2024年12月16日 禁止制限告知
2024年12月16日、複数のフォーマットで禁止制限告知が行われました。
【スタンダード】
変更なし【パイオニア】
《湧き出る源、ジェガンサ》禁止【モダン】
《一つの指輪》禁止
《色めき立つ猛竜》禁止
《湧き出る源、ジェガンサ》禁止
《オパールのモックス》禁止解除
《緑の太陽の頂点》禁止解除
《信仰無き物あさり》禁止解除
《欠片の双子》禁止解除【レガシー】
《超能力蛙》禁止
《苛立たしいガラクタ》禁止【ヴィンテージ】
変更なし【パウパー】
変更なし
ここでは、それぞれの禁止理由と解禁理由について触れながら、禁止解除となったカードを使用して早くもモダンリーグを5-0した新デッキを紹介します。
パイオニア
禁止:《湧き出る源、ジェガンサ》
「大抵のデッキで唱えられる相棒」であることが問題視され、禁止となりました
本来ならば使われてしかるべき強力なダブルシンボルのカードが、「ジェガンサをあきらめることになる」という理由によって採用を見送られてしまう現状について、「パイオニア・フォーマットの多様化を妨げている」と判断されたようです。
今後、《湧き出る源、ジェガンサ》を理由に採用が見送られていたカードの採用が増えることになりそうです。例えば、《残響の力線》が果敢系アグロデッキに採用されるかもしれませんね。
今回の禁止制限告知を待たずして、MOでは《残響の力線》を採用した果敢デッキが入賞した実績もあります。
モダン
禁止:《一つの指輪》
『指輪物語:中つ国の伝承』で登場して以来、1年半ものあいだ話題を集め続けた目玉カードがついにモダンで禁止となりました。
プロテクションによって着地後の隙もなく、カード・アドバンテージ源としては類を見ないほど強力なドローエンジンな《一つの指輪》。特定の色に縛られることもなく、アグロからランプまでアーキタイプを問わず、あらゆる戦略のデッキに採用されるようになってしまいました。
公式の言葉を借りると「モダンは《一つの指輪》を含まない方がより楽しいフォーマットになることが明らか」とのことで、ひとまずモダンの舞台を去ります。
ちなみに《一つの指輪》はモダンのありとあらゆるデッキに採用されていましたが、今回の禁止でとりわけ大打撃となるのはロータスストームではないでしょうか。
実質的に《一つの指輪》が勝ち手段の一部に含まれているようなデッキであり、代わりのカードを探すのは大変かもしれません。
禁止:《色めき立つ猛竜》
モダン最強デッキであるボロスエネルギー(マルドゥエネルギー)からは、《色めき立つ猛竜》を禁止することでバランス調整を試みることになりました。
実質的に《一つの指輪》と《色めき立つ猛竜》を同時に失うことにはなりましたが、ほかの強力なカードは健在であり、エネルギーデッキ自体の存続を目指しつつ、圧倒的な支配率を下げたいという運営の意図が汲み取れます。
《色めき立つ猛竜》の問題点は2ターン目に挽回不可能なほどの爆発的なスタートを決められる可能性があったことです。ゲーム序盤に登場した2/1先制攻撃が追加で《一つの指輪》までプレイする動きは少々、パワフル過ぎました。
今回の禁止によってエネルギーデッキの使用率・勝率がどのように変化していくのか注目です。
禁止:《湧き出る源、ジェガンサ》
「便利すぎる相棒」はモダンでも禁止となりました。
禁止理由についてはパイオニアとほぼ同じであるため割愛しますが、エネルギーデッキにとっては《一つの指輪》《色めき立つ猛竜》につづく3枚目の禁止カードと考えることができ、全体的にエネルギーデッキの弱体化を求めた調整であることが伺えます。
禁止解除:《オパールのモックス》
2020年1月に禁止された《オパールのモックス》が約5年ぶりにモダン復帰となります。
かつてのモダンでは《クラーク族の鉄工所》を軸としたアーティファクト・コンボデッキ「アイアンワークス」が猛威を振るい、《クラーク族の鉄工所》を禁止にすることでメタゲームの健全化をはかりました。
しかし、当時からアーティファクトデッキにおける《オパールのモックス》の高速マナ戦略は注視されていました。その後も「親和」「ランタンコントロール」がメタゲームの中心におり、ついには『モダンホライゾン』で《最高工匠卿、ウルザ》が登場したことで「ウルザフード」が圧倒的な勝率を誇るようになり、2020年に《オパールのモックス》は禁止されました。
しかし、《オパールのモックス》を禁止すると今度はアーティファクトデッキの活躍がほとんど見られないようになりました。《身代わり合成機》や《河童の砲手》といった強化パーツが与えられても状況は変わらず、アーティファクト戦略がふたたびモダンで活気を取り戻すために、このたび禁止解除が発表されております。
《オパールのモックス》の解禁によってアーティファクト戦略が強くなりすぎる可能性もありますが、『モダンホライゾン3』では《溶融》や《空の怒り》といった強力なアーティファクト対策カードの収録もあり、バランスは保てているのではないでしょうか。
早速、《オパールのモックス》がフル投入された「ハンマータイム」がモダンリーグで5-0していました。《河童の砲手》まで入っており、ハンマー以外の勝ち筋もしっかりと確保できているようです。
禁止解除:《緑の太陽の頂点》
2011年9月20日に禁止された《緑の太陽の頂点》は13年ぶりのモダン復帰となりました。
とはいえ、テーブルトップでモダン・フォーマットが制定されたタイミングが2011年8月であることを考えれば、このカードをモダンで使ったことがある人はほとんどいないでしょう。
当時は1ターン目に《緑の太陽の頂点》で《ドライアドの東屋》をサーチすることによるマナ加速の安定性や、《ガドック・ティーグ》のようなヘイトベアーをいとも簡単にライブラリーから呼び出せる点が強力で、ほかのデッキが緑デッキに対抗できないほどの差があったようです。そのため、《緑の太陽の頂点》はモダン最初期の段階で禁止されていました。
では、13年の時を経た現在のモダンで《緑の太陽の頂点》が強すぎるということはないのでしょうか?
