USA Legacy Express vol.255 -ディミーアリアニメイトに立ち向かう有力デッキたち-

Kenta Hiroki

はじめに

みなさん、こんにちは。

召喚:バハムート召喚:ナイツオブラウンドウルザの物語

待ちに待った『マジック:ザ・ギャザリング――FINAL FANTASY』がリリースされますね。

そして今回、英雄譚のルール変更の発表がありました。レガシーで大きな影響を及ぼしそうなものでは《ウルザの物語》が大きく強化されることが話題になっています。

『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』 リリースノート

海の先駆け血染めの月

従来のルールでは《海の先駆け》《血染めの月》によって《ウルザの物語》を基本土地に変えると、英雄譚特有のルールが適用され、状況起因処理によって墓地に置かれていました

今後は墓地におかれることなく、伝承カウンターが乗ったまま、特別な能力を持った基本土地として戦場に残ります。《構築物トークン》を生成する能力を持ち続けるのは脅威ですね。

さて、前置きが長くなってしまいましたが、今回の連載では『第29期レガシー神挑戦者決定戦』 と『Legacy Challenge』の入賞デッキをチェックしていきたいと思います。

『第29期レガシー神挑戦者決定戦』 -ディミーア祭り-

209名が参加した、『第29期レガシー神挑戦者決定戦』。

今年の『日本レガシー選手権・春』を制したことで記憶に新しいディミーアリアニメイトは人気のあるデッキですが、今大会でも優勝を含め、プレイオフの半数を占めるという高いパフォーマンスを見せています。

意志の力思考囲い強迫知りたがりの学徒、タミヨウオークの弓使いバロウゴイフ

メタゲームブレイクダウン』を見ればデッキの分布が確認できますが、トップメタのディミーアリアニメイトは全体の17パーセント以上を占め、ディミーアテンポの使用率も3位と、ディミーアカラーのデッキが高いシェア率を獲得しました。

カウンターやハンデスを用いつつ、《知りたがりの学徒、タミヨウ》《オークの弓使い》《バロウゴイフ》といった脅威にアクセスでき、現在のレガシー環境におけるベストな選択と考えられています。

ディミーアリアニメイト

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悲嘆超能力蛙カザド=ドゥームのトロール

日本レガシー選手権・春に続いてレガシー神挑戦者決定戦でも優勝し、神決定戦もミラーマッチとなったディミーアリアニメイト。《悲嘆》《超能力蛙》《カザド=ドゥームのトロール》と立て続けに禁止カードを出されてもなお、圧倒的な強さを維持しています。

知りたがりの学徒、タミヨウオークの弓使い再活性

《カザド=ドゥームのトロール》が抜けた枠には土地が追加され、《知りたがりの学徒、タミヨウ》《オークの弓使い》を入れたバージョンが主流のリストとして定着しています。対戦する場合はディミーアテンポとの見極めが難しく、《再活性》を見ただけでは完全にディミーアリアニメイトとも判断できません。《動く死体》《地底街の下水道》の2枚目が確認できれば、ようやくディミーアリアニメイトだと判断がつくでしょう。

☆注目ポイント

フェアリーの忌み者致命的な一押し

従来のディミーアリアニメイトに比べると、リアニメイトプランのウェイトが下がっているため、墓地対策が効きづらいという特徴があります。《知りたがりの学徒、タミヨウ》《オークの弓使い》を処理するには墓地対策カードよりも軽い除去が求められますが、逆に《致命的な一押し》などはリアニメイトされた《残虐の執政官》《偉大なる統一者、アトラクサ》を倒せません。

メインから《知りたがりの学徒、タミヨウ》などでアドバンテージを稼ぎ、《濁浪の執政》で勝つゲームも多く、リアニメイトデッキというよりもリアニメイトパッケージを採用しているディミーアテンポという表現のほうがしっくりきます。

