(※本記事は『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』発売前に書かれたものです)
はじめに
お疲れ様です。てんさいチンパンジー(@tensai_manohito)です。
今回は「モダンの最前線に迫る!」と称して、最新のモダン環境や私が直近でテストしたデッキについてあれこれ語ります。
激震の『モダンホライゾン3』がリリースされてから約1年が経ち、モダン環境は未だに『モダンホライゾン3』の炎に包まれているのか、はたまた本流セットの影響を色濃く受けているのか。早速見ていきましょう。
記事の最後には、おまけとして『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』の注目カードを紹介しています。
環境デッキ紹介
ボロスエネルギー
2024年12月16日の禁止改定により、《色めき立つ猛竜》《湧き出る源、ジェガンサ》といったコアパーツの禁止を経てどうなったのかというと、変わらずの最強デッキです。
以前から圧倒的Tier1だったため、多少の規制程度ではその勢いは止まりません。まさに「俺が弱くなったところで、お前らが強くなったわけではない」ということです。
ボロスエネルギーを支えている真のカードは《火の怒りのタイタン、フレージ》です。序盤に《敏捷なこそ泥、ラガバン》《魂の導き手》《オセロットの群れ》のようなクリーチャーを並べてただガツガツ殴るだけのアグロデッキなら、《紅蓮地獄》《コジレックの帰還》《空の怒り》のようなカードで対処できます。そもそも《致命的な一押し》《虹色の終焉》のような除去にだって弱かったことでしょう。
しかし、現実はカードを交換した先に《栄光の闘技場》から速攻で走ってくる《火の怒りのタイタン、フレージ》が待ち構えています。序盤のクリーチャーを除去しなければそのまま押し切られてしまうのに、いざ交換するとフレージの「脱出」条件を満たしてしまう。
《火の怒りのタイタン、フレージ》が禁止にならない限り、エネルギーデッキは不滅です。
そもそも、コアパーツである《魂の導き手》《オセロットの群れ》《ナカティルの最下層民、アジャニ》は、それ単体でゲームを決めうる影響力を持っています。
この辺りは歴代のカードと比べても圧倒的で、単純なカードパワー差があります。『モダンホライゾン3』の暴力です。《色めき立つ猛竜》が禁止にされた程度では、ほかのデッキとの差は埋まっていないということです。
ここまで手放しで褒めちぎったボロスエネルギーですが、最強ではあっても無敵ではありません。どこまでいっても最強のアグロ~ミッドレンジです。構造上、苦手なデッキは存在します。
「エルドラージランプ」のようなミッドレンジキラーには苦戦を強いられますし、「ルビーストーム」「ネオブランド」のようなアンフェアデッキも戦いたくない部類の相手です。
しかし、相性通りに負けるようでしたらボロスエネルギーは最強ではありません。ボロスエネルギーはその圧倒的な性能から、サイドボードにミッドレンジ・コントロール対策のようなカードがほとんど必要ありません。メイン60枚のパワーで十分に戦えてしまうからです。その分、サイドをランプ・コンボのようなアンフェア対策に枠を割くことができます。
そのため、サイド後は《溶鉄の雨》《真昼の決闘》といった専用対策を十分に用意することができます。結果、サイド後も込みであれば圧倒的に負け越すということはありません。
ボロスエネルギーは最強であるが故に「使わない理由を探すほうが難しい」デッキです。つまり、理由がなければこのデッキを使えということです。考える時間がもったいないです。悩む必要はありません。ボロスエネルギーを使いましょう。
サンプルリスト1
ボロスエネルギーの骨子になる部分(《魂の導き手》《オセロットの群れ》《ナカティルの最下層民、アジャニ》《火の怒りのタイタン、フレージ》)については語ることもないでしょう。
細部については好みの範疇で、《鏡割りの寓話》《歴戦の紅蓮術士》の3マナ域が多めに取られている or 《勝利の楽士》が採用された少し軽めの構成の2パターンが主流です。
個人的には《勝利の楽士》のタイプのほうが好みです。《ゴブリンの砲撃》や《魂の導き手》《栄光の闘技場》など、意外とシナジーが豊富でデッキに合っています。
サンプルリスト2
もう1つは《獲物貫き、オボシュ》型を紹介します。
《獲物貫き、オボシュ》は《湧き出る源、ジェガンサ》の抜けた穴を埋める新たな「相棒」枠です。単純な強さなら《湧き出る源、ジェガンサ》を越えています。特に《栄光の闘技場》で走らせたときの爽快感は最高!
