Translated by Takumi Yamasaki
(掲載日 2025/04/18)
はじめに
『タルキール:龍嵐録』のカードがオンラインで使用できるようになって1週間、その一見無害そうなアーティファクトは、さまざまな場所で見かけるようになりました。
《僧院の導師》の単なるオマージュのように見えた《コーリ鋼の短刀》は、今では2025年のスタンダード向けにアップデートされたバージョンのカードのようです。
マナ・コストが軽く、クリーチャー除去を回避でき、このカード自身で果敢を誘発させることもできます。さらに「疾風」は、クリーチャー呪文にも反応するのです!
モダン
イゼット果敢
Baku_91は、モダンではしばらく見かけなかったイゼット果敢で『Modern Showcase Qualifier』を制し、MOCSへの出場権を獲得しています。
《コーリ鋼の短刀》は、《ミシュラのガラクタ》と相性の良いカードとして今後よく見かけるカードリストに新たに加わりました。単純に《コーリ鋼の短刀》を出し、すぐに《ミシュラのガラクタ》をプレイすることで「疾風」が2ターン目に誘発します。これはスタンダードではまず見られない動きでしょう!
モダンには0マナの強力な呪文が豊富に存在するため、《コーリ鋼の短刀》の能力を誘発させるのが非常に簡単です。また、与えるダメージもどんどん大きくなっていきます。「疾風」を誘発させればさせるほどモンク・トークンの数が増え、「果敢」により呪文を唱えるたびに盤面のパワーが増加していくのです!
従来の果敢デッキは、たとえば《電気放出》や《火の怒りのタイタン、フレージ》を多数搭載したエネルギーデッキのような相手には、ほとんど勝ち目がありませんでした。ですが、《コーリ鋼の短刀》は毎ターンモンク・トークンを生成し、ときには相手のターンにも追加でトークンを出せるので、そうした軽量除去を多く抱えた相手を困らせる手段になるのです!
《コーリ鋼の短刀》は、デッキの速度をさほど犠牲にすることなく、果敢デッキが抱える最大の弱点のひとつを補ってくれています。こういった視点で見れば、Baku_91がこのイベントを制したのも納得です。
それでは、《コーリ鋼の短刀》の「アーティファクト」というカードタイプに注目して活用するとしたらどうでしょう?
《ジェスカイの隆盛》コンボ
『Modern Showcase Qualifier』の準優勝はlunaloveeeで、革新的な《ジェスカイの隆盛》コンボを使用していました。これは、最近禁止された《死の国からの脱出》コンボの後継ともいえる構成になっており、デッキの核である《知りたがりの学徒、タミヨウ》や《湖に潜む者、エムリー》、そして多数のモックスがそのまま残されています。
問題なのは、《ジェスカイの隆盛》が《湖に潜む者、エムリー》との組み合わせで無限コンボが可能とはいえ、そのコンボが《死の国からの脱出》ほど強力ではない点です。特に、《湖に潜む者、エムリー》にタイミングよく除去を撃たれてしまうと、ほとんどのコンボプランは止まってしまいます。なので、《ジェスカイの隆盛》コンボを勝ち手段の中心に据えるのは、やや難しいように思われます。
準優勝後、本人も「このデッキは《コーリ鋼の短刀》を中心に再構築すべきかもしれない」と語っており、私も《河童の砲手》というバックアッププランには敬意を払いつつ、その意見には同意せざるを得ませんでした。
オンラインのプレイヤーたちは即座に調整を開始し、Junkmenerは《コーリ鋼の短刀》を採用した構成で、すでに『Modern Challenge』でトップ8に入賞しています。
《コーリ鋼の短刀》と《オパールのモックス》の相性は抜群です。デッキにモックスが入っていれば、2枚の呪文を1ターン内に唱えるのは容易ですし、《湖に潜む者、エムリー》は0マナのカードを何度も再キャストできるだけでなく、実際の脅威となるカードを再キャストできる珍しいカードでもあります。
《ジェスカイの隆盛》はコンボパーツであるだけでなく、果敢の誘発回数を実質的に倍にできます。いざというときには《コーリ鋼の短刀》を《湖に潜む者、エムリー》に装備して速攻を付与し、次のターンを待たずしてコンボを始めることすら可能です!
さらに重要なのは、《コーリ鋼の短刀》が《石のような静寂》やアーティファクト除去に対しても有効な攻撃手段として機能することです。たとえ相手に《溶融》を唱えられても、生成されたモンク・トークンは戦場に残りますからね!
