はじめに
みなさん、こんにちは。
「USA Legacy Express」と「USA Modern Express」の記事を連載させていただいているHirokiです。
今回から、パウパーの記事も不定期ではありますが連載することになりました。MOやテーブルトップのパウパーの情報をみなさんに提供していきたいと思います。
さて、本題に入る前に「パウパー」というフォーマットについて少し説明させていただきます。
パウパーは、禁止カード以外のテーブルトップとMOでコモンとして収録されたことがある、すべてのカードを使うことができるフォーマットです。強力な神話レアなどが使えない分、ほかのローテーションのないフォーマットと比べると圧倒的なカードパワーやプレイパターンが抑えめで、一昔前のレガシーが好きだったプレイヤーに好まれる傾向にあるようです。
デッキを組むコストもリーズナブルなため、アメリカでも人気が出てきているフォーマットのひとつになります。
『Pauper Challenge 32』 -禁止解除されたあのカードが入賞-
先月末の禁止改定によって大きな変化を遂げたパウパー。今回の禁止改定については、ガヴィン・ヴァーヘイ/Gavin Verhey氏による説明が動画にもなっています。
新環境になって初の『Pauper Challenge』では、早くも話題の《満潮》コンボが複数入賞していました。《満潮》の禁止解除は、スペルベースのコンボの復権を促進するため、よりフォーマットの拡大につながりそうです。
ハイタイド
一時的にマナ加速できる《満潮》をキーカードとした青単色のコンボデッキ。今回試験的に《満潮》が解禁されたため、パウパーでも実現したデッキになります。
複数枚の《満潮》によってマナを増幅し、各種「秘儀」スペルに《精神のくぐつ》を「連繋」させて手札を増やしつつ《島》をアンタップします。ドローしていくうちに追加の《満潮》や《精神のくぐつ》が見つかれば、より大量にマナが出る状態になるのでこれを目指します。
大量にマナが出るようになったあとは、《洞察力の花弁》に《精神のくぐつ》をあるだけ「連繋」して唱えると、《島》をアンタップさせつつ《洞察力の花弁》を手札に戻せるので、これを繰り返すことができます。最終的には、ライブラリーのカードをすべて確認しながら無限マナになります。
最後は《思考の流れ》を無限に「複製」してライブラリーアウトによって勝利します。ドローやサーチスペルに恵まれているため、3-4ターン目にはコンボを決めることが可能です。
☆注目ポイント
《商人の巻物》はキーカードの《満潮》や《精神のくぐつ》などをサーチできます。勝ち手段である《思考の流れ》はソーサリーなのでサーチできませんが、ドロースペルや《深遠の覗き見》で簡単に見つけられます。
《万の眠り》は「複製」でプレイすることで相手をタップアウトさせることができるので、0マナカウンターがないパウパーでは安全にコンボを決めることができます。
《想起横溢》は、このデッキではほぼ《新たな芽吹き》のように機能しますが、このスペル自体は追放されてしまうので再利用できない点には注意が必要です。
『Pauper Challenge 32』 -パウパーでも強い青いデッキ-
《満潮》コンボの台頭、《カルドーサの再誕》の禁止によって赤単が弱体化したことで、青単が勝ちやすい環境になっているようです。
優秀なクリーチャー、ドロースペル、カウンターがコモンに多いため、パウパーでも青いコントロールやテンポは人気があるアーキタイプになります。
青単テラー
青単テラーはパウパーでも人気があるデッキで、今大会で見事に優勝を果たしました。「テラー」というのは《トレイリアの恐怖》の英語名からきています。
このデッキは、軽いスペルをたくさん唱えて《謎めいた海蛇》や《トレイリアの恐怖》といったフィニッシャーをプレイし、それらをカウンターでバックアップしていく動きが強力です。多くのデッキに有効な戦略ですが、赤単のような速いデッキを苦手とします。
☆注目ポイント
《謎めいた海蛇》や《トレイリアの恐怖》は非常に効率的なクリーチャーで、コスト削減能力のおかげで1ターンに複数の《トレイリアの恐怖》を展開することも可能です。特に《トレイリアの恐怖》は除去耐性もあり、それらをカウンターで守りながら攻める動きが強力でゲームを速やかに終わらせます。
《留意》と《思考掃き》はキャントリップしつつ墓地を肥やすことができるため、勝ち手段であるテラーのコスト軽減に貢献します。また《綿密な分析》が墓地に落ちれば、わずか2マナでアドバンテージを得られます。
『指輪物語:中つ国の伝承』から《ロリアンの発見》が登場したことでデッキの安定性が向上しています。墓地のソーサリーカウントを稼ぎつつ必要な土地をサーチでき、中盤以降は普通に唱えて3枚ドローできるので、リソースが枯渇することも少なくなります。
青単フェアリー
青単フェアリーはパウパーを代表するデッキのひとつで、コンボデッキなど多くのデッキと互角以上に渡り合えます。
