『第30期スタンダード神決定戦』を振り返る
こんにちは。晴れる屋メディアの紳さんです。

先日、『第30期スタンダード神挑戦者決定戦』が開催され、178名と多くのプレイヤーが参加するなど、大盛況でした。
優勝したHareruya Prosの平山 怜さんは勢いそのままに、神決定戦でも勝利し、あらたなスタンダード神 となりました。
今回は大混戦となったスタンダード神のメタゲームを振り返りながら、注目のデッキを紹介していきます!
『第30期スタンダード神挑戦者決定戦』
大会結果はこのようになりました。トップ16までを紹介します。
『第30期スタンダード神挑戦者決定戦』
優勝 アゾリウス全知
準優勝 オーバーロード
トップ4 ジェスカイ眼魔
トップ4 ディミーアミッドレンジ
トップ8 ゴルガリ機体
トップ8 アゾリウス全知
トップ8 ディミーアミッドレンジ
トップ8 グルール昂揚
トップ16 オーバーロード
トップ16 ボロスハツカネズミ
トップ16 エスパーピクシー
トップ16 ボロスハツカネズミ
トップ16 オーバーロード
トップ16 グルール果敢
トップ16 ジェスカイ眼魔
トップ16 ゴブリン
優勝はアゾリウス全知、準優勝はオーバーロードという結果になりました。
メタゲームブレイクダウン
アーキタイプ | 使用者 | 使用率 |
---|---|---|
エスパーピクシー | 19 | 10.11% |
赤単 | 16 | 8.51% |
オーバーロード | 15 | 7.98% |
グルール果敢 | 15 | 7.98% |
アゾリウス全知 | 15 | 7.98% |
アゾリウスコントロール | 13 | 6.91% |
ジェスカイ眼魔 | 12 | 6.38% |
ディミーアミッドレンジ | 10 | 5.32% |
ゴルガリミッドレンジ | 10 | 5.32% |
ボロスハツカネズミ | 7 | 3.72% |
つづいて、メタゲームの分布です。シェア率順に上位10アーキタイプを表示していますが、ご覧のように大混戦となりました。
アグロ・ミッドレンジ・ランプ・コントロール・コンボと、バランスよく使用されているようです。
上位人気のアーキタイプのうち、赤単とアゾリウスコントロールはトップ16に残れず、という結果となっております。
それでは、今大会で活躍したデッキをチェックしていきましょう。
アゾリウス全知
Hareruya Prosの平山 伶さんが使用し、優勝したアゾリウス全知のリストです。神決定戦も制しています。
やや手順は複雑ですが、切削やルーティングによって墓地に落とした《全知》を《アブエロの覚醒》で釣り上げることで、おおむね勝ちとなるコンボデッキです。
- 2025/03/06
アゾリウス全知
着地したら即勝利!好きなカードを好きなだけプレイできる夢のデッキ
挙動について詳しく知りたい方は、ぜひデッキ紹介の記事をご覧ください。
コンボパーツが3枚と多いものの、デッキのほとんどが「別のカードを探すために使用できるカード」で占められているため、実質的に墓地の《全知》と手札の《アブエロの覚醒》が揃えばコンボを始められる点が使いやすく、最速4ターン目のコンボ成立が現実的に狙えます。
特に『霊気走破』で《食糧補充》を獲得できたのは大きく、1度や2度の妨害は補充したリソースで簡単に乗り越えてしまうことでしょう。
また、平山さんのリストは《門口の断絶》で2/2のクリーチャー・トークンを無限に用意し、打ち消しを抱えた状態で対戦相手に一度、ターンを返すという勝ちパターンと、《長川の引き込み》の「贈呈」で対戦相手にカードを無限に引かせてライブラリーアウトさせる勝ちパターンの2つが用意されています。
《長川の引き込み》による勝利手段
《アルケヴィオスへの侵攻》2枚と《この町は狭すぎる》が揃えば、墓地やサイドボードのカードを好きなだけ回収できるため、適当な呪文を唱え、それを贈呈込みの《長川の引き込み》で打ち消す、といったことを無限に繰り返すことができます。
贈呈は「強制的なドロー」であるため、対戦相手はすべてのカードを引き切った上で、ライブラリーアウトで敗北となります。
《門口の断絶》と《長川の引き込み》はどちらも《安らかなる眠り》や《除霊用掃除機》といった墓地対策カードを対処できるため、いざとなればサイドインできるプレイアブルな勝ち手段です。
この構築方針であればサイドボードに《ネットワーク呪詛》や無駄な火力呪文を採用する必要がなく、「サイドボードの枠をすべて有効なカードで埋める」ことが可能となります。
また、レアケースですが、墓地にある《門口の断絶》や《長川の引き込み》を《アルケヴィオスへの侵攻》で戻そうとした瞬間にスタックで追放されるといったトラブルが発生したとしても、どちらか1枚がライブラリーかサイドボードに残っていれば問題なく勝利できる点も優れています。
オーバーロード
BIGsの中道 大輔さんが使用し、準優勝したオーバーロードのリストです。
《豆の木をのぼれ》によるリソース獲得、《力線の束縛》によるパーマネント対処、《ミストムーアの大主》による盤面制圧と、カードパワーであらゆるデッキをねじ伏せます。
タップイン土地が多く、やや遅いデッキではあるものの、《永遠の策謀家、ズアー》が着地すればライフレースを一気に逆転できる点も強力です。
先月、開催されたプロツアー『霊気走破』では優勝&準優勝と圧倒的なパフォーマンスを見せ、最強デッキの道を突き進む……かと思った矢先、アゾリウス全知という思わぬ天敵が出現しました。
盤面を完全に無視してコンボを決めてくるアゾリウス全知を相手にしては、オーバーロードのカードパワーを活かしきれません。
