はじめに
みなさん、こんにちは。
大規模な禁止改定から1か月以上が経ち、MOとテーブルトップでいくつかイベントが開催されました。
今回の連載では、『第29期モダン神決定戦』とMOで開催された予選イベントの結果を見ていきたいと思います。
『第29期モダン神決定戦』 -新たなエネルギーの形-
開催日:2025年1月12日
優勝 Mardu Energy
3位 Dimir Oculus
4位 Affinity
5位 Mardu Energy
6位 Belcher
7位 Boros Energy
8位 Eldrazi
今年に入って初の大規模なイベントである『第29期モダン神決定戦』は、禁止改定後のトップメタであるDimir Oculusや、《オパールのモックス》をふたたび得たAffinity、Underworld Stationなどが結果を残していました。
《ベイルマークの大主》を採用した新しい形のMardu Energyも注目を集めました。Dimir OculusやBoros Energyに次いで高い使用率であり、その勢いのままに優勝しています。
禁止改定によって弱体化したと思われていたエネルギーデッキでしたが、新環境でもTier1級の強さのようです。
Mardu Energy
今大会で大活躍していた新型のMardu Energy。《色めき立つ猛竜》と《一つの指輪》が禁止になり弱体化を強いられたエネルギーでしたが、新たなアドバンテージ源として《ベイルマークの大主》が採用されています。
《溌剌の牧羊犬、フィリア》+《ベイルマークの大主》のシナジーを活用したOrzhov BlinkがMOで活躍していましたが、Mardu Energyに組み込まれた形を見るのは今大会が初で、SNSなどで日本国外のプレイヤーからも注目を集めていました。
☆注目ポイント
「兆候」でプレイした《ベイルマークの大主》を《溌剌の牧羊犬、フィリア》の能力でブリンクさせることによって序盤からクリーチャー化させることができ、テンポとアドバンテージを稼ぐことができます。カード4枚を切削する能力も、このデッキでは《火の怒りのタイタン、フレージ》を「脱出」させやすくなるため重要になります。
《溌剌の牧羊犬、フィリア》は《ベイルマークの大主》とのシナジーばかりに注目が行きがちですが、《ナカティルの最下層民、アジャニ》とも相性が良いため《色めき立つ猛竜》に代わる2マナ域のクリーチャーとして有力視されています。
新環境では、今大会で準優勝していたUnderworld Stationや、入賞していたBelcherなどのコンボデッキが散見されるため、《虚無の呪文爆弾》や《思考囲い》を使えるMardu Energyは有力な選択肢になります。
Dimir Oculus
禁止改定の影響を受けなかったDimir Oculusは、新環境で有力とされていたデッキで、今大会でも一番人気があったデッキでした。
クロックパーミッションやテンポデッキと呼ばれることも多いこのデッキですが、実際は相手によって異なる動きをします。
基本的には《思考掃き》や《考慮》などで墓地を肥やし、《発掘》によって《忌まわしき眼魔》を早い段階から展開していくリアニメイトのようなアプローチを取っていきます。一方コンボデッキに対しては、《超能力蛙》など軽いクロックをプレイしてカウンターでバックアップしていく戦略が効果的です。
☆注目ポイント
アドバンテージ&フィニッシャーとして機能する《超能力蛙》はこのデッキのキーカードであり、飛行を付与する能力のおかげで安定して攻撃を通すことができます。2ターン目に展開することで次のターンからはカウンターでバックアップしつつ、能力で墓地に捨てた《忌まわしき眼魔》を《発掘》でリアニメイトするという強力な動きも可能です。
《忌まわしき眼魔》は普通に手札からプレイすることも容易です。5/5・飛行という優秀なスペックなので単体でも数ターンでゲームを終わらせる強さですが、最大の強みは「戦慄予示」によって継続的にクリーチャーを盤面に並べられるところにあります。
相手にプレッシャーを与えつつ、クリーチャーデッキに対しては守りとしても役立ちます。1ターン目に《思考掃き》や《考慮》、諜報ランドによって墓地に落とすことで、最速2ターン目に《発掘》で釣り上げることが可能です。
メインから採用されている《海の先駆け》は特定のマッチアップで刺さるカードで、エルドラージや《ウルザの物語》対策として有用です。さきほどの《忌まわしき眼魔》と同じく《発掘》で2ターン目に展開できるので、相手の行動を制限しつつ《超能力蛙》など強力なクロックで速やかにゲームを終わらせられます。《海の先駆け》が強いマッチアップでは、事前に《沼》をサーチしておくプレイングも重要になってきます。
『Modern Super Qualifier』 -新環境でも最強はエネルギー-
開催日:2025年1月17日
優勝 Boros Energy
準優勝 Dimir Oculus
3位 Eldrazi Ramp
5位 Eldrazi Ramp
6位 Amulet Titan
8位 Eldrazi Ramp
先週末にMOで開催された予選大会は、参加者500名を超える大変長丁場なイベントでした。
優勝したのはBoros Energyで、禁止により弱体化したと思われたエネルギーでしたが、依然として環境のトップメタ級の強さです。
Eldrazi RampとUnderworld Stationは今大会で複数の入賞していました。Underworld Stationは《オパールのモックス》を最も有効に使えるデッキで、現環境におけるベストデッキのひとつと評されています。
Eldrazi Ramp
ここ最近のModern Challengeで結果を残していたEldrazi Ramp。1ターン目の《ウギンの迷宮》からタリスマンをプレイできるので、《まき散らす菌糸生物》など強力な4マナのエルドラージを最速で2ターン目からプレイすることができます。
