はじめに
こんにちは、Hareruya Prosの平山 怜(@sannbaix3)です。

3月8日開催の『第30期スタンダード神挑戦者決定戦』で優勝、翌日の神決定戦でスタンダード神の岡井 俊樹さんに勝利し、スタンダード神に就任しました。
今回は、このトーナメントで使用したアゾリウス全知のデッキガイドと、イベント当日の振り返りをお送りします。
アゾリウス全知とは
アゾリウス全知とは、墓地に落とした《全知》を《アブエロの覚醒》で戦場に出し、呪文を連打することで勝利するコンボデッキです。
『ファウンデーションズ』で《全知》がスタンダードに再登場したことにより成立したデッキですが、『霊気走破』から令和の《時を越えた探索》こと《食糧補充》が登場したことで一線級の力を得ました。
プロツアー『霊気走破』で、高橋 優太さんが所属するコスモスがチームで選択したデッキなのは記憶に新しいです。
コンボルート解説
このデッキのリストをみても、《全知》を置いたあとに何をするかわからない方も多いと思うので、まずは《全知》設置後の勝ち手段を解説します。
《アブエロの覚醒》で《全知》を戦場に戻したところからスタートです。
■コンボルート
① 《食糧補充》などドロー呪文を連鎖させて《アルケヴィオスへの侵攻》を探す。
② 見つけた《アルケヴィオスへの侵攻》を唱えてサイドから《ジョハンの一時凌ぎ》を手札に加え、《アルケヴィオスへの侵攻》を対象に唱える。
③ 手札に戻した《アルケヴィオスへの侵攻》を再度プレイし、墓地の《ジョハンの一時凌ぎ》を回収する。
④ 《アルケヴィオスへの侵攻》を対象に、回収した《ジョハンの一時凌ぎ》を唱える。
⑤ 《ジョハンの一時凌ぎ》の効果で1枚ドローできるので、2枚目の《アルケヴィオスへの侵攻》を引けるまで③-④を繰り返す。
(《ジョハンの一時凌ぎ》ではなく《この町は狭すぎる》を加えれば、《黙示録、シェオルドレッド》のような対処が必要なパーマネントをどかすことができます)
⑥ 2枚目の《アルケヴィオスへの侵攻》を見つけたら、《アルケヴィオスへの侵攻》Aで《この町は狭すぎる》を、Bで任意の呪文を手札に加える。
⑦ 《この町は狭すぎる》で《アルケヴィオスへの侵攻》を2枚手札に戻す。
⑧ 大量の《困惑の謎掛け》と《否認》、勝ち手段を手札に加えるまで⑥-⑦を繰り返す。
⑨-1 《長川の引き込み》ルート
適当な呪文(《食糧補充》など)を唱え、それを対象に《長川の引き込み》を「贈呈」で唱える。その後再び⑥⑦で唱えた2枚を回収する。相手のライブラリーがなくなるまでこれを繰り返す。「贈呈」で引かれたカードを唱えられた場合は、⑥で加えた打ち消し呪文で対処する。
⑨-2 《門口の断絶》ルート
《門口の断絶》を「培養2」、変身モードで唱える。⑥⑦で《門口の断絶》を再び手札に加え、無限に2/2を並べ、一度ターンを終了。相手が唱えたカードや戦場のパーマネントは⑥⑦で加えた呪文で対処し、次の自分のターンに攻撃して勝利する。
少し手順がややこしいですが、《全知》が置いてある状態で《アルケヴィオスへの侵攻》をプレイすれば勝ち、と覚えておきましょう。《アルケヴィオスへの侵攻》が合計で2枚、また《アルケヴィオスへの侵攻》が追放領域からはカードを加えられないため、コンボに絡むカードが追放されていない必要がある点には注意が必要です。
デッキに2つの勝ち筋を採用していますが、それぞれレアケースで勝てない可能性があるので、どちらも選べる場合は裏目のないほうを選ぶと良いでしょう。
《長川の引き込み》ルートの勝てないパターン
打ち消し呪文が追放されてしまったなどの要因で、相手が唱えることができるマストカウンターの数が、こちらの打ち消し呪文の総数を上回っているときは勝てません。
たとえば、赤単相手にライフが1、《困惑の謎掛け》がすべて追放されているときに、相手が4マナ使用できる状態でライブラリーをすべて引かせると、《噴出の稲妻》を4枚撃たれてしまい《否認》2枚では対処しきれません。
