こだわりのボロス召集で挑むプロツアー『霊気走破』

松浦 拓海

はじめに

こんにちは、Hareruya Prosの松浦(@ura_frst)です。

今回は2月21-23日にシカゴで行われたプロツアー『霊気走破』に参加してきました。恒例の「森山ジャパン」メンバーとの練習過程やデッキ選択理由、大会当日を振り返っていきます。

もちろん優勝を目指してはいますが、前回のプロツアー『モダンホライゾン3』で獲得した精算マッチポイントを参照して、次々回のプロツアー権利が確定する10勝6敗以上を目標に練習をしていました。

ドラフト練習

今回はいつも以上に準備期間が短く、MTGアリーナに実装されてから1週間で出発というハードスケジュール。

憑りつかれた地獄車両ガイドライトの道拓き不朽の高位僧
推進力強化帆船クラウドスパイアの飛空二輪車

緑が強い環境というのは理解していましたが、実際にドラフトを数回やった感想としては、緑以外でも青黒、白青のアーティファクト系、白黒の「最高速度」、青赤ディスカード系、赤白「機体」「乗騎」アグロ、などアーキタイプごとの強弱はあるものの、上下と協調してマルチなど強力なカードがしっかりとれていれば、どんなアーキタイプでも2-1を狙うことができると感じました。

なので、いつものように戦略を絞って準備するのではなく、序盤のピックを意識しすぎずに、流れてきたカードから空いている色に飛び込むことを意識して練習をしました。

スタンダード練習編:デッキ選択理由

今回は『霊気走破』がMTGアリーナに実装されてから出発まで1週間という過去最短の準備期間だったので、スタンダードは前環境からの自分好みのデッキであるグルール果敢やジェスカイ召集を軸にしつつ、新カードの入ったデッキで良いものがあれば試していこうと考えて練習をしていました。

ウェイストウッドの境界屑転がし竜航技師咆吼部隊の重量級

新カードが入ったデッキとしては、境界ランドや《屑転がし》が入ったゴルガリミッドレンジや、新カード満載のゴブリンなどを回しましたが、既存のデッキが強すぎて断念しました。

この町は狭すぎる心火の英雄ホーントウッドの大主

数日ランクマッチを回した感覚から、3強とされるエスパーピクシー・グルール果敢・オーバーロードの使用率はプロツアーでも高いだろうと考えました。

脚当ての補充兵名もなき都市の歩哨

そこでグルール果敢を使ってみたものの、エスパーピクシーを意識した《脚当ての補充兵》《名もなき都市の歩哨》などがランプやミラーマッチであまり強くなく、マナベース的にもギリギリであまりいい感覚を得られませんでした。

かといってそれらのクリーチャーを不採用にすると、エスパーピクシーにボコされるジレンマ。グルール果敢に関してはあまり良い構築が自分の中で思いつかず、使用を断念しました。

上機嫌の解体イーオスの遍歴の騎士

もうひとつの使用候補の召集デッキは、マナベースや安定感に不安はあるもののエスパーピクシーにはとても有利で、オーバーロードにはカウンターで全体除去を防げればそのまま勝つことができるのでやや有利ぐらいの印象でした。

幽霊による庇護叫ぶ宿敵

あとはグルール果敢に対しての戦い方だけ何とかできればというところでしたが、サイドからの《幽霊による庇護》《叫ぶ宿敵》でなんとか勝負にはなると感じたので本番で使用することにしました。

チームで使用する人が多くいたジェスカイ眼魔を使用することも検討したのですが、プレイングが難しそうだったのと、召集デッキに大きな不満はなかったので自分を信じてそのままこのデッキを選択しました。

ボロス召集解説

デッキリストページ

本番では↑のリストを使用しましたが、提出の前日まではこのジェスカイ召集を使用する予定でした。

デッキリストページ

直前でオーバーロードに採用されている全体除去が、《太陽降下》から《審判の日》《害獣駆除》に切り替わっていたことで、カウンターではなく《ゴバカーンへの侵攻》でも対応可能だと考えました。

ジェスカイ召集は青赤ランド2枚でキープすることができずにマリガンする機会が多かったので、可能であれば2色にしたいと考えていました。マリガンをしないことは、ハンデスをしてくるエスパーピクシーへの勝率が大きく上がります。2色にすることでエスパーピクシーへの取りこぼしが減り、結果的に本番でも勝利することができました。

