はじめに
こんにちは。晴れる屋秋葉原店の辻です。
突然ですが、先日晴れる屋からこんなイベントが発表されたのをご存じでしょうか?
大人気漫画『すべての人類を破壊する。それらは再生できない。』最終巻の発売を記念して、晴れる屋トーナメントセンター東京にて発売記念イベントが開催されるんです!
フォーマットは「スタンダード」と「ミドルスクール」の2本立て。最新のカードで戦うか、あのころのカードで戦うかはあなた次第!己の時代のマジックを思いっきり楽しんじゃいましょう!
- 2025/05/29
- 憧れのカードが使用可能な「ミドルスクール」で遊ぼう!おすすめデッキ15選!
- 辻
ミドルスクールって何?という方は前回の私が書いた記事をご覧ください!
今回の記事では、発売記念イベントを前に『すべそれ』こと『すべての人類を破壊する。それらは再生できない。』について紹介させていただきます!
どんな漫画なの?

【商品ページ】
「なんだか全体除去のテキストみたいなタイトルだなあ」とか、「そもそも俺らって再生ついてたっけ?」みたいな感想が出てくるのが僕たちマジックプレイヤー。大体の人には再生はついてないと思います。
タイトルに《神の怒り》ということは?そう、実はこれMTGの漫画なんです!
MTG関連の漫画は、過去に『デュエルファイター刃』『デュエル・マスターズ』などがありました。この漫画も例に漏れず、作中ではマジックしまくりです。
ほかの漫画と明確に異なる部分があるとすれば、フィクションでありつつも作中の世界情勢はある程度史実に基づいたものであるということ。
当時の最新セットが発売した瞬間のことや、当時開催のグランプリなどの様子が描かれている漫画ってかなりレアな気がしませんか?
作中の各部分の描写も僕ら「世代」の人間が懐かしめるものばかり。
好評発売中の『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』を楽しまれている方の中にも、まさに「世代」な方はたくさんいらっしゃると思いますが、作中だと1巻時点で『FINAL FANTASY VII』くらい(1997年)です。各所にFFネタもたまに(かなり?)出てくるので、MTG好き&FF好きにはたまらない漫画かもしれません。
それでいてラブコメ要素もあって青春力10,000%。余談ですが僕は青春モノに弱いため、この漫画の“青春力”が高すぎて2話目くらいでもう破壊されそうになってました。
でもマジックプレイヤーとして気になるのは「作中ではどんな対戦が行われているの?」というところ。
『すべそれ』では、なんと実際にトーナメントシーンで活躍していたデッキがたくさん登場します!懐かしいデッキから、悪名高い”あのデッキ”までさまざまです。
そんなわけで、今回は各対戦時のデッキリスト(サンプル)・簡単な解説を掲載させていただきます。僕も(語りたがり体質ゆえに)内容についてゴリゴリに語ってしまいたくなるところですが、書きすぎると超ネタバレになってしまうので控えめにかいつまんで書こうと思います。
でも本編はそれくらい面白いので、気になった人はぜひ読んでみてください!