ですが、「相棒」条件の縛りのせいで奇数のカードしか使えないため、《ナカティルの最下層民、アジャニ》や《ゴブリンの砲撃》といったコアパッケージが不採用に。《オークの弓使い》も使えないため、ミラーマッチで相手のカードが羨ましくなることもしばしばあります。
イゼット果敢
『タルキール:龍嵐録』はモダンに大きな影響を与えました。その筆頭が《コーリ鋼の短刀》です。
この手のトークンを生み出すカードというのは、しばしばアグロデッキのサイドプランとして採用されてきました。メインの戦略がクリーチャーの質で戦う”縦”から、サイド後はクリーチャーの量で戦う”横”の戦略に切り替えるのは、相手からしても対処しづらい戦略として実績があります。
さて、《コーリ鋼の短刀》はどうでしょう。
「出てくるトークンが強くなった《苦花》」
「ターン終了時に死亡しない《ウラブラスクの溶鉱炉》」
「対処されない《僧院の導師》」
などなど。
2マナで設置可能かつ最速2ターン目からトークン生成。出てくるトークンは装備品がつくため、最低でも2/2・速攻・トランプル。トークンの性能はほぼ《僧院の速槍》。
横の戦略とは一体何なのか。縦の戦略も真っ青です。こんなクオリティのクリーチャーがポンポン出てきて良いわけがありません。
というわけで、「サイド後の戦略」と言っていたようなことを、あまりにもカードが強すぎるが故にメインから実践してしまう《コーリ鋼の短刀》。それを最大限に活用したアグロデッキが「イゼット果敢」です。
果敢戦略はメインの爆発力に優れている反面、単体除去に弱いという弱点を抱えていました。しかし、《コーリ鋼の短刀》がその弱点をカバーしています。その結果、“除去に強いアグロ”という夢のようなデッキが爆誕しました。
《精鋭射手団の目立ちたがり》もまた除去に強いクリーチャーです。「計画」によってマナを無駄にすることなく力を貯められるため、相手が除去を構えてきた場合は「計画」、タップアウトの際には一気に展開して《変異原性の成長》などと合わせてダメージを叩き込む……といった具合に柔軟にプレイパターンを選べます。
スタンダードにも同コンセプトのデッキが存在しますが、その強さは比べ物になりません。《ミシュラのガラクタ》の存在で果敢の誘発のしやすさが段違いです。2ターン目から《コーリ鋼の短刀》を誘発させられる以外にも、いつ引いても全体+1/+1修正を掛けられる夢のようなカードです。
また、《表現の反復》によるリソース獲得も見逃せないポイントです。スタンダードでは《食糧補充》が使われていますが、当然3マナより2マナのほうが優れています。もちろん、手に入るカードの質には差がありますが、このマナの差は絶対です。特に果敢のような戦略を取る場合は、軽ければ軽いほど良いのは明らかです。
イゼット果敢は、《コーリ鋼の短刀》や《表現の反復》で除去を絡めたロングゲームにも耐えられる夢のようなアグロデッキですが、弱点は存在します。
《虚空の杯》《三なる宝球》《真昼の決闘》といった専用クラスの対策には歯が立ちません。これらの対策は除去のような汎用的な対策と異なり、かなりピンポイントでの対策になります。そのため、採用率はあまり高くないのが通例です。
しかし、イゼット果敢が目立てば目立つほどこれらの採用率は上がっていくことでしょう。イゼット果敢は「汎用的な対策が効きづらい」「対策されづらい」だけであり、「対策をしようと思えばできる」のです。
これがボロスエネルギーとの決定的な違いであり、イゼット果敢が二番手に甘んじている理由だと思います。とはいっても、平手での直接対決はイゼット果敢に分があるため、現在のモダン環境はボロスエネルギーとイゼット果敢の2強といえるでしょう。
サンプルリスト
マナベースについて。終盤には《溶岩の投げ矢》を複数回「フラッシュバック」で唱えることも考えると、ファストランドやキャノピーは複数引きたくないという気持ちはわかりますが、かといってフェッチランドが多いとライフペイが多くなりがちに。
ライフが低くなると《変異原性の成長》が唱えられないデメリットもあるため、悩ましいところです。紹介しているリストはライフ水準を高く保てるファストランドが多めですが、これはこれで終盤の行動回数にも関わってきます。この辺りの採択に正解はないので、各々で判断してください(丸投げ)。
個人的には《洪水の大口へ》よりも《厚かましい借り手》のほうが好みです。サイド後は相手が除去や対策カードを追加してくることから、一気にダメージを叩き込んで3キル!とった展開にはなりづらく、《コーリ鋼の短刀》《表現の反復》を使ったミドルレンジのゲームになりやすいです。
《厚かましい借り手》はそういったミドルレンジのゲームにマッチしています。また、相手が《真昼の決闘》のようなクリティカルなカードを採用しているか分からない状態で《洪水の大口へ》はサイドインしづらいですが、《厚かましい借り手》であれば腐るリスクは低めでサイドインしやすいです。
