デッキテク:田村 一の「マルドゥエネルギーツイン」 ~《欠片の双子》はタップアウトを許さない~

晴れる屋メディアチーム

新たな地平線へようこそ

2024年12月16日の禁止制限告知を経て、モダン環境はリセットされた。禁止、解禁の双方が織りなす影響は大きく、現時点でメタゲームがどのような変遷をたどるのかは定かではない。既存のデッキを使うのが正義か、はたまた新デッキを構築するのが正義がは見解によるとしかいいようがない。

ならば、環境へと投じられた一石へと目を向けるのがライターのさがというもの。新たにモダンリーガルとなった4枚のカードへと目を向け、デッキを見つけようではないか。『THE LAST SUN 2024』の参加者は220名にものぼるため、新たなアーキタイプがいるに違いない。

欠片の双子

《オパールのモックス》《緑の太陽の頂点》《信仰無き物あさり》《欠片の双子》と順番に検索をかけていく内に、そのデッキへと辿りついた。目に留まったのは青くない《欠片の双子》デッキ。往年の《詐欺師の総督》+《欠片の双子》ではないというのだ。

魂の導き手

さらに驚いたのは《欠片の双子》の隣に書かれた《魂の導き手》え、えね、エネルギーなのか!?

頭の中で考えているだけでは宴は楽しめない。自分も参加する側へと回らねば。そう思うが早いか、使用者を探していた。

名前

『THE LAST SUN 2024』へ導かれてきた《欠片の双子》デッキ、マルドゥエネルギーツインについて、愛知県のパピー弥富店にてレガシーを中心にプレイしているという田村 一に話を聞いた。

今回は一味違う、新たなエネルギーデッキでもあり《欠片の双子》でもあるデッキの正体を見ていこう。

エネルギーツインとは

デッキリストページ

──「エネルギーツインとはどんなデッキでしょうか」

魂の導き手オセロットの群れ鏡割りの寓話

田村基本的にはエネルギー軸で攻めていくクリーチャー戦略であり、《魂の導き手》《オセロットの群れ》《鏡割りの寓話》などを使い有利なボードを築きながら妨害カードを挟み、ダメージレースの完走を目指していきます」

──「それだけではなく、このデッキにはもうひとつの顔がありますよね?」
逸失への恐怖欠片の双子村の鐘鳴らし

田村「対戦相手が除去呪文を使いきったりやタップアウトしたタイミングで、昂揚を達成した《逸失への恐怖》《欠片の双子》を貼ることで無限トークン・無限戦闘コンボが完成します。エネルギー戦略と無限トークンのハイブリッドデッキですね。

田村「コンボパーツの片割れであり、《欠片の双子》の対象である《逸失への恐怖》自体が戦場に残りやすく、《ナカティルの報復者、アジャニ》の[0]の起動型能力とも噛み合うなど、単体でもハイスペックなカードが集まっています」

デッキの強み

──「デッキの強みとしてはどんな点があげられますか」

逸失への恐怖鏡割りの寓話

田村「パッと見はエネルギーだと思い、こちらのクリーチャーを積極的に対処してくるので、そこを逆手に取ってコンボを狙える点ですね。色的に再現性は低いと思われるかもしれませんが、《逸失への恐怖》《鏡割りの寓話》がコンボパーツを揃えてくれます。両カードとも単体で十分な働きが担保されているうえに、手札を整えてくれます」

田村「また、強みという点ではトロンのような干渉力が低いデッキには滅法強いです。除去が少ないため、コンボによる即勝ちも狙えます」

デッキリストの変化と工夫

──「このデッキはどのような過程を経て構築されたのでしょうか」

逸失への恐怖欠片の双子

田村「元々のエネルギーデッキへ《逸失への恐怖》を採用したのが始まりです。ルーティングとスタッツを評価しての採用でしたが、《欠片の双子》の解禁を受けてコンボが完成しました。成功率を高めるために梅雨払いとなる《思考囲い》や追加のコンボパーツである《村の鐘鳴らし》まで採用し、エネルギーツインへと至りました」

