『第29期スタンダード神決定戦』を振り返る
こんにちは。晴れる屋メディアの紳さんです。
先日、『第29期スタンダード神挑戦者決定戦』が開催され、139名のプレイヤーが参加するなど、大盛況でした。
今回は2024年の集大成となったスタンダード神のメタゲームを振り返りながら、今アツいデッキをチェックしていきたいと思います!
『第29期スタンダード神挑戦者決定戦』
殿堂プレイヤーやグランプリ優勝者など、精鋭139名が集結した『第29期スタンダード神挑戦者決定戦』。大会結果はこのようになりました。
『第29期スタンダード神挑戦者決定戦』
優勝 アゾリウスアグロ
準優勝 グルール果敢
トップ4 ディミーアミッドレンジ
トップ4 アゾリウス眼魔
トップ8 スゥルタイテラー
トップ8 グルール果敢
トップ8 ティムール果敢
トップ8 ディミーアミッドレンジ
トップ16 セレズニアオーラ
トップ16 白単コントロール
トップ16 赤単
トップ16 ゴルガリミッドレンジ
トップ16 ディミーアミッドレンジ
トップ16 ディミーアコントロール
トップ16 グルール果敢
トップ16 グルール果敢
メタゲームブレイクダウン
デッキ | 使用者数 | 使用率 |
---|---|---|
グルール果敢 | 26 | 17.57% |
ディミーアミッドレンジ | 24 | 16.22% |
ティムール果敢 | 12 | 8.10% |
オーバーロード | 8 | 5.41% |
白単コントロール | 6 | 4.05% |
ゴルガリミッドレンジ | 6 | 4.05% |
ボロスバーン | 5 | 3.38% |
アゾリウスエンチャント | 5 | 3.38% |
赤単 | 4 | 2.70% |
ボロスオーラ | 3 | 2.03% |
アゾリウス眼魔 | 3 | 2.03% |
スゥルタイテラー | 3 | 2.03% |
アゾリウスアグロ | 3 | 2.03% |
もがく出現 | 2 | 1.35% |
版図ランプ | 2 | 1.35% |
洞窟コントロール | 2 | 1.35% |
ボロスハツカネズミ | 2 | 1.35% |
ディミーアデーモン | 2 | 1.35% |
セレズニアミッドレンジ | 2 | 1.35% |
継位兎 | 1 | 0.68% |
ナヤランプ | 1 | 0.68% |
迷路の終わり | 1 | 0.68% |
イゼット海賊 | 1 | 0.68% |
セレズニア兎 | 1 | 0.68% |
碑出告と開璃 | 1 | 0.68% |
ジェスカイ召集 | 1 | 0.68% |
ゴルガリエルフ | 1 | 0.68% |
ゴルガリランプ | 1 | 0.68% |
スゥルタイ果敢 | 1 | 0.68% |
ラクドスデーモン | 1 | 0.68% |
オルゾフデーモン | 1 | 0.68% |
セレズニアオーラ | 1 | 0.68% |
ラクドススケルトン | 1 | 0.68% |
ボロスコントロール | 1 | 0.68% |
アゾリウスフラッシュ | 1 | 0.68% |
ラクドスミッドレンジ | 1 | 0.68% |
グルールミッドレンジ | 1 | 0.68% |
ゴルガリコントロール | 1 | 0.68% |
オルゾフコントロール | 1 | 0.68% |
シミックマーフォーク | 1 | 0.68% |
ラクドスリアニメイト | 1 | 0.68% |
ラクドスサクリファイス | 1 | 0.68% |
ディミーアコントロール | 1 | 0.68% |
グリクシスコントロール | 1 | 0.68% |
ジェスカイコントロール | 1 | 0.68% |
ディミーアリアニメイト | 1 | 0.68% |
《最後の贈り物の運び手》コンボ | 1 | 0.68% |
合計 | 148 | 100% |
(※提出されたリストをすべて掲載しています)
メタゲームの分布は上記の表の通りとなりました。
トップメタとなったのはグルール果敢で、準優勝を含めトップ16に4名を送り込むなど人気通りのパフォーマンスを見せています。
僅差で2番手となったのはディミーアミッドレンジ。殿堂プレイヤーの中村 修平 選手や、防衛を目指した第28期スタンダード神・吉田 悠太郎 選手が選択しており、トップ16に3名が残りました。
