はじめに
みなさん、こんにちは。
3月31日に禁止改定があり、大方の予想どおりレガシーからは《まき散らす菌糸生物》と《カザド=ドゥームのトロール》が禁止になりました。
《カザド=ドゥームのトロール》は《Underground Sea》をサーチしつつ《再活性》や《動く死体》の対象にもなるため、長い間ディミーアリアニメイトの安定性を支えていたカードでした。
《超能力蛙》禁止後の環境でも、ディミーアリアニメイトがトップメタの一角であり続けた理由は、この《カザド=ドゥームのトロール》の存在にあったところが大きく、今回の禁止は妥当といえます。
《まき散らす菌糸生物》を使っていたエルドラージは、赤単ストンピィという天敵が存在するため、ディミーアリアニメイトと比べるとメタゲーム全体のシェアは低くなっています。しかし、基本土地を追放しつつ《不毛の大地》をサーチしてくる動きは多くのプレイヤーに歓迎されず、デッキ選択の幅を狭めてしまっている要因のひとつとしても指摘されており、今回禁止となりました。
長くなってしまいましたが、今回の連載では『Legacy Showcase Qualifier』と、先週末に開催された『Legacy Challenge』の入賞デッキを見ていきたいと思います。
4/5(土) 『Legacy Showcase Qualifier』 -禁止を免れたナドゥが上位に多数-
『Legacy Showcase Qualifier』は、『Legacy Showcase Challenge』でトップ8に入賞するか、ラストチャンス予選で5-0したプレイヤーのみが参戦できる招待制のイベントです。優勝者には、MOCS本戦とプロツアーの参加権利が与えられるため、参加者30名と小規模ながらレベルの高いイベントでした。
新環境ということで、今大会の上位にはさまざまなデッキが見られました。やはり《カザド=ドゥームのトロール》を失って弱体化したリアニメイトは減少し、禁止を免れた《有翼の叡智、ナドゥ》デッキが優勝含めて複数入賞しています。
バントナドゥ
このバージョンは、セファリッド・ブレックファーストのようにコンボで勝つというよりも、《コーの遊牧民》+《有翼の叡智、ナドゥ》で毎ターンアドバンテージを得て《剣を鍬に》や《意志の力》などでコントロールしていくことを重視しています。
☆注目ポイント
マナクリーチャーによるマナ加速と、サーチスペルである《緑の太陽の頂点》を使えるのがこのバージョンの特徴で、マナクリーチャーを利用することで《有翼の叡智、ナドゥ》や《時を解す者、テフェリー》といった脅威を2ターン目から展開できます。
《緑の太陽の頂点》は、序盤では《ドライアドの東屋》をサーチしてマナ加速したり、キーカードの《有翼の叡智、ナドゥ》を守れる《森を護る者》や、墓地対策の《忍耐》など状況に応じた緑のクリーチャーをサーチできるため、メインから幅広いマッチアップに対応できます。
今回のリストの特徴は、なんといっても《邪悪鳴らし》です。コンボ以外の勝ち手段である《自然の怒りのタイタン、ウーロ》のために墓地を肥やしつつ必要なカードを探すことができ、落とし子・トークンも《有翼の叡智、ナドゥ》の能力を誘発させる用のクリーチャーになります。
サイドボードにはいろいろなマッチアップに対応できるように1枚挿しが多く、墓地対策や置物対策に複数のスロットが割かれています。《緻密》は主にThe Spyに対して、追加の《意志の力》のように機能します。
スニーク・ショー
《食糧補充》を獲得したことで強化され、このデッキよりコンボスピードで勝っていたリアニメイトの減少で復権してきたスニーク・ショー。
最近ではオムニテルも台頭してきていますが、《実物提示教育》以外でファッティを出す手段である《騙し討ち》が使える分、スニーク・ショーはほかの《実物提示教育》系デッキに有利です。
☆注目ポイント
スニーク・ショーのエキスパートであるJPA93は、今大会ではハンデスやサイドボードのカードのために黒をタッチしたバージョンをプレイしていました。
黒をタッチするメリットは、ほかのコンボや青いデッキとのマッチアップで使える《思考囲い》を使えることです。最近流行っているオムニテルにも有効で、ショーテル系デッキのミラーでは《実物提示教育》を使うのはリスクが大きいので安全確認できるのは重要です。
特定のカードを探しつつアドバンテージも得られる《食糧補充》は、あの《時を越えた探索》を彷彿とさせます。《時を越えた探索》が使えた頃のレガシーでは、《実物提示教育》デッキの人気が高く、《食糧補充》はこれらのデッキに再び活躍の機会を与えるカードとなっているようです。
また、《古えの墳墓》など2マナランドを使うデッキは《食糧補充》をプレイしやすくなっています。
サイド後はコンボ以外の勝ち手段として《オークの弓使い》が採用されています。このデッキ相手には、サイド後に除去が減らされる傾向にあるため対策されにくく、小型クリーチャーに対しての除去としても機能します。
4/11(金) 『Legacy Challenge 32』 -フェアデッキの復権-
開催日:2025年4月11日
優勝 グリクシステンポ
準優勝 デス&タックス
3位 デス&タックス
4位 赤単ストンピィ
