きたしまの『プロツアーへの道』~初めての『チャンピオンズカップファイナル』参加レポート~

晴れる屋メディアチーム

初めてのチャンピオンズカップファイナル

きたしま:みなさん、こんにちは。晴れる屋のきたしまです。

■人物紹介:きたしま

きたしま: 晴れる屋商品管理チームスタッフ。高校3年の冬に『ワールド・マジック・カップ2017』を見てマジックの魅力にのめり込む。現在、競技マジックに挑戦する様子を記事にした「きたしまの『プロツアーへの道』」を連載中。

先日幕張メッセで開催された『プレイヤーズコンベンション千葉2025』にて、『チャンピオンズカップファイナルシーズン3 ラウンド2』に参加してきました!

『チャンピオンズカップファイナル』は全国のエリア予選やプレミアム予選など、各予選を突破したプレイヤーが参加できる競技イベントで、今大会には242名が参加しました。大会は1日目にスイスドロー7回戦を行い、その上位64名が2日目に進むことができます。

そして2日目を終え、最終順位が16位以上のプレイヤーには、競技マジックの最高峰『プロツアー』の出場権が与えられます!

『プロツアー』に出場するために最もシンプルでわかりやすいルートが、この『チャンピオンズカップファイナル』で上位16名に入ることなのです。

きたしまも『プロツアー』という夢の舞台にあこがれ、1年前から競技マジックに本気で取り組むようになりました。そして昨年11月にエリア予選を突破し、今回が初めての『チャンピオンズカップファイナル』出場です。これまでの道のりについてはぜひ、過去記事もご覧ください。

全国の予選を勝ち抜いた242名の強者たち。自分もそのうちの1人だと意気込み、会場近くのホテルに前日入りまでして臨んだ今大会。

ホテルの部屋でやるMagic Online、ちょっと憧れてました。

きたしま:直前のリーグは4勝1敗か~。デッキはそんなに悪くなさそうだな。

きたしま:明日の目標はもちろんプロツアー権利のある16位以上だけど、さすがに初参戦でそれはできすぎか……?頑張って2日目には進出したいな~、日曜のスタンダードオープン予約してないし!

期待と緊張が入り混じる中で迎えた大会当日。7回戦を戦ったきたしまの最終戦績は……

Meleeより

1勝6敗、大敗でした。

デッキ選択

さかのぼること1か月前。12月の禁止改定でモダン環境は一時お祭り状態となっていましたが、1月に入り少しずつメタゲームも定まってきていました。

1月12日の『第29期モダン神挑戦者決定戦』では、エネルギーデッキとディミーア眼魔がメタゲームの中心に。エネルギーデッキの中では《溌剌の牧羊犬、フィリア》《ベイルマークの大主》を採用した新型のマルドゥエネルギーが台頭し、そのまま神挑戦者決定戦を優勝しました。

溌剌の牧羊犬、フィリアベイルマークの大主

この大会では、きたしまも同じく《ベイルマークの大主》入りのマルドゥエネルギーを使用したのですが……ミラーマッチで有効なはずの《ベイルマークの大主》がまったく活躍しないままボロスエネルギーに連敗し、早々にドロップ。

魂の導き手オセロットの群れ敏捷なこそ泥、ラガバン電気放出

ボロスエネルギーが1マナのカードを連打してテンポよく動いてくる中、2マナのソーサリーアクションで盤面に影響を及ぼさない《ベイルマークの大主》のテンポ損は、相手に付け入る隙を与えてしまいます。

神決定戦にまで勝ち上がったデッキですから、デッキパワーは折り紙つきです。しかしエリア予選突破時のマルドゥエネルギーのような、キビキビと動いていける要素は薄くなっているように思えました。むしろ現在のボロスエネルギーのほうが、以前のマルドゥエネルギーのような軽快さを感じます。

さらにその2週間後、チェコのプラハで開催されたヨーロッパの地域チャンピオンシップ※1では、ボロスエネルギーの使用率が全体の25%を占めていました。

(※1:『チャンピオンズカップファイナル』は日韓の地域チャンピオンシップにあたります)

もともと海外大会やMagicn Online上ではボロスエネルギーの方が人気でしたが、この大会ではマルドゥエネルギーとの使用者数に10倍近い差があります。これだけのプレイヤーがボロスを選択している背景には、あるデッキの台頭も絡んでいると考えられました。