Sink into StuporForce of WillMurktide Regent

スペルランドの《朦朧への没入》は興味深いアプローチです。マナが必要な場合は土地として機能しつつ、呪文としては一時的な置物対策やカウンターとして活躍。《意志の力》のためのブルーカウントにもなり、便利なカードです。墓地に落ちればインスタントとしてカウントされるので《濁浪の執政》の強化にも貢献します。

Dauthi Voidwalker

《ダウスィーの虚空歩き》は2マナで回避能力持ちのパワー3と、アタッカーとしても優秀です。さらに墓地対策を内蔵しているため、ミラーマッチをはじめ、The Spyなど多くのマッチアップでサイドインされます。墓地対策カードとしての安定性は高くありませんが、シンプルにクロックとしても機能するため、腐りにくいのが強みとなります。

ディミーア忍者

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ディミーアカラーのデッキはリアニメイトやテンポだけではありません。今大会で入賞したディミーア忍者は、ディミーア好きで一味違ったアプローチのデッキもトライしたい方におすすめです。

Yuriko, the Tiger's ShadowIngenious InfiltratorOrnithopterRetrofitter Foundry

《羽ばたき飛行機械》など軽い回避能力持ちのクリーチャーで攻撃し、《虎の影、百合子》《巧妙な潜入者》といった強力な忍者を忍術によって場に出し、アドバンテージを稼ぎます忍術はカウンターされないため、青いデッキに対しても強い戦略となります。

ゲームが長引いた場合は《改良式鋳造所》の出番です。相手が除去を多用するデッキの場合、忍者による攻撃がうまくつながりませんが、《改良式鋳造所》によって継続的にトークンを生成し、横に並べて圧をかけることで打開できます。

ゲーム終盤は《羽ばたき飛行機械》を4/4に変換できる点も強力です。

☆注目ポイント

Tamiyo, Inquisitive Student手掛かりトークン

このデッキにもやはり《知りたがりの学徒、タミヨウ》が採用されています。1マナと軽く、飛行を持っているため攻撃が通りやすいのが魅力で、《羽ばたき飛行機械》と同様に忍者につなげやすいクリーチャーです。

攻撃し続けることで《手掛かりトークン》を生成し、アドバンテージを稼ぎ続けることもできるため、《改良式鋳造所》と同様にロングゲームでも強いカードです。

Kaito, Bane of NightmaresYuriko, the Tiger's ShadowIngenious Infiltrator

もちろん、ディミーアテンポでも大活躍中の《悪夢滅ぼし、魁渡》も採用されています。2ターン目に《羽ばたき飛行機械》で攻撃し、忍術で《虎の影、百合子》《巧妙な潜入者》と入れ替えた後、すぐに《羽ばたき飛行機械》をプレイすることで、さらに3ターン目の《悪夢滅ぼし、魁渡》へとスムーズにつなぐことが可能です。0マナの《羽ばたき飛行機械》を多用できるのがいいですね。

紋章で忍者の全体強化となる《悪夢滅ぼし、魁渡》の[+1]能力も、このデッキならばディミーアテンポよりもさらに強く使えます

『Legacy Challenge 32』 -リアニメイトに強いデッキが集う-

MOやテーブルトップで大暴れしているディミーアリアニメイトに対抗するかのように、この大会ではカーンフォージのような墓地利用デッキに強いアーキタイプが複数入賞していました。

《忍耐》をメインから4枚採用した多色コントロールも入賞しており、メインから無理なく使える墓地対策が重要な環境であることが伺えます。

一方で、高速コンボのThe Spyやセファリッド・ブレックファーストは墓地利用デッキながら入賞しており、墓地に対する厳しいマークを乗り越えるポテンシャルがあるようです。

カーンフォージ

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Ancient TombPlanar NexusUrza's TowerKarn, the Great CreatorMystic ForgeThe One Ring