サイドボード後は《否認》や《安らかなる眠り》で抵抗を試みることはできるのですが、いかんせんロングゲームになるとどこかのタイミングで《安らかなる眠り》が破壊され、《堂々たる撤廃者》が登場してしまうため、かなり厳しいマッチアップといえるでしょう。
現在、「いかにしてアゾリウス全知を封じ込めるか」という研究が急ピッチで進められています。例えば、《石の脳》で《全知》や《アルケヴィオスへの侵攻》をデッキから抜き去るというアイディアもあるようです。
アゾリウス全知を攻略できれば、オーバーロードがふたたび最強デッキとして君臨することになるかもしれません。
ジェスカイ眼魔
晴れる屋スタッフであり、元・DCGプロゲーマーのフォレスト(@forestbanban)こと、森 大将さんが使用し、スイスラウンドを1位で通過したデッキを紹介します。
ベースはプロツアー『霊気走破』で大活躍した、日本チームが持ち込んだデッキです。
ルーティングによって《忌まわしき眼魔》を墓地に落とし、《救いの手》や《再稼働》で釣り上げる戦略に加え、墓地対策されたとしても《プロフトの映像記憶》によるクリーチャー強化を軸としたビートダウンプランが強力な、簡単には対処されないデッキといえます。
森さんのリストで特徴的なのは《カワウソボールの精鋭、キッツァ》です。デッキと相性が良いルーティング能力を持っている点が優秀で、さらに《プロフトの映像記憶》で強化することで警戒を持った強力なアタッカーとなります。
また、このデッキの《カワウソボールの精鋭、キッツァ》はパワーが悠々と3を超えるため、インスタントやソーサリーをコピーする起動型能力も現実的に使用できます。
本来なら《塔の点火》では落とせない高タフネスのクリーチャーも対処可能となり、《失せろ》や《邪悪を打ち砕く》をコピーすることで対オーバーロードとのロングゲームに備えることができる点が評価できそうです。
ゴルガリ機体
つづいて紹介するのは、スイスラウンドを2位で通過した谷村 悠真さんの新型ゴルガリミッドレンジ、「ゴルガリ機体」です。
最大の特徴は4枚フル採用された《重厚な世界踏破車》。土地を伸ばしながら、自身が強力なフィニッシャーとなる機体です。
土地が増えた終盤、マナの使い道として有用なミシュラランドを多めに採用しています。
ほとんど除去コントロールのようなデッキで、《切り崩し》を4枚採用するなど、アグロ系のデッキを強く意識しているようです。
一方、採用しているクリーチャーがそこまで多くないため、《祭儀室》が生成する飛行6/6デーモン・トークンは《重厚な世界踏破車》の貴重な乗り手となります。もちろん、次のターンからは飛行6/6のアタッカーとして大活躍するでしょう。
《苦難の収穫者》はチャンプブロッカーを一掃しながら、そのまま《重厚な世界踏破車》に搭乗できる点が強そうです。
赤系のデッキと違って、速効クリーチャーがいないゴルガリにとって全体除去は目の上のたんこぶでしたが、「機体」という新たなダメージソースを手に入れたことでコントロール相手にも相性勝ちできるようになりました。
このデッキが流行するようであれば、コントロール側は《壮大な玉突き衝突》を採用する価値が十分にありそうです。
ゴブリン
最後にトップ16に入賞した「ゴブリン」をご紹介します。使用者はかつてヴィンテージ神の座にも就いたことがある強豪プレイヤー、萩森 格さんです。
萩森さんといえば、『THE LAST SUN 2023』においてレガシーでゴブリン、パイオニアでもゴブリンというダブルゴブリンでトップ16に入賞するほどのゴブリン通。その萩森さんが愛機として選んでいるということは、このゴブリンデッキは本物ということでしょう。
さて、スタンダードのゴブリンはアグロとコンボを両立させたようなデッキと言えそうです。
アグロプランとしては、ゴブリンを順番に並べて《ランドヴェルトの大群率い》で全体強化しながら殴りきります。少し遅いデッキ相手にはアッサリ殴り勝ってしまいそうです。
アグロプランが通用しない相手には、《アガサの魂の大釜》で《群衆の親分、クレンコ》を追放することにより、+1/+1カウンターが乗ったゴブリンに《クレンコ》の起動型能力を使わせて一気に大量のゴブリン・トークンを生成するコンボを狙います。
《グリスレンチのゴブリン》は「消尽」能力によって自身に+1/+1カウンターを乗せながら手札にある《クレンコ》を墓地に落とせる点が噛み合っていますね。
そして、《咆吼部隊の重量級》か《竜航技師》のどちらかがいれば、戦場のすべてのゴブリンに速攻を持たせられるため、《クレンコ》の能力を2-3回ほど起動させれば、おおむね勝利となりそうです。
また、赤単色、かつナチュラルに最高速度到達が見込めるデッキということで《ムラガンダ・サーキット》が採用されています。
《群衆の親分、クレンコ》のような重めのカードをプレイするのに役立つほか、各消尽能力を起動する際に重宝することでしょう。
おわりに
スタンダード神の結果を見ながら、「どんなデッキにもチャンスがある環境」という印象を持ちました。
今後の注目カードとしては、ダブルシンボルということで採用できるデッキは限られているでしょうが、《鋭い目の管理者》はメタゲーム的にかなり強そうなカードです。
《全知》《忌まわしき眼魔》を牽制しながら、将来的にはブロッカーとしてもアタッカーとしても優秀なスタッツを持つクリーチャーとなります。
このカードを無理なく採用できるゴルガリミッドレンジ、グルール昂揚の活躍に注目です!
それでは、次回の大会結果もお楽しみに!