例えば、《日を浴びる繁殖鱗》のようなコンボパーツが《緑の太陽の頂点》からサーチできるようになるとコンボの再現性が高くなり、危険視するべきかもしれません。
しかし《日を浴びる繁殖鱗》は欠色であり、どうやら《緑の太陽の頂点》からは登場しません。
「ヨーグモス医院」では使用されると思いますが、サーチできるのは《若き狼》や《飢餓の潮流、グリスト》などで、肝心の《スランの医師、ヨーグモス》を探せないため、大ごとにはならなさそうです。
怪しいのは「サムワイズ・フード」ですが、このデッキは《サムワイズ・ギャムジー》以外に《大釜の使い魔》と《臓物の予見者》という2体のクリーチャーが必要であり、これらがサーチできるわけではないので大丈夫そうです。
「アマリアコンボ」も同様で、《野茂み歩き》をサーチできる点は強力ですが《アマリア・べナヴィデス・アギーレ》がサーチできない点がブレーキになっていそうです。
しかし、最近はMOでサムワイズとアマリアの両コンボを狙うデッキが入賞していました。このデッキに《緑の太陽の頂点》が加わると、さすがに再現性が高くなるかもしれませんね。
そのほか、レガシーの「マーベリック」に近しい構成のデッキが早速、モダンリーグで5-0しておりました。シルバーバレットした《溜め込み屋のアウフ》が《緑の太陽の頂点》から登場するのは強そうですね。
禁止解除:《信仰無き物あさり》
かの有名な「ホガークの夏」、《甦る死滅都市、ホガーク》に巻き込まれる形で《信仰無き物あさり》は2019年8月に禁止されました。
- 2019/08/15
- USA Modern Express vol.31 -ホガークの夏、到来-
- Kenta Hiroki
しかし、《信仰無き物あさり》は《甦る死滅都市、ホガーク》を抜きに考えても強力なカードで、「フェニックス」「ホロウワン」「ドレッジ」などあらゆるデッキの戦略を可能としていました。これらのデッキは「《信仰無き物あさり》デッキ」と揶揄されるほどモダンにおいて圧倒的な支配率を誇り、新しく墓地利用やマッドネス・カードをデザインする際の妨げともなっていたようです。
5年以上の時を経て、モダン復帰となった《信仰無き物あさり》。「本当に大丈夫?」という声が各所から聞こえてきそうです。
ただ、《信仰無き物あさり》が留守にしている間、モダンには強力な墓地対策カードが多数登場しています。
「昂揚」「リアニメイト」といったデッキがこれまで以上に脅威となったことは間違いありませんが、現在のモダンならば《信仰無き物あさり》を受け止めきれるパワーがあるのではないでしょうか。
まずは《信仰無き物あさり》を使った新デッキについて想いを張り巡らせるのも良いでしょう。
早速、《信仰無き物あさり》を使ったデッキがモダンリーグで5-0を量産しているようです。こちらの「グリクシス眼魔」は《知りたがりの学徒、タミヨウ》を即変身させる狙いがあり、単なる墓地利用だけに留まっていないところが独創的ですね。
禁止解除:《欠片の双子》
長年の議論の1つに、「《欠片の双子》は現在のモダンでも強いのか?」というものがあります。
–マジック:ザ・ギャザリング日本語公式ホームページ『2024年12月16日 禁止制限告知』より引用。
2016年1月に禁止され約9年ぶりのモダン復帰となる《欠片の双子》。「長年の議論」の答えを見つける時が来たようです。
《欠片の双子》が全盛期だった頃のモダンは「3ターン目にタップアウトしたら即敗北」という厳しい現実と戦うゲームでした。あのとき、多くのプレイヤーは有効な解決策が見いだせず、《欠片の双子》を禁止とすることでフォーマットの健全化をはかりました。
しかし、現在のモダンには当時なかったピッチスペルがあります。マナがない状況から《詐欺師の総督》を追放することも、《欠片の双子》を打ち消すことも、破壊することもできます。つまり、十分に《欠片の双子》デッキに対抗する術があるということです。
一方で《欠片の双子》を強く使ってみたいという想いもあるでしょう。ピッチ打ち消しを使えるのは《欠片の双子》側も同じですので、よりコンボを決めやすくなったという考え方もできるはずです。
こちらはモダンリーグで5-0した《欠片の双子》デッキです。ベースは「イゼットウィザード」で、双子パッケージをタッチしたような構成のデッキですね。
