Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2024/12/19)
はじめに
ウィザーズはとんでもない禁止制限告知を投下してきました。
《一つの指輪》の禁止は大方の予想通りです。デッキの準主役である《色めき立つ猛竜》を禁止にして、エネルギーデッキを弱体化させるのも想定の範囲内でした。《湧き出る源、ジェガンサ》も時間の問題だったでしょう。
『モダンホライゾン3』の発売以降、モダンはかなり気が乗らない環境になっていて、禁止解除は多少あるだろうと踏んでいました。それが、まさかこんなに解除されるとは!
《欠片の双子》を禁止解除し、ウィザーズは「双子禁止解除」ミームに終止符を打ちました。解除を待ち望んでいた層はいるでしょうし、《詐欺師の総督》(あるいは《逸失への恐怖》?)を競技レベルで使おうと試行錯誤するプレイヤーもいるでしょう。ただ、そのほかの禁止解除に比べると見劣りしてしまいます。
《オパールのモックス》と《信仰無き物あさり》はかつてのモダンを象徴するカードでした。これはひとつの意見ですが、ボロスエネルギーはほぼ『モダンホライゾン3』だけのカードで構築されている地味なクリーチャーデッキです。それがモダン環境を支配し、モダンの特徴であったコンボやシナジー重視のデッキたちが後れを取っているのは実に悲しい状況でした。
また、これらは汎用性のあるカードですが、アーティファクトデッキや墓地デッキを構築しようと思ったら必ずや潤滑油になってくれる存在であって、デッキの顔になるわけではありません。あくまでデッキの基礎となる存在なのです。この2枚の禁止解除を知り、私の心は瞬く間に踊りだしました。こうなれば、新たに開かれた可能性を試さずにはいられません!
《緑の太陽の頂点》はモダン黎明期から禁止でした。ほかの禁止解除カードと違ってモダンの顔だったわけではないですが、コンボを筆頭とした緑のクリーチャーデッキは歓喜するでしょう。
この記事では、禁止制限告知を受けて私が期待している10のデッキをお見せします。懐かしいものもあれば、新しいものもありますよ!
新デッキ10選
アミュレットタイタン
アミュレットタイタンにとって《一つの指輪》は貴重な存在でした。総合的に見れば、アミュレットタイタンはランプデッキです。6マナまで伸ばしてから、フィニッシャーを出さなくてはなりません。
土地が4~5枚までしか伸びなかったり、土地を30枚採用しているゆえにマナフラッドしてしまったり、そういう不運なゲームを何度も《一つの指輪》は救ってくれました。いつ引いても嬉しいトップデッキだったのです。
サイドボード後でも勢いは衰えず、《血染めの月》をはじめとした妨害に対しても一定の解答となってくれていました。
《緑の太陽の頂点》にはこのカードならではの強みがあります。《溜め込み屋のアウフ》《忍耐》《落星の学者、ロクサーヌ》など、サイドボードからのシルバーバレットにアクセスしやすくなるのです。
ただ、Magic Onlineで試しに使ってみたところ、感触は良くありませんでした。《緑の太陽の頂点》はいずれ採用されるかもしれませんが、《一つの指輪》と直接的に比較したときに、アミュレットタイタンは状況が悪化してしまった印象を受けています。
《緑の太陽の頂点》がアミュレットタイタンでは微妙に感じてしまう一因は《ドライアドの東屋》にあります。アミュレットタイタンは、小型のクリーチャーを採用しないことで一部の除去を無力化させる構築になっているのに、《緑の太陽の頂点》から《ドライアドの東屋》をサーチするアクション(実質的には《ラノワールのエルフ》を出すアクション)は……理解しがたいのです。
Xの値が小さい《緑の太陽の頂点》から展開を加速させづらいのであれば、それは微妙でしょう。サーチ対象としての《ドライアドの東屋》と《桜族の長老》は今のところ期待外れです。
《緑の太陽の頂点》はもともとマナクリーチャーを採用するデッキなら、もっと上手く活用できそうです。たとえば……
ケシスコンボ
使用率はさほど高くなかったものの、パイオニアで禁止されてしまったあの《隠された手、ケシス》です。
コンボはシンプルで、《隠された手、ケシス》を《ヨーグモスの意志》のように使い、各種モックスを使いまわすことでマナを生み出します。《湖に潜む者、エムリー》や《完成化した精神、ジェイス》を使いまわせば自分の墓地を肥やすことができ、最終的に《ジェイス》の能力で相手のライブラリーを削り切って勝利するデッキです。
《オパールのモックス》と《緑の太陽の頂点》はケシスコンボの優秀なサポートカードになるでしょう。《オパールのモックス》は動きを加速させてくれますし、《緑の太陽の頂点》は核となるコンボパーツを呼び込みます。
コンボデッキというのは開発初期の段階では構成が粗いのが一般的であり、ケシスコンボも時間をかけないと洗練された威圧感のあるリストにはなっていかないでしょう。とはいえ、このデッキのポテンシャルを頭ごなしに否定することはできません。《石のような静寂》や墓地対策を乗り越えるだけの速度と安定性を実現できる可能性を感じさせます。
脱出基地コンボ