これまでコンスタントに活躍してきたカーンフォージ。2マナランドの《古えの墳墓》に加え、《次元の結節点》+《ウルザの塔》の組み合わせや、《厳かなモノリス》《水蓮の花びら》といったアーティファクトによるマナ加速から《大いなる創造者、カーン》《神秘の炉》《一つの指輪》といった強力なカードを高速展開するデッキです。

Vexing BaubleGlaring FleshrakerKozilek's Command

《苛立たしいガラクタ》が禁止されたことでカウンターに弱くなったものの、大量のマナを利用した《まばゆい肉掻き》《コジレックの命令》のコンボなど複数の勝ち手段を有しており、《一つの指輪》《ウルザの物語》によるアドバンテージ獲得など、妨害を受けてもリカバリーしながら勝ちきれる強さがあります。

☆注目ポイント

Candelabra of TawnosUrza's SagaUrza's Workshop

土地をアンタップできるアーティファクト、《Candelabra of Tawnos》《多用途の鍵》《通電式キー》によってアンタップすることで、《ウルザの物語》から複数体の構築物・トークンを生成したり、《ウルザの作業場》から大量マナを出したりすることができます。

1マナなので《ウルザの物語》でサーチできる点も見逃せません。

Ugin, Eye of the Storms

無色スペルを多用するこのデッキでは、『タルキール:龍嵐録』からの新戦力《嵐の目、ウギン》も強く使うことができます。

Kozilek's CommandSoul-Guide LanternDefense Grid

墓地対策としてはメインから4枚採用の《コジレックの命令》に加え、《大いなる創造者、カーン》から《トーモッドの墓所》にアクセスすることができます。さらにサイド後は《虚空の力線》も投入され、ディミーアリアニメイトをはじめとした墓地利用デッキを徹底的にマークしています。

カウンターに対しては《防御の光網》が刺さり、今後はルール変更による《ウルザの物語》の強化なども考えられ、現在のレガシーではいい立ち位置にあるデッキの一つです。

『Legacy Challenge 32』 -『タルキール:龍嵐録』からの新戦力、エスパードラゴンが入賞-

この大会でもプレイオフの半数をディミーアリアニメイトが占め、決勝もディミーアリアニメイトミラーの1、2フィニッシュとなりました。

そのほか、レガシー神でも活躍したディミーア忍者や、『タルキール:龍嵐録』から複数のカードを採用した、ユニークなドラゴン型のコントロールが入賞しています。

エスパードラゴン

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Tamiyo, Inquisitive StudentOrcish BowmastersSwords to PlowsharesThoughtseize

定番のクリーチャーに加え、各種ドロースペル、カウンター、《剣を鍬に》《思考囲い》といった優秀なスペルを集めたエスパーカラーのデッキです。

Roiling DragonstormMarang River Regent鳴り渡る龍哮の征服者

さらに、『タルキール:龍嵐録』からは《乱動するドラゴンの嵐》のようなドラゴンシナジーのあるカードと、《マラング川の執政》《鳴り渡る龍哮の征服者》といった新ドラゴンが採用されています。

《乱動するドラゴンの嵐》《マラング川の執政》の「前兆」と《再活性》は面白い組み合わせで、レガシーもまだまだイノベーションの余地があるようです。

☆注目ポイント

Clarion Conqueror一つの指輪厳かなモノリス

アーティファクト、クリーチャー、プレインズウォーカーの起動型能力を封じる《鳴り渡る龍哮の征服者》はカーンフォージをはじめ、さまざまなデッキに刺さります。3マナ飛行3/3とメインから採用しても腐りにくいドラゴンで、《乱動するドラゴンの嵐》を誘発させる際も便利です。

Roiling DragonstormMurktide RegentReanimate

《乱動するドラゴンの嵐》は2マナと軽いドロー&ルーティング手段で、ドラゴンが戦場に出るたびにセルフバウンスして何度もプレイすることができます。墓地を肥やせるため《濁浪の執政》《再活性》とも相性がいいカードです。

