グルール果敢と共にラスベガスへ!『第30回マジック世界選手権』レポート

松浦 拓海

はじめに

こんにちは、Hareruya Prosの松浦(@ura_frst)です。

今回は10月に行われた『第30回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権』に参加してきましたので、練習過程や大会当日を振り返りながら「グルール果敢」について自分の考えをまとめていこうと思います。

スタンダード練習編

練習を開始する前から、前環境で手に馴染んでいた「ジェスカイ召集」と、前環境で高い勝率を出していた「グルール果敢」、この2つのデッキは自分の得意な戦略でもあるので有力な候補だと考えていました。

ということで、結果を出しているそれらのリストを回してみることからスタートしました。まずは、新カードが数種類入ったジェスカイ召集を回してみることに。

ジェスカイ召集

画家の仕事場+汚された画廊幽霊による庇護

新カードの《画家の仕事場/汚された画廊》は、先に2マナのほうで置いてしまうと《一時的封鎖》で一気に処理されたり、《幽霊による庇護》《イーオスの遍歴の騎士》や大きくなった《内なる空の管理人》に付けないと大きなダメージにはならず、前環境の《血滾りの福音者》が抜けている分で若干安定感も落ちている気がしました。

果敢への相性の悪さも最悪で、後手の場合はどんな回りでも勝てる気がしないほどでした。安定感の低さ、数多く対戦することになりそうな果敢への相性の悪さが気になり、本番で使用することはなさそうだと判断しました。

グルール果敢

次はこちらのグルール果敢を回してみました。MOチャレンジで2位、3位と連続で同じ方が上位入賞していました。回してみると安定感の高さ、圧倒的な攻撃力でMTGアリーナのランクマッチではほとんど負けることなくミシックランクに到達。完コピして自分もチャレンジに参加して優勝しました。

チーム内でもさまざまなデッキとグルール果敢を戦わせてみましたが、グルール果敢が大体押し切ってしまいます。世界選手権本番ではメタられることは想定できますが、そのリスクを差し置いてもこのデッキのパワーは高いと判断しました。

なので、よっぽどなことがない限り使うことに決めて、細部を調整し始めることにしました。細部についてはデッキ解説の項目で触れていきます。

ドラフト練習編

世界選手権はドラフト3回戦+スタンダード4回戦の7回戦で行われます。いつものプロツアーよりも構築が1試合少ないです。つまり、ドラフトがいつも以上に大事になってきます。1-2してしまった場合、スタンダードで3-1しないと2日目に進出できません。

世界選手権に出場している猛者相手に、スタンダードで3-1するのは非常に困難なことです。去年の世界選手権では、ドラフト1-2からスタンダード2-2で初日落ちして身をもってそのつらさを体感していたので、今回はいつも以上に気合を入れてドラフト練習をしていました。

帷大足蛾の儀式声も出せない殺害

前回と同様に練習の序盤で好みの戦略を探して終盤に戦略を固めていく練習方法をとりました。練習序盤では白黒リアニメイトなどにも挑戦していましたが、重いクリーチャーとリアニメイト呪文、墓地に落とす手段などバランスが難しく好きになれませんでした。

また青と黒について、コモン除去は《声も出せない》《殺害》とほかの色に劣らないと思うのですが、コモンのクリーチャーがナヤカラーよりかなり劣っていると感じて、練習を重ねるとどんどん評価が下がっていきました。

軽業のチアリーダー最優秀殺害者内気なけだもの

最終的には赤緑・赤白・緑白のナヤカラーのどれかであれば、除去とクリーチャーどれもコモン、アンコモンでそれなりのデッキが組めると判断しました。青白で活躍する《精体の追跡者》《亡者の踊り手》《不浄な別室/祭儀室》《永劫の好奇心》などの超強力なカードが出ない限りは、ナヤカラーでドラフトを進めていく戦略に決めました。