《忌まわしき眼魔》もまたそういったミドルレンジのゲームに強いカードです。仮にすぐ除去されても「戦慄予示」によってトークンを戦場に残せるため、粘り強く戦うことが可能です。
エルドラージランプ
数少ないボロスエネルギーへの明確なアンチデッキとしてポジションを確立しているランプデッキ。
《有翼の叡智、ナドゥ》《悲嘆》《色めき立つ猛竜》《死の国からの脱出》の禁止によって周囲が弱体化、また自身も《一つの指輪》を失って弱体化などなど……『モダンホライゾン3』リリースからの1年で波乱万丈な歴史を辿った経歴を持ちます。
ランプデッキと銘打ってますが、その実態はランプというよりも、アンフェアなマナ加速手段を持ったミッドレンジデッキです。
《エルドラージの寺院》《ウギンの迷宮》はただ設置するだけで1マナ加速ですし、《楽園の拡散》は現代では絶対に許されない1マナでの1マナ加速のため、初動以外で引いてもそのターンの行動を阻害しません。これらが絡めば、2ターン目に4マナのカードを唱えることが可能になります。
また、《まき散らす菌糸生物》は《エルドラージの寺院》のサーチ、《のたうつ蛹》は落とし子・トークンの生成で2マナ分の加速としてカウントできるので、綺麗に回ると2ターン目に4マナ→3ターン目に7マナと繋がります。
しかも、3ターン目から《まき散らす菌糸生物》と《世界を壊すもの》で土地を攻めてくるため、これより遅いデッキは一生土地が伸びず、行動回数が増えません。
そのため、エルドラージランプよりも遅いミッドレンジ~コントロールは、サイドへの《記憶への放逐》の採用を強要されます。《記憶への放逐》が採用できないデッキは、その時点でエルドラージランプとの相性が絶望的ということに。つまり、ある種の足切りデッキになっています。
《一つの指輪》禁止によって弱体化し、脱出基地コンボの隆盛によって《大いなる創造者、カーン》の採用を強要されるなど、不遇な時代が続いていましたが、2025年3月31日の禁止改定で《死の国から脱出》の禁止によって件のデッキが消滅。カーンを採用する必要がなくなったため、再び自分都合の動きを優先しやすくなったことからも評価アップ。
《大いなる創造者、カーン》の枠には代わりに《のたうつ蛹》を採用することで、デッキとしての動きを太くしつつ、ボロスエネルギーにも強く出られるようにするアプローチが主流です。
ただ、相応に対策されやすいというのは問題です。《記憶への放逐》はこのデッキのためだけに用意されるようなキラーカード。青いデッキにはまず間違いなく採用されています。
また、対処方法が限られているボロスエネルギーなどは、《溶鉄の雨》や《黒曜石の焦がし口》などのクリティカルな対策を採用していることが多いです。マナ加速にエンチャント(=《楽園の拡散》)やアーティファクト(=《衝動のタリスマン》)を使うため、置き物破壊で足元を崩されると速度が出ないこともしばしば。
強力なデッキであるが故に、しっかりと対策されがちなデッキではあります。
サンプルリスト
通常、エルドラージランプは《まき散らす菌糸生物》から状況に合わせてサーチする土地を何種類か用意するのが主流です。
サンプルリストでは、メインに《ボジューカの沼》、サイドに《魂の洞窟》を用意しています。ほかにも《幽霊街》《ウギンの聖域》などが候補に挙がりますが、この手の土地を採用しすぎると「フェッチランド」+《森》の枚数が確保できず、序盤の《楽園の拡散》が安定しなくなるので、多くても2枚程度に抑えたほうがよいです。
サイドの《ムウォンヴーリーの酸苔》はミラー対策です。ミラーマッチはとにかく土地を伸ばす・土地を割るで相手をハメるゲームになります。
《世界を壊すもの》のサイズが絶妙なため、お互いに攻撃が通りづらく、戦闘で相手を倒すのは困難です。《コジレックの命令》→《約束された終末、エムラクール》でも決着しますが、《コジレックの命令》のマナ加速を強く使うためにも、ある程度の土地枚数が必要になります。
なので、ゲームの焦点はいかに「自身の土地を伸ばせるか」「相手の土地を破壊できるか」になります。つまり、それらを同時に行える《まき散らす菌糸生物》が最重要クリーチャーになります。そして、それと同じ役割として《ムウォンヴーリーの酸苔》もまた追加のサイドとしては理想になります。
先に述べた通り、クリーチャーによる戦闘では決着がつかないので、《ムウォンヴーリーの酸苔》に肉体が付いてないことは些細な問題です。土地枚数に差をつけて相手を圧倒しましょう。
- 2024/11/08
- 大量のマナからねじ伏せる!「エルドラージランプ」デッキガイド
- 増田 勝仁
ディミーア眼魔/ディミーアマークタイド
《超能力蛙》はモダンの常識を変えました。かつてのモダンでは《稲妻》が除去の中心でしたが、今や色があったデッキでも使う・使わないを検討するレベル。なぜなら《超能力蛙》を倒せないから。この一点で採用が見送られるほどです。