ほかにも、起動型能力や誘発型能力などでこちらを倒す手段がある場合などが挙げられます(例:おそらく現在のスタンダードで起きることはありませんが、ライフ1で相手のデッキに《溶岩族の砲兵》が入っているときなど)。
《門口の断絶》ルートの勝てないパターン
こちらの対処できない方法で、相手にターンを渡すと負ける可能性がある場合です。
例:ミラーマッチの《魂の洞窟》+《堂々たる撤廃者》+コンボ、《魂の洞窟》+《ヴィーアシーノの紅蓮術師》など。
デッキリスト
当日使用したデッキリストがこちらになります。
採用カード:メインボード
《全知》
コンボパーツの一方。サイドボード後も抜くことはありません。
《アブエロの覚醒》
《全知》を戦場に戻す呪文です。ほかの候補である《修復と充電》と比べると、1マナ軽い代わりにクリーチャーとして戻すため、クリーチャー除去に当たってしまうのが欠点ですが、速度優先でこのカードが採用されています。
《アルケヴィオスへの侵攻》
《全知》を戦場に出したあとの勝ち筋です。コンボに必ず2枚必要なので多めに採用しなければなりませんが、序盤に手札で被ってほしくないカードなため3枚の採用に抑えています。コンボパーツではありますが、一応普通に唱えて《アブエロの覚醒》や《否認》、《解呪》系のカードを持ってくることもあります。
《ファラジの考古学者》
コンボをそろえる役割を持ちながら、ブロッカーにもなります。
《悲劇の神託者》
手札の《全知》を捨てる手段です。ほかのカードに比べて性能は低いですが、《アルケヴィオスへの侵攻》が万が一2枚以上墓地に送られてしまったときに、デッキに戻せるようにするための保険としての役割もあるので1枚採用しています。
《決定的瞬間》
《全知》をめくったら墓地に送りつつ、コンボパーツを探す役割を持っています。インスタントですが、理由もなく構えないほうがいいです。特に《行き届いた書庫》→《決定的瞬間》とプレイするよりも、《決定的瞬間》→《行き届いた書庫》とプレイしたほうがはるかにドローの質は上がるので、自分のターン中に唱えたほうがいいパターンがあることは覚えておきましょう。
《航路の作成》
手札の《全知》を墓地に送る手段です。このカードを唱えたあとに引いた《全知》を落とせないことがないように、なるべく最後に唱えるようにしたほうがいいです。《ファラジの考古学者》で攻撃すれば手札を捨てないですむ、ということも覚えておきましょう。
《困惑の謎掛け》
デッキを4枚掘る能力と、打ち消し能力のモードを持った呪文です。《全知》を落とす手段になりながら、《全知》を置いたあとの相手の干渉手段を打ち消す手段にもなります。コンボデッキである以上、中途半端な相手のカードを打ち消すよりは、基本的にデッキを掘るモードを使用したほうがいいです。
《食糧補充》
最強の《予言》、もはや《時を越えた探索》です。4枚ずつしか入っていないコンボパーツを見つけなければいけないこのデッキにとって、見れる枚数が多いのはそれだけで重要であり、デッキ唯一のアドバンテージを獲得できる呪文です。手札が増えるので後手7枚キープなら3ターン目に唱えて、クリンナップ・ステップに《全知》を捨てる小テクもあります。
4枚採用したいところですが、赤アグロ相手に唱える余裕がない展開が気になり3枚にしました。ただ、それ以外のマッチアップではめっぽう強く、サイドボードに4枚目を入れるべきでした。
《エファラの分散》
デッキ唯一の単体除去呪文です。赤アグロがいる以上最低限の干渉手段は必要ですが、単純な除去を入れすぎても自分のデッキが回らなくなるのでこのカードを採用しています。
このカードであるメリットは、1マナで唱えられることと最低限ドローがつながることです(テキスト読み上げ)。「諜報」が《全知》を落とす手段になっていることは当然ながら、《ファラジの考古学者》を手札に戻せば使いまわすことができ、実質的に「諜報2」がついた《ファラジの考古学者》になります。