大会当日

1日目

けだものの友、トビー古参の生存者露呈への恐怖

初手は《けだものの友、トビー》。そこから白の《古参の生存者》や緑の《露呈への恐怖》、などをピックして1パック目では緑白の予感がしていました。

焦熱の竜火見捨てられた人形、アラベラ

ただ2パック目で《焦熱の竜火》《見捨てられた人形、アラベラ》などのカードが流れてきて、しかも緑のカードが流れてこなかったので赤白にシフトしました。土地を切り詰めて、軽いクリーチャーと戦闘を補助する呪文がたくさん入った赤白は、練習段階で経験していたので手ごたえはよかったです。

目標の強奪裏の裏まで暴力的衝動

1-2ラウンド目は《目標の強奪》を絡めて「昂揚」を達成し、《裏の裏まで》+《暴力的衝動》で大量ダメージで削り切りました。

恐怖を喰うもの、ヴァルガヴォス呪われた録画

3ラウンド目のドゥプラさん(※Jean-Emmanuel Depraz)には《恐怖を喰うもの、ヴァルガヴォス》をリアニされたり、《呪われた録画》+除去・チューター・リアニとやりたい放題されて圧倒されました。強すぎました。

フェアリーの黒幕ギックスの命令

構築ラウンドではディミーアミッドレンジに連敗。このマッチアップは練習では悪くないと思っていたのですが、ダブルマリガンや《ギックスの命令》で壊滅したりして、惜しいゲームを2連続で落としてしまいました。あと1敗したら初日落ちの崖っぷちの状況になりましたが、なんとかその後2連勝して初日を突破することができました。

永劫の活力渓間の洪水呼び

初日最終戦のティムール果敢は、一緒に練習したHareruya Prosの平山選手がずっと回していたデッキで、なんども対戦していたので戦い方やサイドチェンジもバッチリでした!

これで何とか初日突破。去年は最終戦で負けて、初日を突破できずに悔しい思いをしたのでとても嬉しかったです。

2日目

尻込みする優等生焦熱の竜火永劫の勇気

2日目は初手《尻込みする優等生》からスタート。やりたいと思っている色のレアが、2日連続で出るのはめちゃくちゃラッキーでした。今回は1パック目で《焦熱の竜火》を取ったりして早めに赤白に。2パック目の6手目か7手目ぐらいで《永劫の勇気》をピックできたりして、全体的な流れも自分に向いていました。

初日の構築ラウンドで負けたカイ・ブッディさん(※Kai Budde)にドラフトでも負けてしまいましたが、結果は2-1。これで、ドラフトラウンドは2日連続2-1で終えることができました。

この時点で6勝4敗。このあとのスタンダードラウンドを全勝できればトップ8の可能性もあり得るところでしたが、早速ミラーマッチで瞬殺されてしまいました。そのあとは相性の良い版図ランプに勝ったものの、勢いを失って結局7勝6敗1分けの38位で大会を終えました。

世界選手権を振り返って

この大会を終えて、ドラフトを直近3大会で5-1、5-1、4-2と好成績で終えることができています。2月のプロツアーで0-3してから、ドラフトを意識的に取り組んできた成果を世界選手権でも出すことができたのは、非常に達成感がありました。この1年で特にドラフトについては成長を感じていて、本番で得意な戦い方ができるように意識して練習できていることが大きいと思っています。

逆に構築に関しては、この1年であんまり進歩していないように感じます。客観的に見ると、使用者がそれなりにいそうなデッキの中で、自分の戦略にあっているデッキを選択しているだけのように見えます。

今回でいえば、グルール果敢という大会に出る人の誰もが意識しているデッキでした。ミラーマッチで大きな差を付けれているわけではないので、大きく上振れないとトップ8や優勝のような超好成績は残せなかったように思います。

叫ぶ宿敵

トップ8に残った赤単は、グルール果敢よりも1マナのクリーチャーが1種類多く入っていて、ミラーでは除去されても損をすることがない《叫ぶ宿敵》が4枚入っています。数ターンで決着がつくことの多い果敢ミラーでは、この差は大きいと感じました。

既存のデッキを自分の好みにチューンするのではなく、この赤単のように1歩先に行くデッキを作ることを意識していきたいと思います。

グルール果敢解説

今回勝ち越すことはできませんでしたが、自分なりの各マッチアップの戦い方やサイドボーディングについて触れていきます。

ディミーアミッドレンジ

vs. ディミーアミッドレンジ

Out

ショック ショック ショック ショック
弱者の力 弱者の力 弱者の力
蛇皮のヴェール 蛇皮のヴェール

In

抹消する稲妻 抹消する稲妻 塔の点火 塔の点火
ウラブラスクの溶鉱炉 ウラブラスクの溶鉱炉 ウラブラスクの溶鉱炉
焦熱の竜火 探索するドルイド
止められぬ斬鬼永劫の好奇心