3番手となったティムール果敢もかなり人気を集めたアーキタイプでしたが、アグロデッキが多く勝ち残ったため、やや苦戦したでしょうか。トップ16に残ったのは1名のみという結果でした。
メタゲームの全体的な所感としては、アグロ・ミッドレンジ・コントロール・ランプ・コンボと幅広くいろいろなデッキが活躍しており、かなりバランスがとれた環境といえるのではないでしょうか。
結果としてアグロデッキが勝ち組となったものの、ランプやコントロールデッキにも十分なチャンスがあったのかな、という印象です。
アゾリウスアグロ
挑戦者決定戦を優勝したアゾリウスアグロのリストです。勢いそのままに神決定戦でも勝利し、見事にスタンダード神の座を奪還しています。
ちなみに使用者の岡井 俊樹 選手は第9期スタンダード神でもあり、第10期・第11期と連続防衛にも成功した強豪プレイヤーです。通算、4期目のスタンダード神ということになりますね。
《ひよっこ捜査員》《遠眼鏡のセイレーン》《泥棒隼の事件》といった1マナでパーマネントを2つ用意できるカードが合計12枚採用されており、《威厳あるバニコーン》が早期ターンからとんでもないスタッツになって襲い掛かります。
さらに、《威厳あるバニコーン》のコピーとして《マネドリ》をプレイすれば、飛行を持った巨大クリーチャーによるビートダウンが始まり、手がつけられません。
《生命ある象形》は3マナと、このデッキにしてはコストが重いカードですが、戦場に出ていた地図・トークンや手掛かり・トークンを5/4のクリーチャーに変えて即座に攻撃できるため、実質的に速攻5/4のクリーチャーとして運用可能です。
トップメタのディミーアミッドレンジはアーティファクト破壊が苦手なことに加え、《生命ある象形》や《泥棒隼の事件》によってクリーチャー化したアーティファクトは《喉首狙い》の対象にできず、環境的にかなり強いカードであったことが伺えます。
サイドボードに4枚フル採用された《幽霊による庇護》はグルール果敢・赤単などのアグロデッキに対するベストカードとなりました。《威厳あるバニコーン》につけて1回攻撃するだけで逆転不可能なほどのインパクトを与えることができます。
ディミーアミッドレンジ&赤系アグロに刺さるカードを有しながら、《威厳あるバニコーン》と《生命ある象形》によるビートダウンプランが強力で、ランプやコントロールといったデッキにも勝てる隙のない構築です。
壊滅的な損害を受ける《一時的封鎖》を使っているデッキが少ないというのも、追い風となったようですね。今回の優勝を受けてアゾリウスアグロが流行るようでしたら、また《一時的封鎖》を採用するデッキの立ち位置がよくなるかと思われます。
グルール果敢
挑戦者決定戦で準優勝したグルール果敢のリストです。定番デッキのため、特に気になったところだけ紹介していきます。
グルールといっても、メインの《探索するドルイド》とサイドの《脚当ての陣形》以外、ほぼ赤単といった感じの構成です。
赤が苦手なリソース補充と置き物破壊を緑で補うという狙いが見てとれます。デッキによっては《亭主の才能》や《蛇皮のヴェール》を採用することもありそうです。
メイン採用の《抹消する稲妻》には重要な意図があると考えられます。追放除去が強いのは確かですが、《叫ぶ宿敵》の能力を誘発させようと考えるならば、《塔の点火》の枚数を増やしたほうが使い勝手は良いでしょう。
おそらく、ここ最近で採用率が高くなっていた《分派の説教者》を意識しているのではないでしょうか。ディミーアミッドレンジ、ゴルガリミッドレンジで3枚ほど採用されることが多くなっていました。
また、最近は赤系アグロに対する強烈なメタカードとして《薄暮の聖人、エレンダ》が活躍しています。《抹消する稲妻》ならば「インスタントからの呪禁」にも掛からず、綺麗に処理できます。
そのほか《永劫の好奇心》《最深の裏切り、アクロゾズ》《傲慢なジン》の処理など、4点追放火力が必要な場面が意外と多く、納得のメイン採用です。
サイドに4枚フル採用された《ウラブラスクの溶鉱炉》は軸をずらせる強力なカードですが、『ファウンデーションズ』で《領事の権限》という相性最悪のカードが再録されたことで評価を落としました。