さらに言えば、複数体の《ファラジの考古学者》が並んでいるなら、《アブエロの覚醒》で《一時的封鎖》を戦場に戻して《一時的封鎖》をこのカードで戻せば、複数回《ファラジの考古学者》を誘発させられます。
《一時的封鎖》
デッキ唯一の干渉手段にしかならないカードです。苦手な赤アグロに有効なのに加えて、サイドボード後はこのデッキが苦手とする《除霊用掃除機》《安らかなる眠り》を巻き込むことができる点が優れています。一応《アブエロの覚醒》で戦場に戻すことができます。
採用カード:サイドボード
《門口の断絶》《長川の引き込み》
前述の通り、最終的なコンボの勝ち手段です。それぞれ置物除去、打ち消し呪文として80点の働きができます。
これら両方を採用している理由は、前回の記事で紹介した脱出基地コンボにメインから《ぶどう弾》と《神秘を操る者、ジェイス》を採用していた理由に近いです。たとえば《門口の断絶》のみの採用の場合、サイドインした《門口の断絶》が相手の墓地対策で追放されてしまうと、コンボの勝ち筋がなくなってしまい勝てなくなってしまいます。
《ネットワーク呪詛》のようなカードを1枚採用し、サイドインしないことでもこの事象は防げますが、《ネットワーク呪詛》+自由なサイド枠1枚より、80点のサイドボード2枚のほうが価値が高いと判断しました。2種を散らしているのは、前述の通りレアケースでそれぞれ勝てないパターンが存在するからです。
ただし、両カードともMTGアリーナやMagic Onlineではクリック数が多くて大変です。オンラインでやる場合は、少ないクリック数で勝てる《ネットワーク呪詛》がおすすめです。
《この町は狭すぎる》
《アルケヴィオスへの侵攻》を使いまわすためのカードです。ほかのリストでは《機織りの季節》が採用されていることが多い枠ですが、以下の点で《機織りの季節》より《この町は狭すぎる》がおすすめです。
■《この町は狭すぎる》を優先している理由
・《機織りの季節》は《アルケヴィオスへの侵攻》を手札に戻す過程でほかのカードも戻さなければならず、《一時的封鎖》が戻り、《望み無き悪夢》が戦場に戻ってライフルーズで死亡、など裏目がある
・コンボ中以外のサーチ候補として、《この町は狭すぎる》のほうが優秀。
・《機織りの季節》は《悲劇の神託者》や《錠前破りのいたずら屋》がいればコピー能力を使用し、勝ち筋としても機能しますが、今のリストはコピーして勝てるクリーチャーが《悲劇の神託者》1枚のみで、サイドアウトすることもある&すでに勝ち筋を2枚採用しており、その必要がない。
《この町は狭すぎる》はコンボに必須のカードなので、通常使用は可能ですが追放されないように気をつけましょう。
《ジョハンの一時凌ぎ》
《アルケヴィオスへの侵攻》を手札に戻すためのカードその2です。コンボルートで説明した通り、《アルケヴィオスへの侵攻》+このカードで無限ドローになります。
《激浪の機械巨人》
今回のリストで一番失敗したカードです。端的にいうと不要でした。
《強迫》や《否認》を回避しながら勝つサブプランとして採用されていて、それをマネしてみましたが、まずサブプランがほしい相手にこのカードは有効ではありません。
「《石の脳》で《全知》が抜かれたら~」といった考えをする人がいるかもしれませんが、オーバーロード相手にこのカードをプレイしても勝てるビジョンは見えず、ゴルガリやディミーアのようなミッドレンジ相手もこのカードだけではよく乗り越えられます。
勝てない以上このカードに意味はありません。もっと除去ミッドレンジ風にデッキ構造を変えるような構成(事故るのでおすすめしません)にするか、より単体で勝ちにいけるカードを採用しない限りは、サイド後もコンボに寄せるほうが無難でしょう。
