はじめに
みなさん、こんにちは。
禁止改定から一か月以上が経ち、今週末にはテーブルトップの大規模なイベントである『第10期パウパー神挑戦者決定戦』が開催されます。どんなデッキが活躍するでしょうか。
さて、今回の連載ではPauper Challengeの入賞デッキをチェックしていきましょう。
パウパーでも呪禁オーラが大活躍
禁止改定後も活躍し続けている赤単、グリクシス親和、青単テラーなどがメタゲームの中心となっています。そのほか、《予言のプリズム》の禁止解除により強化されたトロンの入賞も見られました。
今大会で優勝したのは呪禁クリーチャーにオーラを付けてビートダウンする呪禁オーラでした。
呪禁オーラ
呪禁オーラは、《林間隠れの斥候》、《ぬめるボーグル》 、《シラナの岩礁渡り》といった呪禁クリーチャーとオーラを軸にしたアグロデッキです。モダンではおなじみのアーキタイプですね。
各呪禁クリーチャーや《祖先の仮面》、《天上の鎧》といったオーラはコモンカードとして印刷されているため、パウパーでもアーキタイプとして成立します。
『モダンホライゾン3』から登場した《邪悪鳴らし》を得たことで安定性が向上し、強化されています。直線的な戦略で初手に影響しやすいデッキになるので、ほかのアーキタイプよりもマリガンは重要です。
☆注目ポイント
《邪悪鳴らし》は土地、クリーチャー、オーラなど、必要なものを手札に加えることができます。初手のキープ基準を上げてくれるカードであり、このカードを得たことによってデッキの安定性が大きく向上しています。エルドラージ・落とし子・トークンを生成する効果もこのデッキの弱点の一つであった布告系除去対策になります。
このデッキでは《怨恨》や《アルマジロの外套》といったオーラでクリーチャーにトランプルを容易に付与できるので、《強行突破》は戦闘以外の強力なダメージ源として機能します。
サイドの《法と優雅の仮面》は赤いスイーパー対策として必須のカードです。そのほか、ミラーマッチ対策として《軍旗の旗手》が、《一瞬の平和》や《虹色の断片》対策として、ダメージ軽減をできなくする《鋭い痛み》が採用されています。
エルフ
部族デッキの代表格、エルフはパウパーでも成立するアーキタイプで、禁止改定後の環境ではポピュラーなデッキの一つです。
《ラノワールのエルフ》《エルフの神秘家》《フィンドホーンのエルフ》といったマナクリーチャーを並べて、《ティタニアの僧侶》で一気に大量のマナを出し、さらなる展開につなげて相手を圧倒します。
大量に出るマナを利用して巨大な《ニクス生まれのハイドラ》をプレイし、《森林守りのエルフ》で強化して勝利するといった豪快なフィニッシュも狙えるデッキです。
☆注目ポイント
《ティタニアの僧侶》はこのデッキの核となるマナエンジンであり、除去されずに残れば3ターン目から3-5マナ以上の緑マナを出すことができます。クリーチャーをアンタップできる起動能力を持つ《クウィリーオン・レインジャー》とは相性がよく、組み合わせることで大量のマナを捻出することが可能です。
《クウィリーオン・レインジャー》は《幸運を祈る者》や《森林守りのエルフ》といったクリーチャーもアンタップすることができるので、相手にとってはマスト除去となるクリーチャーです。
《ニクス生まれのハイドラ》はストレートにプレイしても強力ですが、自軍のエルフクリーチャーに授与することによって速やかにゲームを終わらせることもできるなど、奇襲性があります。
1マナクリーチャーの連打などで手札を使い切ってしまうことが多く、《紆余曲折》や《暴走の先導》といったクリーチャーを補充するカードで息切れを防ぐことも重要です。
パウパーは呪禁オーラや親和などエンチャントやアーティファクトを使ったデッキが多く見られるため、対策として《仮面の蛮人》がメインからフル搭載されています。
裏返しコンボが優勝するなか、禁止改定後も強さを見せる赤単