《超能力蛙》は確かに最強クラスのクリーチャーであり、レガシーでは禁止という実績もあります。が、この超ぶっ壊れクリーチャーをもってしても、『モダンホライゾン3』に支配されたモダン環境を渡り切るのは難しいようです。
残念ながらモダンにおける《超能力蛙》は《有翼の叡智、ナドゥ》や《火の怒りのタイタン、フレージ》には劣ります。結局、ディミーアマークタイドは常にTier2以下のデッキでした。
事情が変わったのは『ダスクモーン:戦慄の館』のリリースから。《忌まわしき眼魔》という明らかに本流セットとは思えないカードパワーのクリーチャーが登場。《濁浪の執政》に近い条件から、そのまま差し替えられるだけ……と思いきや、《発掘》まで採用して寄せる構築が主流に。
今まではなかったディミーア側からの序盤の押しつけパターンが増えたため、ショートレンジのゲームも可能になりました。《濁浪の執政》では《オセロットの群れ》と睨めっこするだけでしたが、《忌まわしき眼魔》であれば殴り返しも早いです。結果、ボロスエネルギーに対しても戦えるレベルのデッキへ昇格しました。
しかし、《忌まわしき眼魔》の活躍は長くは続かず。『霊気走破』で登場した《新たな夜明け、ケトラモーズ》は《大祖始の遺産》との組み合わせで、メインから強烈に墓地を対策してきます。このパッケージを採用した「オルゾフケトラモーズ」が登場したことで状況は一変。
ディミーア眼魔は《忌まわしき眼魔》に加えて《発掘》まで採用していることから、墓地への依存度が非常に高く、《大祖始の遺産》を乗り越えるのも一苦労。せっかく戦場に《忌まわしき眼魔》を出せたとしても、《孤独》で簡単に対処されてしまうという悪夢のような相性の悪さです。結局、ディミーア眼魔は再び環境の隅に追いやられてしまいました。
そのため、墓地の依存度が高い《忌まわしき眼魔》を排して、《悪夢滅ぼし、魁渡》のような墓地に依存しないフィニッシャーに差し替えたタイプも登場。このタイプは《悪夢滅ぼし、魁渡》の「忍術」を通す関係で、《知りたがりの学徒、タミヨウ》や《オークの弓使い》といったクリーチャーも多めに採用されているのが特徴です。
が、そうなると今度はボロスエネルギーが再び立ちはだかります。《魂の導き手》《オセロットの群れ》を目の前に《悪夢滅ぼし、魁渡》を戦場に出す余裕なんてあるわけもなく。「忍術」してタップアウトしようものなら、返しに普通に攻撃されて落とされてしまいます。
どちらかが立てばどちらかが立たず。ディミーアマークタイド、ディミーア眼魔はデッキそのもののパワーはそこまで低くくはないですが、ボロスエネルギーが最強である限りは苦難の日々は続きそうです。
サンプルリスト
2025年6月現在の主流は《忌まわしき眼魔》型です。環境最強であるボロスエネルギーに対して強く出ることができないことから、《悪夢滅ぼし、魁渡》型を肯定する理由はあまりなさそうです。
青いドローソース、黒い除去、そして干渉手段の組み合わせに《忌まわしき眼魔》+《発掘》のパッケージと構成自体はシンプル。採用カードもここ1年で大きく変化しておらず、「ディミーア眼魔」「ディミーアマークタイド」としてのアーキタイプはほぼ完成されているかなという印象です。
オルゾフケトラモーズ
『霊気紛争』からの新戦力《新たな夜明け、ケトラモーズ》を主軸に据えたミッドレンジデッキ。
《溌剌の牧羊犬、フィリア》+《ベイルマークの大主》、《ちらつき鬼火》+《魔女の結界師》など、クリーチャーシナジーによるリソース獲得がウリで、フェアデッキとのロングゲームはお手の物。
もともとは《儚い存在》《霊気の薬瓶》《護衛募集員》などを駆使したブリンクシナジーデッキでしたが、そこに《新たな夜明け、ケトラモーズ》が加入し、その影響で人気が爆発。一気にトップティアの仲間入りを果たしました。
《大祖始の遺産》と《新たな夜明け、ケトラモーズ》のコンボは緩い条件かつ大量ドローが可能です。《大祖始の遺産》の1つめの起動型能力で墓地を追放、1枚ドロー。2つめの能力で《大祖始の遺産》自身が追放、1枚ドロー。《大祖始の遺産》の効果で1枚ドロー。お互いの墓地が追放されて1枚ドロー。
明らかに引きすぎです。《豆の木をのぼれ》や《一つの指輪》に負けず劣らずのリソース獲得量です。それでいて《新たな夜明け、ケトラモーズ》自身が4/4の破壊不能持ちと触りづらく、一度動き出せば簡単に単体でゲームを詰ませられる性能を持ちます。まさに最強のフィニッシャーです。
とはいっても普通のミッドレンジ。理屈上はアンフェアデッキであるコンボデッキやランプデッキに弱いです。
モダンレベルになるとこの相性差は顕著で、特にミッドレンジにはブン回りが存在しないため、相性通りの結果になりやすいです。「ボロスエネルギー」「ディミーアマークタイド」などは戦いやすい部類ですが、「エルドラージランプ」「アミュレットタイタン」「ルビーストーム」には苦戦を強いられます。