Swords to Plowshares
《剣を鍬に》はレガシーにおいて白を使う最大のメリットといえるでしょう。《濁浪の執政》《バロウゴイフ》といった脅威をほかのデッキよりもかんたんに対処できるのが魅力です。

『Legacy Challenge 32』 -多種多様なデッキが入賞-

この大会ではディミーアリアニメイトの入賞は1名に留まり、土地単、オムニテル、バントナドゥ、ANTなど様々なデッキが入賞しました。

リアニメイト関連では、ディミーアではなくサイドからコンボプランに切り替える黒単(サイド後はゴルガリ)バージョンも入賞しています。

黒単リアニメイト

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現在のディミーアリアニメイトが「テンポプランを主軸にリアニメイトを狙うデッキ」として振る舞う一方で、黒単リアニメイトはリアニメイトプランとサイド後のコンボプランに特化したスタイルを貫きます。

Lotus PetalDark RitualUnmask

《水蓮の花びら》《暗黒の儀式》といったマナ加速を利用することで、1ターン目からファッティをリアニメイトできます。

カウンターなどの妨害を《暴露》で事前に落とし、強引にリアニメイトを決めることも可能で、ブン回った場合はどんなデッキにも勝てる可能性があります。ただし、運要素が強いことや、墓地対策されると勝てなくなることが弱点です。

☆注目ポイント

Shallow GraveEmrakul, the Aeons TornSire of Insanity

《暗黒の儀式》から《納墓》+《浅すぎる墓穴》の動きで1ターン目から《グリセルブランド》をリアニメイトして速攻アタックを決めることができ、大量のカードを引くことが可能です。

ちなみに《浅すぎる墓穴》はインスタントスペルのため、《引き裂かれし永劫、エムラクール》もリアニメイトできます。一撃でゲームが決まる可能性が高く、ターン終了時にクリーチャーを追放するというペナルティ効果も気にならないことでしょう。

そのほか、「終了ステップにお互いの手札をすべて捨てる」というユニークな能力を持つ《狂気の種父》も釣り上げる対象となります。こちらはおもにコンボデッキに対して有効です。

Chain of SmogWitherbloom Apprentice

このデッキのもうひとつの勝利手段が、サイド後に投入される《煙霧の連鎖》+《ウィザーブルームの初学者》のコンボです。墓地を利用しない勝ち手段のため、徹底的に墓地対策をしてきた相手に刺さる「軸ずらし」のカードです。

Spoils of the VaultLeyline of the Void

《大霊堂の戦利品》はハイリスクなカードですが、コンボパーツを引きさえすればゲームに勝てるため、サイド後のゲームでは役立ちます。

また、《意志の力》が使えないこのデッキにとって、1ターン目からコンボを決めてくるThe Spyとのマッチアップは鬼門です。サイド後はリアニメイトプランにこだわらず、自ら投入する《虚空の力線》がもっとも有力な対策カードとして機能します。

総括

ウルザの物語

ルール変更によって《ウルザの物語》が大幅に強化されるため、「レガシーでは禁止にしたほうがいいのでは?」という意見もあるようです。元々が強力なカードであり、これまで以上に大暴れすることが予想されるため、新ルール実装後のイベント結果に注目が集まることでしょう。

また、幾度となく禁止改定の影響を受け続けたディミーアリアニメイトですが、あらゆるイベントのプレイオフに残り続け、いまだにレガシーのトップメタの地位にいます。

コジレックの命令トーモッドの墓所忍耐

ディミーアリアニメイトに対抗する手段としては、メインから複数の墓地対策カードが使えるカーンフォージや、《忍耐》など、メインでも腐らない墓地対策にアクセスできるクレイドルコントロールに注目が集まっているようです。

USA Legacy Express Vol.255は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!

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Kenta Hiroki アメリカ在住のプレイヤー。 フォーマットを問わず精力的に活動しており、SCGやグランプリの結果などからグローバルな最新情報を隔週で発信する「USA Modern Express」「USA Legacy Express」を連載中。 Kenta Hirokiの記事はこちら