誰が《オパールのモックス》を解放した?モダン環境の変化と注目のデッキ4選

Matti Kuisma

Translated by Nobukazu Kato

原文はこちら
(掲載日 2024/12/20)

はじめに

火の怒りのタイタン、フレージThe One Ring

ここ数ヶ月、モダン環境は純粋なボロス型や黒をタッチした3色型など、エネルギーデッキを中心に回っていた。速くて安定したクロックを持つこれらのデッキは、《火の怒りのタイタン、フレージ》《一つの指輪》と組み合わせることで、ほかのフェアなデッキを駆逐していたのだ。

その結果、環境にはエネルギーデッキと、それを無視しようとするさまざまなコンボデッキだけが残る状態が続いた。《一つの指輪》を採用しているのは、それらのコンボデッキも同じだ。

これによりプレイヤー人口も減少し、普段モダンを楽しむ人々でさえ、環境に閉塞感を覚えるようになっていった。

(訳:過去6か月間、モダンはプレイヤー間でこれまでにないほど低調な状態にある。新しいパワーカードだけに頼らず、再び喜びを呼び起こすような、思い切った変革が必要だ)

しかし今週月曜日、プレイヤーの願いがついに叶った!エネルギーデッキの主要カードが禁止されただけでなく、過去の人気カードが複数解禁され、ほかのアーキタイプが強化されることになったのだ!

禁止:

《一つの指輪》
《湧き出る源、ジェガンサ》
《色めき立つ猛竜》

禁止解除:

《オパールのモックス》
《緑の太陽の頂点》
《信仰無き物あさり》
《欠片の双子》

再生可能エネルギー

The One Ring

興味深いことに、禁止されたにもかかわらず、エネルギーデッキは依然として有力な選択肢だと考えている。《一つの指輪》はデッキの必須パーツではなく、主にミラーマッチで活躍するカードであり、ほかのデッキ相手にはサイドアウトすることも少なくない。本当に採用したいカードというよりは、ミラーマッチのために仕方なく採用していた印象が強かったのだ。

もっとも、これは《一つの指輪》が本来刺さるはずのほかのデッキが、メタゲーム上ほとんど存在できなかったことも影響している。

湧き出る源、ジェガンサ

一方、《湧き出る源、ジェガンサ》はデッキ内で補助的な役割に留まっていた。たしかに出番が回ってくることはあるものの、モダン環境の試合は非常に速いため、このカードがゲームを左右する場面はほとんどなかった。《一つの指輪》と同じく、ミラーマッチ以外では重要性が低かったのだ。そのため、この2枚についてはどちらも大きな痛手にならないと私は考えている。

(訳:3マナを払ってジェガンサを手札に加え、その後5マナで唱えた後の最も一般的な展開は……次のターンに投了することのように感じる)

Amped Raptor

《色めき立つ猛竜》の禁止は意外だった。パワーレベルでいえば、禁止リストのなかでも最下位の《黄泉からの橋》ぐらいじゃないだろうか。《黄泉からの橋》と同じく、禁止リスト入りはほかのより強力なカードの罪を背負った結果だといえる。

ウィザーズはエネルギーデッキの力を削ぎつつも完全には潰したくなかったため、『モダンホライゾン3』の神話レアの身代わりとして《色めき立つ猛竜》を禁止したのだろう。私なら別のやり方をするが、禁止の意図は理解できる。

数マッチプレイしてみたうえで、私なりの新環境でのエネルギーデッキがこちらだ。

マルドゥエネルギー

デッキリストページ

《色めき立つ猛竜》をほかの赤いパーマネントに置き換えたいと考えた。というのも、このカードがなくなると変身した《ナカティルの最下層民、アジャニ》に必要な赤いパーマネントの枚数が減り、その力が大幅に低下してしまうからだ。

敏捷なこそ泥、ラガバン鏡割りの寓話

幸いにも、《敏捷なこそ泥、ラガバン》《鏡割りの寓話》が非常に上手くデッキにマッチした。《鏡割りの寓話》長期戦で必要な持久力を提供してくれる点でも優秀で、《一つの指輪》がなくなった今、この役割は特に重要だ。これがなければ《火の怒りのタイタン、フレージ》に過度に依存してしまうことだろう。

骨の皇帝

また、ミラーマッチで《火の怒りのタイタン、フレージ》が重要であることを考慮し、《骨の皇帝》をデッキに数枚加えた。墓地対策をメインデッキで行えるのは、ほかの多くのデッキ、特に《偉大なる統一者、アトラクサ》《残虐の執政官》を使うデッキに対して有効だ。

虹色の終焉

《火の怒りのタイタン、フレージ》の重要性を反映させたもうひとつのカードが《虹色の終焉》だ。以前は《色めき立つ猛竜》からめくれたときの空振りを恐れて採用しづらいカードだったが、今ではその心配がなくなった!