《死の国からの脱出》が健在だったころは、脱出基地コンボに対してメインから大量に採用された《大祖始の遺産》によって有利という主張ができましたが、《死の国からの脱出》が禁止されたことで有利な相手が消滅。それ以降は、よくあるミッドレンジデッキの1つに収まってしまった印象を受けます。
ボロスエネルギーとは反対に、「使う理由を探す」側のデッキである以上、Tier2からの脱却は難しいと思われます。
サンプルリスト
《大祖始の遺産》+《新たな夜明け、ケトラモーズ》や《溌剌の牧羊犬、フィリア》+《ベイルマークの大主》のコアパッケージ以外は選択肢があります。
紹介するサンプルリストは、《骨の皇帝》《思考囲い》のような単体で役割を果たせるカードで穴埋めしたバランス型。《ちらつき鬼火》《儚い存在》を最大枚数採用してブリンクシナジーを意識した型も存在します。
オルゾフケトラモーズの問題点として、低マナ域が貧弱であることが挙げられます。マナカーブが2~3マナに固まっているため、全体的にモッサリしています。
また、1マナ域のカードが《思考囲い》《致命的な一押し》のような先手/後手や相手のデッキによって左右されやすいカードしか採用できないので、自分都合のブン回りがないのがマイナスポイントです。
ほかにも、《超能力蛙》をタッチしたエスパー型が存在します。《超能力蛙》は任意のタイミングで墓地を追放できることから、《新たな夜明け、ケトラモーズ》とも相性が良いです。ただ、多色化すると《ボガートの獲物さらい》や《魔女の結界師》といった両面土地・クリーチャーが使いづらくなるため、デッキ全体としてのシナジーは薄まります。
繁殖鱗コンボ
現代に蘇ったナドゥコンボ。その後釜として活躍するクリーチャーコンボデッキです。
コンボの手順は非常に簡単。
■コンボ手順
《日を浴びる繁殖鱗》に《血の長の刃》を装備した状態で《日を浴びる繁殖鱗》にカウンターが乗る、またはクリーチャーが死亡して《血の長の刃》が誘発するとコンボスタート。
《日を浴びる繁殖鱗》が無限にパンプされ、その過程で無限に無色マナが発生します。
《日を浴びる繁殖鱗》の召喚酔いが解けていて、かつ相手の戦場ががら空きならそのまま殴って勝ちです。
《まばゆい肉掻き》がいるなら無限パンプ&無限マナの過程で無限ダメージになります。《歩行バリスタ》《コジレックの命令》も無限マナを注いでそのままゲームに勝利できます。
《日を浴びる繁殖鱗》+《血の長の刃》の組み合わせは《有翼の叡智、ナドゥ》+《手甲》を彷彿とさせます。
実際、コンボの要求値の低さは《有翼の叡智、ナドゥ》と大差ありません。問題はコンボの威力、そして《日を浴びる繁殖鱗》自体の耐性が劣っていることにあります。
《日を浴びる繁殖鱗》+《血の長の刃》のコンボは決まっても即勝ちにはならないことが多く、別の勝ち手段が必要なケースがほとんどです。また、除去耐性は皆無であり、あらゆるインスタントタイミングの干渉に弱いです。打ち消し・クリーチャー破壊・アーティファクト破壊。どれもしっかり効きます。
そのため、「繁殖鱗コンボにまったく干渉ができないので不利!」という相手はほとんど存在しません。
その反面、自身のコンボに振り切った動きだけでいえば、かなりの安定感と速度を持ちます。
コンボパーツである《日を浴びる繁殖鱗》《血の長の刃》は《古きものの活性》《邪悪鳴らし》といった優秀なサーチ手段に対応しています。また、それらのサーチ手段で《まばゆい肉掻き》《歩行バリスタ》《コジレックの命令》《ウルザの物語》など、状況に応じて有効なさまざまなカードにアクセスできるため、コンボ一辺倒ではない戦い方も可能です。
繁殖鱗コンボは非常に単純なコンボですが、意外と”分からん殺し”のような勝ち方が多くなりがちです。実際に使っている際、相手視点で適切にプレイ/サイドボーディングされていないと感じることも多いです。
《血の長の刃》が戦場に置いてあるだけで返しのコンボに怯えて除去を構えてしまい、結果として《コジレックの命令》や《ウルザの物語》を強く使われてしまう……といった展開もしばしば起きます。
このレベルの強さのデッキが、あまり人気がないというのも本当に不思議な話なのですが、《日を浴びる繁殖鱗》自体のレアリティの低さからか、不当に過小評価されていると思います。
サンプルリスト
サンプルリストは、私が先日Magic Onlineの『Modern Super Qualifer』でトップ8に入った際のものになります。構成はシンプルで特に解説することもないので、簡単なプレイアドバイスを。
無色マナを出す土地には《エルドラージの寺院》や《ウルザの物語》といった強力なものが多く、逆に緑マナを出す土地は単に色が出るだけのものが多いです。そのため、緑マナを要求するカードはプレイを後回しにすると、どんどん手札に貯まってしまいます。