スタンダード神本番も当たったことのなかったマッチアップで何度か試しにサイドインしましたが、基本的に何もせず2本目で入れて3本目では抜いてました。実質サイド12枚でプレイしていたのと変わらず、次にこのデッキを使うならこのカードは採用しません。
《堂々たる撤廃者》
相手の妨害を乗り越えるためのカードです。このカード自体は打ち消し呪文でしか対処できませんが、基本的にサイドにとられているのが《否認》《軽蔑的な一撃》のため、このカードに干渉できない構成のデッキが多いです。6ターン目にこのカードを唱えてから安全にコンボを決めましょう。
《否認》《解呪》
それぞれテキスト通りのことをします。相手の妨害を乗り越えるのに使いましょう。
《失せろ》
《解呪》と違い《除霊用掃除機》には対処できませんが、代わりにこのデッキではほかに干渉手段のない《悪夢滅ぼし、魁渡》に対処できます。
《審判の日》《一時的封鎖》
追加の全体除去です。とくに語ることはありません。
そのほか採用候補
《錠前破りのいたずら屋》
2マナで4枚切削できる点は優秀ですが、《一時的封鎖》《アルケヴィオスへの侵攻》を拾えないのが致命的です。《アルケヴィオスへの侵攻》が複数枚落ちてしまう事故の要因になりやすいので採用していません。
《魂の洞窟》
《堂々たる撤廃者》を押し通すために使用できます。《堂々たる撤廃者》の項目での説明は、あくまで《堂々たる撤廃者》が打ち消されない前提です。《三歩先》を採用しているアゾリウスコントロール相手に、《魂の洞窟》があれば安全にコンボを決められます。
ただ、現在のリストでは対策カードを対処できる《爆発域》を優先していて、青マナなしではキープしづらい&《一時的封鎖》があるためマナベースが厳しいため、このカードの採用を見送りました。《激浪の機械巨人》の枠にサイドにいれるのはアリかもしれません。
《大嵐の雄鹿》
今のスタンダードには、青か白でインスタント・タイミングで手札を捨てることができるカードが意外と少ないです。そのうちの1枚がこのカードになります。
手札から捨てることは切削と違って、手札に《全知》がある状態であれば、確実に《全知》を墓地に送れるのが魅力的で、インスタント・タイミングで捨てるとソーサリー・タイミングでの墓地対策を無視して勝てます。しかし、結局は手札が減る呪文なので採用は見送りました。
クリーチャー面は《アルケヴィオスへの侵攻》を使いまわしているうちに無限パワーになるので、勝ち手段として機能するのも面白いです(《全知》では出来事からはタダで唱えられないのは注意)。
妨害の乗り越え方
基本的な動きに関しては、前述した通り、自分が死ぬ前にドロー呪文を回してコンボを決めるだけです。見た目に反して、このコンボは簡単に干渉することができます。相手の妨害に合わせて、コンボパーツと妨害に対する対策をそろえましょう。
対除去呪文
エンチャント破壊はもちろん、《アブエロの覚醒》が《全知》をクリーチャーにするので、クリーチャー除去でコンボに対して妨害されます。なので、たいていのデッキにメイン戦から干渉されますが、ケアする方法は複数あり、対策の中で最も簡単です。
1. 打ち消す
すべての対策に共通します。除去は《全知》が出てから唱えなければならない都合上、打ち消し呪文用のマナを構える必要もありません。
2. 《全知》を複数枚出す
《アブエロの覚醒》で《全知》を出した直後に、優先権を渡さずそのまま《全知》や《アブエロの覚醒》でもう1枚《全知》を出せば、最初の《全知》を除去されても後続の《全知》が戦場に残ります。
除去が2枚ありそうな場合は、1枚目の《全知》に除去を撃たれたときにそれを《エファラの分散》で戻せば、2枚目の《全知》が出たあとに戻した《全知》を出しなおすことで対策可能です。
3. 除去に当たらないようにする
《アブエロの覚醒》はXを大きくすることで《全知》のサイズを上げることができ、《切り崩し》や《塔の点火》などの除去を回避することができます。