誰が《オパールのモックス》を解放した?

禁止解除されたカードについて特筆すべきは、《欠片の双子》を除いたそのほかの3枚だ。これらは非常に柔軟でシナジー重視のカードでもあり、さまざまなデッキに組み込むことができる。フォーマットに新しい息吹を与え、メタゲームを活性化させる意図的な判断だったに違いない。そして何より重要なのは、どのカードもプレイしていて楽しいということだ!

Mox Opal

この4枚の中で、最も可能性を秘めているのは間違いなく《オパールのモックス》だろう。高速でマナを使うのはマジックで最も強力な戦略のひとつであり、《太陽の指輪》《Blacker Lotus》がヴィンテージ・キューブで常にトップクラスのピックとなる理由でもある。

Faithless LootingGreen Sun's Zenith

もちろん、《信仰無き物あさり》《緑の太陽の頂点》も非常に優れたカードであり、それらが広く採用されることは間違いない。しかし《オパールのモックス》ほど、その可能性を追求することへの興奮を感じることはない。

Splinter Twin

一方で、《欠片の双子》はここでは少し異質な存在に思える。このカードがフォーマットに大きな影響を与える可能性は低いだろう。

確かにモダンの象徴的なカードではあるが、禁止リストに残しておき、「かつてはこんなにクールなカードがあった」とファンが懐かしむ存在であるべきだったと感じる。現在の状況では、引退したアスリートが再びコートに復帰しようとするようなもので、全盛期の実力を持つ若いスターの前に影を薄めることになりそうだ。

これらのカードの可能性をすべてカバーするには1つの記事では足りないので、今回は私が最も興味のある《オパールのモックス》を使ったデッキに焦点を当てたいと思う。

《オパールのモックス》デッキ

脱出基地コンボ

死の国からの脱出研磨基地タッサの神託者

最も明確な選択肢は、《死の国からの脱出》コンボだ。このデッキはエネルギー全盛期の時代においても、《オパールのモックス》なしで競技レベルの強さだった。《一つの指輪》こそ失ったが、《オパールのモックス》の追加で危険なほど速く安定した動きが可能になる。

デッキリストページ

Mox Opalモックス・アンバーウルザの物語

《オパールのモックス》《モックス・アンバー》との併用で爆発的な動きが実現する。《ウルザの物語》はコンボをサポートしつつ、代替の勝利手段にもなるので、このカードを組み込めるコンボデッキは最高だ。

Faithless Looting邪悪鳴らし

《信仰無き物あさり》はこのデッキに良く合うだろう。このデッキには、1枚目は非常に強力でも、2枚目以降はあまり役立たないカードが多くある。《オパールのモックス》《モックス・アンバー》がその代表例だが、伝説のクリーチャーにも同じことが言える。デッキには墓地回収手段もあり、《邪悪鳴らし》《信仰無き物あさり》を墓地に送れたらお得だ。

溶融石のような静寂

アーティファクトデッキが増えることになるので、今後はサイドボードから対策カードが多く飛んでくることだろう。サイドボード後は《溶融》《石のような静寂》などには要注意だ。

呪文貫き否定の力耐え抜くもの、母聖樹

《溶融》には《呪文貫き》《否定の力》で、《石のような静寂》には《耐え抜くもの、母聖樹》で対応すると良いだろう。相手がサイドインしてくるか確信がないときでも《耐え抜くもの、母聖樹》はサイドインするリスクが低く、《邪悪鳴らし》で手札に加えることもできる強みがある。

ランタンコントロール

次に注目するのは、かつて《オパールのモックス》の禁止により姿を消したランタンコントロールだ。

デッキリストページ

Mox Opalウルザの物語マイコシンスの庭

このデッキは《オパールのモックス》が禁止されて以来あまりプレイされていないが、その後いくつか新しいカードが追加され、復帰の可能性に期待を寄せている。

《ウルザの物語》《マイコシンスの庭》の追加は、《オパールのモックス》が再解禁される前に試すきっかけとなったが、遅すぎると感じただけでなく、《一つの指輪》に対して弱すぎたのだ。《オパールのモックス》が加わればスピードの問題は間違いなく解決するし、《一つの指輪》の問題は今回の禁止で解消されている。そろそろ、ランタンコントロールが戻ってきても良い時期かもしれない。