ほとんど緑単ですが、除去のために赤、打ち消しのために青をタッチしています。それぞれエネルギー、コンボなど特定のマッチアップで使えるカードにアクセス可能になっているところが、このバージョンの特徴です。
☆注目ポイント
状況に応じたアーティファクトをサーチできる《大いなる創造者、カーン》は、アーティファクトの起動型能力を封じることができるため、Underworld StationやBelcherに対する偶発的な対策としても機能します。
《邪悪鳴らし》は必要なパーマネントを手札に加えつつマナ加速でき、墓地も肥やせるので《約束された終末、エムラクール》を軽いコストでプレイする助けにもなります。
《コジレックの帰還》はクリーチャーを並べてくるエネルギーとのマッチアップで必須になります。また、青をタッチすることでアドバンテージを稼げる《虚構漂い》や《記憶への放逐》を採用できます。これらはコンボやコントロール、ほかのエルドラージとのマッチアップで活躍する優秀なカードです。
Underworld Station
《オパールのモックス》の恩恵を強く受けたデッキで、アーティファクトを多く採用しているので「金属術」を達成するのも容易です。《オパールのモックス》が追加されたことで速度、デッキパワーの面で強化されており妨害への耐性も上がりました。
《死の国からの脱出》がある状態で《オパールのモックス》を《研磨基地》で生け贄にすると、切削により「脱出」コストをすぐに用意できるため、ふたたび《オパールのモックス》を墓地からプレイできます。これにより、《研磨基地》がアンタップするのでループが可能になり、最終的に《ぶどう弾》でゲームに勝利できます。
☆注目ポイント
《オパールのモックス》によって必要な色マナを捻出できるようになったため、《血染めの月》や《海の先駆け》といった特殊地形対策にも耐性が付きました。現環境トップメタのBoros EnergyとDimir Oculusがそれらを採用していることからも、マナアーティファクトの存在は重要です。
また《モックス・アンバー》と異なり、伝説のクリーチャーを用意する必要がないので安定してコンボを狙いやすくなりました。
《オパールのモックス》から赤マナが出るおかげで《ぶどう弾》がプレイしやすくなりました。また、《ぶどう弾》は《記憶への放逐》で「ストーム」の誘発ごと打ち消されても、《死の国からの脱出》があれば墓地から再びプレイできるため耐性があります。ピンチのときには除去としても機能し、《ドラニスの判事》のような厄介なクリーチャーを対処可能です。
禁止改定後の環境でもエネルギーは健在なため《紅蓮地獄》は必須となります。同様にエルドラージやアーティファクトデッキ用に《記憶への放逐》も必須のサイドカードです。
サイド後は相手も《石のような静寂》や《虚空の力線》など対策カードを複数投入してくるため、《自然の要求》や《原基の印章》など置物対策も欠かせません。《神秘を操る者、ジェイス》は相手の対策が増えるサイド後に、アドバンテージを稼ぎつつ追加の勝ち手段として機能します。
『Modern Qualifier』 -安定のDimir Oculus-
現環境最高のデッキと話題のUnderworld Stationが、今大会でも複数入賞しています。また、話題の《ベイルマークの大主》をフル搭載したOrzhov Blinkが5位入賞です。
今大会を制したのは、《虚無の呪文爆弾》をメインから採用したDimir Oculusでした。Underworld Stationや《火の怒りのタイタン、フレージ》を採用したデッキとのマッチアップで活躍したことが予想されます。
Orzhov Blink
『ダスクモーン:戦慄の館』はモダン環境に大きな影響を与えました。Orzhov Blinkもその恩恵を受けたデッキのひとつで、《ベイルマークの大主》はこのデッキをトップメタとも互角以上に渡り合えるほどの強さにまで押し上げました。
Orzhov Blinkは《悲嘆》が禁止になる前の環境で活躍していたRakdos Scamの亜種です。戦場に出たときの能力を持つクリーチャーをブリンクして、アドバンテージを得ることに重点を置いたミッドレンジで、《溌剌の牧羊犬、フィリア》を最も活かせるデッキでもあります。
☆注目ポイント
《ベイルマークの大主》は2マナで「兆候」できるので、最速3ターン目から《ちらつき鬼火》や《溌剌の牧羊犬、フィリア》でブリンクすることでクリーチャー化できます。墓地が肥えるので《骨の皇帝》とも相性が良く、リアニメイトしたクリーチャーを《儚い存在》などでブリンクさせることで戦場にキープする動きも可能です。
このデッキは《白蘭の幻影》+《溌剌の牧羊犬、フィリア》による土地破壊プランもとることができ、エルドラージやAmulet Titanなどに対しても上手く立ち回ることができます。
《護衛募集員》はアドバンテージを生み出す優秀なクリーチャーで、《孤独》や《フェアリーの忌み者》《戦争の報い、禍汰奇》《疫病を仕組むもの》など、サイドボードのカードを状況に応じてサーチしながら戦えます。
《溌剌の牧羊犬、フィリア》や《ちらつき鬼火》とも非常に相性がよく、サーチした《溌剌の牧羊犬、フィリア》で《護衛募集員》をブリンクすることでさらなるアドバンテージを稼げます。
総括
禁止改定後のモダンでも、エネルギーデッキはトップメタの一角として活躍しています。『第29期モダン神決定戦』では《ベイルマークの大主》を搭載した新しいバージョンのMardu Energyが結果を残していました。
ほかにはDimir Oculus、Eldrazi Ramp、Underworld Stationといったデッキが上位でよく見られます。特にUnderworld Stationは、解禁された《オパールのモックス》によって大幅に強化されたデッキで、人気があるアーキタイプになっています。
USA Modern Express vol.127は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!