2マナ構えている相手にX=0で《全知》をだすと、《切り崩し》2枚を回避するために打ち消しが2枚必要になるかもしれませんが、X=2で唱えれば《逃げ場なし》などの2マナ除去でしか干渉されないので打ち消し1枚で足ります。
4. 複数回仕掛ける
《全知》が墓地にいく除去であれば、次の《アブエロの覚醒》でまたコンボを始動できます。《アブエロの覚醒》で《全知》を出して《アルケヴィオスへの侵攻》を唱える→通ったら《ジョハンの一時凌ぎ》を持ってきてコンボ、通らなかったら《アブエロの覚醒》でもう一度仕掛ける、は頻出するパターンのひとつです。
対打ち消し
1. 打ち消す
除去呪文と違って、《全知》が戦場に出る前に唱えられるので打ち消し用のマナも必要になります。
2. 《堂々たる撤廃者》
《否認》《軽蔑的な一撃》を完全に無力化できます。簡単でいいね。
対墓地対策
1. 対処できないタイミングで《全知》を墓地に送る
《温厚な襞背》のようなソーサリー・アクションでの墓地対策は、相手のターン終了時や自分のターンに《全知》を落としてそのまま蘇生すれば当たらないですみます。6マナあるときの《航路の作成》→《アブエロの覚醒》は一番わかりやすいパターンです。
それ以外にも、《決定的瞬間》や《困惑の謎掛け》の切削は、《全知》が落ちた次のターンに仕掛けられるターンに唱えると損しづらくなります。
2. 打ち消す
《安らかなる眠り》《除霊用掃除機》は《一時的封鎖》や《解呪》で対処できるため、対戦相手も極力《全知》が墓地に落ちてから唱えたいと思っています。なので《航路の作成》は4ターン目まで待ってから唱え、《否認》を構えるといったプレイが有効です。
また、こちらが《航路の作成》《アブエロの覚醒》と動ける直前のターンは、《全知》が墓地になくても相手から墓地対策を唱えられやすいタイミングであることは意識しておきましょう。
《石の脳》
《全知》を抜かれたら終わりです。現環境に存在するメジャーなデッキで《石の脳》が有効なのはこのデッキくらいで、採用率が低いのが救いです。
このカードを採用しそうなのが、アゾリウス全知を極端に苦手とするオーバーロードのようなデッキです。オーバーロードに対してサイドに数枚《激浪の機械巨人》のようなサブプランをとってもどうせ勝てないので、《解呪》や《否認》で《石の脳》を対処できればよし、できなかったら3本目を頑張りましょう。
このカードが流行るのであれば、素直に別のデッキを使うのも手です。
第30期スタンダード神決定戦
当日の戦績です。
■対戦結果
グルール果敢 〇〇
ボロスハツカネズミ 〇××
ゴルガリ 〇〇
ボロスハツカネズミ 〇〇
アゾリウスコントロール 〇×〇
オーバーロード 〇〇
オーバーロード 〇〇
ゴブリン 〇×〇
7勝1敗、3位で決勝ラウンドへ
ディミーアミッドレンジ 〇×〇
ディミーアミッドレンジ 〇×〇
オーバーロード 〇〇
●神決定戦(BO5、1-2戦目がメインボードのみ)
岡井 俊樹(ディミーアエンチャント) 〇〇×〇
2日間で11-1、メイン戦の戦績はなんと13-0で全勝!苦手なはずの赤アグロに4回当たりましたが、4ターン目にコンボや《一時的封鎖》を引けたりで合計3-1だったのは運がよかったです。
スタンダード神決定戦:振り返り解説
日曜日は岡井さんとのビデオマッチだったので、その振り返りとそのときの思考を簡単に見返します。神決定戦はリスト公開の3本先取で行われます。また、リストが公開されてから1日あるため、事前にゲームプランやサイドチェンジを準備する時間が設けられています。
いつもどおり、練習はディスコードサーバー「常勝集団MSD」で行いました。岡井さん役を井川 良彦さん、セコンドに高橋 優太さん、あとは数人の野次馬で練習を行いました。そこでだした結論が以下。
岡井さんのデッキ