禁止解除前、《石のような静寂》や墓地対策をもってしても、脅威的な存在だったのが脱出基地コンボです。《オパールのモックス》の解除で大幅に強化されたデッキのひとつでしょう。
モックス8枚体制により高速展開が担保されており、「金属術」も《モックス・アンバー》があれば1ターン目に達成することも夢じゃありません!《湖に潜む者、エムリー》も1ターン目に唱えられる可能性が高くなっていて、一層強く使えるようになっていますね。
補足しておくと、《モックス・アンバー》は必須ではなくなりました。《オパールのモックス》だけでも《研磨基地》で切削し、マナを生み出せるからです。尖らせた構築にしたいのであれば、完全にクリーチャーが関与しないコンボで構築することもできます。参考までに。
《創造の歌》
《創造の歌》もお気に入りのデッキです。コンボ条件は簡単で「《創造の歌》を着地させる」「0マナのカードを連打する」「デッキを引き切る」、そして何らかの方法で勝ちます。
従来は、コンボが始まったら《断れない提案》でしかマナを増やすことができませんでした。どこかのタイミングで0マナになってしまうとコンボは途切れ、自分のターン(そしてたいていはそのゲーム自体)が終了します。
勝つまでには、《忍耐》で墓地を循環させ、最低でも7マナまで伸びるように《断れない提案》を自分の呪文に打ち続けて、《きらめく願い》から《道極め》へつなげる必要がありました。面白くはありますが、複雑すぎます。
《オパールのモックス》により《創造の歌》を早いターンに出せるようになりますし、勝つまでにひどく頭を悩ませることもなくなります。勝利条件をわざわざ複雑にすることなく、《定業》を採用し、《創造の歌》を引きやすい構築にできるのです。また、《きらめく願い》はこれからも選択肢のひとつでしょう!
《耐え抜くもの、母聖樹》《オークの弓使い》《石のような静寂》はどれも乗り越えがたい障害です。ストームデッキの代表格は引き続きルビーストームでしょうが、私はあきらめません!
ハンマータイム
《一つの指輪》はハンマータイムの敵でした。ハンマータイムは細かいアドバンテージでやりくりしつつ、戦闘フェイズに妨害を構えない相手を咎めるデッキですが、《濃霧》をしながらドローする《一つの指輪》には太刀打ちできなかったのです。その天敵がいなくなり、《オパールのモックス》が仲間に加わったのですから、ハンマータイムが復権しないわけがないでしょう!
《河童の砲手》を採用したこの構成は面白いですね。《オパールのモックス》があれば唱えるのは現実的ですし、単体で勝てるだけのパワーもあります。ブロックされないうえに、「護法」があるのですから、《巨像の鎚》の装備先としては文句なしでしょう。
ランタンコントロール
禁止制限告知後、すぐにランタンコントロールを再構築してみました。
《オパールのモックス》の禁止以降、高速で動き、生き延び、手札を空にして《罠の橋》を機能させ、ランタンロックを確立することが難しくなっていました。手札破壊や《写本裁断機》では盤面に触れることはできず、《罠の橋》で動きを止める前にクリーチャーに殴り切られてしまうのです。
《オパールのモックス》があれば事情はだいぶ変わります。そのマナによって《ウルザの物語》の構築物・トークンを出しやすくなり、延命しやすくなったのです。
《溶融》は一夜で一気に採用率が高まったサイドカードであり、《罠の橋》が有効ではないマッチアップにおいて《河童の砲手》は《溶融》を乗り越えるカードとして試験的に採用しています。《河童の砲手》と構築物・トークンでライフを狙うプランは成立しうるでしょう。
個人的に問題視しているのは、《オパールのモックス》と《信仰無き物あさり》によりコンボデッキが過剰に増えてしまうことです。ランタンコントロールは大半の戦略に対してロックできるように構築されていますが、一番得意とするのは《罠の橋》で相手のカードの大半をシャットアウトできる環境です。そして、単純にクリーチャーで勝ち切るデッキは現在そう多くありません。
少なくともランタン構築を使うプレイヤーは、環境が少し落ち着くタイミングを待つことになるでしょう。
独創力頑強コンボ
《不屈の独創力》はハンマータイムと同じく、《一つの指輪》が環境を支配したことで姿を消しました。《残虐の執政官》に対して《一つの指輪》のプロテクションが刺さるのもありますが、おそらくそれよりも致命的なのは、このデッキ自身が《不屈の独創力》と《一つの指輪》を共存させられないことでしょう。指輪はゲームが長引いたときに強いカードでもありますからね……。
そして《一つの指輪》が消え、《信仰無き物あさり》が復帰したことで《残虐の執政官》の出番がやってきました。これまでも《不屈の独創力》デッキに《頑強》の姿はありましたが、《信仰無き物あさり》の解除によってデッキの核に昇格するでしょう。
《残虐の執政官》を《頑強》で釣るプランは、相手がサイドボードから墓地対策を入れたくなるほど強力なものであり、《魂標ランタン》などと対面したときに《不屈の独創力》はそれをすり抜ける代替プランになります。こういう構築ができるのはかなり可能性を感じますね!