対戦相手のリストによって差はありますが、《止められぬ斬鬼》《永劫の好奇心》には《塔の点火》の「協約」で対処するのが一番テンポがいいです。仕方なくですが、《亭主の才能》を「協約」で生け贄にすることもあります。

サイド後は《切り崩し》が多く入っている場合があるので、《蛇皮のヴェール》で守り切れず、逆に1点集中した結果壊滅することがあるため抜いています。

焦熱の射撃脚当ての陣形

《黙示録、シェオルドレッド》《分派の説教者》が入ってきたりする場合は《焦熱の射撃》《ドロスの魔神》が入っている場合は《脚当ての陣形》をサイドインをしましょう。

グルール果敢

vs. グルール果敢

Out

弱者の力 弱者の力 弱者の力
亭主の才能 亭主の才能 亭主の才能
蛇皮のヴェール 蛇皮のヴェール

In

塔の点火 塔の点火 探索するドルイド
抹消する稲妻 抹消する稲妻 焦熱の竜火
焦熱の射撃 焦熱の射撃

ミラーは、後手のときにしっかりと除去がある手札をキープすることが大事だと考えています。特に1マナの除去で2マナのクリーチャーを倒すことができれば、先手後手を入れ替えられるかもしれません。

アゾリウス眼魔

vs. アゾリウス眼魔

Out

ショック ショック ショック ショック
塔の点火 塔の点火

In

焦熱の射撃 焦熱の射撃 焦熱の射撃
脚当ての陣形 脚当ての陣形 脚当ての陣形
脚当ての陣形

墓地対策は用意していないので、しっかりと軽い動きで圧をかけていくことが大事です。《脚当ての陣形》があればあるだけ安心なので、今回のリストには用意していませんが4枚目が欲しいマッチアップです。

版図ランプ

vs. 版図ランプ

Out

塔の点火 塔の点火 ショック

In

脚当ての陣形 脚当ての陣形 脚当ての陣形

全体除去が入ってくるマッチではありますが、《ウラブラスクの溶鉱炉》《力線の束縛》などで対処されてしまううえに、打点が出るまでに時間がかかるので《偉大なる統一者、アトラクサ》などが間に合ってしまうイメージで入れていません。

エルズペスの強打

基本的に有利なので《太陽降下》が撃たれるターンまでにしっかりライフを詰めて、撃たれても速攻クリーチャーで削り切れるように立ち回りましょう。《エルズペスの強打》を有効に撃たれないことも意識してプレイしましょう。

おまけ+総括

去年はラスベガスで体調を崩してしまいましたが、今回はラスベガスを堪能することができました!

街中は夜でもとんでもなく賑わっていて、すごいとしか言いようがありませんでした。来年は6月のプロツアーがラスベガスで行われることが発表されているので、今から楽しみです。そこまでは権利を持っているので、その先の権利や来年の世界選手権出場、そして優勝を目指して来シーズンも戦いたいと思います。

Twitchで配信もやっています。グルール果敢についての質問など、なんでも気軽にコメントしにきていただけたら嬉しいです。それでは!

松浦 拓海 (X/Twitch)

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松浦 拓海 プロツアー『霊気紛争』でプロシーンにデビュー。 アグロデッキを得意とし、そのスタイルに磨きがかかると、2022-2023シーズンでは破竹の勢いで勝利を重ねていく。 エリア予選を赤単アグロで、チャンピオンズカップファイナル サイクル1を白単人間で突破すると、プロツアー・ファイレクシアでも同じく白単人間で自身初となるトップ4に入賞。店舗予選から一気に世界選手権の権利まで獲得し、スター選手の仲間入りを果たす。 また、同シーズンの全プロツアーで2日目に進出しており、安定感のある実力者であることを証明した。 松浦 拓海の記事はこちら