はじめに
みなさん、こんにちは。
3月31日に禁止改定があり、大方の予想どおり《死の国からの脱出》が禁止になりました。
脱出基地コンボは《オパールのモックス》が解禁後に環境を支配していたデッキで、最速で2ターン目にコンボを決めることも可能でした。また、一貫したゲームプランによって対策が難しく、サイド後は勝ち手段を増やすことで、マークが厳しい中でも高い勝率を維持していました。
そういった理由からも《死の国からの脱出》の禁止を望む声は多く、今回の変更にはほとんどプレイヤーが納得していたように思えます。
前置きが長くなってしまいましたが、今回は禁止改定後のモダン環境を見ていきます。
4/11(金) 『Modern Showcase Qualifier』 -イゼット果敢の復権-
開催日:2025年4月11日
優勝 イゼット果敢
準優勝 《ジェスカイの隆盛》コンボ
3位 青単ベルチャー
4位 アミュレットタイタン
5位 親和
6位 オルゾフブリンク
7位 エルドラージランプ
8位 ジェスカイエネルギー
禁止改定直後にMOで開催された『Modern Showcase Qualifier』は、シーズン中に行われた『Modern Showcase Challenge』でトップ8に入賞するか、直前予選で5-0をすることで参加権利が獲得できるイベントです。
この大会の優勝者は、MOCS本戦とプロツアーへの権利が得られることもあり、ほかのイベントと比べて極めて価値の高いものとなります。
そして新環境のモダンを制したのは、『タルキール:龍嵐録』のカードをフィーチャーした「イゼット果敢」でした。
イゼット果敢
イゼット果敢は、『モダンホライゾン2』がリリースされる前の環境で活躍していたアグロデッキで、《溶岩の投げ矢》や《ミシュラのガラクタ》といった軽い優秀なスペルにアクセスできるモダンでは、非常に爆発力の高いデッキになります。
その後しばらく見られなかったイゼット果敢でしたが、『タルキール:龍嵐録』から登場した注目の新カード《コーリ鋼の短刀》を得たことで復権しました。
☆注目ポイント
《コーリ鋼の短刀》はモンク・トークンを出せる「疾風」能力を持ち、モダンでは《ミシュラのガラクタ》のおかげで簡単に能力を誘発させることができます。さらに、出てきたトークンに装備してトランプルと速攻を付与できるので、すぐさま攻撃可能です。また、《溶岩の投げ矢》や《魔力変》といったインスタントスペルを活用することで、相手ターンにモンク・トークンを出すこともできます。
果敢クリーチャーが除去されてしまうと、後続のクロックを探すためにリソースを費やすことになり、息切れしやすくなるのがこのデッキの弱点でした。ですが、《コーリ鋼の短刀》によって呪文を数枚唱えているだけで追加のクロックを展開できるため、除去を多用するデッキ相手でもリソース切れが起こりづらくなっています。
果敢クリーチャーが1体でも生き残れば速やかにゲームを終わらせることができるため、《コーリ鋼の短刀》はこのデッキが抱えていた問題の多くを解決しています。
1マナのスペルが中心なので《溶融》のような《虚空の杯》対策は必須です。禁止改定後の環境でも引き続き活躍しているエルドラージなど、多くのマッチアップで使える《記憶への放逐》も4枚採用されています。
4/13(日) 『Modern Challenge 32』 -禁止改定後のコンボデッキ-
《コーリ鋼の短刀》はイゼット果敢だけでなく、《ジェスカイの隆盛》を使ったコンボデッキでも使用されています。
また今大会でも、イゼット果敢が複数入賞と安定した成績を残していました。
《ジェスカイの隆盛》コンボ
《死の国からの脱出》は禁止になりましたが、《湖に潜む者、エムリー》と《知りたがりの学徒、タミヨウ》、2種類のモックスを利用した戦略は残っています。《ジェスカイの隆盛》コンボは、新環境のデッキのなかでも最高の《オパールのモックス》デッキとして注目を集めているデッキのひとつです。
《湖に潜む者、エムリー》+《ジェスカイの隆盛》+《ミシュラのガラクタ》がそろえばコンボがスタートします。
《エムリー》の起動型能力で墓地から《ミシュラのガラクタ》をプレイして《ジェスカイの隆盛》を誘発させ、《エムリー》をアンタップさせます。《ミシュラのガラクタ》を起動するとまた同じ動きができるので、これを繰り返すことで《エムリー》の起動型能力を使い続けることが可能です。
《ジェスカイの隆盛》でルーティングしていく過程で、墓地に2枚の《モックス・アンバー》か《オパールのモックス》が落ちれば無限マナに。そのマナを使い《上天の呪文爆弾》で相手のブロッカーをすべてバウンスして、《ジェスカイの隆盛》によって強化された《湖に潜む者、エムリー》の攻撃を通して勝利です。
☆注目ポイント