「青単ベルチャー」で大活躍中の《ファラジの考古学者》《稲妻罠の教練者》は《欠片の双子》を探しながら《拒絶の閃光》のタネにもできる便利なクリーチャーで、今後の「新《欠片の双子》デッキ」でも採用される可能性は高そうです。
こちらもモダンリーグ5-0デッキですが、ボロスエネルギーに《欠片の双子》《村の鐘鳴らし》パッケージが加えられました。ほかにも《欠片の双子》の相方を巡っては、「昂揚」を達成した《逸失への恐怖》が無限戦闘フェイズを狙えるなど、話題になっています。
今回の禁止解除の要点は、かつてのモダンを思い起こすことです。いずれのカードも、当時のモダンでは禁止されるに足る理由がありました。ですが時代は変わり、モダンはこれまでと異なることに私たちは気づいたのです。プレイヤーの皆さんが懐かしく振り返るモダンの一時代を象徴するカード、《欠片の双子》が禁止解除となります。数々のミームを生んだ1枚を、どうぞお楽しみください。
–マジック:ザ・ギャザリング日本語公式ホームページ『2024年12月16日 禁止制限告知』より引用。
新しく生まれ変わったモダン環境を楽しんでいきましょう!
解禁カードを使用したモダンリーグ5-0デッキまとめ
《オパールのモックス》
《緑の太陽の頂点》
《信仰無き物あさり》
レガシー
禁止:《超能力蛙》
「ディミーアリアニメイト」の支配を抑えるため、今年8月の禁止制限告知で《悲嘆》が禁止となりました。
しかし、いまだに「ディミーアリアニメイト」の使用率は「第2位のデッキの倍」を記録し、勝率も高いままです。さらなるメスを入れるために《超能力蛙》がレガシーで禁止となりました。
リアニメイト戦略に必要な能力を兼ね備えながら、フェアゲーム・プランにおいても《超能力蛙》は強すぎることが問題視されました。
単に《納墓》や《再活性》を封じたとしても《超能力蛙》によるフェアプランが強いままでは問題が解決せず、リアニメイト戦略自体を肯定した上で「それなりの弱点は持つべき」という判断です。
また、単にリアニメイトだけでなく「ディミーアテンポ」のようなデッキも問題視された結果のようです。《超能力蛙》の強さゆえに青ベースのテンポデッキが白・赤・緑との組み合わせを探求する機会を失っており、既存のアーキタイプの多様化を目指すためにも《超能力蛙》を禁止することが最良ということでしょう。
禁止:《苛立たしいガラクタ》
マナ・コストの支払いなしに使える打ち消し呪文は、レガシーの柱の1つです。それはこのフォーマットをまとめる接着剤の役割を果たしています。特定の戦略が主要なゲームプランを進めながら非常に少ないコストでこの柱の影響を無視できるようになれば、またたく間にレガシーは崩壊を始めるでしょう。
–マジック:ザ・ギャザリング日本語公式ホームページ『2024年12月16日 禁止制限告知』より引用。
「レガシーの華」ともいえるピッチカウンターを守ることは「レガシー・フォーマットを守ることに等しい」ということでしょう。
快進撃を続ける「カーンフォージ」をはじめ、「ペインター」「赤単プリズン」など《意志の力》を使わないデッキはメインから4枚採用するほど強力なカードでした。
1マナと軽い上に必要なければドローに変えることもでき、腐ることがありません。上述した《苛立たしいガラクタ》をメイン採用したデッキたちが軒並み高い勝率を維持していることも懸念材料となり、《苛立たしいガラクタ》を禁止にすることでメタゲームの活性化を狙います。
また、《超能力蛙》と《苛立たしいガラクタ》をレガシーから取り除くことで、《有翼の叡智、ナドゥ》を軸とした「セファリッド・ブレックファースト」や「バント・ゼニス」が相対的に強くなったと考えられます。
《有翼の叡智、ナドゥ》は今後も注視されるカードの対象となっているようです。
展望
今回の禁止制限告知では、モダンがかなりテコ入れされました。とくに《一つの指輪》の禁止がメタゲームに与える影響は大きいのではないでしょうか。
エネルギーデッキの動向も気になりますが、4枚ものカードが禁止解除となったことによる新デッキの誕生にも注目したいところです。
今週末に開催される『THE LAST SAN 2024』ではモダンも開催フォーマットに含まれており、新モダン環境の試金石となる有意義な大会となりそうです。
ちなみに次回の禁止制限告知は2025年3月31日と予告されています。