宴のはじまり
あまりにも祭り、あまりにも宴。2024年12月16日 禁止制限告知を経て、モダン環境はマジックのひとつのフォーマットの枠を飛び越えるほどに激変した。それは禁止された3枚のカード、《色めき立つ猛竜》《一つの指輪》《湧き出る源、ジェガンサ》のみに起因することではない。
【お知らせ】2024年12月16日付の禁止制限告知をお伝えいたします。今回、複数のフォーマットに変更がございます。各フォーマットおよび個別のカードにおける見解については記事にてご確認ください。https://t.co/uhPVIczY66 #mtgjp pic.twitter.com/WrDBhHJpQT
— マジック:ザ・ギャザリング (@mtgjp) December 16, 2024
新たにモダンリーガルとなったカードは4枚のみながら、そのカードパワーと過去の活躍から無限の可能性を秘めており、上記の告知直後からプレイヤー間の期待値は爆発的に上昇している。解禁されたのは《オパールのモックス》《緑の太陽の頂点》《信仰無き物あさり》《欠片の双子》と、いずれも何らかのフォーマットにおいて一時代を築いたカードばかりなのだ。
それらが使用可能となるにとどまらず、当時は存在しなかったカードプールと組み合わさることで、現行のデッキの進化、さらには新たなアーキタイプが確立される可能性を秘めている。これを祭りと呼ばずして、宴と呼ばずして、何をいわんやというのだ。祭りの、宴の始まりである。
ここでは『THE LAST SUN 2024』参加者220名が見据えた先、モダンの可能性をみていこう。
メタゲームブレイクダウン
デッキ | 使用者数 | 使用率 |
---|---|---|
ディミーア眼魔 | 34 | 15.32% |
マルドゥエネルギー | 22 | 9.91% |
ルビーストーム | 12 | 5.41% |
ジャンド独創力 | 12 | 5.41% |
ボロスエネルギー | 11 | 4.95% |
アミュレットタイタン | 10 | 4.50% |
エスパー御霊 | 10 | 4.50% |
脱出基地コンボ | 9 | 4.05% |
ハンマータイム | 7 | 3.15% |
ドメインズー | 6 | 2.70% |
繁殖鱗コンボ | 6 | 2.70% |
グリクシス眼魔 | 6 | 2.70% |
ホロウワン | 5 | 2.25% |
ヨーグモス医院 | 5 | 2.25% |
裂け目の突破 | 4 | 1.80% |
青単ベルチャー | 4 | 1.80% |
ジェスカイコントロール | 4 | 1.80% |
青単トロン | 3 | 1.35% |
欠片の双子コンボ | 3 | 1.35% |
レンアンドオムナス | 3 | 1.35% |
ジェスカイエネルギー | 3 | 1.35% |
親和 | 2 | 0.90% |
腐敗僧ストーム | 2 | 0.90% |
リビングエンド | 2 | 0.90% |
エルドラージランプ | 2 | 0.90% |
イゼットコントロール | 2 | 0.90% |
アゾリウスコントロール | 2 | 0.90% |
感染 | 1 | 0.45% |
エルフ | 1 | 0.45% |
The Spy | 1 | 0.45% |
鱗親和 | 1 | 0.45% |
アスモ眼魔 | 1 | 0.45% |
緑単トロン | 1 | 0.45% |
呪禁オーラ | 1 | 0.45% |
マルドゥ御霊 | 1 | 0.45% |
グルール果敢 | 1 | 0.45% |
エスパー眼魔 | 1 | 0.45% |
ボロスバーン | 1 | 0.45% |
マーフォーク | 1 | 0.45% |
ネオフォーム | 1 | 0.45% |
ケシスコンボ | 1 | 0.45% |
デス&タックス | 1 | 0.45% |
ホロウヴァイン | 1 | 0.45% |
ナヤエネルギー | 1 | 0.45% |
ジャンドサーガ | 1 | 0.45% |
緑単ストンピィ | 1 | 0.45% |
マルドゥ独創力 | 1 | 0.45% |
グリクシス御霊 | 1 | 0.45% |
ディミーアドラコ | 1 | 0.45% |
グリクシステンポ | 1 | 0.45% |
赤単フェニックス | 1 | 0.45% |
ライブラリーアウト | 1 | 0.45% |
マルドゥウィノータ | 1 | 0.45% |
イゼットマークタイド | 1 | 0.45% |
タイタンヴァラクート | 1 | 0.45% |
ボロス双子エネルギー | 1 | 0.45% |
マルドゥ双子エネルギー | 1 | 0.45% |