《モックス・アンバー》《オパールのモックス》《ミシュラのガラクタ》といった0マナアーティファクトを利用すれば、《湖に潜む者、エムリー》を1ターン目にプレイすることは容易です。《湖に潜む者、エムリー》+《ミシュラのガラクタ》はそれだけでも毎ターンアドバンテージを稼ぐことができ、コンボパーツである《ジェスカイの隆盛》にもたどり着きやすくなります。
《知りたがりの学徒、タミヨウ》や《ウルザの物語》などアドバンテージを得る手段が豊富で、このデッキはアーティファクトを多用するので《ウルザの物語》からフィニッシャー級の構築物・トークンを生み出すことができます。
《ジェスカイの隆盛》は《湖に潜む者、エムリー》とのコンボ以外で決定力に欠けるのが難点でしたが、新カードの《コーリ鋼の短刀》と組み合わせることにより、0マナのアーティファクトを数回プレイするだけでも、爆発的なダメージをたたき出すことができます。コンボプランだけでなく、ビートダウンプランも取れるようになったのはかなりの強化です。
4/18(金) 『Modern Challenge 32』 -マークタイドの復権-
開催日:2025年4月18日
優勝 イゼット果敢
準優勝 ディミーアマークタイド
3位 アミュレットタイタン
4位 ボロスエネルギー
6位 ボロスエネルギー
7位 ルビーストーム
8位 ディミーアマークタイド
ルビーストーム、アミュレットタイタン、《ジェスカイの隆盛》コンボといったコンボデッキが活躍している環境で、ディミーアマークタイドが複数入賞していました。
イゼット果敢は今大会でも優勝しており、現環境のTier 1といっても過言でない強さを見せています。
ディミーアマークタイド
コンボデッキの多くと相性が良いディミーアマークタイド。このデッキの主力である《超能力蛙》は、2マナと軽く火力除去で処理されにくいため、果敢デッキにも強い優秀なクリーチャーです。
《忌まわしき眼魔》を軸にしたディミーア眼魔も見られましたが、最近は墓地を使ったデッキが多いので環境の墓地対策も増えており、リアニメイト戦略の立ち位置はあまり良いとはいえません。そのため、現在はコントロールに寄せたディミーアマークタイドが主流になっています。
☆注目ポイント
《知りたがりの学徒、タミヨウ》はあまり隙を見せずにリソースを稼ぐことができるので、タップアウトがリスクになる各種コンボデッキ相手に有効で、キャントリップを活用することによって2ターン目にプレインズウォーカーに変身することも可能です。
《否定の力》や《緻密》といった0マナの妨害スペルがあるので、後手でも2ターン目に《超能力蛙》をプレイしやすくなっています。特に《魂の洞窟》経由のクリーチャーにも対応できる《緻密》は、アミュレットタイタンやエルドラージに有用で、ボロスエネルギーの《火の怒りのタイタン、フレージ》も返せるなどフェア、コンボ問わず活躍の機会があります。
《記憶への放逐》はエルドラージだけでなく、ボロスエネルギーに対してもある程度有効で、《岩への繋ぎ止め》《火の怒りのタイタン、フレージ》《静牢》《鏡割りの寓話》といったカードの誘発型能力を妨害できます。
4/18(金) 『Modern Challenge 64』 -複数のアグロデッキが入賞-
ボロスエネルギー、果敢デッキといったアグロデッキが複数入賞していました。鱗親和や《ジェスカイの隆盛》コンボといった《オパールのモックス》を使ったデッキも結果を残しています。
ジェスカイ果敢
先週末に開催された『Modern Challenge』では、イゼットに白をタッチしたジェスカイ果敢も結果を残していました。
☆注目ポイント
白をタッチするメリットは、除去やサイドボードの選択肢が豊富なことで、特に火力スペルで除去するのが難しい《超能力蛙》や、このデッキにとって厄介な《虚空の杯》への解答になる《虹色の終焉》を採用できます。
《火の怒りのタイタン、フレージ》も使えるので、イゼット果敢よりもロングゲームに対応しやすくなっています。ただ、プレイするのに3マナ、「 脱出」のコストも4マナとこのデッキにとっては重いスペルになるため、1枚のみの採用になっています。
果敢デッキは《溶岩の投げ矢》を使う関係でデッキのマナ基盤が「山」中心なため、《岩への繋ぎ止め》も使いやすい除去になります。このデッキにとって対策が困難な《濁浪の執政》など、環境のさまざまなクリーチャーを処理することができます。
総括
『タルキール:龍嵐録』最高のカードと評されている《コーリ鋼の短刀》は、果敢デッキや《ジェスカイの隆盛》コンボの新戦力として注目を浴びています。
そのほかにも、禁止改定後の環境ではエルドラージ、ボロスエネルギー、アミュレットタイタン、オルゾフブリンクなどいろいろなデッキが活躍していました。
鱗親和や親和といった《オパールのモックス》デッキも増加しており、最高の《オパールのモックス》デッキを模索しているプレイヤーも多くいるようです。
USA Modern Express vol.131は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!