(※掲載デッキリストは当時の代表的なデッキリストであるため、作中で使用されているリストとは細部が異なる場合があります)
神納はじめ(黒単ウィニー) vs. 沢渡慧美(白単ウィニー)
作中最初の大きな勝負は、主人公とヒロインの対決。主人公がヒロインと戦う・しかもヒロインがめちゃくちゃ強いプレイヤーという設定が斬新で大好きです。
名前の由来はというと……
神納はじめ(かのう はじめ):《カーノファージ/Carnophage》
沢渡慧美(さわたり えみ):《サルタリーの使者/Soltari Emissary》
だそうな。
《カーノファージ》と《サルタリーの使者》は、それぞれ黒単色・白単色のウィニーで活躍。どちらも『テンペスト』ブロック構築の有力なデッキでした。
使用デッキは名前の通りというかなんというか、はじめは「黒単ウィニー」、慧美は「白単ウィニー」での対戦です。
両者のデッキで共通するのはやはり「シャドー」持ちのクリーチャーの採用でしょう。
『テンペスト』から登場したこのキーワード能力は、「シャドーを持つクリーチャー以外にはブロックされない」というメリットと、「シャドーを持つクリーチャーしかブロックできない」というデメリットを併せ持ちます。
普通のデッキとシャドー多めのデッキが対峙すると、戦闘のほとんどが一方通行になるため熾烈なダメージレースに。同キャラで珍しくブロック云々が発生するという感じです。
ちなみにこの両デッキ、ミドルスクールでもそれなりに有力なデッキタイプです。クリーチャーが軽いため《不毛の大地》などで少々の妨害を挟みつつ、ダメージレースを仕掛ける戦法が強力。
カラーリングまで対称的なこの二人の勝負から物語が幕を開けることになりますが、サイドボード後は両者の《日中の光》《夜の戦慄》《憂鬱》が飛び交う恐ろしいゲームに。
いわゆる「色対策カード」で、とりわけ当時のものは効果があまりにも苛烈。現代ではあまり登場しない部類のカードとなってしまいましたが、平成初期の無慈悲なマジックではそれが普通でした。
エンチャント
黒のクリーチャーは、攻撃したりブロックしたりできない。
特にはじめの黒単では《日中の光》は勝ち手段がクリーチャーによるコンバットなため、普通なら「1枚即投了」くらいの効きっぷり。この時代の黒単では、アーティファクトやエンチャントを(ほぼ)壊せないんです。
しかし、はじめにもこれを打ち破る秘策が……?(続きは本編で!)
また、この当時高かった人気カードといえば、やはり《呪われた巻物》。作中では店舗に陳列されている高額カードとして「MOX」シリーズたちとともに登場します。
アーティファクト
,
:クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。カード名を1つ選ぶ。その後、あなたの手札からカードを1枚、無作為に公開する。そのカードが選ばれた名前を持つ場合、呪われた巻物はそれに2点のダメージを与える。
小粒の除去手段・サブ攻撃手段としてローテーションまで大活躍。ローテーション後もエクステンデッドで末永く使われた名カードです。何色のデッキでも使用可能なため、さまざまなデッキに投入されました。ミドルスクールでもよく見かけるカードですね。
置いておくだけなら1マナなのでカウンターしにくく、また当時のパーマネント除去カードには、クリーチャーとアーティファクトを両方対処できる《大渦の脈動》のようなカードがほぼありません。ゆえに、クリーチャーと《呪われた巻物》両方のプランを個別対処しなければならなかった……といった事情もありました。
ちなみに《呪われた巻物》の日本語版の初版にはエラー版があり、起動コストがで印刷されているものがあります。普通に使っても強いのに……。正しくは
なので、エラー版をお持ちの方は使用の際ご注意を。
神納はじめ(黒単ウィニー) vs. 来島卓(MoMa)
ストーリー上これ負けたらやばい~~~と少年の心をくすぐられる一戦。
そしてなにより、来島のデッキがMTG史上でも指折りのものすごいデッキなんです。あまりMTGを知らない人でも「MoMaというやばいデッキがある」ことを知っている人もいるくらい。
MoMaの動きを簡単に説明します。
■デッキの動き
1. 《魔力の櫃》《通電式キー》などの軽いマナアーティファクトをばらまき、《トレイリアのアカデミー》でマナを出す。
2. 《精神力》で《トレイリアのアカデミー》をアンタップ。
3. これらの行動はそれなりに手札を消費するので、《意外な授かり物》《時のらせん》で補充。