しかし、アーティファクトに触りにくいディミーアカラーのデッキに対してはいまだに有効で、専用サイドボードとして活躍する機会はまだまだ残されています。
ディミーアミッドレンジ
今大会でも大人気となったディミーアミッドレンジ。神決定戦に持ち込んだ吉田 選手のリストをチェックしていきましょう。
「スタンダード最強プレインズウォーカー」として名高い《悪夢滅ぼし、魁渡》。最近、評価がうなぎのぼりです。
特に強力なのが相手のターン終了時に《フラッドピットの溺れさせ》をプレイしてブロッカーを排除し、そのまま攻撃 → 忍術によって《悪夢滅ぼし、魁渡》と入れ替わる という動きです。《フラッドピットの溺れさせ》をふたたび構えることで《悪夢滅ぼし、魁渡》が簡単には落ちなくなる点が素晴らしいですね。
不利な盤面では[-2]能力でクリーチャーを麻痺させて状況の打開を目指し、有利な盤面では攻撃を通しながら[0]能力で質の高いドローを進めるなど、器用になんでもこなすことができます。
地味ながら忍者に+1/+1の修正を与える紋章も強く、終盤は《魂石の聖域》が強力なフィニッシャーにもなります。
《永劫の好奇心》は強力なドローエンジンで、ミラーマッチでは「《永劫の好奇心》を先に定着させたほうが勝つ」と言われるほど、リソース獲得手段として長けています。
《フラッドピットの溺れさせ》でブロッカーをタップさせるといった道の切り拓き方もあれば、《群青の獣縛り》をアンブロッカブルなクリーチャーとして攻撃しつづける動きも強力です。
シンプルに《遠眼鏡のセイレーン》や《フェアリーの黒幕》のような飛行クリーチャーで攻撃するだけでも、簡単にカードが引けることでしょう。
アグロデッキに対しては《分派の説教者》が優秀です。ライフが押されている盤面では攻撃するたびに絆魂1/1トークンを生成することができますし、緊急時には接死持ちのブロッカーとして最低限の仕事を果たします。
また、サイドからは《永劫の好奇心》との相性が抜群な《黙示録、シェオルドレッド》を増量し、大量ドロー + 大量ライフゲイン の合わせ技で優位に立つことができます。
ネックとなるのは、置き物に触れないことです。《不浄な別室/祭儀室》や《豆の木をのぼれ》といったエンチャントはなんとしても打ち消したいところでしょう。
《ウラブラスクの溶鉱炉》もかなり厳しいカードですが、アーティファクトはサイドから《ティシャーナの潮縛り》を投入することでなんとか止めることが可能です。
いずれにせよ、今後はエンチャントやアーティファクトに対する明確な対抗策がディミーアミッドレンジにも求められることになりそうです。
アゾリウスアグロとの神決定戦では《生命ある象形》の一撃で《悪夢滅ぼし、魁渡》が落とされてしまうなど、相性の悪さが目立ちました。
《洪水の大口へ》や《この町は狭すぎる》などのパーマネント・バウンスを採用することを検討してみたいところです。
アゾリウス眼魔
かつて『グランプリ・ブリュッセル2020』を制した強豪プレイヤー、カルロス・モラル 選手が使用し、トップ4入賞を果たしたアゾリウス眼魔のリストです。
これまで固定枠だと思われていた《傲慢なジン》を不採用とし、《僧院の導師》が4枚フル投入されています。
《忌まわしき眼魔》の相方が《傲慢なジン》であれば墓地対策さえすれば両方を無力化できますが、《僧院の導師》ではそういきません。メンター型に戻っただけといえばそうなのですが、結果としてかなり良いソリューションですね。
《僧院の導師》定着後、素早く強力な盤面をつくるためには1マナのドロー呪文を連打するのがベストです。序盤はパーツ探しとして有用ですし、どのタイミングでも腐ることがないのが良いですね。
《魂の仕切り》は相手の脅威を一時的に排除したり、こちらの重要なクリーチャーを除去から守ることができるほか、戦慄予示によって戦場に出たパーマネントを唱えなおすことができるなど、なにかと重宝します。
特に《一時的封鎖》や《除霊用掃除機》といったメタカードが戦慄予示によってめくれてしまった場合は、このテクニックが役立つことでしょう。
セレズニアオーラ
かなり珍しいデッキが9位に入賞しました。セレズニアオーラのリストに注目です。