──「コンボデッキでもありながら、《村の鐘鳴らし》の採用枚数が2枚に抑えられているのはなぜでしょうか」

村の鐘鳴らし

田村《村の鐘鳴らし》は単体のカードパワーが低いためです。コンボ以外では攻めるにしろ守るにしろ力不足でして」

デッキ選択の理由

──「このデッキの選択理由を教えてください」

魂の導き手欠片の双子

田村「一言で表現するなら“万能”。どのデッキに対しても勝負でき、通常のビートダウンとコンボの2パターンの勝ち方がある。正直、自分はレガシーを主戦場としていて普段からモダンで遊んでいるわけではありません。不慣れなフォーマットで長期戦はしたくないというのが本音です。急角度から勝てる手段を模索した結果、エネルギーツインへと辿り着きました」

主要なデッキとの相性

──「今回のメタゲームブレイクダウンの上位デッキとの相性を教えてください。まずはディミーア眼魔からお願いします」

逸失への恐怖鏡割りの寓話

田村「単体除去と《思考囲い》のやり取りが中心となるマッチアップであり、エネルギーのミラーマッチと同じ感があります。アドバンテージ源となる《超能力蛙》《忌まわしき眼魔》をしっかりと除去できるか、自身の《逸失への恐怖》《鏡割りの寓話》が定着するかがキーポイントですね」

──「ミラーマッチにあたるエネルギーデッキはいかがでしょうか」

欠片の双子火の怒りのタイタン、フレージ

田村「エネルギーデッキのインスタントの除去は限られるため、コンボパッケージの分だけ有利だと考えています。単体でゲームを有利にすすめてくれる《鏡割りの寓話》が強く、タップアウトした隙に《火の怒りのタイタン、フレージ》が走れるかが焦点ですね」

──「では、攻めが早く太い《オパールのモックス》を得た親和はどうでしょう」

溶融

田村「解禁されたカードの中では一番注目されるかなと思い、万全の対策をしてきました。《溶融》を採用し、ボードを一掃できるようにしています」

──「最後にトロンやアミュレットに代表される土地系コンボについてもお願いします」

思考囲い欠片の双子

田村「ディミーア眼魔やエネルギーには対策され、ルビーストームとはスピード勝負となり、結果的に上位には残ってこないだろう考え切っています。速度的には不利となるため、《思考囲い》を絡めて時間を稼ぐことが最低条件です。時間さえ作れれば、《欠片の双子》コンボなどで勝負できますので」

──「これまで解説いただいた以外に特徴などありましたら教えてください」

逸失への恐怖栄光の闘技場火の怒りのタイタン、フレージ

田村「ミラーマッチが多いと読み、デッキ全体を重めに構築してカードパワーへ振り切ったリストにしています。具体的には《オセロットの群れ》の枚数を減らし、その分を《鏡割りの寓話》へと割り当てています」

田村《逸失への恐怖》は見た目以上に強く、土地が伸び、墓地が肥えたゲームでは《火の怒りのタイタン、フレージ》を墓地へと送り込みながら、即座に『脱出』できます。ここに昂揚と《栄光の闘技場》が絡めば戦場に出たときに3点、攻撃時の誘発型能力と戦闘ダメージ、さらに追加戦闘が可能となります。この噛み合い、グッドです」

サイドボードの気になるカード

──「サイドボードの《ドビンの拒否権》《隔離する成長》は珍しい選択ですね」

ドビンの拒否権隔離する成長

田村「自分は5色デッキをこよなく愛するプレイヤーでして、レガシーでも5色アルーレンや《有翼の叡智、ナドゥ》を使用しているほどなんです。過去にモダンでは《永遠の策謀家、ズアー》入りトライバルズーを使用しています。」

名前

田村「なので今回も何とか5色にしたくて、プレイアブルかつ足りない青と緑のカードを探していたところ、この2枚を見つけたわけです。《隔離する成長》に関しては、緑マナを支払うわけではないためちょっとインチキですけどね」

《欠片の双子》の行く末

田村は明朗快活にマルドゥエネルギーツインについて解説してくれた。かつてのモダンを代表したコンボとは似ても似つかない姿ではあり、カラーボードも違えど、その根幹にある4ターン目以降のタップアウトを咎める戦略はそのまま受け継がれていた。

マルドゥエネルギーツインと《欠片の双子》の可能性は、今後のトーナメントシーンで明らかになることだろう。

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