はじめに
みなさん、こんにちは。
3月末の禁止改定からしばらく経ち、予選イベントも含めてモダンの大規模なイベントもいくつか開催されました。
今回の連載では、マジックオンライン(以下MO)で開催された『Modern Challenge』『Modern Super Qualifier』『Modern Showcase Challenge』の入賞デッキを見ていきたいと思います。
『Modern Challenge 32』 -懐かしい形の青白が優勝-
開催日:2025年5月16日
優勝 アゾリウス石鍛冶
準優勝 ゴルガリヨーグモス
3位 エルドラージランプ
4位 ネオブランド
5位 イゼット果敢
6位 ボロスエネルギー
7位 アミュレットタイタン
8位 ボロスエネルギー
先々週の『Modern Challenge』では定番のデッキが結果を残すなか、アゾリウス石鍛冶やネオブランドといった珍しいデッキが入賞していました。
アゾリウス石鍛冶
筆者にとっても懐かしいデッキが優勝していました。石鍛冶デッキは筆者が好きなデッキのひとつで、レガシーでも愛用していたデッキでもあります。6年前にモダンで《石鍛冶の神秘家》の禁止が解除された当時は、アゾリウス・バント・ジェスカイなどさまざまなバージョンを試した記憶があります。
2020年以降カードパワーが高い新カードが登場するにつれて、伝統的な石鍛冶デッキは廃れていきました。《ウルザの物語》登場後はハンマータイムが代表的な石鍛冶デッキとして第一線で活躍していましたが、『モダンホライゾン3』でインフレが加速したことによって、最近は目立った活躍の機会を得られていないのが現状です。
☆注目ポイント
最近は《石鍛冶の神秘家》でサーチできる装備品も充実しています。《カルドラの完成体》は定番の装備品で、最速3ターン目から5/5・速攻・トランプル・破壊不能のクリーチャーを走らせることができます。ただ、7マナと重い装備品なため《石鍛冶の神秘家》が除去されると手札で腐ってしまうことが弱点です。
《謎めいた外套》は「護法2」の回避能力持ちクロックとなり、バウンスさせて再度プレイすることで、マナが余る中盤以降は「偽装」クリーチャーを並べることもできます。
《同化の神盾》は《石鍛冶の神秘家》でサーチできる除去であり、《火の怒りのタイタン、フレージ》などの脅威を除去しつつ、こちらの盤面にフィニッシャーを用意できる優秀な装備品です。
《孤独》《スレイベンの検査官》《石鍛冶の神秘家》《ティシャーナの潮縛り》といった戦場に出たときの能力を持つクリーチャーが多いため、《儚い存在》でアドバンテージを稼ぎやすくなっています。「偽装」したクリーチャーをブリンクすることで、コストを支払わずに表向きにできることは覚えておきましょう。
《ティシャーナの潮縛り》は、各種プレインズウォーカーや《精力の護符》《原始のタイタン》《ウルザの物語》など、強力な能力を持つカードを妨害できる手段として機能します。また、アミュレットタイタンやエルドラージなどのビッグマナ系デッキは、苦手なマッチアップなのでメインから《海の先駆け》が採用されています。
『Modern Super Qualifier』 -イゼット果敢祭り-
開催日:2025年5月22日
優勝 エルドラージランプ
準優勝 イゼット果敢
3位 ボロスエネルギー
4位 イゼット果敢
5位 ボロスエネルギー
6位 ディミーア眼魔
7位 イゼット果敢
8位 イゼット果敢
『タルキール:龍嵐録』で登場した《コーリ鋼の短刀》や《勝利の楽士》は、モダン環境に大きな影響を与えました。
現在のモダンはボロスエネルギーが圧倒的なトップメタで、その次に人気があるのがイゼット果敢です。今大会では優勝こそ逃したものの、プレイオフの半数を占めるなど安定した成績を残していました。
イゼット果敢
各フォーマットで活躍している《コーリ鋼の短刀》は、モダンでもイゼット果敢の新戦力として採用されています。
《ドラゴンの怒りの媒介者》や《僧院の速槍》といった軽いクリーチャーに加え、アタッカーの道を切り開く《溶岩の投げ矢》や《稲妻》などの火力スペルによって、相手を問わず最速3ターン目に勝利できる爆発力があります。
《虹色の終焉》や《摩耗/損耗》といった置物対策のために白をタッチしたバージョンも見られますが、マナ基盤が安定する純正のイゼットバージョンが主流になっているようです。
☆注目ポイント
《ミシュラのガラクタ》が使えるモダンでは《コーリ鋼の短刀》を強く使うことができます。0マナで唱えられる《変異原性の成長》とも非常に相性が良く、状況によっては相手ターンに「疾風」を誘発させるために使い、モンク・トークンを並べることも可能です。
また普通に装備品としても使えるので、《ドラゴンの怒りの媒介者》などに装備させて速攻を付与してすぐに攻撃もできます。《コーリ鋼の短刀》を効率よく誘発させるために、《ミシュラのガラクタ》をすぐにプレイせずに手札に貯めておくプレイングもあるので意識しておきましょう。
