はじめに
みなさん、こんにちは。
先週末には大規模なテーブルトップのイベントである『Spotlight Series Utrecht』がありましたね。あのグランプリのようなイベントの復活、そして採用されたフォーマットは人気のモダンということもあり、日本からの参加者も見られました。
今回の連載では『Regional Championship SCG CON Charlotte』と『Spotlight Series Utrecht』の入賞デッキを見ていきたいと思います。
『Regional Championship SCG CON Charlotte』 -脱出基地コンボが上位を支配-
アメリカ・ノースカロライナ州シャーロットで開催された地域チャンピオンシップのプレイオフは、トップメタのGrinding Breachが上位を支配していました。
優勝者も含めると6名がトップ8に残っており、トップ32中の半数以上がGrinding Breachという結果になりました。
Dimir Mill (16位)
モダンで活躍し続けているDimir Mill。ここ最近はトーナメントでも見かけるデッキで、今大会でも複数のプレイヤーがプロツアー権利獲得圏内の順位に入賞していました。このデッキを対策するために、サイドボードに《引き裂かれし永劫、エムラクール》が採用されるケースもあるほどです。
《面晶体のカニ》《遺跡ガニ》《書庫の罠》《不可思の一瞥》といったライブラリー破壊スペルで相手を「切削」し、ライブラリーアウトによって勝つデッキになります。ライブラリー破壊スペルによって墓地に落ちたカードを《外科的摘出》で追放することもできるので、特定のカードに依存するコンボデッキに強いデッキになります。
☆注目ポイント
《面晶体のカニ》と《遺跡ガニ》はこのデッキで重要なキーカードです。フェッチランドと相性が良く、能力を2回誘発させることができます。除去されなければ、それだけでもゲームに勝つことができるクリーチャーで、特にタフネス3の《遺跡ガニ》はブロッカーとしても機能するのでライブラリーアウトするまで時間を稼いでくれます。
このデッキには複数のライブラリー破壊スペルが採用されています。《書庫の罠》はフェッチランドが存在するモダンでは最も爆発的にライブラリーを削れるスペルで、複数枚初手に来ていれば、相手がフェッチランドを起動したときに1ターン目からライブラリーの半分以上のカードを切削することができます。
相手のデッキに入っているカードのマナ総量が軽いほど威力を発揮するのが《ターシャズ・ヒディアス・ラフター》です。切削ではなく追放なので《引き裂かれし永劫、エムラクール》でライブラリーを修復されない点が優れています。デッキのほとんどが2マナ以下のBoros Energyや、0マナスペルを複数採用しているGrinding Breachとのマッチアップで活躍が期待できます。
《外科的摘出》はコンボデッキに対して有効ですが、クリーチャーデッキとのマッチアップでは弱いため、サイド後は《墓所への乱入》と入れ替わります。Boros Energyとのマッチアップでは、ライフを得ることでかなりの時間を稼ぐことができ、墓地のクリーチャーを追放できるので《火の怒りのタイタン、フレージ》対策としても機能します。
Boros Energy
禁止改定後の環境でも常に上位に入賞しているBoros Energy。
《色めき立つ猛竜》や《一つの指輪》は、《イーオスのレインジャー長》《歴戦の紅蓮術士》といった代わりとなるアドバンテージ源に差し替えられましたが、《魂の導き手》《ナカティルの最下層民、アジャニ》《オセロットの群れ》の軽いクロックや中盤以降の脅威となる《火の怒りのタイタン、フレージ》など、デッキの基本的な部分は健在です。
☆注目ポイント
ライフゲインできる《魂の導き手》は《オセロットの群れ》とシナジーがあり、トークンを生成できる《ナカティルの最下層民、アジャニ》とも相性が良いクリーチャーになります。《ナカティルの最下層民、アジャニ》は2枚目をプレイすることにより、レジェンドルールで墓地に送ることでプレインズウォーカーに変身させることができ、[0]能力でアドバンテージを稼げます。
《色めき立つ猛竜》だった枠には《歴戦の紅蓮術士》が採用されています。墓地を肥やしつつドローを進めることができるので、アドバンテージを稼ぎつつ《火の怒りのタイタン、フレージ》を「脱出」する助けにもなります。ゲームが長引けば墓地から追放してトークンを並べることもできます。
《歴戦の紅蓮術士》とともにアドバンテージ源として採用されているのが《イーオスのレインジャー長》になります。《沈黙》のような起動型能力を持つため、現環境を支配しているGrinding Breachをメインから対策でき、プレッシャーをかけつつ相手のプランを妨害することができます。
『Spotlight Series Utrecht』 -Orzhov Blinkが環境最強のデッキを退けて1590名の頂点に-
先週末にオランダ・ユトレヒトで開催された『Spotlight Series』でしたが、参加者1590名と大盛況でした。
『Spotlight Series』は大規模なテーブルトップの競技イベントで、過去にあったグランプリのように2日間に渡って開催され、上位入賞者には賞金、トップ8にはプロツアー権利が授与されます。
