はじめに
みなさん、こんにちは。
いよいよ待ちに待った『マジック:ザ・ギャザリング――FINAL FANTASY』がリリース、実装されますね。モダンでも使えそうなカードもありそうなので楽しみです。
また、発売されると同時に「英雄譚」のルール変更の発表がありました。モダンで大きな影響を及ぼしそうなものでは《ウルザの物語》です。
『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』リリースノートより引用
本セット発表に伴うルール変更(詳細については後述を参照)により、何らかの理由によってそのすべての章能力を失った英雄譚は状況起因処理として生け贄に捧げられることはない。また、それのコントローラーの第1メイン・フェイズの開始ごとに、伝承カウンター1個を得ることもない。
従来までは《ウルザの物語》が《血染めの月》や《海の先駆け》などによって能力を失うと、墓地に置かれていましたが、今後は墓地に置かれることなく、カウンターも増減しません。構築物・トークンを生成する能力も、章能力によって付与されたままになるなど強化されています。
前置きが長くなってしまいましたが、今回は『Magic Spotlight: Secret Lair』と、気になったデッキが入賞していた『Modern Challenge』の結果見ていきたいと思います。
『Magic Spotlight: Secret Lair』 -ボロスエネルギーがトップ8に0名?-
開催日:2025年5月31日
優勝 繁殖鱗コンボ
準優勝 エスパー御霊
3位 エスパーブリンク
4位 イゼット果敢
5位 アゾリウス親和
6位 オルゾフブリンク
7位 オルゾフブリンク
8位 ドメインズー
アメリカ・インディアナポリスで開催されたモダンの大規模イベント。
今大会で最も印象に残ったのは、トップメタのボロスエネルギーがプレイオフに残らなかったことです。「アメリカだけボロスエネルギーが禁止になっていたのでは」といったコメントが一部で見られるほどでした。
勝ち組はオルゾフ(エスパー)ブリンクで、優勝した繁殖鱗コンボといったコンボデッキも、トップメタのボロスエネルギーに対して有利なので人気があります。
エスパーブリンク
戦場に出たときの能力を持つクリーチャーを、《ちらつき鬼火》や《溌剌の牧羊犬、フィリア》といったクリーチャーでブリンクしてアドバンテージを稼いでいくミッドレンジデッキです。
《思考囲い》や《致命的な一押し》といった軽い優秀な除去やハンデスが使えるため、幅広いマッチアップに対応できるバランスの良さがこのデッキの特徴になります。
デッキ内のさまざまなカードとシナジーがある《新たな夜明け、ケトラモーズ》は、強力なアドバンテージエンジンとして機能するため、長期戦に持ち込むことができればゲームを有利に進めることができます。
ボロスエネルギーやディミーアマークタイドなどフェアデッキに対して強い一方で、エルドラージやコンボデッキは相性が悪いマッチアップになります。
ただ、エスパーブリンクはオルゾフ型に《超能力蛙》と《記憶への放逐》をタッチしたバージョンになっており、苦手なエルドラージとの相性が緩和されています。
☆注目ポイント
「兆候」した《ベイルマークの大主》はブリンクさせることでクリーチャーとして場に戻ってくるため、早い段階から継続的にカードアドバンテージを稼げる脅威として圧をかけることができます。
《孤独》の「想起」にスタックで《儚い存在》を唱え、相手のクリーチャーを複数除去する動きも強く、このデッキがクリーチャーデッキに強い理由のひとつになります。
墓地のカードを追放できる《骨の皇帝》は、《新たな夜明け、ケトラモーズ》とシナジーがあります。メインから腐りにくい墓地対策としても機能し、《火の怒りのタイタン、フレージ》などの対策も可能です。
「順応」によって追放したクリーチャーをリアニメイトでき、《溌剌の牧羊犬、フィリア》などでブリンクさせて+1/+1カウンターをリセットさせれば、毎ターン能力を使用することも可能です。