このような構築は非常に将来性を感じさせますし、このカードが今後も注目され続けると予想しています。あるいは、コンボを完全に捨てて、「親和」のような純粋なアーティファクト・ビートダウン型に移行するのもひとつの道かもしれませんね。
パイオニア
パイオニアはしばらく競技シーンから外れてしまいましたが、私がこのフォーマットでよく使うイゼットフェニックスは、《コーリ鋼の短刀》を採用するのに最適なデッキに思えます。
《第三の道の偶像破壊者》は墓地対策に強いお気に入りのカードで、特に兵士・トークンが《プロフトの映像記憶》のカウンターの置き先になる点が優れていました。《コーリ鋼の短刀》は、このカードの上位互換といえるでしょう。
もし近々パイオニアをプレイするなら、私は間違いなくこのデッキの可能性を探ってみたいと思います。
スタンダード
スタンダードはモダンに比べてカードパワーがひかえめなフォーマットですが、《コーリ鋼の短刀》はすでにこの環境で脅威となりつつあります。3ターン目に《コーリ鋼の短刀》をプレイし、次に《選択》を唱える動きは依然として強力です。
今週日曜に行われた『Standard Showcase Qualifier』では、なんと新たな構築のイゼット果敢がトップ8に4つも入賞しました。そのうちの1つは私が使用したものです。
イゼット果敢
この予選に向けて準備をしていましたが、新しいデッキについてはあまり試していません。《コーリ鋼の短刀》入りの果敢デッキは、個人的に最も楽しみにしていたデッキで、数試合プレイするだけで非常に強力なことがすぐに分かりました。
予選前の構築にはかなり満足していました。《精鋭射手団の目立ちたがり》や《巨怪の怒り》といった最も攻撃的な要素は、除去によってゲームがスローダウンしてしまうとやや弱く感じられるものの、単に《精鋭射手団の目立ちたがり》を「計画」するだけで、相手は除去を構えないといけないというプレッシャーを与えられるのが良かったです。
《巨怪の怒り》が押し通すダメージ量もかなり好印象で、実際にはサイドアウトすることも多かったとはいえ、そういった手段にアクセスできるのは心強かったです。
ほかのプレイヤー、たとえばBernastorresはやや爆発力を抑えた構築のイゼット果敢を選択しており、《精鋭射手団の目立ちたがり》や《巨怪の怒り》を不採用とし、《この町は狭すぎる》のループに重点を置いていました。アグロデッキに轢かれない限りは、有力な選択肢だと思います!
どちらの構築方針を選ぶにせよ、今後は相手の《コーリ鋼の短刀》に対応する準備が必要です。私のデッキではその点が不十分で、サイドボードに《削剥》を2枚ほど入れておけばよかったと後悔しています。
赤単
まったく別のアプローチとして、従来のハツカネズミ・パッケージを中心に据えた赤単アグロに《コーリ鋼の短刀》を採用するのも有効です。
ハツカネズミデッキは基本的にクリーチャー中心で、キャントリップがほとんどないので「疾風」や「果敢」をうまく活かすのが難しい側面があります。その一方で、《コーリ鋼の短刀》は、ゲーム後半に「雄姿」を持つハツカネズミたちの能力を誘発させる素晴らしい手段となります。
スタンダードにおける《コーリ鋼の短刀》への対処法
基本的に、2ターン目にモンク・トークンを出すことはできませんが、《コーリ鋼の短刀》のスタンダードにおける強さは、これまでオールイン型とされてきたデッキに粘り強さを与えてくれる点にあります。
実はアーティファクトは、現在のスタンダードでよく使われている除去では対処しにくいカードタイプです。《失せろ》にもアーティファクトを除去できるとは書かれていませんね。
青や黒では、盤面のアーティファクトを処理する手段が限られています。《逃げ場なし》を何度も使っても、延々と湧き出るモンク・トークンの群れにはまったく歯が立ちません。効率よく対処できるのは、《強迫》や《鋼と油の夢》などの手札破壊、あるいは《呪文貫き》などの打ち消し呪文です。
赤には《間の悪い故障》やおなじみの《削剥》といった選択肢がありますが、それらを使ってもマナ的なアドバンテージは得られず、相手にはすでにトークンを残されてしまいます。《コーリ鋼の短刀》と望ましい形で美味しくカード交換するのは難しいでしょう!
エスパーピクシーでは、過去に《第三の道のロラン》が採用されていました。このカードは赤系のアグロデッキに対してあまり強くありませんが、《コーリ鋼の短刀》自体に対しては最適な解答のひとつといえるでしょう。
《一時的封鎖》はスタンダードで常に見かけるカードですが、《コーリ鋼の短刀》の登場で採用する理由がさらに増えました。もっとも、《この町は狭すぎる》や《洪水の大口へ》といったバウンス呪文には注意が必要で、タイミング次第では一気にダメージを受ける展開も考えられます。
いずれにしても、もし近々スタンダードの地域チャンピオンシップに出場するのであれば、『タルキール:龍嵐録』のベストカードである《コーリ鋼の短刀》への対策をしっかり準備しておくべきです。油断は禁物ですよ!!