構築物トークン罠の橋

《ウルザの物語》はこのデッキにおいて面白いカードで、かみ合っている面もあれば、かみ合っていない面もある。大量のアーティファクトにより構築物・トークンのサイズを上げやすく、1マナのアーティファクトをできるだけ早く集められるのでサーチ能力は非常にかみ合っている。

その反面、攻撃で勝とうとはせず、相手のクリーチャーを攻撃させまいと《罠の橋》を使うこともあるのだ。もちろんこちらも攻撃できなくなるが、それでも構築物・トークンは《罠の橋》が機能しないマッチアップで貴重なクロックになる。

マイコシンスの庭

《マイコシンスの庭》は一見無害なカードに見えるが、テストプレイしたときは非常に印象的だった。《罠の橋》をコピーできれば、アーティファクト除去呪文を引かれた場合の保険になり、《石臼》効果をコピーすれば、ゲームを以前よりずっと速くロックできる。

コジレックの審問思考囲い写本裁断機

サイド後にアーティファクトに偏らないような構成にすることもできないため、ランタンコントロールにとって対策カードは避けて通れない問題だ。この問題を緩和するためには、対策カードを唱えられないよう手札破壊を8枚採用して、このデッキ本来の狙いどおりに最高のトップデッキをさせないようにコントロールしていくことだ。

石のような静寂溶融

《石のような静寂》《罠の橋》を封じるわけでもないし、除去できないわけでもないので最も対応しやすい。ただ、《溶融》はケアするのがなかなか難しいだろう。

親和

最後に紹介するのは、あの”親和”だ!現時点でのリストをお見せしよう。

デッキリストページ

Patchwork Automaton

《オパールのモックス》により爆発的なスタートが切れるようになっている。《継ぎ接ぎ自動機械》を1ターン目に、《ウルザの物語》のトークン生成を2ターン目にできるようになり、この動きがこれまでより1ターン早くできるのは脅威のレベルが段違いだ。

河童の砲手湖に潜む者、エムリー

このデッキが素晴らしいのは、対策カードに対する耐性だ。代表格は《河童の砲手》で、非常に高い除去耐性を備えている。そして《湖に潜む者、エムリー》《溶融》からの立て直しに一役買ってくれるだろう。

石のような静寂金属の叱責

このデッキのアタッカーは《石のような静寂》で止まらないのも強みだ。もし《石のような静寂》を置かれたとしても、《河童の砲手》《金属の叱責》なら《オパールのモックス》をタップして”マナ”を出すことができるのだ!その《金属の叱責》もまた、対策カードに対して耐性を与えてくれる1枚だ。

おわりに

オパールのモックス

今回紹介したデッキを見てわかるように、《オパールのモックス》は極めて汎用性が高いカードだ。ブリーチコンボのような純粋なコンボデッキから、ランタンコントロールなどの奇抜なコントロールデッキ、親和をはじめとした高速ビートダウンデッキまで、《オパールのモックス》はマルチに活躍できる。

しかも今回紹介したのは可能性の一片に過ぎず、ハンマータイム・鱗親和・繁殖鱗コンボなど、可能性は無限大だ!

信仰無き物あさり緑の太陽の頂点欠片の双子

《オパールのモックス》だけでなく《信仰無き物あさり》《緑の太陽の頂点》《欠片の双子》も解禁され、楽しみがたくさんできた今、モダンのプレイヤーには選択肢が溢れている。その創造力を使って、このパワフルなカードたちのポテンシャルを最大限に引き出してやろう!

禁止解除後のタイミングは、これ以上ないマジックが楽しい時期だ。ぜひこの機会を逃さないでくれ!

マッティ・クイスマ (X)

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Matti Kuisma ワールド・マジック・カップ2016でチームの一員としてトップ8に輝いた、フィンランドのプレイヤー。 プロツアー『霊気紛争』で28位入賞を果たしたものの、2016-17シーズンはゴールドレベルに惜しくも1点届かなかった。 2017-18シーズンにHareruya Hopesに加入。2017年は国のキャプテンとしてワールド・マジック・カップに挑む。 Matti Kuismaの記事はこちら