なので、どのターンにどの緑のカードを消化するかは意識したほうがよいです。もちろん、サーチカードなので後半に伸ばせば伸ばすほど精度が上がっていくため、この辺りの塩梅は悩ましいところですが。
サイドの《約束された終末、エムラクール》は別軸のフィニッシャー。対策の対策になります。
繁殖鱗コンボは全身急所のコンボデッキ。除去で妨害もされますし、《石のような静寂》のようなピンポイント対策もよく効きます。そういった相手に対しては、《邪悪鳴らし》で墓地を肥やしながら《約束された終末、エムラクール》を探しつつ、《コジレックの命令》でマナを伸ばして《約束された終末、エムラクール》を唱えるプランを取ります。
- 2024/11/25
- 無限パワー!無限トークン!無限ダメージ!「繁殖鱗コンボ」デッキガイド
- 増田 勝仁
青単ベルチャー
デッキ内の土地を0枚にして、《ゴブリンの放火砲》を起動するだけで勝ち!というのがコンセプトのコンボデッキ。
《ゴブリンの放火砲》を使ったデッキはやれ2キルだ、やれ《欄干のスパイ》デッキのサイドプランだなどなど……どれも高速コンボの印象が強いです。しかし、モダンの青単ベルチャーは分類上こそコンボデッキではありますが、過去のどのタイプとも異なります。
《ゴブリンの放火砲》は設置4マナ+起動3マナの合計7マナが必要になるため、この合計7マナをいかに捻出するかがベルチャーデッキの課題です。
主流の方法は大量のマナ加速を採用するパターン。《発熱の儀式》《アイレンクラッグの妙技》を連打すれば、最速2ターン目にして設置&起動が可能です。ベルチャーデッキというと、こういった理不尽高速コンボをイメージする人が多いかもしれません。
青単ベルチャーは最速4ターンキルと、コンボデッキのなかでは比較的遅めです。リソースを大量に使う儀式呪文を用いたマナ加速は行わず、普通に土地を4枚置く&《睡蓮の花》+《現実の設計者、タメシ》のような効率のよい方法のみを採用し、そこまでの時間を打ち消しなどの青い妨害で稼ぎます。
コントロールデッキのように振る舞い、そのフィニッシャーとして《ゴブリンの放火砲》が採用されているという見方が正しいかもしれません。
土地を伸ばす行為は、非常に安定したマナ加速です。大量の使い切りマナ加速から《ゴブリンの放火砲》を唱えても、打ち消しなどで妨害されるとリソースを失ってしまい、それだけで負けです。
しかし、土地を4枚並べた状態で《ゴブリンの放火砲》を唱えて打ち消されたとしても、ゲームはまだまだ続きます。後続の《ゴブリンの放火砲》を引ければまた仕掛け直せます。故に妨害などにも強い・安定したコンボデッキ……というのが青単ベルチャーの思想です。
速度を犠牲にして妨害に強くしていることからも分かる通り、自身より早いデッキは苦手です。ボロスエネルギーであれば《睡蓮の花》の有無や先手・後手の差で勝負ができなくもないですが、イゼット果敢クラスになると全然追いつけません。
代わりに自身より遅い、または妨害の影響を受けやすいデッキ……たとえばエルドラージランプやアミュレットタイタンなどには滅法強く、必勝レベルの相性差があります。
青単ベルチャーはその見た目に反してプレイに選択肢が多く、非常に難しいデッキです。私自身、多少プレイした程度では全然上手く使えないな……という感想でした。やり込み甲斐があるデッキだと思いますので、そういったのが好みの方には向いているかもしれません。
サンプルリスト
青単ベルチャーは固定パーツが多く、構築の自由度は低めです。構築よりはプレイでエッジの出るタイプのデッキです。
《応じ返し》はイゼット果敢対策です。《洪水の大口へ》もそうですが、この手の時間稼ぎ用のバウンスが多めに入っていることからも分かる通り、イゼット果敢対策は必須になります。逆に少量でも入っていれば、《ファラジの考古学者》や《稲妻罠の教練者》で探すこともできるため、その有無が重要です。
サイドの《山》は《耐え抜くもの、母聖樹》や《白蘭の幻影》対策です。ベルチャーデッキならではのサイドカードで、最初にこれを採用した人は柔軟な発想をしているなと感心しました。
仮に土地が割られずに《山》がデッキに残った状態で《ゴブリンの放火砲》を起動することになっても、《山》であればめくれたときに2倍のダメージが飛ぶため、10枚めくれれば20点は出せます。それ以下でめくれたら……もう1回起動しましょう。
ルビーストーム
『モダンホライゾン3』リリース以降、常に環境に存在し続けている高速コンボデッキ代表格。妨害がない前提であれば安定した3キルが可能で、最速の2キルも現実的という法外のスピードがウリです。
コンボデッキではあるものの、単純な除去や手札破壊での対策には耐性があります。《レンの決意》でリソースを伸ばすこともできますし、十分に土地が伸びたあとであれば素で《炎の中の過去》からリカバリーされることもあります。