《精鋭射手団の目立ちたがり》は除去耐性こそないクリーチャーですが爆発力があり、《変異原性の成長》や《溶岩の投げ矢》を「フラッシュバック」込みでプレイするだけで決定的なダメージをたたき出せます。「計画」もできるので、《コーリ鋼の短刀》と組み合わせて、相手が隙を見せた瞬間により爆発的なダメージを狙うことができます。
《暴力的衝動》は「昂揚」すると対象のクリーチャーに二段攻撃を付与できるスペルで、状況によっては一気にゲームを終わらせることができます。《変異原性の成長》との組み合わせは強力で、コンボデッキに対しても速度で勝負できるようになります。
『Modern Showcase Challenge』 -ゲーム開始前に置かれる多色のエンチャント-
開催日:2025年5月23日
優勝 ドメインズー
準優勝 ネオブランド
3位 青単ベルチャー
4位 エルドラージランプ
5位 青単ベルチャー
6位 エスパーブリンク
7位 ドメインズー
8位 ボロスエネルギー
参加者320名で開催された『Modern Showcase Challenge』を優勝したのはドメインズーでした。
ドメインズー
ドメインズーは《力線の束縛》《部族の炎》《ドラコの末裔》《縄張り持ちのカヴー》といった「版図」スペルを軸にした多色のミッドレンジデッキです。
《ドラコの末裔》+《ギルドパクトの力線》コンボによって、自軍のクリーチャーが警戒・呪禁・絆魂・先制攻撃・トランプルを持つようになるので、単体除去が中心のフェアデッキにとってかなりの脅威となります。
青に寄せて《超能力蛙》を採用したバージョンや、《野生のナカティル》《ニショーバの喧嘩屋》といった軽いクリーチャーを搭載した古典的なバージョン、そして今回優勝した《火の怒りのタイタン、フレージ》《鏡割りの寓話》を多めに採用したリストなど、バリエーションが豊富なのもこのアーキタイプの特徴です。
☆注目ポイント
《ドラコの末裔》はこのデッキの主力クリーチャーで、「版図」によるマナコストの減少によって2マナでプレイすることができます。《縄張り持ちのカヴー》も「版図」の恩恵によって2マナ5/5という驚異的なマナレシオになり、攻撃時の能力も優秀です。特に墓地対策は《火の怒りのタイタン、フレージ》対策になるので、ボロスエネルギーを含めた複数のデッキに有効です。
《火の怒りのタイタン、フレージ》と《栄光の闘技場》パッケージも採用されています。《縄張り持ちのカヴー》や《鏡割りの寓話》のルーティングで直接墓地に落とすこともでき、《稲妻》や《部族の炎》と合わせてライフを削り切るプランもとれます。
このデッキにはパワー4以上のクリーチャーが多く、「獰猛」しやすいため《頑固な否認》が1マナの《否認》として機能します。《記憶への放逐》はエルドラージを含めた複数のマッチアップで有効な打ち消し呪文で、《火の怒りのタイタン、フレージ》の生け贄に捧げる能力を消して定着させることも可能です。
青単ベルチャー
今大会で複数入賞していた青単ベルチャー。コンボデッキに対する妨害が少ないボロスエネルギーに強いため、現在のモダンではいい立ち位置にあるデッキです。
《睡蓮の花》によるマナ加速から4ターン目に《ゴブリンの放火砲》で瞬殺する以外にも、《現実の設計者、タメシ》で別角度から攻めることができるのもこのデッキの特徴です。
☆注目ポイント
コンボデッキでありながら大量に打ち消し呪文が搭載されているので、コントロールデッキのように振る舞うこともできます。土地がすべて表面スペルの両面カードであるため、《撹乱する群れ》のピッチコストを簡単に用意できるとともに、打ち消せる範囲も広がっているのがポイントです。
《現実の設計者、タメシ》は《ゴブリンの放火砲》を墓地から再利用する以外にも《睡蓮の花》ともシナジーを発揮します。場にある土地の数だけ《睡蓮の花》を再利用することができ、大量のマナを出すことができます。
そのマナを利用してバウンスした両面カードをスペルとしてプレイすることもでき、《ゴブリンの放火砲》が手札や墓地になかった場合は大量のマナを利用して《発明品の唸り》でサーチすることも可能です。
《ファラジの考古学者》と《稲妻罠の教練者》の2種類のクリーチャーは、必要なカードを探しつつ《拒絶の閃光》のコストとしても使えます。特に《ファラジの考古学者》は《睡蓮の花》を墓地に落とすこともできるので、《現実の設計者、タメシ》でリアニメイトする下準備にもなります。
総括
禁止改定後のモダンはボロスエネルギーがトップメタで、それに強い青単ベルチャーも複数上位で見られます。現環境でボロスエネルギーを倒すなら、青単ベルチャーはおすすめのデッキのひとつです。
イゼット果敢もボロスエネルギーに次いで人気があるデッキで、『Modern Super Qualifier』でも結果を残していたので、今後もよく見かけることになりそうです。
USA Modern Express vol.133は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!