クラガンウィックシュート | 1 | 0.45% |
合計 | 222 | 100% |
(※提出されたリストをすべて掲載しています)
ディミーア眼魔 (使用率15.32%)
今大会のメタゲームの筆頭となったのはディミーア眼魔。ディミーア眼魔はデッキ名になっている《忌まわしき眼魔》と《超能力蛙》を軸とした少数のクリーチャーでダメージレースをしかけながら、軽量の干渉手段を用いて攻めを継続していく、いわゆるクロックパーミッション戦略である。
未知の環境とはいえ、原則的にモダンがゲーム終了までの時間が短いフォーマットであることに変わりはない。そのフォーマットにおいて攻め手に回る側のデッキに求められるのは1~2マナ域、3マナですら重く感じられる高品質のクリーチャーである。
ディミーア眼魔は《超能力蛙》に加え、諜報や切削過程で墓地へ送り込まれた《忌まわしき眼魔》を《発掘》するショートカットプランによってその条件を満たしている。《濁浪の執政》を含めいずれのクリーチャーも、短時間で20点のライフを削りきれるだけのクロックスピードを兼ね備えている。
さらに、ディミーア眼魔に備わっているのは軽量の妨害手段だ。最高級の単体除去《致命的な一押し》に始まり、レガシーでもお馴染みの手札破壊《思考囲い》、果てはスタック上の呪文へと干渉し無効化する《対抗呪文》と枚挙にいとまがない。
これらの汎用性の高いカード群を組み合わせることで、ビートダウン完遂までの時間を稼ぐことになる。対戦相手視点ではどの妨害手段を構えているか判別することは難しく、それにより裏目を作ることもできる。まさに変幻自在のアーキタイプといえるだろう。
今回ご紹介したデッキは《オパールのモックス》を採用した戦略の隆盛を読み、サイドボードの《溶融》用に赤をタッチしている。柔軟であるが故の限界、《オパールのモックス》のような爆発力をもったカードによる押し切りを懸念してのことである。
だが、どうせ赤をタッチするならば、デッキのブン回りプランを強化すべく《信仰無き物あさり》まで採用したグリクシス眼魔も少数ながら存在していたことを補足しておこう。《信仰無き物あさり》と《発掘》により、早ければ妨害手段を絡めながら2ターン目に5/5のクロックが着地することになる。
ディミーアか、グリクシスかいずれかが優れているかはさておき、ボロスエネルギーが弱体化した後のメタゲームの中心は、万能アーキタイプである《忌まわしき眼魔》へと行きついている。
マルドゥエネルギー (使用率9.91%)
《色めき立つ猛竜》と《一つの指輪》の2枚を失ってなお、エネルギー戦略は色褪せない。メタゲームブレイクダウンからプレイヤー叫びが聞こえるかのように、2番手に位置しているのはマルドゥエネルギーである。
マルドゥエネルギーは1~2マナ域のクリーチャーを多面展開し戦線を横へと広げ、《魂の導き手》によるエネルギー・カウンターのシナジーでバックアップしていく戦略である。高いボードコントロール力に加えて、《火の怒りのタイタン、フレージ》や《ゴブリンの砲撃》などの飛び道具を有している。
《色めき立つ猛竜》亡き後、エネルギーを活用する手段は《魂の導き手》のバフ効果と《電気放出》の火力、《黄泉帰る悪夢》に限られるが、十分すぎるほどである。特に素早く展開された小型のクリーチャーを強化する《魂の導き手》はこのデッキの顔であり、いつ引いても活躍が約束されている1枚である。
《ナカティルの最下層民、アジャニ》と《オセロットの群れ》は先の《魂の導き手》と最高の相性を誇り、1枚で複数枚分の役割を果たす。継戦力を高めてくれる。
2種類のカードを失いながらも、人気の理由は3マナ域にある。再利用可能なボードコントロール《火の怒りのタイタン、フレージ》と、中長期的プランでの勝負を決定づける《鏡割りの寓話》の存在だ。
前者は《栄光の闘技場》から加速度的にダメージレースを引き離すことも可能であり、そろった際はタップアウトでの挙動は許されない。突如として牧歌的なダメージレースをぶち壊すこの巨人の存在は、弱体化したエネルギーにおける最後の砦といえる。
弱体化を経てエネルギー戦略を選択したのには理由がある。ボロスとマルドゥ両エネルギーデッキに共通しているのは、そのプレイヤーの練度である。一朝一夕でエネルギーを選択したのではない。これまでエネルギーというアーキタイプを使い込み続けた先にあったのが、この使用者数なのだ。プレイの練度の高さは、変更後のモダン環境へも通じるはずだ。
ルビーストーム (使用率5.41%)
禁止改定、環境変化などなんのその。ひとり我が道を行くのがコンボデッキであり、それがルビーストームである。ルビーストームは《モンスーンの魔道士、ラル》や《ルビーの大メダル》でマナ総量を軽減することで1ターン中に大量の呪文を唱え、ストームの膨れ上がった《ぶどう弾》や《巣穴からの総出》でフィニッシュする戦略である。