護法や破壊不能を持った軽量クリーチャーを並べ、オーラで強化していくというシンプルかつ強力な狙いがあります。
上記のクリーチャーは《ぬめるボーグル》や《林間隠れの斥候》に比べると信頼性は低いのですが、スタンダードのカードプールを考えれば必要十分な性能といえるでしょう。
《天上の鎧》とトランプルの組み合わせはかなり強力で、2枚、3枚とオーラを重ねれば単体でゲームに勝てるほどのパワーを持ったクリーチャーが誕生します。
また、ブースターパックからは出現しませんが、スターターコレクションで再録された《ひるまぬ勇気》もスタンダードリーガルとなった強力なオーラです。アグロデッキ相手に《幽霊による庇護》を引けなかった場合でも、絆魂を付与できる貴重なカードとなります。
このセレズニオーラはフェアデッキや単体除去には滅法強いデッキですが、全体追放除去には注意が必要です。
《一時的封鎖》に関しては致命的ではあるものの、《幽霊による庇護》やサイドの《邪悪を打ち砕く》で失った盤面を綺麗に取り返せるため、そこまで気にならないかもしれません。
真の天敵は《太陽降下》で、採用しているデッキと当たった場合は《エイヴンの阻む者》を根気よく構えつづけることになりそうです。
また、黒いデッキにも注意が必要です。このデッキのストロングポイントを台無しにする《逃げ場なし》に加え、《悪夢滅ぼし、魁渡》対策として採用されている《覆い隠し》が刺さります。
サイドボードからは「黒からの呪禁」を持った《善意の騎士》を4枚フル投入できますが、実はこれも《逃げ場なし》で無効化できるので、油断はできません。
もっとも、現時点では《逃げ場なし》を採用しているデッキをあまり見かけないため、十分に強力なメタカードと考えることができます。今後、このデッキが活躍次第で《逃げ場なし》の採用率が上がるかもしれませんね。
白単コントロール
晴れる屋スタッフであり、元・DCGプロゲーマーのフォレスト(@forestbanban)が使用し、10位に入賞したデッキです。
前回のリミテッド神では惨敗しましたが、スタンダード神初挑戦で10位というのは素晴らしいですね。まだマジックを始めて間もないのですが、さすがは元・プロゲーマーといったところでしょうか。
デッキはシンプルな白単トークン型のコントロールで、《太陽降下》をチラつかせながら盤面を処理しつつ、《永劫の無垢》と《世話人の才能》で稼いだ大量リソースを武器に押しつぶす重厚な戦略を得意とします。
フェアなデッキに対しては《跳ねる春、ベーザ》が強く、打ち消しを構えている相手には《魂の洞窟》で無理矢理に《ミストムーアの大主》を通しにいくという面白い狙いが秘められています。
サイドボードも充実しており、対応力が高そうです。単色デッキなのでタップイン土地の処理に悩まされることも少なく、安定した戦いができそうですね。
ただし、勝ちにいこうと思ったときに一気に決めきれるほどの爆発力には欠けるため、《完成化した精神、ジェイス》などでライブラリーアウトを狙われると苦しくなります。
《ミストムーアの大主》が動き始めたり、《世話人の才能》をレベル3にして全軍突撃をすれば迫力は出ますが、それでも少し遅そうです。
ただし、現在のところはアグロや早めのミッドレンジが活躍している環境のため、そこまで不利マッチに悩まされることは少ないかもしれません。メタゲーム的にはかなりやれるのではないでしょうか。
おわりに
以上、『第29期スタンダード神挑戦者決定戦』のメタゲームを振り返りました。アグロからコントロールまでいろいろなデッキにチャンスがあり、大会としてはかなり盛り上がる内容であったと思います。
メタ的にもデッキ強度的にも岡井さんのアゾリウスアグロはかなりの仕上がりでしたね!特に、《生命ある象形》と《幽霊による庇護》はトップメタのデッキにかなり刺さるカードだったと思います。
《威厳あるバニコーン》と《マネドリ》のコンビも、ゲームを終わらせるのに十分すぎる火力でした。令和の《タルモゴイフ》になるかもしれません。
さて、今月はさらに『THE LAST SUN 2024』という大舞台があり、スタンダードも開催フォーマットの1つに含まれています。今回の神決定戦の結果をふまえ、またメタゲームも煮詰まっていくことでしょう。
それでは、次回の大会結果もお楽しみに!