通常のディミーアエンチャントに比べて、《遠眼鏡のセイレーン》や《悪夢滅ぼし、魁渡》をいれず、代わりに《精体の追跡者》《今のうちに出よう》などのエンチャント要素が濃くなっています。クロックが遅い代わりに、よりリソース勝負に強い形になっているというわけですね。
こちらのデッキはそういう勝負をするデッキではないので、デッキ相性は有利なはず。
メイン戦
岡井さん側のメインデッキには、こちらに干渉する手段が除去しかありません。相手のデッキに使い道の薄いカードが多く、ライフを削りきられるまで時間の猶予もかなりあるので、メイン戦はかなり相性が良いです。
《望み無き悪夢》のおかげで手札の《全知》を捨てる手段にもあまり困りません。岡井さん側も変に《望み無き悪夢》を唱えないよりは、《全知》がなかったときに《望み無き悪夢》を使いまわして勝てるパターンを作ったほうがいいからです。
《アブエロの覚醒》をX=2以上で唱えれば《切り崩し》に当たらなくなり、X=3であれば1枚で干渉できるのは《この町は狭すぎる》だけです。メインデッキは正直かなり相性が良いので、ぜひとも2本とりたいです。
サイド後
岡井さんのリストには、《否認》のような《アブエロの覚醒》に干渉する打ち消し呪文が1枚もないため、《除霊用掃除機》以外では《アブエロの覚醒》で《全知》を戦場に戻すことには干渉できません。なので、青い相手ではありますが《堂々たる撤廃者》をサイドインする必要がないことはかなりこちらにとってありがたく、リスト公開だからこそできる決断です。
とはいえ干渉手段が増えること、1枚で優秀なクロックと干渉手段へのアクセスを可能にする《悪夢滅ぼし、魁渡》が入るので、サイド後はかなり五分に近い相性になります。
メインを2本取り、サイド後先手の4,5本目のどちらかを勝利し、3-1か3-2で勝つ想定で望みます。
各ゲーム解説
ここからは各ゲームの簡単な振り返りを行います。Youtubeで配信されていたので、まだの方はぜひ観てみてください。
1ゲーム目
ダイスロールは気合いが入っているので当然12。先手でスタートです。土地あり《食糧補充》あり《全知》ありのグッドハンドをキープ。
4ターン目にちょうど《アブエロの覚醒》を引きますが、岡井さんもマナを構えているので、このターンは《アブエロの覚醒》を唱えずに手札のドローソースで《困惑の謎掛け》や《全知》を探しに行きます。しかし、《ファラジの考古学者》で《アルケヴィオスへの侵攻》を2枚めくってしまいました。
すでに1枚持っている状態なので現段階では2枚目は必要ないですが、拾わないと一度《悲劇の神託者》で《アルケヴィオスへの侵攻》をデッキに戻さない限りコンボを決められなくなります。
結局《アルケヴィオスへの侵攻》を拾っても岡井さんが《望み無き悪夢》を使いまわすゲームになれば、どうせ《アルケヴィオスへの侵攻》を捨てることになりそうなので、《決定的瞬間》を加えて短期間で除去の上からコンボを決めることを目指します。
《アブエロの覚醒》で《全知》を場に戻します。岡井さんが4マナを構えている状態なので2回妨害されそうですが、《精体の追跡者》が出てしまった以上できるだけ短いレンジでゲームを決めたいです。
この時点の手札が《アルケヴィオスへの侵攻》《決定的瞬間》《決定的瞬間》《困惑の謎掛け》であり、《全知》着地後《アルケヴィオスへの侵攻》を唱えるのに対応して相手が除去→それに対応して《決定的瞬間》2枚で《困惑の謎掛け》が見つかれば勝利、最低でも《アブエロの覚醒》が見つかれば《アルケヴィオスへの侵攻》で《否認》を持ってきて次のターンもう一度チャレンジできるので、分はいい勝負だと思い突撃。
結果的にどちらも見つかりませんでした。唱えられた除去が《全知》が墓地に行く《逃げ場なし》だったので、《困惑の謎掛け》は使わず、《アルケヴィオスへの侵攻》で《アブエロの覚醒》を持ってきて次のターンにもう一度仕掛けられるようにします。