優勝こそ逃したものの、今大会でも赤単が複数上位に残っているなど禁止改定後も安定した結果を残し続けています。
現環境のトップメタの一角を担う青単テラーも人気があり、今大会ではイゼットバージョンであるイゼットテラーが入賞していました。
裏返しコンボ
優勝したのは《不屈の部族》+《裏返し》を使った瞬殺コンボデッキです。
手札からカードを1枚捨てることで+0/+4修正される起動型能力を持った《不屈の部族》に《裏返し》をプレイすればパワーとタフネスが入れ替わるため、手札1枚につきパワーが+4される計算になります。
これらのコンボパーツを集めるためにドロースペルが多めに採用されているほか、相手の妨害をカウンターしてコンボを通すために《払拭》や《堂々巡り》が採用されています。
☆注目ポイント
《不屈の部族》の攻撃を確実に通すために、アンブロッカブル能力を付与できる《結婚式への招待状》が採用されています。
《鍛冶屋の技》は1マナと軽く、相手の除去に対するカウンターとして機能します。マッドネススペルの《堂々巡り》は《不屈の部族》を強化しつつ、除去から《不屈の部族》を守ることができる一石二鳥なカードです。
手札を最大3枚まで増やすことができる《戦隊の鷹》は《不屈の部族》と相性が良く、コンボを決めるまで時間を稼ぐブロッカーとしても役に立ちます。十分な枚数の手札がないとコンボを決めることが難しくなりますが、いざとなれば《Whiteout》を利用することで、戦場の氷雪ランドの数だけ《不屈の部族》の能力を起動するといった必殺技も使えます。
このデッキはメインこそ瞬殺コンボに特化していますが、サイド後は追加のカウンター、妨害スペルと《つぶやく神秘家》を投入することでコントロールに変形することも可能です。
《渦まく知識》、《思案》、《定業》など軽いキャントリップやカウンターを複数採用しているため《つぶやく神秘家》を強く使うことができます。
イゼットテラー
パウパーを代表する青単コントロールデッキとして、青単テラーがあります。
デッキ名でもある《トレイリアの恐怖》はスペルを多用するコントロールデッキにおいて、少ないマナでプレイすることが容易です。こちらがタップアウトせずにフィニッシャーをプレイできるため、カウンターや除去によってゲームをコントロールすることに専念できます。
今回入賞したイゼットバージョンのデッキは、《移り変わるフィヨルド》や《危険地帯》といったパウパーでも使える2色土地&フェッチランドによってマナ基盤を安定させ、スイーパーの《焦熱の連続砲撃》にアクセスでき、クリーチャーデッキに強い構成となっております。
☆注目ポイント
《つぶやく神秘家》は除去耐性こそないものの、生き残ればクリーチャー・トークンを量産できる、攻守にわたって優れたクリーチャーです。統治者になれる《真紅艦隊の准将》はこのデッキにおいて最高のアドバンテージ源兼フィニッシャーとなります。効率的な除去やスイーパーが使えるこのデッキなら統治者の維持もしやすいですね。
そして、なんといってもイゼットバージョンを使う最大の理由は《稲妻》や 《雪崩し》といった効率的な火力スペルにアクセスできることです。
マナ基盤に氷雪土地を使うこのデッキでは、《雪崩し》が序盤から終盤まで有効な除去となります。《焦熱の連続砲撃》は各種アグロデッキやエルフなどクリーチャーを横に並べてくるデッキとのマッチアップで有効なスイーパーです。また、このデッキのおもなクリーチャーはタフネス2以上なので自軍のクリーチャーを巻き込むことなく場をスイープすることができます。
《ロリアンの発見》はカードアドバンテージ源でありつつ、追加の土地としても機能するフレキシブルなスペルです。ソーサリーが墓地に落ちることで《トレイリアの恐怖》のコストの削減にも貢献し、重要な赤マナ源である《移り変わるフィヨルド》もサーチできます。