《超能力蛙》は共鳴者能力(※起動コストとして手札を捨てるカード)でサイズを強化できるので打点が高く、飛行を得る能力で墓地を追放するため《新たな夜明け、ケトラモーズ》とも相性が良いです。コンボ相手のクロックが上がり、アドバンテージも取れるので青をタッチする価値のあるクリーチャーになります。
サイドの《鳴り渡る龍哮の征服者》は『タルキール:龍嵐録』から登場したドラゴンで、《ゴブリンの放火砲》《力線の神童、ラル》《湖に潜む者、エムリー》《オパールのモックス》をはじめとした各種マナ・アーティファクトなど、広い範囲のカードの起動型能力を封じることが可能で特にコンボデッキとのマッチアップで活躍が期待できます。
繁殖鱗コンボ
今大会で優勝したのは《血の長の刃》+《日を浴びる繁殖鱗》コンボでした。
《日を浴びる繁殖鱗》にカウンターが置かれると落とし子・トークンが生成され、《血の長の刃》はクリーチャーが死亡するたびに、装備されているクリーチャーに+1/+1カウンターを置けるため、これをループさせることができます。
これにより、《日を浴びる繁殖鱗》のパワーとタフネスを無限に強化させると同時に無限マナを得ることができます。
無限マナ後は、《コジレックの命令》で《歩行バリスタ》を探して相手に無限ダメージを与えたり、《コジレックの命令》+《まばゆい肉掻き》の誘発で勝つことができます。
また、このデッキはコンボだけでなく《約束された終末、エムラクール》や《ウルザの物語》のトークンによるビートダウンなど、多角的に攻める手段を持ち合わせています。
☆注目ポイント
《コジレックの命令》《古きものの活性》《邪悪鳴らし》といった豊富なサーチスペルがあるのがこのデッキの特徴で、土地・コンボパーツ・妨害など必要なものはたいてい見つけることができます。
デッキに複数のカードタイプを持つカードが多く、《邪悪鳴らし》で墓地を肥やすことで《約束された終末、エムラクール》を軽いコストでプレイするのも比較的容易なので、常に墓地の状況を把握しておきたいところです。
《歩行バリスタ》は小型クリーチャーに対する除去としても機能するなど、コンボ以外でも余ったマナを活用する手段になります。《まばゆい肉掻き》は《エルドラージの寺院》を利用することで2ターン目からプレイでき、落とし子・トークンによるマナ加速とダイレクトダメージなど、それぞれ単体でも十分な脅威となります。
ボロスエネルギー対策としてサイドに《紅蓮地獄》がとられています。《オセロットの群れ》や《魂の導き手》、並んだトークンを一掃することができるのでコンボを決めるまでの時間を稼ぐことができます。
『Modern Challenge 32』 -懐かしい形のグリクシスが入賞-
開催日:2025年6月7日
優勝 ボロスエネルギー
準優勝 繁殖鱗コンボ
3位 エルドラージトロン
4位 グリクシスコントロール
5位 繁殖鱗コンボ
6位 ジェスカイコントロール
7位 親和
8位 ドメインズー
先週末に開催された『Modern Challenge』では、懐かしいスタイルのグリクシスコントロールが入賞していました。また、英雄譚のルール変更によって大幅に強化されたと話題の親和も見られました。
グリクシスコントロール
『Magic Spotlight: Secret Lair』でアメリカのプロであるCorey Burkhart氏が使用し、上位に入賞していたことで話題になっていたデッキです。
《瞬唱の魔道士》や《コラガンの命令》といった過去のモダンで活躍していたカードが採用されており、《知りたがりの学徒、タミヨウ》や《超能力蛙》など最近の強力なカードが加えられて現代向けにアップデートされています。
☆注目ポイント
《致命的な一押し》《稲妻》《呪文嵌め》など軽いスペルを多用しているため、《瞬唱の魔道士》でアドバンテージが取りやすくなっています。
《知りたがりの学徒、タミヨウ》はモダンだと《火の怒りのタイタン、フレージ》で除去されてしまうことが多くありますが、継続的にアドバンテージを稼ぐことができ、《悪夢滅ぼし、魁渡》の「忍術」のためのクリーチャーとしても使えます。
《悪夢滅ぼし、魁渡》はレガシーでも活躍しているプレインズウォーカーで除去耐性もあり、《瞬唱の魔道士》や《緻密》を「忍術」によってバウンスすることで再利用することもできます。