死の国からの脱出研磨基地まき散らす菌糸生物約束された終末、エムラクール

脱出基地、そしてエルドラージです。

どちらのデッキも以前からメタゲーム上位に存在していましたが、1月の中旬からMagic Onlineでの入賞数が爆増していました。

プラハの地域チャンピオンシップのメタゲームブレイクダウンを見ると、この2デッキの勝率が抜けて高いことがわかります。そしてこの大会の決勝は脱出基地 vs. エルドラージのマッチアップになり、脱出基地を使ったAlex Rohanさんが優勝しました。

いくらデッキの乗り換えが(金銭的に)大変なモダンといえど、ここまではっきりと「脱出基地とエルドラージが強い」という回答を出されたら、日本のメタゲームに影響が出るのは必至でしょう。モダン神挑戦者決定戦ではどちらも少数勢力でしたが、競技プレイヤーなら乗り換える人も多いのではと思いました。

それまで環境のトップだったエネルギーデッキは、苦手なマッチもデッキパワーで押し通している側面が大きく、脱出基地やエルドラージランプには苦戦を強いられます。脱出基地とエルドラージをどう対策するのか、または使う側に回るのか。

きたしま:ちょうどそのくらいの時期に、エネルギーがフル拡張になったのでエネルギー続投になりました🐱

……ということで対策する側に回ることに(さすがにデッキの乗り換えはいろいろと難しかったです)。

敏捷なこそ泥、ラガバン

ボロスエネルギーにメインから複数採用されている《敏捷なこそ泥、ラガバン》は、除去の少ないデッキに対して有効な1枚。

1ターン目からクロックを刻みつつ、相手を妨害するために必要なマナとカードアドバンテージ(不確定)を同時に供給してくれます。2ターン目に《摩耗/損耗》を構えながら《ナカティルの最下層民、アジャニ》を展開したい、なんてわがままを可能にしてくれるすごいやつ。

思考囲い

マルドゥエネルギーで採用される《思考囲い》はどうでしょうか。相手の手札を確認できるという点は黒の手札破壊ならではの強みです。しかし、現状のモダンではあまりプレイしたくないカードだなと自分は感じました。

変容する森林死の国からの脱出運命を貪るもの

脱出基地に対しては、序盤に《思考囲い》で落とした《死の国からの脱出》《変容する森林》にコピーされたり、こちらの《石のような静寂》を守るために相手の《自然の要求》を落としたら《死の国からの脱出》で墓地から唱えられてしまったり。エルドラージに対しても、相手のデッキの中にはトップデッキして強いカードがあまりに多すぎます。

以上の点を踏まえ、《敏捷なこそ泥、ラガバン》をメインからプレイできるボロスエネルギーを使うという結論になりました。

魂の導き手オセロットの群れ敏捷なこそ泥、ラガバン

1マナ連打でガンガン攻めるぜ!

直前の変更点

ボロスエネルギーを使うと決めたはいいものの、いくつか気になるところがあります。

超能力蛙忌まわしき眼魔

プラハの地域チャンピオンシップで114名が持ち込み、使用率2位だったにもかかわらず2日目進出者がわずか5名だったディミーア眼魔。エリア予選でも使用者の多いデッキでしたが、プラハの結果を受けて少し減る可能性もあると思っていました。

害獣駆除

しかし『チャンピオンズカップファイナル』の1週間前、高橋 優太さんが『Modern Challenge』で入賞した《害獣駆除》入りエスパー眼魔が注目を集めます。雲行きが怪しかったディミーア眼魔が復活したことで、ファイナルでもガードを下げることはできなくなりました。

魂の導き手オセロットの群れ静牢岩への繋ぎ止め

この《害獣駆除》はエネルギーにとってかなり厄介でした。《魂の導き手》《オセロットの群れ》という2種の1マナクリーチャーで相手の《呪文嵌め》をかいくぐりながら、《静牢》《岩への繋ぎ止め》《薄氷の上》のような1マナのエンチャントで相手の脅威を捌くのが主なプランだったためです。攻めと守りの札を《害獣駆除》1枚で完封されてしまいます。

除霊用掃除機

ボロスエネルギーがサイドに用意している墓地対策が《除霊用掃除機》という点も気がかりでした。メインサイド合わせて3~4枚の《害獣駆除》を用意している相手に対し、1マナの置き物である《除霊用掃除機》をサイドインするのはむず痒い気持ちになります。

虚無の呪文爆弾

そこで、より強力な墓地対策である《虚無の呪文爆弾》を採用することで、エスパー眼魔へのガードを上げつつ《害獣駆除》に耐性をつけられると考えました。マルドゥエネルギーを使用しているころから《虚無の呪文爆弾》にはお世話になっており、相手の墓地だけ全追放でき、黒マナを払えばドローもついてきます。エネルギーミラーで《火の怒りのタイタン、フレージ》の「脱出」を防ぎながらドローしたい!