本気でルビーストームを倒したいならば、《耳の痛い静寂》《真昼の決闘》《ドラニスの判事》《魂なき看守》《魔道士封じのトカゲ》といった専用の対策が求められます。故に対策されていないタイミングでは無類の強さを発揮します。
コンボデッキとしての強度は間違いなく脱出基地コンボのほうが上でしたが、《死の国からの脱出》の禁止に伴って消滅。現在はルビーストームが環境最速クラスのコンボデッキとしてポジションを確立しています。
ほぼ形を変えないままずっと環境に残っている=完成されたデッキなので、練習の価値は非常に高いです。
デッキの性質上、ここから強力なアップデートが入る可能性も低いです(「儀式」系呪文が増えるとは考えづらく、衝動系ドローも同型が再録されるケースが多いため)。
デッキ自体の評価は前述の通り、妨害の有無(=環境でどの程度意識されているか)で大きく変わります。ルビーストームはチェインコンボのため、特定のカードの組み合わせのコンボで勝つ!というよりは、何枚ものカードの組み合わせでマナやリソースを伸ばしていくため、どうしてもリソースが必要です。
そうなると、対策の対策を突破するためにカードが追加で1枚必要になるというだけでもかなり要求のハードルは上がります。
では、現在の環境ではどうなのかというと、ちょっと厳しいかな……という印象です。
イゼット果敢の隆盛に伴い、ボロスエネルギーやオルゾフケトラモーズ、ドメインズーなどの白いデッキがこぞって《耳の痛い静寂》《真昼の決闘》といった対策カードを採用しています。これらは当然、ルビーストームに有効に働きます。ほかのデッキを対策するついでに対策されている現状では、ほかのデッキに逃げたほうが無難かな思います。
サンプルリスト
タッチカラーにはいろいろと選択肢があります。白ならば《オアリムの詠唱》《火の怒りのタイタン、フレージ》《虹色の終焉》などが使えますし、緑ならば《夏の帳》《自然の要求》、青ならば《定業》《アノールの焔》などなど。ほかにも緑+黒で《突然の衰微》や《選別の儀式》など、選択肢は多いです。
どうせフェッチランド+諜報ランドで序盤を過ごすので、追加の1色はほぼフリータッチということでしょう。個人的には《超能力蛙》に触れる《虹色の終焉》が使える白がオススメです。
ドメインズー
根強い人気を誇るアグロキラーのアグロデッキ。《ギルドパクトの力線》+《ドラコの末裔》はすべてのフェアデッキを否定する”コンボ”です。
《力線の束縛》《頑固な否認》などの高スペックな干渉手段によって、雑多なデッキに対しても耐性があります。
主力のクリーチャーが《縄張り持ちのカヴー》《ドラコの末裔》《ニショーバの喧嘩屋》と、パワー4~5が中心。非常に打点が高いので変に時間を稼がれることも少なく、素早く殴ってゲームを片付けられます。勝つのに必要なリソースも少ないため、積極的なマリガンが肯定される点が素晴らしいです。
反面、どこまで行ってもフェアデッキの域を出ません。《ギルドパクトの力線》が絡まないゲームは、ちょっと質の良いクリーチャーデッキに成り下がってしまいます。また、《ギルドパクトの力線》+《ドラコの末裔》がそろったとしても、それを越えるサイズ&ライフゲインで乗り越えられることもあります。
そんなことあるわけが……と言いたいところですが、ボロスエネルギーの《火の怒りのタイタン、フレージ》《魂の導き手》《オセロットの群れ》であればそれも可能です。これに関してはドメインズーの問題ではなく、ボロスエネルギーが異常という話ではありますが……。
最近は《部族の炎》が減って《火の怒りのタイタン、フレージ》《鏡割りの寓話》を採用したタイプが人気のようです。まさかこのデッキから《部族の炎》が減ることがあるのか……という驚きもありますが、ライフゲイン要素を持ったボロスエネルギーに対して、バーン的な動きで勝つことが難しいのが要因かなと予想しています。
サンプルリスト
手札が必要なデッキではないので、微妙な6~7枚よりは必要なカードのそろった5枚のほうが勝ちやすいです。極論、《ギルドパクトの力線》《ドラコの末裔》+土地2枚で勝てることもあるので、少なくともメインに関しては積極的なマリガンで勝てる手札をガンガン求めていきましょう。
《門衛のスラル》を使ったタイプもありますが、個人的には反対です。ただでさえ《ギルドパクトの力線》は絵合わせ要素が強いのに、さらに《火の怒りのタイタン、フレージ》や《虚構漂い》との縦シナジーを採用したらデッキが機能するわけがない……というのが私の意見です。
最悪、《ギルドパクトの力線》がなくても高スタッツクリーチャーを使えるのがドメインズーの良さでもあるので、《門衛のスラル》のような単体では役割を持たないクリーチャーは、デッキを弱くしかねないと思っています。
ネオブランド
モダンきっての問題児、超アンフェアデッキの代名詞である「ネオブランド」。そのフェア型がMagic Onlineでは大流行!