ただ除去の選択肢に貧しいので、クリーチャーデッキや赤単は苦手なマッチアップです。プレイヤーによっては黒をタッチして除去を採用したバージョンも見られます。
☆注目ポイント
《フェアリーの悪党》や《フェアリーの予見者》はサイズは小粒ですが、1マナと軽く回避能力持ちなので「忍術」の種としても最適です。また、フェアリーなので《呪文づまりのスプライト》をより強く使うことができます。
《呪文づまりのスプライト》は「忍術」とのシナジーも抜群で、《月回路のハッカー》や《深き刻の忍者》で手札にバウンスすることで能力を再利用することもできます。忍術はカウンターでは対処できないため、ブロッカーの少ないコンボデッキやほかの青いコントロールで特に有効です。
人間やフェアリーといった種族の違うクリーチャーが戦場に並ぶので、《心を一つに》は1マナ2枚ドローの優秀なアドバンテージ源として機能します。
『Pauper Challenge 32』 -青単コントロールに強い赤単-
青単テラーは優勝こそ逃したものの、プレイオフの半数を占めるなど安定した勝率を出していました。今大会で優勝したのは赤単で、パウパーではベストデッキのひとつとして活躍し続けていますが、特に青単が多い環境では無類の強さを見せます。
バーン
《カルドーサの再誕》が禁止になったことで、赤単は火力スペルと《ケッシグの炎吹き》を軸にした「バーン」タイプへとシフトしています。
《実験統合機》や《レンの決意》といったアドバンテージエンジンのおかげで粘り強く戦うことができ、軽くて優秀なクリーチャーと火力スペルに恵まれているので、禁止改定後のパウパーでも定番のデッキとして活躍することが予想されます。
☆注目ポイント
《機械仕掛けの打楽器奏者》は『ダスクモーン:戦慄の館』から登場したアーティファクト・クリーチャーで、除去されてもアドバンテージを稼いでくれます。《感電破》の「金属術」にも貢献したり、《ゴブリンの墓荒らし》ともシナジーがある優秀なクリーチャーです。
《ゴブリンの墓荒らし》は、《大焼炉》をプレイすれば1ターン目から2/2速攻のアタッカーになるなど、あの《ゴブリンの先達》を彷彿とさせます。
《実験統合機》は最高のアドバンテージエンジンで、「金属術」にも貢献してくれます。《レンの決意》もアドバンテージ源として優秀で、息切れを防止しつつスペルが連鎖すれば《ケッシグの炎吹き》でさらにダメージを与えられます。
《稲妻の連鎖》や《稲妻》はモダンやレガシーでも活躍している火力スペルですが、コモンとして収録されているためパウパーでも使えます。また、モダンでは禁止にされているアーティファクト土地を使えるため、《感電破》が多くの場合1マナ4点火力という破格の性能になります。
グリクシス親和
親和は『モダンホライゾン2』から《鉱滓造の橋》などの破壊不能のアーティファクト・土地を得て大幅に強化され、パウパーのトップメタに位置しています。アドバンテージ源だった《命取りの論争》が禁止になっても、まだまだ有力なデッキとして活躍しているようです。
☆注目ポイント
《刷新された使い魔》は《金属ガエル》のように0マナでプレイできないものの、回避能力持ちでアドバンテージも得られるため、最近は《金属ガエル》よりも優先して採用されています。《マイアの処罰者》はこのデッキなら容易に1マナでプレイすることができ、パウパー環境の4/4は対処されにくい脅威となります。
《クラーク族のシャーマン》は低タフネスのブロッカーを除去してくれます。能力を使っても《マイアの処罰者》はタフネス4なので生き残りやすく、《刷新された使い魔》は飛行でダメージが当たらないので、これらのフィニッシャーと相性が良いクリーチャーです。
《胆液の水源》はこのデッキ定番のアドバンテージ源で、《熱狂的な献上》や《クラーク族のシャーマン》といったカードと相性が良く、特に《熱狂的な献上》と組み合わせることで2マナ3枚ドローになります。
《命取りの論争》が退場したことで、《熱狂的な献上》は主要のアドバンテージ源として今後もよく見かけるカードになりそうです。
《血の泉》は1マナで2つのアーティファクトを場に出せるので、「親和」クリーチャーのコスト削減や「金属術」に貢献します。グリクシス親和の強みは、墓地対策の《虚無の呪文爆弾》をメインから使えることで、青単テラーやリアニメイトなど墓地を使うデッキとのマッチアップに強くなります。
総括
先週末に開催された『Pauper Challenge』の結果を見ていきましたが、禁止改定後のパウパーはさまざまなアーキタイプが活躍していました。
試験的に禁止解除がされた《満潮》と《予言のプリズム》を採用したデッキも早速入賞していましたが、現在のところ環境の健全性を損なうほどの影響は出ていない印象です。
USA Pauper Express vol.1は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。良いパウパーライフを!