あとはほとんどが既存のリストと同じなので、こだわった構築ポイントと試して使わなかったカードに触れていきます。

構築ポイント

《入れ子ボット》

入れ子ボット

《塔の点火》《切り崩し》が当たってしまうので《上機嫌の解体》を打ち込む対象としては不安があり、2ターン目に《イーオスの遍歴の騎士》をプレイできる手札でも、1マナ立ってる相手に飛び込めないのが弱点です。

毅然たる援軍イモデーンの徴募兵

ただ、メリットとして《害獣駆除》《審判の日》を撃たれたあとも1体トークンが出るので、終了ステップに《毅然たる援軍》追加からの《イモデーンの徴募兵》などでギリギリ数点足りたみたいなことも発生します。

遠眼鏡のセイレーンヴォルダーレンの美食家スレイベンの検査官

弱いカードではないものの、《遠眼鏡のセイレーン》やスタンダード落ちしてしまった《ヴォルダーレンの美食家》やパイオニアに存在する《スレイベンの検査官》の下位互換だと感じています。

今回はボロス2色のため4枚採用しました。ジェスカイなら1マナ域の追加として1~2枚採用するのがよいと思います。

《ドラゴンの餌》

ドラゴンの餌

ゴブリンデッキを回していたときにスタンダードに再録されていたことを知ったカード。

門道急行の事件

2ターン目《イーオスの遍歴の騎士》にはまったく貢献してくれませんが、3ターン目であれば確実なものにしてくれます。エスパーピクシーにも強力なカードで、1枚で2枚分のクリーチャーになるので《門道急行の事件》を軸に戦いやすくなります。

今回はメインデッキではエスパーピクシーを意識して、サイドボードはオーバーロードと果敢を意識するという考えでデッキを組んだので、安定感を意識してこのカードを採用することにしました。

《戦導者の号令》

戦導者の号令

《イーオスの遍歴の騎士》などのブン回りでなくても、戦場に置ければクリーチャーを出しているだけでフィニッシャーになるのでキープ基準になります。サイド後は戦い方を変えたりするのでよく抜きますが、1本目の勝利貢献度が高かったので2枚採用しました。

試したけどメインデッキに採用しなかったカード

《幽霊による庇護》

幽霊による庇護

グルール果敢以外には弱く、初手に来たときはマリガンの理由になりやすいカードです。クリーチャー以外のカードはマリガンを考慮する原因になるので、メインデッキにはあまり入れたくありません。今回は3強と考えていて、グルール果敢がそこまで多くはないと考えていたのでサイドボードのみの採用にしました。

《威厳あるバニコーン》

威厳あるバニコーン

単体の打点が高くてまぁまぁ使用感はよかったのですが、1ターン目に《ひよっこ捜査員》、2ターン目に《威厳あるバニコーン》だと《逃げ場なし》で処理されてしまうので、2ターン目に出すのはあまりよくないと感じました。

2ターン目の動きとしては、3ターン目《イーオスの遍歴の騎士》に貢献しやすい《ドラゴンの餌》のほうが価値が高いと感じたので、そちらを優先することに。グルール果敢には火力で処理されにくく、《幽霊による庇護》のつけ先として適しているので果敢デッキを意識するならアリです。今回はエスパーピクシーのほうが多いと思ったので採用しませんでした。

大会当日

1日目

ドラフト

地区のマスコット砂丘の危険ガスタルの略奪者

初手で《地区のマスコット》をピックし、早めに《砂丘の危険》などを取って緑はやれそうな雰囲気でしたが、2色目が決まらず黒の《ガスタルの略奪者》をピック。このカードで除去を抜いて、緑の良質な攻め手を展開していくことをイメージしてピックしていき、マルチの《轟雷のブルードワゴン》などもピックできてよい感じだったのですが、欲しかった《轢殺》《スピン・アウト》が目の前を通過せず……

渡りをするケトラドン

緑黒は良質なクリーチャー+除去が求められると思っています。今回のデッキには除去が少なく、ピックを終えたときに大ピンチだと思ったのですが、通称《蜂蜜マンモス》といわれる《渡りをするケトラドン》などのカードを出して横にしていたら2-1できました。この環境の緑の強さを改めて感じましたね。