今大会のプレイオフはトップメタのGrinding BreachやOrzhov Blink、Eldrazi Rampが入賞する中、Hollow OneやGrixis Shadowといった比較的珍しいデッキも見られました。
Eldrazi Ramp
今大会のスイスラウンドを1位通過していたEldrazi Ramp。《エルドラージの寺院》や《ウギンの迷宮》といったマナ加速で《運命を貪るもの》や《約束された終末、エムラクール》といったフィニッシャーへとつなげていきます。《楽園の拡散》や各種タリスマンのおかげで、特殊地形に大きく依存することなくマナを伸ばすことができるのがこのバージョンの特徴です。
『モダンホライゾン3』から大幅に強化されたアーキタイプで、特に《まき散らす菌糸生物》と《邪悪鳴らし》を得たことで安定性が向上しています。全体除去の《コジレックの帰還》やアーティファクトの起動を封じる《大いなる創造者、カーン》など、Boros EnergyやGrinding Breachといった現環境のトップメタに刺さるカードがメインから使えることも人気がある理由です。
☆注目ポイント
《ウギンの迷宮》はモダンでも使える2マナランドで「刻印」することが条件ではありますが、このデッキには使える7マナ以上のカードが豊富です。なかでも、ゲーム開始時に手札から公開することでライブラリー操作できる《運命を貪るもの》は優秀です。必要なマナがそろったあとは、刻印された《運命を貪るもの》を手札に戻してプレイすることで相手の脅威を追放することができます。
《コジレックの帰還》を使えることもこのバージョンのエルドラージの強みです。《運命を貪るもの》《約束された終末、エムラクール》《世界を壊すもの》といった7マナ以上のエルドラージを複数採用しているため、より《コジレックの帰還》を強く使うことができます。
プレイしたときに落とし子・トークンを生成する《のたうつ蛹》は、実質2マナ4/5という優秀なスペックを持ちます。特に《コジレックの命令》との組み合わせが強力で、早い段階からフィニッシャー級のサイズにまで強化することも可能です。
《大いなる創造者、カーン》によって《魂標ランタン》や《石の脳》など特定の戦略に刺さるカードや、置物対策の《機能不全ダニ》にメインからアクセスできます。常在型能力によってマナアーティファクトや《研磨基地》といったアーティファクトの起動を封じれるため、現環境のトップメタのGrinding Breachに強いプレインズウォーカーになります。
Orzhov Blink
モダンを席巻するアーキタイプとなったOrzhov Blink。強力な戦場に出たときの能力を持つクリーチャーを《溌剌の牧羊犬、フィリア》や《ちらつき鬼火》《儚い存在》によってブリンクさせてアドバンテージを稼いでいきます。
クリーチャー除去の種類が豊富で、特に《孤独》は《儚い存在》と組み合わせは1マナで複数のクリーチャーを追放できるため、クリーチャーデッキに対してかなり有利に立ち回れます。
☆注目ポイント
《ベイルマークの大主》と《溌剌の牧羊犬、フィリア》の組み合わせはこのデッキの主要なエンジンで、アドバンテージを稼ぎつつ序盤からクリーチャー化することができます。
《新たな夜明け、ケトラモーズ》とシナジーがある《大祖始の遺産》のほかにも、《ダウスィーの虚空歩き》がメインから採用されており、Grinding Breachを意識していたことが分かります。墓地対策しつつクロックにもなる《ダウスィーの虚空歩き》は、決勝戦でもGrinding Breachとのマッチアップで活躍していました。
《耳の痛い静寂》《石のような静寂》《エイヴンの阻む者》《スレイベンの守護者、サリア》など、サイドボードにもGrinding Breach対策が複数採用されています。
特に瞬速持ちで墓地から唱えるスペルのコストを増加させる《エイヴンの阻む者》は、《ダウスィーの虚空歩き》と同様にコンボを妨害しつつプレッシャーをかけることができます。相手のスペルに合わせて瞬速でプレイすることによって、疑似的なカウンターとしても機能します。
《空の怒り》もGrinding Breachに有効なカードです。X=1でプレイすることで《知りたがりの学徒、タミヨウ》や《オパールのモックス》、《ウルザの物語》などをまとめて流すことができます。
総括
Grinding Breachの支配率が高く、アメリカの予選イベントでもトップ32の半数以上を占めるという結果だったことから、今月末の禁止改定で何かしらのテコ入れがありそうだと多くのプレイヤーが予想しています。
禁止になる有力な候補として挙げられているのが《死の国からの脱出》で、すでにほかのフォーマットでも禁止になっているカードなので理にかなっています。《オパールのモックス》も問題視されていますが、Affinity、Hammer Time、Broodscale Comboといったアーティファクトベースのデッキの後押しをするための禁止解除だったので、禁止にはならないのではないかという声もあるようです。
USA Modern Express vol.130は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!