神無き祭殿血の墓所薄暗い裏通り

ボロスエネルギーを使うと決めて一度ストレージにしまった黒い土地を再び引っ張り出しました。手放さないでおいて良かった……!

黒曜石の焦がし口

また、エルドラージ対策としてサイドに3~4枚取られている《黒曜石の焦がし口》の採用もだんだん怪しく思えてきました。

きたしま:早いターンから出せれば強いけど……リスト公開制のファイナルだと対戦相手は《ウギンの迷宮》とか《エルドラージの寺院》を後ろのターンにプレイしてくるんじゃないか?

きたしま:2マナランドじゃなくて《楽園の拡散》とか《衝動のタリスマン》でマナ加速してきたときに、《黒曜石の焦がし口》じゃ心もとないな……

石の雨

なにか良いカードはないかと探しているとき、サイドに《石の雨》を採用しているエルドラージを発見。4/4・飛行のクロックはついてきませんが、確実に土地を破壊できる点に魅力を感じ、《黒曜石の焦がし口》と散らして採用してみることに。《溶鉄の雨》にするか悩みましたが、前述の《虚無の呪文爆弾》採用のためにマナベースを少し変えているため、安定してプレイできそうなほうを選びました。

しかし、これら《虚無の呪文爆弾》《石の雨》の採用を決めたのはデッキ提出の2日前。そのころには『霊気走破』の発売準備で練習時間の確保が難しくなっていたため、実際の使用感は本番で試すことに……。

『こういう直前のリスト変更ってだいたい良くならないんだろうな~』と薄々感じながらも、タッチ黒のボロスエネルギーでデッキ登録を済ませました。

大会結果

そして迎えたチャンピオンズカップファイナル当日。

海浜幕張駅から少し歩いて会場となる幕張メッセのホールに到着。この一番左奥のスペースで、プロツアー出場権利を懸けた戦いが始まります。

エリアは柵で仕切られており、出場者しか入ることができません。その柵の中に初めて足を踏み入れました。

いつか自分もつけたいと思っていた出場者用のネームタグ。『チャンピオンズカップファイナル』に出ているということを最も実感できた瞬間かもしれません。

思ったより緊張していなかったこともあり、初戦から落ち着いてプレイできそうだなと感じていました。が……

■対戦結果

R1:ジェスカイエネルギー ××
R2:ボロスエネルギー ××
R3:ルビーストーム ××
R4:ハンマータイム 〇×〇
R5:ジェスカイコントロール ×〇×
R6:ドメイン・ズー ×〇×
R7:親和 〇××

惨敗……!

初っ端からエネルギーミラーで連敗したあと、3回戦で不利なルビーストームに当たってしまい3敗。5勝2敗が2日目進出のためのボーダーラインとされているため、1ゲームも取れないまま初日敗退が確定してしまいました。

4回戦でようやく白星を上げたものの、その後も勝ち切ることができず。初めての『チャンピオンズカップファイナル』は大敗で幕を閉じました。

反省点

①ミラーマッチの練習不足

ここまで記事を読んだ方ならお気づきかもしれませんが、最も使用者が多くなりそうなエネルギーのミラーマッチを見越した練習がほとんどできていませんでした。

エネルギーのミラーマッチは「相手だけアジャニボンバー」「相手だけ督励フレージ」というボヤキをよく聞くように、先手後手や引きに左右される面も大きいとされています。

しかし、それはちゃんとミラーマッチを練習したプレイヤーに限った話だと思います。

電気放出

初戦のジェスカイエネルギー戦。後手のきたしまの手札に《電気放出》《静牢》のような除去はありませんでしたが、《魂の導き手》《ナカティルの最下層民、アジャニ》《鏡割りの寓話》があるからという理由でキープを宣言。

魂の導き手魂の導き手

その結果、相手の《魂の導き手》連打をノーガードで受け入れることになり、飛行クロックが止まらずに敗北。リスト公開制で相手がエネルギーデッキとわかっているのに、マリガンで除去を探しにいかなかったことが負けに繋がりました。