スタンダード

■対戦結果

ジェスカイ召集 ××
アゾリウスコントロール ×〇×
エスパー《セラの模範》 ×〇×
エスパーピクシー 〇×〇
ジェスカイモニュメント 〇×〇

ドラフトは2-1したものの、ミラーマッチに負けたあと構造的に不利そうなデッキに2連敗して初日落ちかと思いましたが、なんとか持ちこたえて4勝4敗で初日を抜けることができました。

2日目

ドラフト

※後日撮影のため一部違うかも

アラクリアの魂、ラゴリンボヤージャーの急速溶接機

初めての10人卓でした。3手目あたりの《アラクリアの魂、ラゴリン》から緑白に突っ込んでいきました。レアは複数入っているものの2マナ域が若干少なく、3マナもあまりデッキにあっていない《ボヤージャーの急速溶接機》など攻めとしては微妙なカードも入ってしまい、完成度の低めな緑白になっています。

忍耐の記念碑エルフの補給者竜航技師

1回戦は《忍耐の記念碑》2枚の青赤に一瞬でボコされて、3回戦はレア満載のデッキから《エルフの補給者》がいる状態で《竜航技師》が出てきて、毎ターン「消尽」能力でドラゴンを出され止めることができずに敗北。残念ながら1-2となってしまいました。

スタンダード

■対戦結果

ジェスカイ眼魔 〇×〇
エスパーピクシー 〇×〇
ジェスカイ召集 〇××
ディミーアエンチャント ××
ゴルガリ抹消者 〇×〇

最終的にドラフト3-3、構築5-5のトータル8勝8敗で終えました。

反省と振り返り

構築に関しては、ほぼ運ゲーと言ってもいいジェスカイ召集ミラーで2敗、ド不利なコントロールに当たって2敗などあまりついてなかったとは思うのですが、まぁこんなもんかなといった感想でした。

召集デッキはどうしても運要素が強くなってしまうので、もう少しグルール果敢などの赤アグロを諦めずに調整するべきだったと思いました。特にトップ8に残った赤単は、自分がグルールに感じていた不満が解消されていて魅力的に感じました。今後もスタンダードのイベントは多いので回して理解していこうと思います。

デッキリストページ

ドラフトの反省としては、いろいろな戦略を理解しようとして、すべてが中途半端になってしまったように感じます。今までは初手に出たカードから、自分の用意した数パターンの戦略に切り込んでいくスタイルを取っていたのですが、今回は上で書いているように全部それなりに良い戦略に感じてしまい、いろいろやった結果完全に理解度不足になってしまいました。

練習では最弱と言われている赤白で2-1したり、手ごたえのある瞬間はあったのですが、プロツアーが終わってこの記事を書いている今でもまだ、この環境のドラフトを理解できている自信がありません。

次回以降はこのぐらい準備時間がない場合、今まで通り戦略を絞ってやっていくことにしようと思いました。

目標の10勝6敗まで2勝足らずだったので、次回の『マジック:ザ・ギャザリング—FINAL FANTASY』のプロツアーで5勝以上しなければ、プロツアー継続参戦が途切れてしまうピンチになってしまいました。

初日さえ抜ければいけそうな数字ではありますが、そういう弱気なときほど勝てないのがマジック。気を引き締めて次回のプロツアーに向けて日々やっていこうと思います。

最近配信にも力を入れているので、ぜひ覗きに来てください!それでは!

松浦 拓海 (X/Twitch)

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松浦 拓海 プロツアー『霊気紛争』でプロシーンにデビュー。 アグロデッキを得意とし、そのスタイルに磨きがかかると、2022-2023シーズンでは破竹の勢いで勝利を重ねていく。 エリア予選を赤単アグロで、チャンピオンズカップファイナル サイクル1を白単人間で突破すると、プロツアー・ファイレクシアでも同じく白単人間で自身初となるトップ4に入賞。店舗予選から一気に世界選手権の権利まで獲得し、スター選手の仲間入りを果たす。 また、同シーズンの全プロツアーで2日目に進出しており、安定感のある実力者であることを証明した。 松浦 拓海の記事はこちら