《滋養の群れ》やフィニッシュ手段(《タッサの神託者》《大嵐の咆哮、スラスタ》《貪欲なる新生子、ソリン》)などのワンショット用のカードを減らす・または廃して、そのターン中に勝つことを諦め、代わりに《次元の創世》《エラダムリーの呼び声》などのサーチを採用することで、ターンを返す前提にはなるものの、より安定してデカブツを踏み倒せるような形に変化しています。
直近の『Modern Challge』や『Showcase Challenge』で幾度も入賞し、いまでは当たり前の存在に仲間入りしています。
「ボロスエネルギー」「イゼット果敢」などのフェアなアグロ~ミッドレンジが幅を利かせている現在のモダン環境において、デカブツ絆魂が強い!というわけで、それを早いターンに安定して出せたら強いのでは?という思想から始まったデッキなのだと考えられます。
何度マリガンしても2-3ターン目に《偉大なる統一者、アトラクサ》《グリセルブランド》が出れば、それだけで詰むゲームはままあります。
ただ、個人的な評価は低め。思想は理解できますが、ただそれだけです。どこまで行ってもポジションデッキで、練習の価値は低いなと感じました。
「必要なカードがそろうまでマリガンする(+どの程度で妥協できるかの判断)」
「持っていたら仕掛ける」
ゲーム内の要素はほぼこれだけです。分岐も何もあったもんじゃない。そのうえで「相手がそれに対処できなけば勝ち」「相手が対処してきたら負け」という2パターンしか起きません。ある意味で分かりやすいですが、特にこれといった対話はないので好き嫌いは分かれるデッキかなと思います。
実際、私も本記事の執筆にあたって使ってみましたが、本当に見た目通りのことしか起きず、感想も事前に想定できた範疇を越えませんでした。この手のデッキにありがちな好みの話にもなってきてしまうので、これ以上は掘り下げませんが、個人的にはあんまり……と思いました。
サンプルリスト
サンプルリストでは《エラダムリーの呼び声》《きらめく願い》用に青白土地が2種類採用されていますが、重ねて引くと《異界の進化》が受からないので、この枠は1種1枚に抑えたほうがいいかなと思いました。私が使ってみて得た感想はそれだけでした。あとは見たまんまです。
ジェスカイナーセット
市川 ユウキ氏が『2025 Magic Online Champion Showcase Season 1』(MOCS)で使用したことから、国内では高い人気を誇るデッキ。
脱出基地コンボの流れを汲んだ《オパールのモックス》《モックス・アンバー》《知りたがりの学徒、タミヨウ》《湖に潜む者、エムリー》を絡めたアンフェアなロケットスタートは、明らかにフェアデッキの範疇を越えています。
また、大量の0マナのアーティファクト(《オパールのモックス》《モックス・アンバー》《ミシュラのガラクタ》)の存在から、ほぼ確実に2ターン目に《コーリ鋼の短刀》を誘発させることができます。これらが重なった際に手札で浮きやすい問題を、《ジェスカイの道師、ナーセット》によって解決している点もよくできています。
もともとは《ジェスカイの隆盛》コンボとして脱出基地コンボの後釜と期待されていましたが、《ジェスカイの隆盛》自体が単体で役に立たないことから、徐々にその枚数を減らしていきました。
そもそも《コーリ鋼の短刀》の誘発回数を稼ぎやすい構成になっているので、コンボに頼らずともモンク・トークンのビートダウンで十分勝てると判断されたのも《ジェスカイの隆盛》が減った要因かなと思います。
《ジェスカイの道師、ナーセット》を用いたフェアラインで戦うのが基本路線で、対コンボのような地上戦をしてこない相手に対抗する要素として《ジェスカイの隆盛》を少しだけ採用している……という見方が正しいかもしれません。
問題は土地トラブル。白青赤を満遍なく使う上に《ウルザの物語》も採用している関係上、色のトラブルは避けられません。また、《オパールのモックス》《モックス・アンバー》のようなマナソース、《ミシュラのガラクタ》のようなキャントリップが大量に採用されていることから、実質デッキの大半はマナソースを占めていることに。
色の問題はマナソースを増やすことでしか解決しませんが、かといってこれ以上のマナソースの採用はフラッドのリスクも跳ね上がってしまう……というジレンマを抱えています。この問題は土地側で解決することは不可能なので、呪文側で解決する……ということで《ジェスカイの道師、ナーセット》が採用されたのかなと思います。
サンプルリスト
サンプルリストは市川 ユウキ氏がMOCSで使用したものになります。
《ジェスカイの隆盛》は《湖に潜む者、エムリー》とのコンボで瞬殺が可能です。このコンボは《湖に潜む者、エムリー》の召喚酔いが解けていることが条件になりますが、《コーリ鋼の短刀》を装備すれば速攻を付与できるので、無の状態から急に決まるパターンも存在します。
サイドの《チャンドラの敗北》は面白い選択だなと思いました。対イゼット果敢を想定すると、4点以下の火力は《ドラゴンの怒りの媒介者》+《変異原性の成長》で回避される恐れがあることから、5点火力である《チャンドラの敗北》に白羽の矢が立ったのだろうと予想できます。ほかにも、1枚のみ採用された《尖塔断の運河》にもやり込みを感じます。
ボーナストピック:『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』注目カード
最後にオマケとして『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』の個人的な注目カードを紹介します。
《「占星術師」の天球儀》
装備されたクリーチャーを《スプライトのドラゴン》のようにする装備品。クリーチャー強化だけでも十分強力ですが、特に注目しているのが、装備しているクリーチャーに”ウィザード”のクリーチャー・タイプを付与する部分です。
《アノールの焔》のボーナスを受けやすくなるので、イゼット系のコントロールデッキで活躍が期待できそうです。もちろんイゼット果敢で普通に使うのもアリです。
《始まりの町》
《真鍮の都》《マナの合流点》のような全色ランド。デメリットのタップイン条件も現在のモダン環境のゲームスピードであればほぼ気にならないでしょう。前述の土地らとは異なり無色マナも出るため、複数色を採用したエルドラージ系デッキとの相性が良いです。
《ジャイアントビーバーとの対話》
《冒険の衝動》の強化版。サーチ範囲が広くなっています。インスタント・ソーサリーこそ手に入りませんが、ほぼ緑の《思案》と呼んでも過言ではないでしょう。繁殖鱗コンボでの採用が検討できそうです。
おわりに
「モダンの最前線に迫る!(2025年版)」は以上になります。
今回は私が実際にテストした・知見のあるデッキに限定して紹介しましたが、紹介できなかったデッキ(アミュレットタイタン、エスパー御霊)についても別の機会に紹介できればと思います。
本記事が、みなさんの快適なモダン生活の手助けになれば幸いです。
増田 勝仁(X)
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