メインから採用されている《塵へのしがみつき》は、《火の怒りのタイタン、フレージ》などの対策になり、ゲームが長引いたときは「脱出」させてアドバンテージを稼ぐこともできます。
コンボ、フェア問わず強力な2マナスペルが多いモダンでは、《呪文嵌め》は優秀なカウンターとして機能し、コストが軽い分マッチアップによっては《対抗呪文》よりも使えるカウンターになります。
《瞬唱の魔道士》と《知りたがりの学徒、タミヨウ》はどちらもウィザードなので、《アノールの焔》を強く使うことができます。マナはかかるものの《瞬唱の魔道士》によって《アノールの焔》を「フラッシュバック」できれば、大きくアドバンテージを稼げます。
親和
親和デッキは爆発力のあるスタートを切ることができ、《思考の監視者》や《物読み》といった2種類のドロースペルがあるので中盤以降も粘り強さがあります。
《知りたがりの学徒、タミヨウ》《湖に潜む者、エムリー》《ミシュラのガラクタ》など、《ジェスカイの隆盛》コンボと採用しているパーツが共通している部分がありますが、コンボの代わりに《河童の砲手》などによるビートダウンが勝ち手段になっています。
このデッキは《ウルザの物語》を最も強く使えるデッキのひとつで、アーティファクトが並ぶため構築物・トークンがフィニッシャー級のサイズになり、Ⅲ章の能力で《影槍》をサーチして圧をかけられます。
☆注目ポイント
「親和(アーティファクト)」や「即席」スペルを軽いコストでプレイするために、《ミシュラのガラクタ》や《トーモッドの墓所》といったカードはすぐに起動せずに場に残しておくことも重要なプレイングになります。
可能な限り早い段階から《河童の砲手》を展開するのが理想で、《影槍》でトランプルを付与することができれば速やかにゲームを終わらせてくれます。
《知りたがりの学徒、タミヨウ》の生成する手掛かり・トークンは「親和」のカウントにもなり、《思考の監視者》や《物読み》といったドロースペルのおかげで簡単に変身させることができます。
[+2]能力はボロスエネルギーとのマッチアップで時間を稼ぐことができ、[-3]能力で《物読み》や《金属の叱責》を再利用していきます。
《金属の叱責》は1マナでプレイできる優秀なカウンターで、各コンボデッキやサイド後に《空の怒り》など強力な対策カードを使ってくるマッチアップで重宝します。
MOではすでに「英雄譚」のルール変更が実装されているため、《ウルザの物語》との組み合わせが強力になった《海の先駆け》がメインから採用されています。
《ウルザの物語》がⅡ章の状態で《海の先駆け》を置くことができれば、相手の特殊地形をすべて基本の島にしつつ《ウルザの物語》で毎ターン構築物・トークンを生成するという状況を作ることができます。
総括
現環境で高い勝率を維持しているボロスエネルギーでしたが、『Magic Spotlight: Secret Lair』ではトップ16まで見渡して1名も見られなかったのが印象的でした。
勝ち組は複数の入賞していたオルゾフ(エスパー)ブリンクと、優勝していた繁殖鱗コンボで、どちらのデッキもボロスエネルギーに対して強い要素を持っています。
青単ベルチャーやアミュレットタイタンといったコンボデッキが多かったことも、ボロスエネルギーが勝ちきれなかった理由のひとつになります。
序盤からプレッシャーをかけることができ、《火の怒りのタイタン、フレージ》のおかげでロングゲームにも対応できますが、ボロスという色の組み合わせの都合上、カウンターが使えず、イゼット果敢より遅いことも弱点です。
モダンのメタは確実に動いており、「英雄譚」のルール変更や『マジック:ザ・ギャザリング――FINAL FANTASY』が加わることで、また環境が変わってくることが予想されます。
以上、USA Modern Express vol. 134でした。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!
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