4. そんな感じでマナを生む→引く→マナを生む→引く……を繰り返す。すごい量のマナが浮く。
道中の《意外な授かり物》《時のらせん》が相手にもゲーム中の所作を求めるカードであるため、(特に何もできない場合は)決まるまで相手側は引いて捨ててシャッフルしてを繰り返すだけなので面倒だと不評。
それはそれとして、初手次第では1ターン目・そうでなくとも妨害できなければ早期に決まってしまう凶悪なコンボデッキでした。《意外な授かり物》《時のらせん》のどちらも大量ドローとして機能するため、かなり再現性が高いものであったこともプラス。まあ、これらの内容もランダムゆえに、手札にマナソースだけが来てしまう「スカ」も稀にあるのはご愛嬌といったところ。
「そんな破天荒なデッキ相手にどう戦うねん!?」と言いたいところですが、事前にデッキの存在を知っていたはじめは、抗う術をしっかりと用意していました(続きは本編で!)。
神納はじめ(黒赤) vs. 白金久遠(白青)
この対戦は、実際のイベントであった『グランプリ・京都99』が舞台となっています。フォーマットは『ウルザズ・サーガ』シールド。漫画でリミテッド対戦ってなんか新鮮な気がしますね。
終了ステップの開始時に、クリーチャーが戦場に存在しない場合、黒死病を生け贄に捧げる。
:黒死病は、各クリーチャーと各プレイヤーにそれぞれ1点のダメージを与える。
この環境を代表するカードといえば《黒死病》!現代に比べると全体的なクリーチャーサイズが小さいため、単体でもそれなりに強力でありつつ、《優雅の信奉者》や《優雅の声》と組み合わせることで長期維持が可能。あとは充分な黒マナさえあればゲームを決めに行くことができます。『ウルザズ・サーガ』の構築済みデッキ「疫病」にも収録されているコンボですね。
また白と青に有力な飛行クリーチャーが多く、《セラの抱擁》《ゼフィドの抱擁》の「抱擁」サイクルで小粒がフィニッシュ手段に化ける……ということも手伝って白青飛行も有効なアーキタイプでした。
上記のようなプロテクション能力も、そこら中の白いカードにプロテクション(黒)、プロテクション(赤)と書いてあるせいでなんだか凄いことに。旧枠のマジックでは、黒と赤以外の色にクリーチャー除去手段が少なかったため、これらのカードは全然死なず場に残り続けました。
また『ウルザズ・サーガ』といえば、日本語カード文字のフォントが明朝体→唐風隷書体に変更されたことも大きな特徴です。このあと『基本セット2015』で変更されるまでこのフォントの時代が続きます。
変更による面白い点としては《アクリディアン虫》の「虫(むし)」が「宏(ひろし)」に見える、《平和な心》が「平和なべ」に見えるなど。作中でもパック開封の際に触れられています。
諏訪原八雲(メグリムジャー) vs. 白金久遠(サイクリング・デス)
メグリムジャー
諏訪原八雲のデッキは「メグリムジャー」。こちらもMoMaに負けず劣らず、捉えようによってはそれを越えた法外な超高速コンボデッキです。
アーティファクト
, 記憶の壺を生け贄に捧げる:各プレイヤーは、自分の手札のカードを裏向きのまま追放し、カードを7枚引く。次の終了ステップの開始時に、各プレイヤーは自分の手札のカードをすべて捨て、これにより自分が追放した各カードを自分の手札に戻す。
エンチャント
いずれかの対戦相手がカードを1枚捨てるたび、偏頭痛はそのプレイヤーに2点のダメージを与える。
メグリムジャーの動きを簡単に説明します。
■デッキの動き
2. 《記憶の壺》を起動して手札を補充。引いた手札からさらに展開し《偏頭痛》を貼る。もしなければ《直観》や《記憶の壺》をもう1ループさせるなどして探し出す。
3. ターンを終了すると《記憶の壺》の「次の終了ステップの開始時に、各プレイヤーは自分の手札のカードをすべて捨て~」の部分が誘発。
4. 相手の手札が7枚あれば《偏頭痛》で14点、《記憶の壺》が複数使用されていれば or 《偏頭痛》が複数あれば致死量のダメージを叩き込んで勝負あり。
という豪快なもの。
特徴としては、始動部分が《記憶の壺》だけなので色マナが必要ないこと。《魔力の櫃》2枚から《記憶の壺》を置いてみたりとやりたい放題です。
道中の不足を雑に《ヨーグモスの意志》が解決してくるのは、この時代のデッキの特徴かもしれませんね。またフィニッシュは1ターン伸びてしまいますが、《暗黒の儀式》《ネクロポーテンス》という黄金パターンももちろん搭載。再現性ピカイチ!