もう一度仕掛けます。《困惑の謎掛け》を前のターンの諜報ランドで上に置いているので打ち消し2枚での仕掛けです。通りはしましたが、《アルケヴィオスへの侵攻》を使い切った状態でのコンボなので、一度《悲劇の神託者》を経由する必要があります。
ドロー呪文のチェインが上手くいかず、《悲劇の神託者》を見つける前に《ファラジの考古学者》を唱えねばならない状況になります。ここで《悲劇の神託者》をめくったら負けでしたが、運良く回避。
その後《悲劇の神託者》までたどり着けますが、ここでドロー呪文が途絶えます。岡井さんが対処できないよう《全知》を大量に並べて、あとはトップデッキしたドロー呪文が連鎖して《アルケヴィオスへの侵攻》にたどり着くまで全裸待機です。
天才なので《アルケヴィオスへの侵攻》を一発で引き勝利。風邪を引かずにすみました。
2ゲーム目
土地あり《全知》ありなのでキープ。
岡井さんが4ターン目まで何もせずパスし続けます。《精体の追跡者》もでてこなかったので、こちらは一切焦る必要がありません。一度土地を置かずに《全知》をクリンナップ・ステップで捨てて、いつでもコンボを仕掛けられるようにしつつ、しばらく待つことを選択します。
《アブエロの覚醒》をX=3で唱えられるターンになったので仕掛けます。ちょうど前のターンに岡井さんが動いており、3マナでは4/4《全知》と手出し《全知》両方は絶対に対処できないので、《アルケヴィオスへの侵攻》から確定勝利です。
1本目こそ危ない展開になったものの、当初の予定通りメインを2本とれました。ここからはサイドチェンジが行われます。
3ゲーム目
土地と大量の《ファラジの考古学者》で7枚キープします。
《ファラジの考古学者》がスペルをめくらず。《望み無き悪夢》と合わせて手札はかなりカツカツなゲームになりそうです。
《孤立への恐怖》で使いまわされた《望み無き悪夢》で《失せろ》を捨てます。できれば《悪夢滅ぼし、魁渡》や《大洞窟のコウモリ》のサイドカード用にとっておきたいのですが、すでに手札が少ないので、コンボパーツの保持を優先します。
《悪夢滅ぼし、魁渡》がでてきます。1マナしか起きていない状況で、《困惑の謎掛け》で《全知》が落ちる絶好のコンボチャンスですが、残念ながら《アブエロの覚醒》が見つかっていません。
続く《食糧補充》を唱えても見つからず、コンボを仕掛ける前にライフがなくなり敗北。デッキの性質上どうしてもこういう負けは受け入れざるをえません。
4ゲーム目
土地と呪文のバランスがいい初手でキープします。
初動の《ファラジの考古学者》では《航路の作成》を拾います。手札に《全知》があるので、引かれているか分からない《除霊用掃除機》の対策より自分のコンボを優先します。
《否認》を引きます。このターン《航路の作成》で《全知》を落とし、4ターン目に《アブエロの覚醒》を唱える準備もできますが、このターンは《ファラジの考古学者》を唱えることを選択します。
いま《全知》を墓地に送ると岡井さんが《除霊用掃除機》を持っている場合、確実に次のターンに唱えられますが、もしここで《全知》を墓地に送らなければ、《全知》に干渉する前に《一時的封鎖》で《除霊用掃除機》が《大洞窟のコウモリ》ごと対処されることを嫌って《除霊用掃除機》を唱えてこない可能性があります。そうすれば、4ターン目に《航路の作成》で《全知》を落とす+《否認》構えで《除霊用掃除機》にもスムーズに対応できます。
結果的には《ファラジの考古学者》で《全知》をめくってしまいます。一見運が良いように見えるかもしれませんが、ここでは正直《全知》をめくりたくなかったです。
ここで《全知》をめくってしまったため、次のターンに岡井さんが《除霊用掃除機》を唱える理由ができてしまい、《否認》が《除霊用掃除機》に当たりづらくなってしまったからです。
ここで《全知》を拾う不自然なプレイをとった場合、岡井さんがこちらの意図に気づき《除霊用掃除機》を置いてくれば《全知》まみれの謎の手札が残るだけですし、そもそも手札のドロー呪文が足りていない状況なので素直に《航路の作成》を拾います。