《信仰無き物あさり》の解除で《レンと六番》も評価をあげました。余分な土地を実のあるカードに変換できますからね。
《アスモラノマルディカダイスティナカルダカール》
《アスモラノマルディカダイスティナカルダカール》は変わらず強力ですが、扱いが難しいカードでもあります。《ウルザの物語》《アスモ》《地獄料理書》《楕円競走の無謀者》をそれぞれ4枚採用するパッケージはデッキの枠を食い、残りの枠で何をすべきなのか判然としないのです。
その答えはいまだに明らかでないですが、《オパールのモックス》と《信仰無き物あさり》を難なく取り込めるアーキタイプであり、研究しがいはあります。
《楕円競走の無謀者》はすべてのルーティング効果をカードアドバンテージに変えることができ、《美術家の才能》はその考えを最大限に活かしてくれるカードです。また、有効なアクションがとれないターンを埋められるような、効率的かつ効果的なプランを組み込みたかったので、《残虐の執政官》と《頑強》のセットを入れることにしました。
このアーキタイプはガチャガチャと動くことができます。デッキ構築するうえで意識したいのは、「ガチャガチャ動いたけど結局何もできなかった」とならないようにすることですね。
《巣穴の魂商人》コンボ
昔からお気に入りの《恐血鬼》。フェッチランドで何度も墓地から戻すのは快感ですし、サクリ台と合わせれば最高ですね。手軽に手札から捨てられないと《恐血鬼》は弱かったので、《信仰無き物あさり》は待望の一枚です!
これまでの《巣穴の魂商人》デッキはもう少し強化が欲しかったアーキタイプでした。《信仰無き物あさり》の登場でコンボパーツをそろえたり、《発掘》を使ったり、《恐血鬼》と《墓所這い》を墓地に送ったりしやすくなったのです。
《恐血鬼》は《ゴブリンの砲撃》や《命取りの論争》のエサにもなります。《命取りの論争》はコンボパーツを引き当て、手札の枚数を増やし、終盤戦の《信仰無き物あさり》をより強く使えるようにしてくれるでしょう。
サクリ台のあるこのデッキは《オークの弓使い》の独特な使い方ができますし、オークは今後の環境で立ち位置が良くなったカードかもしれません。さまざまなデッキが《信仰無き物あさり》でカードを引いたり、《オパールのモックス》の「金属術」を達成すべく採用した《ミシュラのガラクタ》で追加のドローをするようになりますからね。
《コジレックの封印破り》コンボ入り親和
昔ながらの「親和」デッキは構築の方向性がさまざまに考えられます。個人的に興味をひかれたのはコンボ型でした。
デッキコンセプトは、《オパールのモックス》と《ウギンの迷宮》を活用し、3マナ域のデッキエンジンを早々に展開することです。《コジレックの封印破り》は大量のカードをもたらし、《身代わり合成機》は盤面を制圧してくれます。運よく《コジレックの封印破り》を2枚並べられると、デッキをすべて引き切ることも可能で、そうなれば《まばゆい肉掻き》で瞬く間に勝てるでしょう。
こういった動きを想像するとワクワクしますが、このデッキはBO1で強いデッキかなと思います。《活性の力》や《溜め込み屋のアウフ》を克服するのはかなり難しい印象です。不思議なことに 、《河童の砲手》は採用率の高い対策カードに対してかなり相性が良いので、ここでもサイドボードに登場しています。
おわりに
さて、今回紹介した10のデッキは氷山の一角に過ぎません。研究しがいのあるデッキはまだまだあるでしょうし、ここまでモダンにワクワクするのは久しぶりのことです。
これから数週間は発見に満ちあふれていることでしょう!ボロスエネルギーはまだ健在だと思いますが、果たして新興勢力のコンボデッキすべてを迎え撃てるんでしょうか。モダンの未来に期待しましょう!
ピオトル・グロゴゥスキ (X / Twitch / Youtube)
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