イゼットバージョンにすることでサイドボードのカードの選択肢も広がります。《火の中へ投げ捨てる》はグリクシス親和やジャンドといったアーティファクトを多用するデッキに加え、フェアリーやエルフといった小型クリーチャーを複数対処することができるなど、現環境のメタに合った優秀なスペルです。《紅蓮破》も強力なカードで、ミラーマッチを含め、多くの青いデッキに対して有効です。
ハイタイド、トロンを退けてターボフォグが優勝
定番のデッキとして活躍し続けている赤単や親和のほか、禁止解除の恩恵を受けたトロンやハイタイドといったデッキの活躍が見られました。
また、コンボデッキが多い環境では青単フェアリーなど青いテンポデッキも良い選択肢となります。
ターボフォグ
《一瞬の平和》などフォグ系のスペルで相手の攻撃をしのぎ、ドロースペルでアドバンテージを稼ぎながら、最終的には豊富なマナを使って《思考の流れ》によるライブラリーアウトや《バジリスク門》によって強化されたクリーチャーで勝つコントロールデッキです。
構成上、アグロやフェアデッキに対して無類の強さを見せるデッキですが、一方でコンボデッキやカウンターを多用する青いデッキは苦手とするなど、相性にバラつきがあります。
☆注目ポイント
フラッシュバック持ちの《一瞬の平和》は1枚で2ターン凌げるという、パウパーで最高のフォグ系スペルとなります。警戒などを考慮しないのであれば、フォグとして機能しつつ攻撃クリーチャーのアンタップを防ぐ効果の《もつれ》も実質的に1枚で2ターン凌げるカードです。
バーンなど、フォグ系のスペルでは対処できない火力スペルを多用するデッキ対策としては、《嵐の乗り切り》や《焚火》といったライフゲイン手段が有効です。特に《焚火》は追放することでライブラリー修復ができるため、墓地に落ちたフォグ系のスペルや《思考の流れ》をライブラリーに戻して再利用することができます。
絶対に切らしてはいけないフォグ系スペルを補充する手段として、ドロースペルが大量に採用されています。《命取りの論争》が禁止されたのは痛手ですが、《腸抜きの洞察》や《熱狂的な献上》は健在なため、《胆液の水源》との組み合わせでカードを大量にドローすることができます。
フォグ系スペルの在庫が危なくなったり、厄介なシステムクリーチャーなどを対処するために《墓所のネズミ》が採用されています。小型クリーチャーを一掃することができ、《毒素の分析》と組み合わせれば全体除去としても機能します。
《バジリスク門》はこのデッキにライブラリーアウト以外の勝ち手段を提供する土地です。終盤はクリーチャーを大幅に強化することが可能で、《カルニの庭》の植物トークンや《墓所のネズミ》もフィニッシャー級の脅威となります。
総括
禁止改定から一か月以上が経ち、台頭、復権してきたアーキタイプが明らかになってきました。
禁止改定によって《命取りの論争》を失っても親和は人気があるアーキタイプの一つとして各チャレンジで入賞しています。《カルドーサの再誕》+《ゴブリンの奇襲隊》のコンボを失った赤単も、効率的なクロック、火力スペル、シナジーのおかげで、まだまだパウパーの定番のデッキの一つとして活躍していきそうです。
ちなみに、《満潮》と《予言のプリズム》は試験的に禁止を解除されている状況ですが、ハイタイドやトロンは上位で見かけることがあるものの、懸念されていたほどの支配力は見せていないため、現時点では再び禁止になる可能性は低そうです。
総括すると、MOの結果から現環境のTier1は赤単、グリクシス親和、青単テラーと予想され、トップメタ以外ではエルフ、ジャンド、青単フェアリー、呪禁オーラ、トロンなど様々なアーキタイプが人気となっています。
今週末に開催される『第10期パウパー神挑戦者決定戦』が楽しみですね。USA Pauper Express Vol.2は以上になります。それでは次回の連載で会いましょう。良いパウパーライフを!