コンボのスタートはスマートな場作りから。先ずは《モンスーンの魔道士、ラル》や《ルビーの大メダル》といった呪文のマナ総量を軽減してくれるパーマネント、いわゆるメダリオンを展開することから始まる。《ルビーの大メダル》はひとたび着地すれば対処手段が限られるため、早期にプレイしたい1枚である。
メダリオンが定着すれば準備完了。マナを生成する《捨て身の儀式》と疑似的な手札をもたらす《無謀なる衝動》を連鎖させ、呪文の糸を紡いでいく。不足分は《炎の中の過去》が補い、最終的に大量の呪文をプレイした状況ができあがる。
《願い》から導かれた《ぶどう弾》や《巣穴からの総出》は、それ以前にプレイされた大量の呪文をストームとしてカウントし、コピーを生成する。この一連の過程は早ければ2ターン目に始動可能であり、高い確率で1ゲーム目をとることができる。エネルギーは当然として、ときにはディミーア眼魔のような多彩な干渉手段を持つ相手にさえ勝利できるだけの速度を兼ね備えているのだ。
サイドボード後は一転して妨害の嵐に遭うことになる。《ドラニスの判事》のようなクリーチャーのみならず、ノンクリーチャーである《耳の痛い静寂》と対策カードをあげればキリがない。1ゲーム目とは対照的に、《オアリムの詠唱》や《空の怒り》を絡めて対策カードのうえからコンボ達成を目指していく。
メタゲームブレイクダウンをみる限り、エネルギー戦略を狙ったルビーストームはまさに読み通りの選択といったところだ。懸念すべきはトップシェアであるディミーア眼魔を乗り越えられるかだろう。
ジャンド独創力 (使用率5.41%)
これまで紹介してきたデッキはいずれも禁止改定の影響を受けないものか、それにより弱体化したものである。先のルビーストームと同数の使用者でありながら、禁止改定の恩恵を授かったアーキタイプがジャンド独創力だ。
ジャンド独創力は《ドワーフの鉱山》から生成されるトークンを対象に《不屈の独創力》をプレイし、《残虐の執政官》を踏み倒す(従来のマナコストを支払わずにプレイする)戦略である。
早期にプレイされる《残虐の執政官》は、エネルギー戦略をはじめとしたクリーチャーデッキに滅法強く、戦場に出たときの効果により仮に対処されようともボード、ライフ、手札と十分なアドバンテージを稼いでくれる。
デッキの基盤となるのは大量の《山》でかためられたマナベースと《ドワーフの鉱山》であり、毎ターン土地カードを置き続けるだけで、4ターン目には《不屈の独創力》のお膳立てが完了する。土地カードと相性の良い《レンと六番》は単にリソースを伸ばしているにとどまらず、コンボ補助を兼ねているわけだ。
しかしながらコンボの基本はクリーチャーにあるため、妨害は容易く不発に終わることも少なくない。エネルギー相手ですら《電気放出》1枚で対応されてしまう。仮に成功したとしても《一つの指輪》の前では対象にとることができなかった。また、手札でかさばる《残虐の執政官》は無駄なカードでしかなかった。そう、今までは。
ジャンド独創力にもたらされた新たな力であり、『THE LAST SUN 2024』においてメタゲームの3番手まで押し上げた原動力こそ《信仰無き物あさり》にほかならない。《信仰無き物あさり》から墓地へと送り込まれた《残虐の執政官》は、《頑強》にて本来のコンボを上回るスピードで着地を果たす。もはやリアニメイトが主コンボといっても過言ではなく、《鏡割りの寓話》のみでは成しえなかった完成度である。
2種類のコンボがハイブリッドされたことで、対策する側も一筋縄ではいかなくなってしまった。例えば早期着地を防ごうと《外科的摘出》を採用したとしても、《不屈の独創力》には何ら影響を及ぼさない。《対抗呪文》のような打ち消し呪文か、事前の梅雨払い《思考囲い》でもない限り、《不屈の独創力》と《頑強》双方を容易く対応することはかなわないのだ。
《信仰無き物あさり》獲得によるアップデートを経て、対クリーチャー性能はより一層高くなっている。速度で劣るルビーストームを避け、エネルギー戦略を踏めるかが焦点となるだろう。
勝ち組はどのアーキタイプか
メタゲームはディミーア眼魔を筆頭に、マルドゥエネルギー・ルビーストーム・ジャンド独創力が追従するかたちとなっている。とはいえ、ディミーア眼魔以外はどのデッキも使用率は10%未満であり、さまざまなアーキタイプがみられる。禁止改定後らしい、まさに群雄割拠の大会となっている。
果たして、勝ち組となるのはどのアーキタイプか。熱戦が続く『THE LAST SUN 2024』の模様は、明日の配信でご覧いただきたい。