ミラーマッチの後手で除去が必要なことは理解していたつもりです。しかし練習を十分に積んでいなかったことで除去0枚でキープすることのリスクを自分の中に落とし込むことができていませんでした。

②直前のリスト変更

虚無の呪文爆弾除霊用掃除機

直前になって《除霊用掃除機》の枠と入れ替わった《虚無の呪文爆弾》ですが、《除霊用掃除機》のほうが良かったかもなと思う場面がいくつかありました。

歴戦の紅蓮術士

《歴戦の紅蓮術士》はリソースが枯渇する終盤になればなるほど強いカードですが、墓地からトークンを生成する能力は5マナと少し重め。しかし《ゴブリンの砲撃》との組み合わせが強力すぎるため、なるべく墓地から取り除いておきたい対象です。

もし《除霊用掃除機》だったら隙を見て追放するだけでいいのですが、《虚無の呪文爆弾》は使い切りの墓地掃除。できればフィニッシャー級の《火の怒りのタイタン、フレージ》を追放したいところですが、《歴戦の紅蓮術士》のために起動しても大丈夫なのか?という難しい判断を迫られます。

忌まわしき眼魔

《忌まわしき眼魔》へのガードを上げる』という点で《虚無の呪文爆弾》の採用は悪くなかったと思いますが、当日対戦する数は最大母数のエネルギーよりも少ないと見るべきでしょう。むしろエネルギーデッキに対して《虚無の呪文爆弾》《除霊用掃除機》どちらが有効か、という検証をまったくしなかったのは良くない点でした。

③人の配信や大会結果だけ追って”やった”気になるな!

本質の摘出

今回一番良くなかったなと思っているのがこれです。自分は調整仲間や一緒に競技イベントに出る友人がいないため、自分より上手い人の配信を見ることや、最新の大会結果を追うことでメタに追いつこうとしています。言うなれば、自分が持っているものだけで練習の”質”を上げることが難しいため、ほかの手段で質を良くしようとしていました。

実際、今回のファイナルに向けたエリア予選では、プロのデッキをいち早くコピーして一発抜けしたという事実があります。

しかし今大会で惨敗したことで、「量をやって初めて質が生まれる」ということが身に染みてわかりました。自分はまだ全然練習が足りていない、自分1人でできる限界まで練習して初めて質の話になるのだと思います。

これからの競技マジックは、まず量をこなすことを第一にして練習していくつもりです。

実りのある2日間

会場ではHareruya Prosの松浦さんに初めて挨拶させていただきました。今の自分が悩んでいることや課題についてお話しして、とても真摯に答えていただきました。ボロスエネルギーで本戦を1-6したことを伝えると、

松浦プロ:モダンはそういうもんだし仕方ないとこもあるよ。負けたらラーメンでも食べて忘れることも大事!

と優しくフォローをいただきました。松浦さん、ありがとうございました。いつか松浦さんに追いつけるよう、行きつけのラーメン屋さんもチェックしておきます!プロツアーも応援しています!

プレイヤーズコンベンションの会場を後にしたきたしま。いつもなら一人で帰宅する流れですが、その日は西船橋にいました。

今回のファイナルで知り合った、同い年の競技マジックプレイヤー2人に誘われて焼肉へ!

自分の過去記事を読んでくれていたらしく、たまたま対戦したMagic Onlineのチャットで話かけてもらったことをきっかけに今回誘っていただきました。

これまでのマジック人生では、基本的に一回り年上の方と接する機会しかありませんでした。こうして同い年のプレイヤーとお酒を飲みながら、マジックの話をできたことは本当に嬉しかったです!

おわりに

モダンの『チャンピオンズカップファイナル』が終わったばかりですが、次の予選はすでにもう始まっています。

というか、あと2週間で店舗予選期間は終わってしまいます!

竜航技師アフターバーナーの専門家

3か月ほどスタンダードに触れずモダンしかやっていなかったので、当然エリア予選の権利は持っていません。まずは先日の『ジャパンスタンダードカップ』で準優勝したグルール昂揚から回してみようかなと思っています。

以上、『チャンピオンズカップファイナルシーズン3 ラウンド2』の参加レポートでした。

初めてのファイナルは上手くいかない結果に終わりましたが、得たものも非常に多い大会でした。再びこのチャンピオンズカップファイナルに戻り、プロツアー出場という夢を叶えるため、今後も全力でチャレンジしていきます!

長くなりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました!また次の予選会場でお会いしましょう!

この記事内で掲載されたカード

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