5位 スニーク・ショー
6位 セレズニアエネルギー
7位 ディミーアテンポ
8位 デス&タックス
グリクシステンポ、ディミーアテンポ、デス&タックスといったフェアデッキが複数入賞していました。
グリクシステンポ
ディミーアテンポに赤をタッチしたバージョン。青黒バージョンよりも《不毛の大地》や《血染めの月》に弱くなっていますが、ミラーマッチやセファリッド・ブレックファースト、スニーク・ショー、《ウルザの物語》を使うデッキとの相性が改善されています。
☆注目ポイント
赤をタッチするメリットとしては、除去や妨害の選択肢が広がることが挙げられます。青黒バージョンが対処しにくかった《知りたがりの学徒、タミヨウ》や《悪夢滅ぼし、魁渡》、《濁浪の執政》といった脅威も、《溶鉄の崩壊》や《紅蓮破》などで処理できます。
《紅蓮破》はセファリッド・ブレックファーストや復権してきた《実物提示教育》系のコンボにも有効で、多くのデッキが採用している《食糧補充》もカウンターできます。
《食糧補充》はかつて青いデッキのアドバンテージ源として採用されていた《苦い真理》のように使えます。《苦い真理》と異なりライフロスがなく、青いカードなので《意志の力》のコストにも使用可能です。また《神秘の聖域》で再利用できるので、中盤以降もリソースが枯渇しにくくなっています。
サイドの《溶融》のおかげで、《ウルザの物語》や《虚空の杯》を効率よく処理することができます。メインから採用されている《溶鉄の崩壊》と合わせると、グリクシスバージョンは《虚空の杯》が対策しやすくなっています。
《まき散らす菌糸生物》が禁止になったことで、《記憶への放逐》を採用する必要性が薄れています。その空いた枠には、赤単ストンピィやスニーク・ショーなど複数のマッチアップで使える《水流破》が採用されています。
4/12(土) 『Legacy Challenge 32』 -遅い環境で猛威を振るう高速コンボ-
開催日:2025年4月12日
優勝 The Spy
準優勝 赤単ペインター
3位 グリクシステンポ
4位 赤単ストンピィ
5位 スゥルタイ豆の木
6位 赤単ストンピィ
7位 5色コントロール
8位 赤単ペインター
デス&タックスやスゥルタイ豆の木といった遅いデッキが復権してきている中、優勝したのは高速コンボのThe Spyでした。
カウンターを使わないフェアデッキが復権してきているため、それらに強いThe Spyのような高速コンボが増えているようです。
スゥルタイ豆の木
《まき散らす菌糸生物》が禁止になったことで《豆の木をのぼれ》を使ったコントロールデッキも復権してきています。
《豆の木をのぼれ》デッキは、今大会で入賞していたスゥルタイ型や《力線の束縛》を採用した多色バージョンなど、いくつかバリエーションが存在しますが、青と緑の優秀なカードを多数搭載している点は共通しています。
多色でクロックが遅いため高速コンボや《血染めの月》には弱くなりますが、イゼットデルバーやディミーアテンポなどフェアデッキに対して強いデッキになります。
☆注目ポイント
混成マナシンボルの《ラクシャーサ流取り引き》は、《豆の木をのぼれ》デッキと非常に相性が良いスペルです。3マナでプレイできますが、マナ総量は6なので《豆の木をのぼれ》を誘発させることができ、さらにアドバンテージを稼ぐことができます。
さらに、ドローではないので《オークの弓使い》に引っ掛からず、墓地も肥やせるので《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《壌土からの生命》《濁浪の執政》など、デッキに採用されている複数のカードとシナジーがあるのも重宝されている理由になります。また、《意志の力》や《活性の力》のピッチコストとしても使用可能です。
サイドは赤単ストンピィ対策の《水流破》や、コンボ対策である《否定の力》《漂流自我》《虚空の力線》などに多くのスペースが割かれています。特に《虚空の力線》は、The Spyやリアニメイトといった墓地を使った高速コンボに対して、1ターン目のアクションを後手でも対策できるので重宝します。
総括
禁止改定の影響により、トップメタだったディミーアリアニメイトが数を減らしたことで環境が大きく変化しているようです。
《実物提示教育》系のデッキが増えただけでなく、ディミーアテンポや豆の木コントロールなどが中心で環境が遅くなったことで、デス&タックスも復権してきています。デス&タックスは、基本土地が多めで《霊気の薬瓶》もあるため赤単ストンピィに強く、現在は良い立ち位置にあります。
遅いデッキが活躍している環境では、The Spyのような高速コンボも勝ちやすくなっています。1ターン目からコンボを仕掛けられる戦略は、カウンターを採用していないデッキにとってかなりの脅威です。
《有翼の叡智、ナドゥ》デッキは、『Legacy Showcase Qualifier』では優勝含め上位入賞していましたが、その後のイベントではそれほど高い勝率を出していないようです。
USA Legacy Express vol. 252は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!