と合わせるとライフの損失こそ激しくなりますが、現在は《超能力蛙》の影響で《稲妻》を採用したテンポデッキが減少傾向にあり、このデッキならライフの損失が問題になる前にゲームを終わらせることも比較的容易です。
サイドの《攪乱のフルート》は《不毛の大地》の起動を禁止にする以外にも、コンボデッキのキーカードのコストを増量させてキルターンを遅らせたり、《血染めの月》を指定することでターンを遅らせることができます。《血染めの月》の着地を遅らせられれば、エルドラージクリーチャーを展開する猶予が生まれます。
《四肢切断》は《変化の狂信者》《カザド=ドゥームのトロール》《超能力蛙》など環境のさまざまな脅威を対策できる除去です。プレイするのに色マナを必要としないので、天敵である《海の先駆け》や《月の大魔術師》が着地しても除去できるため4枚採用も納得です。
Nadu Combo
モダンではあまりの強さで禁止になった《有翼の叡智、ナドゥ》ですが、レガシーでも大型イベントで結果を残すほどのデッキパワーがあります。
レガシーにはサーチスペルの《緑の太陽の頂点》があるので《有翼の叡智、ナドゥ》の強さがより際立ちます。また、0マナでクリーチャーを対象にできる《コーの遊牧民》が使えるので《手甲》+《ウルザの物語》のパッケージに枠を割く必要がなく、インスタントタイミングで能力を起動することができます。
人気があるDimir Tempoなどのフェアデッキに対して高い勝率を出していたことからも、現環境で要注目のデッキになります。
☆注目ポイント
《鋭い目の管理者》は《漁る軟泥》と似たクリーチャーで、条件を満たすことで7/7トランプルというフィニッシャー級のサイズに強化されます。レガシーは使用されているカード・タイプが多いので強化の条件を満たしやすく、《緑の太陽の頂点》でサーチできる墓地対策はDimir Reanimatorがトップメタの現環境では重宝します。
Rodrigo Togores氏のリストは《春心のナントゥーコ》が不採用なのが興味深い点です。《有翼の叡智、ナドゥ》と《コーの遊牧民》のコンボが盤面にあるだけで多大なアドバンテージを稼ぐことができるのでループにこだわる必要はなく、数ターンあればゲームに勝つことが可能です。必要なら《棘を播く者、逆棘のビル》で速やかにゲームを終わらせられます。
《忍耐》や《春心のナントゥーコ》など単体では活躍できる機会が限定的なカードを解雇し、追加の除去である《虹色の終焉》や土地を増量してミッドレンジに寄せています。そのため、Dimir Tempoなどフェアデッキには強く、《激情》でマナクリーチャーなど複数のクリーチャーを除去できるMono Red Prisonなどは相性の悪いマッチアップになります。
総括
今回取り上げた『Asia Legacy Championship 2024』で最もプレイされたカードは《記憶への放逐》でした。あの《超能力蛙》よりもプレイされていますが、このカードの柔軟性と現環境でEldraziが活躍しているところを見ると納得の使用率です。
USA Legacy Express vol. 243は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!