《稲妻罠の教練者》で《除霊用掃除機》が見つかり、そのままプレイされます。《全知》が落ちていなければ《除霊用掃除機》は置かなかった可能性があるので、やはり前のターンのめくりは裏目になってしまいました。
《除霊用掃除機》への対処札を探しに行きます。《全知》を落とす必要がないので《ファラジの考古学者》で攻撃してから《航路の作成》を唱えます。
《食糧補充》で《爆発域》が見つかります。これで《除霊用掃除機》を対処できるカードが手に入りました。《アブエロの覚醒》も同時に見つかり、コンボ始動の算段がつきます。
《悪夢滅ぼし、魁渡》がでてきます。エンドに《決定的瞬間》を唱えると、めくりは土地2枚と《失せろ》。現段階で《爆発域》起動後に《航路の作成》《アブエロの覚醒》と動くために必要な7枚目の土地を持ってませんが、《悪夢滅ぼし、魁渡》も放置できないので《失せろ》を選択。続くターンは《悪夢滅ぼし、魁渡》を失せって《爆発域》を構えます。
このままだとコンボが決まるので岡井さんも動きます。《望み無き悪夢》をプレイ。効果に対応して《爆発域》を起動して《全知》を捨てる選択肢もありますが、2枚目の《除霊用掃除機》があった場合は、《全知》にアクセスする手段も《除霊用掃除機》に対する対策も失い敗北がほぼ確定します。
2ターン目の《大洞窟のコウモリ》で、《航路の作成》+《全知》がそろっているにも関わらず別のカードを抜いたことから、あの段階で《除霊用掃除機》を持っていた可能性が捨てきれず(実際にプレイされた《除霊用掃除機》は《稲妻罠の教練者》で見つかったもの)、2枚目の《除霊用掃除機》をケアしてほかのカードを捨てることにします。
岡井さんもプレイが上手く、このターン《困惑の謎掛け》にマナを使用しないといけなくなるよう《大洞窟のコウモリ》を回収して出しなおします。
このターンであれば、3ターン目からずっと手札に残っている《否認》を構えながら《爆発域》を起動できるので、追加の《望み無き悪夢》がきたとき、《爆発域》を起動してから《全知》を捨てても、2枚目の《除霊用掃除機》に負けることはありません。実際はこのターンはさほどプレッシャーがかからず、《否認》を温存しながら《爆発域》を起動する余裕がありました。
無事に都合7枚目の土地を引けたので《航路の作成》→《アブエロの覚醒》。ドロー呪文は《決定的瞬間》しかありませんでしたが、すぐに《アルケヴィオスへの侵攻》が見つかり勝利です。
次にこのデッキを使うなら?
最後に、今回の大会での反省点を踏まえたうえでのデッキリストと簡単なサイドボーディングガイドをのせます。
メインは特に変更していません。13勝0敗を信じろ。サイドボードは弱いと感じた《激浪の機械巨人》を抜いて、代わりにほしいと感じた《食糧補充》《魂の洞窟》、そして平山選手の活躍に影響されて増えるであろう同型用に《除霊用掃除機》をいれました。
サイドボーディングガイド
サイドカードの入れ替えに関しては、相手の採用している対策カードに合わせて多少の調整をすることをおすすめします。
赤系アグロ

vs. 赤系アグロ
オーバーロード

vs. オーバーロード
エスパーピクシー

vs. エスパーピクシー
アゾリウス全知

vs. アゾリウス全知
おわりに
『神決定戦』というトーナメントは、昔から晴れる屋でマジックをしてきた自分にとっては非常に思い入れの深いトーナメントです。
前回の2月の記事では不甲斐ない結果だったので、直後にこうして勝てたことは素直にうれしいです。スタンダード神の防衛にむけてこれからもがんばろうと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
平山 怜(X)
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