有名なデッキながらも、このデッキのトーナメント記録がほぼないのは「禁止指定があまりにも早すぎた」せい。なんと発売からわずか45日後。
当時はパックの発売後トーナメントで使用可能になるまでに若干の間(2週間程度)があったことで、使用できたのは実質1か月でした。MoMaもそうでしたが、やっぱり適当に何回も7枚引いてはいけないんですなあ。
サイクリング・デス
対する久遠は「サイクリング・デス」。メグリムジャーほどではありませんが、スタンダード環境で戦うのに申し分ない確かなスピードを誇ったデッキでした。
アーティファクト
あなたがサイクリング能力を起動するためのコストは最大
少なくなる。
■デッキの動き
1. 《波動機》を貼る。
2. サイクリングコストが→
になるので、手札にあるサイクリングカードをありったけサイクリングし続ける。
3. 最終的に手札を《暗黒の儀式》2枚、《水蓮の花びら》、《生ける屍》にする。
4. 《生ける屍》を撃つと、墓地からサイクリングされた各クリーチャーが場に戻ってくるので、次のターン攻撃して勝利。
重要なのは、サイクリングの過程で《排除》《スクラップ》《再入植》などのコンボデッキへの対策カードを集められること。必要であれば自身のフィニッシュを遅らせ、妨害に舵を切る判断もありです。
こちらのデッキも強力すぎたため、のちに《波動機》が禁止カード入りすることに。す、すごい対決だ……。
余談ですが、このサイクリング・デスはミドルスクール環境でも再現可能。《暗黒の儀式》は使えないものの《忌むべき者の歌》という代役が。 《波動機》を置かれた瞬間の背筋が凍る感覚はたまらないですね!
神納はじめ(黒単ウィニー) vs. †アンゴルモア†(ピットサイクル)
†アンゴルモア†のデッキは「ピットサイクル」。
エンチャント
あなたのドロー・ステップを飛ばす。
1点のライフを支払う:カードを1枚引く。
ピットサイクルといえばもちろん《ヨーグモスの取り引き》ですね。このカードは、現在でもあらゆるフォーマットで禁止措置を受けている物凄いカード。すぐに引ける《ネクロポーテンス》が壊れていないわけがありません。
プールの狭い当時のスタンダードでこそ禁止になりませんでしたが、下環境に降りればあら不思議ということで、発売同年の1999年8月1日よりエクステンデッドでは禁止カードとなっています。
この重いエンチャントをどう場に出すかですが、《暗黒の儀式》《厳かなモノリス》から素出しするプランに《アカデミーの学長》が加わったことで再現性が爆上がりしています。
普通に地上で戦闘するデッキであれば、《アカデミーの学長》を出されただけで一旦の立ち往生は避けられないでしょう。中途半端に攻撃してライフが残った状態で《ヨーグモスの取り引き》が出てきてしまうと、充分に起動されてしまいますからね。もちろん《ファイレクシアの塔》などによる生け贄プランも組み込まれています。
そんなこんなで手に入れた《ヨーグモスの取り引き》で限界までカードを引き、ドローした《暗黒の儀式》やら《厳かなモノリス》やらで「」を用意して《スカージの使い魔》をプレイします。
ここからカードを捨てていき、捨てた《レイディアントの竜騎兵》を《死体発掘》することにより《ヨーグモスの取り引き》でさらにドローを掘り進めることができます。
最後に《魂の饗宴》で4点ドレインを繰り返しますが、これ4枚だと16点しか吸えないので《ヨーグモスの意志》でもう1周して勝負あり。
上記はコンボパターンの一例ですが、手札やマナの状況によってはある程度の見切り発車が求められたりするため、シビアな流れになることも。それゆえに回ったときの美しさが映えるデッキでもあります。
おわりに
ここまでいろいろと紹介してきましたが、こんな感じで名勝負・名デッキが次々と登場します。

【商品ページ】
そんな山あり谷ありの物語もいよいよ完結、最終巻18巻が好評発売中となっております。今回の付録プロモーションカードは《神の怒り》!
マジックプレイヤーはもちろん、そうでない方でも楽しめる『すべそれ』をぜひ読んでみてください!イベントへの参加もお待ちしております!
晴れる屋秋葉原店の辻でした。それではまた(^o^)